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情報公開訴訟の概要と今後の予測やコメントのページ


◆◆岐阜市長選挙違反調査文書非公開取消訴訟について、

最高裁第2小法廷は2005年8月18日付けで

原告側の上告を棄却しました。


◆第1 岐阜市長選挙での市職員の違法な選挙運動問題の経過


1, 2001年1月28日投票の岐阜市長選挙に関して、2月13日に岐阜市環境部リサイクル推進課長が県警に逮捕された(3月6日/罰金刑20万円))ことで、岐阜市の自治体職員が「その地位を利用して現職市長を当選させる目的をもって各種の選挙(事前)運動を行っていた」ということが発覚した。続いて、幹部らが逮捕などされた。
 3月10日に環境部次長逮捕(3月30日/罰金刑30万円)、3月13日に市長室参与兼秘書課長逮捕(4月25日/罰金刑50万円)、4月3日に(当時の)市長室長が逮捕された(4月25日/禁固1年)。ほかに、税務部長・土木部長・農林部長・水道部長を4月24日に書類送検(4月25日/起訴猶予処分)した。

2, 本件市長選挙における事前運動は2000年途中より2001年1月20日まで、選挙運動は2001年1月21日以降である。
 行為の行われた主たる場所は、岐阜市役所内の各所である。
 職員らが行った主な行為の内容は、「紹介者カードを市役所内などで配布しその記入、提出を暗に求めた。もって選挙対策用の各種名簿の作成等につとめた」「市役所内の選挙体制についての調整や、職員らの選挙対策運動の調整」「後援会(選挙)事務所への職員の動員等」「電話掛けの依頼」「職員の家族への電話掛けや事務所への顔出し・当番要請」その他の選挙のための諸々の準備と調整などである、とされている(各種報道)。また、紹介者カードや各種文書等の印刷に市役所内の印刷機を用いた、とも指摘されている。  なお、「市と関係する外部団体への職務関係を前提にする当選のための働きかけ」も、リサイクル推進課長、環境部次長らの逮捕理由とされている。
 前市長室長は、今回の現職市長の選挙対策の中心人物であり、役所の内部ではもっとも強い権限を有していたとされる。市長室長を筆頭に部長らが、勤務時間中に庁舎内で入会カードを職員らに配布したものである。職員は、昇進や配置等人事への悪影響を心配して、応じたものも多かった。
 このように、岐阜市としての組織的背景が歴然としている。

3, 紹介者カード合計1万枚のうち、約1000枚が市の職員の提出したもので、カードの性質からして当該職員の氏名が記入されていることから、県警は、このカードをもとに環境部(本庁)や税務部の職員のほとんどと、大半の市の幹部から事情聴取した。

◆◆岐阜市長選挙違反調査文書非公開取消訴訟。
◎03年5月29日 名古屋高裁民事3部判決《判示事項の要旨》
 情報公開条例に基づく@市長選挙における選挙違反に関する調査について作成した文書等及びA市長選挙違反に関与した職員の懲戒及び任意処分の通知書類等の公文書等の開示請求につき,控訴人がいずれも非公開とした処分について,@Aについては非公開処分を維持し,Bは団体に係る情報の非公開処分を取消した。

◎05年8月18日 最高裁第2小法廷は原告側の上告を棄却した
【原告側のコメント】
◇ 最高裁が2年で結論を出すのは異例(最近の情報公開訴訟は3年から5年程度)。  後記の住民訴訟・文書提出命令のことが影響していると考えるべきかもしれない
◇本件上告後、他県の事例で、「停職は,地方公務員法29条に定める懲戒処分の一つであって,職員が懲戒処分を受けたことは,公務遂行等に関して非違行為があったということを示すにとどまらず,公務員の立場を離れた個人としての評価をも低下させる性質を有する情報というべきであるから,私事に関する情報の面を含むものということができる」(最高裁平成15年11月21日判決/平成12年(行ヒ)第334号)とされた。
 これからすれば、「棄却」は予想されていた。
◇岐阜市が職員の内輪のことになると非公開体質が極めて高くなる、ということは椿洞・産廃不法投棄事件でも相変わらずである。時代に即して、情報公開に努めて欲しい。

