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福井県男女共同参画審議会音声記録非公開処分取消請求事件
平成20年1月30日判決言渡 同日原本領収 裁判所書記官
平成19年(行ウ)第2号 福井県男女共同参画審議会音声記録非公開処分取消請求事件
口頭弁論終結日 平成19年10月10日
           判           決
   岐阜県山県市西深瀬208−1
       原           告   選 定 当 事 者
                       寺   町   知   正
       選     定     者   寺   町   知   正
  
        同              上   野   千 鶴 子

               (※ 以下、11名はこの資料では略)


   福井市大手3−17−1
       被          告   福     井     県
       同 代 表 者 知 事    西   川   一   誠
       処  分  行 政  庁   福井県知事 西 川 一 誠
       被告訴訟代理人弁護士     野   坂   佳   生
            主            文
 1 原告の請求をいずれも棄却する。
 2 訴訟費用は原告の負担とする。
           事 実 及 び 理 由
第1 請求
   福井県知事が選定者らに対して平成18年11月20日付けで行った公文書                                        非公開決定(「男女県第313号」)を取り消す。
第2 事案の概要
   本件は,選定者らが,福井県情報公開条例(平成12年3月21日福井県条
  例第4号。以下「本件情報公開条例」という。)に基づき,その実施機関であ
  る福井県知事に対し,福井県男女共同参画審議会の会議の記録(電磁的データ
  ・テープなど)を公開するよう求めたところ,福井県知事は,公文書不存在と
  の理由で全部非公開とする旨の決定を行ったので,原告を選定当事者として,
  同決定の取消しを求めている事案である。
 1 前提事実(書証により認定した事実は,括弧内にその書証を掲記する。)
(1) 本件情報公開条例の定め(甲1)
  ア 2条(定義)
  「  この条例において『実施機関』とは,知事,議会,教育委員会,選挙
    管理委員会,人事委員会,監査委員,企安委員会,労働委員会,収用委
    員会,海区漁業調整委員会,内水面漁場管理委員会,地方公営企業の管
    理者および警察本部長をいう。
   2 この条例において『公文書』とは,実施機関の職員が職務上作成し,
    または取得した文書,図画および電磁的記録(電子的方式,磁気的方式そ
    の他人の知覚によっては認識することができない方式で作られた記録を
    いう。以下同じ。)であって,当該実施機関が管理しているものをいう。
    ただし,次に掲げるものを除く。
    一 官報,公報,白書,新聞,雑誌,書籍その他不特定多数のものに販
     売することを目的として発行されるもの
    二 県立図書館その他の県の機関において,歴史的もしくは文化的な資
     料または学術研究用の資料として特別の管理がされているもの」
   イ 5条(公文書の公開を請求できるもの)
   「  何人も,この条例の定めるところにより,実施機関に対し,公文書の公
     開を請求することができる。」
   ウ 31条(公文書の管理)
   「  実施機関は,この条例の適正かつ円滑な運用に資するため,公文書を
     適正に管理するものとする。
    2 実施機関は,公文書の分類,作成,保存および廃棄に関する基準その
     他の公文書の管理に関する必要な事項についての定めを設けるとともに,
     これを閲覧に供しなければならない。」
(2) 情報公開請求に至る経緯
  ア 福井県男女共同参画審議会は,地方自治法138条の4第3項に基づき
   制定された福井県男女共同参画推進条例(平成14年10月11日福井県
   条例第59号。以下「本件男女共同参画推進条例」という。)上の機関で
   あり,福井県知事は,被告が実施する男女共同参画の推進に関する施策等
   について県民等から苦情等の申出があり,同申出の処理に当たり特に必要
   があると認めるときは,福井県男女共同参画審議会の意見を聴くものとさ
