平成22年(行ウ)第5号 行政委員月額報酬支出差止等住民訴訟 原 告;寺 町 知 正 他 被 告;岐 阜 県 知 事 訴   状 岐阜地方裁判所 御 中 2010年4月26日 上記原告ら訴訟代理人 弁 護 士   安  藤  友  人  同     鷲  見  和  人  同     大  澤     愛  同     末  松  実  紗  同     河  合  良  房  同     見 田 村  勇  磨  同     御 子 柴    慎  同     山  田  秀  樹  同     小  林  明  人  同     笹  田  参  三  同     綴  喜  秀  光  同     小  山     哲    訴訟物の価額 算定不能(160万円) 貼用印紙額  金1万3000円 【 当 事 者 の 表 示 】  原 告  別紙原告目録及び別紙原告代理人目録記載のとおり  被 告  岐阜市薮田南2丁目1番1号(〒500-8570)         岐 阜 県 知 事   古  田    肇 【 請 求 の 趣 旨 】 1 被告は、岐阜県教育委員会の委員、岐阜県選挙管理委員会の委員、岐阜県人事委員会の委員、岐阜県公安委員会の委員、岐阜県労働委員会の委員及び岐阜県収用委員会の委員に対し、別紙月額報酬等目録の月額報酬欄記載の月額報酬を支出してはならない。 2 被告は、別紙月額報酬等目録の委員氏名欄記載の者に対し、同目録の支給額合計欄記載の各金員を支払うよう請求せよ。 3 訴訟費用は、被告の負担とする。  との判決を求める。 【 請 求 の 原 因 】 第1 当事者 1 原告らは、岐阜県の住民である。 2 被告は、岐阜県の知事であり、教育委員会、選挙管理委員会、人事委員会、公安員会、労働委員会及び収用委員会の各委員(以下「本件委員ら」という。)に対して報酬を支給する権原を有している。 3 原告らが被告に対し、不当利得返還請求を求める本件委員らは、別紙月額報酬等目録の委員氏名欄記載の者であり、いずれも岐阜県の非常勤の職員であり、地方公務員法上の特別職としての身分を有する(同法3条3項2号、地方自治法180条の5第5項)。 第2 公金支出  上記本件委員らに対しては、岐阜県各種委員等給与条例第2条に基づいて、報酬が支払われている。そのうち、2009(平成21)年2月〜2010(平成22)年4月になされた報酬としての公金支出は、別紙月額報酬等目録の支給額合計欄記載の通りである。 第3 公金支出の違法性と差止請求 1 上記公金支出は、岐阜県各種委員等給与条例第2条に基づいてなされているところ、同条は、特別職である教育委員会、選挙管理委員会、人事委員会、公安委員会、労働委員会及び収用委員会の各委員(以下「本件各委員」という。)の給与について、同条例別表記載の月額報酬を支給すると定めているが、この規定は、以下に述べるとおり、地方自治法203条の2第2項に違反して無効である(大津地裁平成21年1月22日判決・判例時報2051号40頁参照)。 2 地方自治法203条の2第1項は、「普通地方公共団体は、その委員会の委員、非常勤の監査委員その他の委員、自治紛争処理委員、審査会、審議会及び調査会等の委員その他の構成員、専門委員、投票管理者、開票管理者、選挙長、投票立会人、開票立会人及び選挙立会人その他普通地方公共団体の非常勤の職員(短時間勤務職員を除く。)に対し、報酬を支給しなければならない。 」と規定し、同条2項は、「前項の職員に対する報酬は、その勤務日数に応じてこれを支給する。ただし、条例で特別の定めをした場合は、この限りでない。 」と規定する。   上記地方自治法203条の2第2項本文の趣旨は、非常勤の職員に対する報酬は、生活給としての性格を有さず、純然たる勤務に対する反対給付としての性格のみを有するから、勤務量、具体的には勤務日数に応じてこれを支給すべきとしたものである。  