◆この選挙違反問題に対する本命は、違反職員給与返還の別件・住民訴訟です(岐阜市民・別処雅樹さんが選定当事者)。
 岐阜地裁は棄却で、現在、名古屋高裁で継続中。
 2001年に法律改正されて、「役所の公文書を裁判に提出要求できる制度が作られた」原告は、当該文書を明らかにさせるためにこの制度を利用しています。
@ この訴訟中、情報公開訴訟とほぼ同一の文書に関して、文書提出命令の申立に関して、2005年6月3日付け名古屋高等裁判所民事第3部は棄却「決定」した。
A 2005年6月9日付けで「抗告許可申立」(民事訴訟法の新しい制度)提出
B 同7月13日付けで抗告許可申立に対して同民事第3部は、抗告を許可すると「決定」
C 最高裁第1小法廷の同8月9日付け「記録到着通知書(平成17年(行フ)第5号」

◆◆今回の情報公開棄却から今後の最高裁の判断として予測されること


 ×情報公開棄却判決に寄りかかって、文書提出命令の申立も棄却する
   →最高裁の閉鎖性があらわになる
 〇情報公開棄却判決にもかかわらず、民訴法220条4号ロ文書提出命令申立を認める
   →情報公開と文書提出命令申立の領域の線引きが明らかになる
 〇情報公開棄却判決に関係なく、民訴法220条1号引用文書として提出義務を認める

@決定の要点

 A 文書提出命令申立対象文書が訴訟で必要か
  高裁判断→「基本事件の中心的争点は,岐阜市の職員が勤務時間中に選挙運動に関与し,あるいは選挙違反に関する事情聴取を受けることによって1か月に30分を越えて勤務をしない時間があったか否かであるところ,勤務をしなかった時間の有無を解明すべき当事者が誰であるかについての情報は,控訴人には限られたものしかなく,その大部分は相手方岐阜市長の側にのみ存在していることからすると,各文書について証拠調べの必要性がないとまでは言えない。」

 B 訴訟で引用した文書としての提出義務(民訴法第220条第1号)に当たるか
 高裁判断→「被告個人は所持していない。被告岐阜市は積極的に引用していない。よって、該当しない。」

 C 民訴法220条4号ロ該当性
 高裁判断→「その各処分の対象となった者とその処分内容が明らかにされることは,当事者間の信頼関係を損ね,指導監督との効果を失わせるおそれのみならず,上記各処分の前提となる事実関係の調査等への任意の協力が得られないなどの事態を招来することも想定され,今後の同種事務(公務)の円滑な遂行に著しい支障を生じさせるおそれがある。」 
 「職員に対する最終的な処分に至る過程における意見を公開することは,将来,同種の人事管理に係る事務の公正又は円滑な執行に支障を生じさせ,岐阜市における自由で公正な意思形成を阻害するおそれがあるなど,公務の遂行に著しい支障を生ずるおそれがある」
 こちらの反論→ ロの除外事由に関して、行政情報公開制度との比較
 民事訴訟法の一部を改正する法律(2001年6月27日成立)の政府の提案理由は「民事訴訟における証拠収集手続の一層の充実を図るため、公務員又は公務員であった者がその職務に関し保管し、又は所持する文書に係る文書提出命令について、私文書の場合においても提出義務が除外されている文書のほか、その提出により公共の利益を害し、又は公務の遂行に著しい支障を生ずるおそれがある文書等を除いて、文書提出義務があるものとする」であり、「法律の220条4号のロの除外事由に関して、行政情報公開法による開示の範囲と、公文書に対する文書提出命令による提出が命ぜられる範囲を比較すると、民事訴訟法の方が提出される文書が広くなる」と答弁されている。
                                    以 上