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●梶原拓前岐阜県知事の個人秘書・諸経費・公費負担問題のページ/イベント・スポーツ振興事業団


  前知事の個人秘書業務の公費負担に関する住民監査請求書
              (岐阜県職員措置請求書)
第1 請求の趣旨
1. 概要
 請求人らが知るところおよび報道等(第8号証)によれば以下のとおりである。
 (1) 県の外郭団体「岐阜県イベント・スポーツ振興事業団」に関して、梶原拓前知事は知事在任中から会長職にあったが、2005年2月の知事退任後、改めて非常勤の会長(無報酬)に就任した。県の裏金問題で公職からの離職を勧告されたことで、会長を辞すまでの05年3月から06年9月6日の間、当職を務めた。
 梶原前知事に同事業団の会長としての業務はほとんどなかったとされる。同事業団側には、書類上、梶原前知事の出勤の記録も執務の記録も、一切保存されていない。
 
 (2) 岐阜県職員Aは、2000年度まで知事部局B課、01年度〜03年度は知事の秘書課、04年度はC課に所属した。05年3月、C課に1年在籍しただけの途中で、知事を任命権者とする知事部局から同事業団を所管する教育委員会に異動、直ちに、任命権者の教育長から同事業団に出向を命じられた。
 
2. 個人秘書業務の実態
 職員は05年度06年度、事業団の業務と関係ない梶原前知事個人の出張の大半に随行し、講演やイベント出席の日程調整や連絡窓口を担当するなど、梶原前知事の実質的な個人秘書だった。
 梶原前知事は、プロ野球有識者会議などのメンバーで東京出張が多く、職員は、同会議出席などの際にも随行した。中には企業や官公庁の幹部との懇談会やマスコミの個人取材など明らかに梶原前知事個人の活動もあった。
 職員は、愛・地球博(愛知万博)の内覧会や名古屋市内でした出張は05年3月だけで13回。同4月も18回、同5月は12回と、月10回以上は随行した。
 職員は、梶原前知事が出席した「プロ野球有識者会議」(東京都)へ5回、公共放送のあり方などを考える「デジタル時代のNHK懇談会」(同)へ14回随行した。

3. 私的組織「日本再生研究会」
 (1) 梶原前知事は、全国知事会長だったこともあり、各種懇談談に引っ張りだこで、職員が随行した懇談の相手は国土交通省や大企業の幹部、大学教授らそうそうたる顔ぶれだという。だが、いずれも県のスポーツ施設管理を業務とする事業団の会長職とは無縁な相手である。
 梶原前知事は05年5月、シンクタンク「日本再生研究会」を発足(第1及び2号証)、自ら代表に就任している。同研究会は05年6月にプロ野球や公共放送を考える会を設立している。
 いかに私的活動であるか、その一端を示す。
 
 (2)  プロ野球関係
 ◎2005年4月23日「プロ野球有識者会議の初会合 座長に梶原氏」の報道(第3号証)
 
 ◎2005年6月27日 日本再生研究会が「プロ野球を考える会」を設立(第4号証)
 ・・・プロ野球改革に市民の声を届ける有識者会議の諮問会として、「プロ野球を考える会(村瀬恒治座長)」が6月27日、岐阜市橋本町にて開催されました・・・

  (3) 放送関係
 ◎2005年6月27日 日本再生研究会が「公共放送を考える会」を設立(第5号証)
 ・・・議事進行を務めた梶原代表が「ニュース番組に使用される映像が、まいにち新宿や渋谷などで面白みがない。東京ばかりでなく、地方の画面や季節に応じた画面、たとえば紅葉シーズンならその時々の画面を映し出すなど工夫するよう提案したところ、NHKは即座に対応してくれた。委員の皆さんもより良い公共放送に向けて、様々な立場から意見、提案を出してほしい」と切り出しました。・・・
 
 ◎2005年6月30日 第1回「デジタル時代のNHK懇談会」
   資料をみればNHKの体質改善などの会議であることがわかる(第6号証)

 ◎その第1回会議への梶原氏の意見(第7号証)
・・・この懇談会は、視聴者の信頼を回復すべく、NHKの構造的・抜本的改革に取り組むべきです。従来型の「有識東京人会議」として、単なる番組の改善などで、お茶を濁す御用機関であれば全く意味がなく、そうであれば委員は辞退させていただきます。・・・

第2 本件支出
1. 旅費関係
 職員が随行した出張は、05年3月〜06年8月に計223回で、旅費総額は約283万円。梶原前知事の旅費は、主催者や同氏個人が負担した。
 