   れている(本件男女共同参画推進条例21条2項,3項。甲4)。
  イ 男女共同参画推進のための拠点施設である福井県生活学習館には,ジェ
   ンダーに関係する図書153冊が設置されていたところ,平成18年3月
   下旬に,これらが開架書架から同館2階事務室に移されたという出来事
   (以下「本件図書の移動」という。)が起こった。選定者らは,福井県知
   事に対し,本件図書の移動に関するすべての文書の公開を求めたところ,
   福井県知事は,書籍リストを非公開,関連文書は不存在とするなど一部公
   開決定をした(なお,同決定後,非公開部分を一部公開するなど処分内容
   の変更がなされた。)。さらに選定者らは,福井県知事に対し,上記書籍
   リストの公開を求めたところ,福井県知事は,一部公開決定をした(なお,
   同決定後,非開示部分をすべて公開するという処分内容の変更がなされ
   た。)。
    選定者らは,平成18年8月29日,本件図書の移動等に関し,本件男
   女共同参画推進条例21条2項に基づき苦情の申出を行ったところ,同年
   11月2日,上記申出等を議題とする福井県男女共同参画審議会が開催さ
   れた(以下「本件審議会」という。)。福井県総務部男女参画・県民活動
   課の職員は,本件審議会の会議録作成のため審議内容をミニディスクに録
   音した(以下「本件音声記録」という。)。
  ウ 選定者らは,平成18年11月6日,福井県知事に対し,「平成18年
   11月2日開催の福井県男女共同参画審議会の会議の記録(電礎的データ
   ・テープなど)」の公開を求めたところ(以下「本件情報公開請求」とい
  う。),福井県知事は,同月20日,公文書不存在を理由として公開しな
  い旨の決定(以下「本件非公開決定」という。)をした(乙1,2)。
   なお,本件音声記録は,本件情報公開請求時には消去されておらず存在
  しており,その後も消去されていない。
   選定者らは,平成18年11月21日,本件非公開決定を不服として異
  議申立てをし,福井県知事は,平成19年1月18日,福井県公文書公開
  審査会に対し,上記異議申立てにつき諮問した。
   選定者らは,上記審査会による上記異議申立て対する判断がなされる前
  である平成19年2月17日に,本件非公開決定を巡る紛争の速やかな解
  決を求め,原告は選定者らの選定当事者として本件訴訟を提起した。
2 争点
  本件音声記録は,実施機関である福井県知事が「管理」している文書か(本
 件情報公開条例2条2項。以下,特にことわらない限り,「管理」とは,同項
 のものをいうものとする。)。
3 争点に関する当事者の主張
(原告の主張)
(1)ア 本件情報公開条例は,「公文書」について,「・・・実施機関が管理してい
   るもの」と定義しているところ,文言上このような定義付けがなされてい
   る場合には,役所にあるすべてのものが公開対象となると解される。
    被告職員が本件音声記録を保存している事実が認められれば,「管理」
   に該当するというべきである。本件音声記録は,被告の公費で購入された
   事務用の電磁的記録媒体に記録され,組織として管理されている職員共用
   の保存場所で保存されており,仮に会議録作成前に同音声記録が破棄又は
   削除されれば会議録の作成が困難になるのであるから,「管理」に該当す
   るのは明白である。
  イ 本件審議会が真実どのような内容であったかを正確に把握するには,そ
   の会議録と本件音声記録との照合が不可欠であるので,同記録は本件審議
   会の会議録と一体となるものとして保存されるべきものである。
    したがって,本件音声記録は,会議録作成後も慎重に管理されるべきで
   あるし,安易にこれを消去するようなことは許されない。また,会議録作
   成前の音声記録が「公文書」に該当しないというためには,本件情報公開
   条例又は同規則に「会議録を作成するための音声記録は『公文書』から除
   く」旨の明文の規定が必要である。
  ウ 実施機関が当該文書を「管理」しているか判断するに際しては,公開請
   求時に当該文書が存在することが重要であり,将来的に当該文書の破棄,
   消去が予定されているかを考慮すべきでない。これは,判例(最高裁判所
   平成14年2月28日第一小法廷判決(平成9年(行ツ)第136号。)
   以下「平成14年判決」という。)からも明らかである。
  エ 岐阜県情報公開条例は,「公文書」の意義につき,本件情報公開条例と
