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◆◆岐阜市長選挙違反調査文書非公開取消訴訟。
03年5月29日 名古屋高裁民事3部判決《判示事項の要旨》
情報公開条例に基づく@市長選挙における選挙違反に関する調査について作成した文書等及びA市長選挙違反に関与した職員の懲戒及び任意処分の通知書類等の公文書等の開示請求につき,控訴人がいずれも非公開とした処分について,@Aについては非公開処分を維持し,Bは団体に係る情報の非公開処分を取消した。
05年8月18日 最高裁第1小法廷は上告を棄却した
◎ 最高裁が2年で結論を出すのは異例(最近の情報公開訴訟は3年から5年程度)
後記の住民訴訟・文書提出命令のことが影響していると考えるのか合理的
◎本件上告後、「停職は,地方公務員法29条に定める懲戒処分の一つであって,職員が懲戒処分を受けたことは,公務遂行等に関して非違行為があったということを示すにとどまらず,公務員の立場を離れた個人としての評価をも低下させる性質を有する情報というべきであるから,私事に関する情報の面を含むものということができる」(最高裁平成15年11月21日判決/平成12年(行ヒ)第334号)とされた。
これからすれば、「棄却」は自明であった。
【原告側のコメント】岐阜市が職員の内輪のことになると非公開体質が極めて高くなる、ということは椿洞・産廃不法投棄事件でも相変わらずである。
時代に即して、情報公開に努めて欲しい。
◆別件で本命の住民訴訟(岐阜市民・別処雅樹さんが選定当事者)
岐阜地裁は棄却で、現在、名古屋高裁で継続中。
@ この訴訟中、文書提出命令の申立に関して、2005年6月3日付け名古屋高等裁判所民事第3部は棄却「決定」した。その要点は後述する。
A 2005年6月9日付けで「抗告許可申立」(民事訴訟法の新しい制度)提出
B 同7月13日付けで抗告許可申立に対して同民事第3部は、抗告を許可すると「決定」C 最高裁第 小法廷は
@のA 文書提出命令申立対象文書が訴訟で必要か
高裁判断→「基本事件の中心的争点は,岐阜市の職員が勤務時間中に選挙運動に関与し,あるいは選挙違反に関する事情聴取を受けることによって1か月に30分を越えて勤務をしない時間があったか否かであるところ,勤務をしなかった時間の有無を解明すべき当事者が誰であるかについての情報は,控訴人には限られたものしかなく,その大部分は相手方岐阜市長の側にのみ存在していることからすると,各文書について証拠調べの必要性がないとまでは言えない。」
@のB 訴訟で引用した文書としての提出義務(民訴法第220条第1号)に当たるか
当事者が引用した文書につきその当事者に提出義務を課した趣旨は、当該文書を所持する当事者が、裁判所に対し、その文書自体を提出することなく、その存在及び内容を積極的に申立てることにより、自己の主張が真実であるとの心証を一方的に形成させる危険を避け、当事者間の公平をはかって、その文書を開示し、相手方の批判にさらすべきであるという点にある。
高裁判断→「被告個人は所持していない。被告岐阜市は積極的に引用していない。よって、該当しない。」
@のC 民訴法220条4号ロ該当性
高裁判断→「その各処分の対象となった者とその処分内容が明らかにされることは,当事者間の信頼関係を損ね,指導監督との効果を失わせるおそれのみならず,上記各処分の前提となる事実関係の調査等への任意の協力が得られないなどの事態を招来することも想定され,今後の同種事務(公務)の円滑な遂行に著しい支障を生じさせるおそれがある。」 「職員に対する最終的な処分に至る過程における意見を公開することは,将来,同種の人事管理に係る事務の公正又は円滑な執行に支障を生じさせ,岐阜 市における自由で公正な意思形成を阻害するおそれがあるなど,公務の遂行に著しい支障を生ずるおそれがある」
こちらの反論→「仮に情報公開条例で上記のことが言えたとしても、民事訴訟法の改正主旨からすれば、文書提出による支障は具体的かつ厳密でなければならないところ、相手方は何ら具体的に述べておらず、原決定は、根拠なく除外事由を認定したもので、原決定は、法令の解釈を誤る違法がある。よって、したがって,民訴法220条4号ロの除外事由はないから原決定は取り消されるべきである。」
@のD ロの除外事由に関して、行政情報公開制度との比較
民事訴訟法の一部を改正する法律(2001年6月27日成立)の政府の提案理由は「民事訴訟における証拠収集手続の一層の充実を図るため、公務員又は公務員であった者がその職務に関し保管し、又は所持する文書に係る文書提出命令について、私文書の場合においても提出義務が除外されている文書のほか、その提出により公共の利益を害し、又は公務の遂行に著しい支障を生ずるおそれがある文書等を除いて、文書提出義務があるものとする」であり、「法律の220条4号のロの除外事由に関して、行政情報公開法による開示の範囲と、公文書に対する文書提出命令による提出が命ぜられる範囲を比較すると、民事訴訟法の方が提出される文書が広くなる」と答弁されている。
・情報公開条例の規定とは異なること
自治体の情報公開条例で「公務」「職務遂行」などの情報に非公開事由を設ける場合がある。本件の岐阜市も同様である。
しかし、文書提出命令における「公務員の職務=公務」「職務上の=職務遂行」「公務の遂行=職務遂行」とは、情報公開条例の規定と同列視して判断するのでなく、地方公務員法など職務の基本を定める法令によらなければならないのは言うまでもない。