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                    2005年12月2日
岐阜県知事 古田肇様
                  岐阜県山県市西深瀬208-1
                    情報公開請求代表者 寺町知正

       公文書破棄・紛失に関する質問書


 1997年3月、各種イベントなどを行う「実行委員会」において県の裏金づくりが発覚しました。 私たちが詳細を調べようと情報公開請求したところ、岐阜県は、購入や飲食などの「請求書」「領収書」「明細書」などをすべて非公開としました。 私たちはこの処分に対し、情報非公開取消訴訟を提訴しました。
 私たちの提訴に対して、今年9月13日、最高裁で関係文書の公開が命令されました。 ところが、訴訟対象とした6つの実行委員会のうち2つについて、文書がないことが11月28日夕方、県担当部局から電話で伝えられ、文書の公開日が本日午後2時と決まりました。

 私たちは、6つの実行委員会のすべてについて当該文書を、97年の情報公開請求以来、一度も見たことがありません。 つまり、当該文書の法的手続きは、請求当時のまま止まっているということです。
 私たちが公開請求をし、訴訟の結果として公開が命じられた文書であるのに、当事者に公開していない段階での、県の一方的な発表は、情報公開の法的手続きをみずから踏みにじり、反故にするものです。
 県が一方的に公表することを知り、当日11月29日に抗議の意を声明しました。 私たちは職員の処分を新聞報道で知りました。 さらに私たちの抗議にもかかわらず、知事は12月1日の県議会において、公文書の紛失を説明し、謝罪したと報道されています。
 これらの事前公表および県議会への謝罪、職員処分は、一見いさぎよさそうでいて、少しでも体裁をとり繕おうとして、社会的批判をかわそうとする意図であることは明白です。
 司法で公開が確定した公文書を紛失したこと、および公文書の事前公表は、行政の法治主義の原則を著しく逸脱する行為で、けっして許されることではありません。
 わたしたちは、一連の県の対応に当事者として強く憤りを感じています。
 
 つきましては、岐阜県関連の実行委員会に関する文書の廃棄、紛失事件について、誠実な対応を求めるために、以下につき、明確な回答を求めます。

1. 謝罪のしかた、あり方について
 「岐阜県」が私たちに謝罪した旨が報道されています。県が29日の会見で「謝罪した」と説明したからに違いありません。 私に、副知事や局長から電話があったのは事実ですが、事実経過の説明はありませんでした。
 そもそも謝罪とは、「どうしてこのようなことが起こったかということを、そのことを行った当人らが当事者に直ちに説明し、当事者の質問にも充分に答え、当事者が本当の事実経過を説明していると納得できるものであること」、そのうえでの「謝意の表明」、このことを満たさなければ完結しません。
 例えば、全国で重大な問題となっている建物の構造審査における日本最大手の確認検査機関「日本ERI」の社長らが最近の記者会見で、「1年半前に他の会社から社員が指摘を受けた、しかし上司に伝えられなかった」旨を述べて弁解している様子が報道されています。 分かりやすくいえば、今回の岐阜県の上層部の対応、現時点までの対応はこの例と同じというしかありません。
 そもそも、今回のような事件は、あってはならないこと、あり得ないことで、謝罪して済ませる問題ではありません。
 かりに謝罪するにしても、不祥事の絶えない行政、岐阜県もそのレベルである以上、今後のためにも、謝罪のしかた、あり方を反省すべきです。

 @謝罪とは一方的に謝意を表せばよいと考えているのか否か。
 A知事は今回の件で、当事者に謝罪したと考えているのか否か。
B一方的に電話をして「謝罪した」とすることとした経緯と理由はどのようか。
 C現在において、先の11月28日・29日の私たちへの対応をどのように評価しているのか