   類似した規定を置くものであるところ,岐阜県情報公開条例に基づき情報
   公開請求がなされ,同条例のいう「実施機関が管理しているもの」の解釈
   が争われた事案において,最高裁判所は,当該文書の公開を命じた高等裁
   判所の判断を維持している(最高裁判所平成17年9月13日第三小法廷
   決定(平成16年(行ツ)努89号,平成16年(行ヒ)第92号。)以
   下「平成17年決定」という。)。
(2)被告は,本件音声記録を私的な備忘であるなどと主張するが,同音声記録
  は,公的会議である本件審議会の内容を録音したものであり,担当職員の思
  想や信条等といった当該担当職員の着想や思考過程を記録したものではない
  ので,私的な備忘とはいえない。また,被告の引用する福井県情報公開条例
  の解釈運用基準(平成12年6月23日付け総務部長通達,平成18年4月
  1日最終改正。以下「本件解釈運用基準」という。)の規定そのものが,本
  件情報公開条例の解釈を誤ったものであるので,被告の主張には理由がない。
(3) したがって,本件音声記録は,実施機関である福井県知事により「管理」
   されており「公文書」であるといえるので,これを公開しない本件非公開決
   定は,違法である。
(被告の主張)
(1) 公務遂行の過程で作成される文書には,組織として管理するもの以外にも,
   事案解決のためのヒアリング資料の草稿,備忘的メモ,担当職員の検討段階
   中の文書等,多種多様なものが存在する。これらの文書をすべて「公文書」
   と扱うならば,県庁舎及び出先機関の庁舎内に存在するこれらの膨大な量の
   文書は,書き損じたものを除いて一切廃棄できないことになるばかりか,公
   文書の公開請求に迅速に対応するため,どのような文書が,どこに保管保存
   されているかを実施機関が明らかにしておかねばならない義務が生ずること
   になるが,これは事務処理上も,保管スペースという物理的側面からも不可
   能あるいは著しく困難であり,必ずしも公文書公開の円滑かつ適正な実施及
   び公文書の公開に係る県民の権利を保障することに資することにもならない。
    したがって,公務遂行の過程で作成される文書であっても,担当職員の備
   忘的メモ等は本件情報公開条例上の「公文書」に該当しないというべきであ
   る。本件解釈運用基準が,「『当該実施機関が管理しているもの』とは,作
   成または取得に関与した職員個人が保有している段階のものではなく,実施
   機関が業務上の必要から組織として管理している状態にあるものをいう。し
   たがって,職員が自己の職務の便宜のために保有する正式文書と重複する当
   該文書の写しや職員の個人的な検討段階にとどまる資料等は,これに当たら
   ないものである。」としているのは,このような趣旨である。
(2) 本件審議会の会議録について委員の発言内容の要旨のみを記載することは,
   何ら福井県知事の裁量権を逸脱もしくは濫用するものではなく,決裁を受け
   た会議録自体を保管・管理することで会議録作成という目的は達成されるの
   であるから,会議録作成後に備忘的に録音した音声記録を適宜廃棄又は消去
   する扱いも福井県知事の裁量権を濫用又は逸脱した違法な行為であるとはい
   えない。
    本件音声記録は,実施機関が「管理」する必要のないものであるので,本
   件解釈運用基準のいう「実施機関が業務上の必要から組織として管理してい
   る状態にあるもの」に該当しないことは明らかであり,「公文書」には該当
   しない。
第3 争点に対する判断
1(1) 前記前提事実,括弧内に記載した証拠及び弁論の全趣旨によれば,次の事
    実が認められる。
    ア 福井県男女共同参画審議会に係る会議録の作成の担当部署は,福井県男
     女参画・県民活動課であるところ,平成15年3月11日以降,本件審議
     会を含め福井県男女共同参画審議会が合計9回開催されており,いずれに
     ついてもその審議内容を要約した会議録が作成されている(甲5,19の
     1ないし5,20の1ないし8,乙3)。
   イ 本件音声記録の記録媒体であるミニディスクは10枚セットで販売され
    ており,被告によって購入されたあと,消耗品の保管棚に置かれ,各職員
    が適宜に保管棚から1枚ずつ取り出して利用しており,利用後は各職員が
    各自の机の中などに個々に保管し,利用後に再び共用の保管場所に戻すと
    いうことはない。担当職員が,男女共同参画審議会の会議録作成のため,