そして、同項ただし書は、勤務の実態がほとんど常勤の職員と異ならず、常勤の職員と同様に月額ないし年額をもって支給することが合理的である場合や、勤務日数の実態を把握することが困難であり、月額等による以外に支給方法がない場合などの特別な場合について、条例の特別な定めにより、月額あるいは年額による報酬の支給を可能にしたものである。 3 本件各委員らの、2009(平成21)年度(2009年4月から2010年3月まで)における勤務実態は以下の通りである。 (1)教育委員会の委員   教育委員会の委員の主な職務は、次のとおりである。  @定例会への出席    13回開催された。  A会議及び行事への出席 (2)選挙管理委員会の委員   選挙管理委員会の委員の主な職務は、次のとおりである。  @定例会への出席    13回開催された。  A当選証書付与、会議出席、啓発活動など (3)人事委員会の委員   人事委員会の委員の主な職務は、次のとおりである。  @定例会への出席    23回開催された。  A会議出席、公平審査事案の検討など (4)公安委員会の委員   公安委員会の委員の主な職務は、次のとおりである。  @定例会への出席    34回開催された。  A会議及び行事への出席など (5)労働委員会の委員   労働委員会の委員の主な職務は、次のとおりである。  @定例会への出席    12回開催された。  A審査、あっせんなど (6)収用委員会の委員   収用委員会の委員の主な職務は、次のとおりである。  @定例会への出席    12回開催された。  A案件に関する審理、協議など 4 以上の本件各委員らの勤務実態は、常勤の職員とは全く異なるものであり、地方自治法203条の2第2項が、このような勤務実態を有する本件委員らに対し、勤務日数によらないで報酬を支給することを許しているものとは解されない。   したがって、本件岐阜県各種委員等給与条例第2条は、本件委員らの勤務実態を前提とする限り、地方自治法203条の2第2項の趣旨に違反するものとして、無効であるから、本件委員らに対して月額報酬を支給することは、地方自治法204条の2の規定に反し、違法である。 5 よって、被告に対し、岐阜県教育委員会の委員、岐阜県選挙管理委員会の委員、岐阜県人事委員会の委員、岐阜県公安委員会の委員、岐阜県労働委員会の委員及び岐阜県収用委員会の委員に対する別紙月額報酬等目録の月額報酬欄記載の月額報酬の支出の差止めを求めるものである。 第4 被告に対する履行請求(本件委員らに対する不当利得返還請求) 1 以上のとおり、本件委員らに対する報酬の支給は、違法な条例に基づくものであり、法律上の原因なき利得である。したがって、岐阜県は、本件委員らに対して、支給した報酬全額の不当利得返還請求権を有するというべきである。 2 もっとも、本件訴訟においては、原則として当該財務会計行為(報酬の支給)から1年以内に住民監査請求をすべきであるとする地方自治法第242条2項に基づき、本件監査請求がなされた2010(平成22)年2月12日より1年間遡った、2009(平成21)年2月13日から現在に至るまでの間に、本件委員らに対して支給された月額報酬の合計額についてのみ返還を求めることとした。その金額は、別紙月額報酬等目録の支給額合計欄記載の通りである。 第5 監査請求   原告らは、2010(平成22)年2月12日に、上記記載の違法な公金支出につき、岐阜県監査委員に対し、地方自治法242条1項に基づく監査請求を行ったところ、同年3月26日に、岐阜県監査委員は、原告らに対し、上記監査請求を却下する旨の通知を行った(甲第1号証)。 第6 結論   よって、請求の趣旨記載のとおりの判決を求めるため、本訴に及んだ。 (別紙)原告目録  〃  原告代理人目録  〃  月額報酬等目録          【 証 拠 方 法 】  甲第1号証   住民監査請求に関する通知            【 添 付 書 類 】 1 委任状           通 2 甲号証写し     正副各1通 - 1 -