2. 人件費
 職員が随行した出張に関して、05年3月〜06年8月の期間中の勤務可能日数は実質300日程度であるから計223回の出張随行ということは、その事前の準備や調整、事後の用務の存在などを考えれば、ほとんどすべて、平日の事務室においても、「梶原個人秘書」であったというしかない。即ち、職員Aへの給与、期末手当、日当などのほか諸手当のほぼ全ては、「梶原個人秘書」としてのものというべきである。支給総額おおよそ600万円程度と思料される。
 職員Aに関して、職員個人への支給額の詳細は(従来の情報公開制度では)県民には開示されないから知ることが不可能であって、支出された仔細な額は、監査委員の認定に委ねる。
 請求人はその総額のうち約9割程度が「梶原個人秘書」相当分であると思料する。請求人は、執務時間及び執務内容の情報が無いゆえ前記「約9割程度」としたものであるから、監査委員の認定の合理的理由の存する限りの縮減は容認する。
 
第3 違法性と岐阜県の損害及び責任
1. 財源や支出の背景
 同事業団は、岐阜県のほぼ全額出資であり、毎年度の事業費は、岐阜県からの補助金と委託料でまかなわれている。毎年度、残余が生じた場合は、その全額は岐阜県に返還されるべきものである。生じた損害も精算されねばならない。
 補助金はその相手方の活動の公益性に着目して交付するものである(参照・地方自治法第232条の2「寄附又は補助」)ところ、当該補助金には個人秘書の人件費や経費を負担する目的は予定されていないし、そもそもそのような行為には公費補助の公益性がない。
 委託料であるなら、委託契約の中に「個人秘書経費」という項目が存在しなければならないが、そもそもそのようなことは事業団の業務になり得ない(参照・地方自治法第234条の2「契約の履行の確保」)

2. 梶原前知事の不当な利得
 梶原前知事は、本来は個人で負担すべき「個人秘書」の諸業務を、県あるいは事業団の公金及び職員をして賄わせたのだから、随行職員の出張経費と日常人件費相当を、「受益」(他人の財産または労務により利益を受けること)していることは不当利得である。
 即ち、梶原前知事は、職員Aの旅費支出約283万円は本来梶原前知事個人が負担すべきものであるから、梶原前知事は不当利得しているといえるし、損害賠償義務がある。

3. 違法性と損害
 本件においては、「個人秘書」としての出張経費支出と人件費支出は、支出の根拠を欠く違法なものであって、同事業団の損害である。
 不法行為によって生じた同事業団の損害について、全額を補助あるいは負担している岐阜県としては、岐阜県知事あるいは教育長が同事業団に損害賠償請求、もしくは(当時の)代表であった梶原前知事個人に対して不当利得返還請求もしくは損害賠償請求すべき義務を負う。
 同事業団が梶原前知事個人に対して同様の義務を負うともいえる。

4. 県職員らの責任
 任命権者である知事と教育長が合意の上で、梶原前知事に「個人秘書」を提供するために県職員を迂回配置したことには、故意または著しい過失がある。同配転処置を仕組んだ人事課も責任は重い。賠償義務の範疇に入る。
 知事及び教育長が返還・補填を実現させない場合は、知事及び教育長の財産の管理を怠る事実として違法である。その場合は、不法行為に基づく岐阜県の損害を放置するものとして、知事及び教育長が弁済すべきである。

5. 住民監査請求の状況
 本件、不法行為としての個人秘書業務への諸支出は秘密裏になされていたから、支出から1年を途過したことには正当な理由がある。
 不法行為に基づいて生じた県の損害に関して、損害を放置するという財産の管理を怠る時事については、期間制限がない。

第4 監査委員に求める措置
 本件は、任命権者らが合意して、前知事への不正な厚遇・公費負担を承知して人事をなし、事業団とは無関係なことに職員を労させ、給与や諸手当を支給し、出張旅費・日当を支給したものである。よって前知事や関係職員に措置するよう請求する。
 
1. 梶原拓前知事に対して、出張に随行した職員A(同種の行為を行った他の職員についても)に支給した随行の旅費・日当の諸経費の全て及び支給した給与・諸手当の9割を不当利得返還請求することもしくは損害賠償請求することの措置。
 
2. 前項の請求をしない場合、知事ら関係職員が賠償することの請求の措置。
                                     以上
第5 請求者  
  「くらし・しぜん・いのち 岐阜県民ネットワーク」  寺町知正 他28名

 以上、法第242条第1項により、事実証明書を添えて、必要な措置を請求します。

                              2006年10月2日
岐阜県監査委員 各位


             別紙事実証明書目録
第1及び2号証 梶原前知事が05年5月シンクタンク「日本再生研究会」を設立
第3号証 2005年4月23日 「プロ野球有識者会議の初会合 座長に梶原氏」の報道
第4号証 2005年6月27日 日本再生研究会が「プロ野球を考える会」を設立
第5号証 2005年6月27日 日本再生研究会が「公共放送を考える会」を設立
第6号証 2005年6月30日 第1回「デジタル時代のNHK懇談会」のレジメ
第7号証 同懇談会の第1回会議への梶原氏の意見
第8号証 報道記事
                                     以上

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