    その審議内容をミニディスクに録音した場合,同会議録の作成が完了した
    後に適宜,担当職員の判断で録音内容の消去が行われていた(弁論の全趣
    旨)。
 (2) 男女共同参画審議会の会議録の決裁の際に,決裁権者による審議内容を録
    音した音声記録と作成された会議録との照合が行われたり,審議内容の録音
   から消去までの間に,音声記録が他の職員により利用されたことなどの事実
   を認めるに足りる証拠はない。また,福井県男女参画・県民活動課内におい
   て,本件音声記録の保管事務手続についての実施要領等が定められていたこ
   とを認めるに足りる証拠もない。
(3) 本件情報公開条例は,公文書の公開を請求する権利の内容を明らかにする
   とともに,公文書の公開手続その他必要な事項を定めることにより,県民の
   県政参加の一層の推進及び県政の公正な運営の確保を図り,もって地方自治
   の本旨に基づいた県政の推進に資することを目的とし(本件情報公開条例1
   条),実施機関は,同条例に基づく公文書の公開を請求する権利が十分保障
   されるように同条例を解釈,運用するものと定めている(同条例3条。甲1,
   乙4)。
    このように,本件情報公開条例の定める公文書公開請求権は,同条例によ
   って具体的権利性を認められたものであるので,その解釈にあたっては,同
   条例の目的,解釈及び運用等を考慮して,当該規定の意味するところを合理
   的に解釈すべきである。
(4) 本件情報公開条例は,公開の対象となる公文書を「実施機関の職員が職務
   上作成し,または取得した文書,図画および電磁的記録(電子的方式,磁気的
   方式その他人の知覚によっては認識することができない方式で作られた記録
   をいう。以下同じ。)であって,当該実施機関が管理しているもの」と定めて
   いるものであり,「公」文書の要件として,@当該実施機関の職員が,職務
   上作成又は取得したこと及びA当該実施機関が「管理」していることを挙げ
   ている。
    本件情報公開条例は,地方自治の本旨に基づいた県政を推進するため,被
   告の諸活動の状況を説明する責務を全うする必要があり,かかる県民に対す
   る説明責任を果たすという見地から制定されたものであること(本件情報公
   開条例前文。甲1,乙4)及び前記前提事実で認定した同条例の目的からす
   れば,上記@Aの要件は,被告が組織体として把握する情報を説明責任の対 
   象とし,当該実施機関が当該文書の公開につき県民に対して公的に責任を負
   うことができる文書を公開する趣旨で設けられているものと解される。
    本件解釈運用基準は,「『当該実施機関が管理しているもの』とは,作成
   または取得に関与した職員個人が保有している段階のものではなく,実施機
   関が業務上の必要から組織として管理している状態にあるものをいう。した
   がって,職員が自己の執務の便宜のために保有する正式文書と重視する当該
   文書の写しや職員の個人的な検討段階にとどまる資料等は,これに当たらな
   いものである。」「実施機関における具体的な文書等の管理は,福井県文書
   規程…等,それぞれの実施機関が定める文書等の管理に関する規程等…の定
   めるところにより行われるものである。」(乙4)としているが,これは上
   記趣旨によるものであると解されるし,公文書の管理に関する規定である本
   件情報公開条例31条2項においても,文書規程等にしたがった管理がなさ
   れることが予定されている。
    以上からすれば,本件情報公開条例にいう「管理」とは,当該文書を当該
   実施機関が現実に支配,管理していることを意味するものと解すべきであり,
   「管理」該当性の判断にあたっては,実施機関における当該文書の保存の根
   拠規定,保存に至る手続,保存の方法等の実態について検討すべきである
   (最高裁判所平成13年12月14日第二小法廷判決。判例時報1772号
   37寅参照。以下「平成13年判決」という。)。
(5) 「管理」に係る原告の主張の要旨は,公費により購入された記録媒体に記
   録する方法で職務の遂行上作成され,また職務上使用されている電磁的記録
   が,実施機関の施設(県庁舎等)において保管されているという事実状態を
   もって,実施機関が,組織として上記電磁的記録を「管理」しているという
   べきであるというものである。