2.公文書の公開より先に公表したことについて
 Dどのような判断で事前公表したのか。
 E請求者に公開する前に、いち早くマスコミに発表したのはなぜか。
 F請求者に公開する前に、県議会で説明し謝罪したのはなぜか。
G請求者に公開する前に、他に漏らすことは、情報公開制度の法的手続きに違反しているのではないか。

3. 事実経過の説明について
 今回の問題に関して、当事者である私たちは、県から具体的な事実経過の説明を受けていません。
 加えて、副知事らがどこまで担当職員から直接詳しく聞いているのかもわからない状況では、当事者は、謝罪の前提を満たされていないのですから、副知事や局長からの謝罪と受け取ることは到底不可能です。
 さらに、本日報道では、知事が議会で謝罪したとされています。
 当事者は一体だれなのか?
 とはいえ、こちらは、関係職員らに面会してどうこうしたいと望むものでもありません。
 
 H今回の「廃棄」「紛失」・・この事態をどう表現するにしろ、関係職員名・職責を明らかにしたうえで、そのものらが今日(こんにち)までの事実経過を時系列および各責任類型の一目瞭然とした書面にして、私たち当事者宛に交付すること。
 I岐阜県は、今後の同種の事態の再発防止に関して、その決意と対策を当事者に文書で示すこと(なお、これは情報公開条例や個人情報保護の規定の問題ではなく、県の公務における公務としての対応である)。
 

4.職員の処分について
 J知事は本件の事実経過をすべて知ったうえで、職員を処分したのか否か。
K今回の処分は、「トカゲの尻尾きり」ではないのか。
L当時疑惑をもたれた裏金づくりなどの文書が公表され、詳細な内容が明らかとなることを恐れ、だれかが故意に廃棄したとは考えなかったのか。
M その可能性について調べたのか。

5.行政訴訟における県の虚偽主張という行為について
 本件文書の実在に関して先般11月30日の新聞報道では、2001年1月には最終確認され、紛失に気づいたのは2003年4月だとされています。
 本件文書公開処分取消の行政訴訟は、2002年2月より名古屋高裁で控訴審の審理が行われ、9回目の2003年10月21日に結審しました。この間、2003年冬ころの審理において、高等裁判所から県に対して、「現在、当該対象文書がどのように扱われているかを主張するように」と要求がありました。
 岐阜県は、同年5月2日付け準備書面(5)において、同年5月1日撮影などとした同日提出の乙17号証および乙18号証を示して実際の保管状況を文書及び写真で説明しています。しかし、この書面において、「一部文書がみつからないこと」は主張されていません。
 即ち、裁判所も原審原告も、実在していることは当然かつ共通の認識として判決にいたっています。最高裁もしかりです。
 この、行政訴訟における行政機関の虚偽主張という行為は誰もが想定し得ないことです。三権分立の構造における司法審査の厳粛さそのものを行政機関が否定することです。
 しかも当該訴訟が「文書が存在するときのその管理権限の所在を争う訴訟」であるのに、文書保管者の県の虚偽主張という行為は信じられず、かつ許されないことです。

 N訴訟における虚偽の主張をすることをどう考えるのか。
O知事、副知事、局長、部長のそれぞれは、本件訴訟における上記虚偽主張があったことを把握して、今回の「廃棄」「紛失」事態を認識して対処したのか否か。
 P今後、訴訟等に臨むに当たって、どのようにしていくのか。
 
6. 最後に
 私たちは、県の違法な条例解釈により県民としての情報公開請求権を著しく侵害され、かつ、不要な時間と労力や経費を費やしました。
 さらに、本件訴訟を虚偽主張によりいたずらに引き延ばされ、あげく、当該公文書の紛失により、県の公務の適正を確保するために、地方自治法で住民に保障されている住民監査請求の権利すら奪われた可能性が高いと考えます。
 Qこれらのことについて、知事はどのように考えますか。

 以上につき、来る1月10日までに文書での回答を求めます。
  (岐阜県山県市西深瀬208-1  tel/fax 0581-22-4989)