    しかしながら,実施機関において事実上保管されているすべての文書が公
   開の対象となると解すると,未整理の情報についても公開の対象となるなど,
   かえって県政の公正な運営の確保を図るという本件情報公開条例の目的が阻
   害されるので,原告の主張を採用することはできない。
(6)ア 以上を前提に本件についてみるに,本件音声記録は,実施機関の職員で
    ある福井県総務部男女参画・県民活動課の担当職員が,本件審議会の会議
    録を作成する補助手段として同審議会の審議内容を録音したものであるか
    ら上記@の要件を満たすといえ,被告もこの点を争うものではない。
     しかしながら,上記(1),(2)によれば,本件審議会の会議録はその要約が
    作成されており,本件音声記録については保管事務手続の実施要領等の定
    めがあるとはいえず,本件審議会の会議録が作成されたあとは,担当職員
    によって同記録の内容の消去が予定されていたのであり,記録の整理,保
    管,保存及び廃棄について,同記録が,文書規程等の規定に準じて取り扱
    うこととされていたものとは認められない。本件では会議録作成途中に本
    件情報公開請求がなされたため,同会議録完成後も同記録の内容が消去さ
    れていないにすぎず,実施機関において文書規程等に基づいて保管されて
    いると評価されるものではない。
     これらの事実からすれば,本件音声記録は,担当職員が同会議録作成の
    ための備忘として録音して所持していたものに過ぎず,実施機関において
    「管理」している文書であるとはいえないので,上記Aの要件をみたさな
    い。    
   イ 原告の引用に係る平成14年判決は,実施機関により非公開とされた公
    文書が公文書非公開決定取消訴訟において書証として提出された場合に訴
    えの利益が失われるかが争われた事案であり,本件とは争点が異なるので
    その援用は妥当でない。
     かえって,情報公開条例上の「実施機関が管理している」の意義につい
    て判示した平成13年判決によれば,「実施機関が管理している」か否か
    判断するに際しては実施機関における保存の実態等を考慮すべきであると
    しているのだから,「管理」該当性の判断に際しては,当該文書が作成又
   は取得されたあとに破棄,消去等が予定されているものなのか,それとも
   保存が予定されているものなのかを考慮する必要があるといえる。また,
   当該文書を将来的に破棄,消去等することの当不当は「管理」の要件の判
   断の際に考慮すべき事情であるとは解されない。
  ウ 原告の引用に係る平成17年決定は,公開請求の対象とされた文書が実
   施機関の執務室等に事実上置かれていたものの,当該文書を職務上作成し,
   又は取得した委員会そのものは実施機関ではなかったので,同委員会と実
   施機関とが実質的に同一であるか否か(これが認められれば,当該文書は,
   実施機関が職務上作成し,又は取得した文書であって実施機関が管理して
   いる文書であると解されることとなる。)が争われたという事案である。
   同事案においては,当該文書の管理の点について,行政管理室長による各
   (部)主管課長等宛通知にて,委員会解散後も議会,県民に説明できるよ
   う整理しておくこと,当該文書の整理,保管,保存及び廃棄は,公文書規程
   の規定に準じて取り扱つかうこととされていたとの事実が認定されてお
   り,同事案と本件とは文書の保存の実態に関する事実関係が明らかに異な
   るので,その援用は妥当でない。
  エ したがって,本件音声記録は,実施機関である福井県知事において「管
   理」している文書であるとはいえず,本件情報公開条例にいう「公文書」
   には該当しない。
    よって公開の対象となる公文書が不存在であるとした本件非公開決定は
   適法である。
2 結論
  以上によれば,原告の請求は理由がないからいずれも棄却することとし,訴
 訟費用の負担について行政事件訴訟法7条,民事訴訟法61条を適用して,主
 文のとおり判決する。

          福井地方裁判所民事第2部
裁判長裁判官     小  林  克 美
裁判官     池  上  尚 子
裁判官     中  嶋  万紀子


これは正本である。


平成20年1月30日


   福井地方裁判所民事第2部

      裁判所書記官  中 西 太 一  

                   1