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情報誌紙関係不正支出関連公文書公開拒否

処分取消訴訟 県側上告告棄却・最高裁決定!
                                05,6,16
くらし・しぜん・いのち 岐阜県民ネットワーク
事務局 寺町知正
    TEL・FAX 0581−22−4989
   
原告の全面勝訴が確定

 本日6月16日、最高裁第三小法廷より、標記事件に関して、県知事及び教育委員会の上告を棄却するとの14日付け決定が郵送されてきました。
 地裁では「領収書等に押された事業者の従業員の印影」以外は全てを公開するように、ということでほぼ全ての部分で勝訴しました。
 高裁では、完全に全面勝訴になり、県側が上告していたものです。

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 第一審 岐阜地裁の訴訟の経過
◆《提訴》98年6月3日(岐阜地裁民事二部・平成10年(行ウ)8号)
 《第一回口頭弁論》9月9日  《原告結審の上申書》99年5月12日
 《被告準備書面(6)》10月13日 《原告準備書面(5)》・10月14日    《結審》11月10日《判決》00年2月16日延期→4月5日延期→5月24日

◆原告 くらし・しぜん・いのち 岐阜県民ネットワーク の運営委員10名
◆被告 岐阜県知事・岐阜県教育委員会教育長の2名

◆目的 岐阜県が購読している紙誌名と支出の関連を知る。98年春までは、広報課の取りまとめによって各課に配分される購読しかない、との答弁であったが、98年5月15日の文書公開によって、別途各課が独自に、しかも広報課分よりはるかに多額の購読料支出をしていたことが判明した。「協賛金」や「広告料」名目でも支出しているなど、単なる購読を越えて資金援助と言わざるを得ない構造がうかがえるので、実態を明らかにし、もって癒着構造を修正したい。

◆内容 岐阜県の情報誌購読料(95〜97年)の支出金調書・領収書などの情報公開請求に対して、紙誌名、社名、代表者名等が非公開(部分公開)処分(5件)とされた。よって、処分の取消を求めて提訴した。県の公文書公開審査会に申立しても、2年半ほどかかることから実質的に意味がないので、直接提訴したもの。

◆ 情報誌紙購読料支出に関しては、先行して購読料返還請求の住民訴訟を起こし、地裁で03年12月8日、「知事ら職員個人が1000万円を返還、今後は(基本的に)一切購読しない」との旨で和解が成立しました。
  ◎平成10年(行ウ)4号・被告(知事)梶原ら職員9名に154万円の返還請求
  ◎平成10年(行ウ)18号・被告梶原ら職員32名に1691万円の返還請求

◆ 情報誌紙名の公開は上記の訴訟に決定的な影響を与えるもので、地裁裁判官らは、2年ほどは、情報公開訴訟についての最高裁判決が出るのを待って、休廷状態でした。しかし、民事訴訟法改正で、行政の公文書が、提出命令の対象となったことで、原告がどう申し立てし、03年6月30日に県に対して文書提出命令を決定しました。

岐阜地裁判決(00年5月24日)の要点
事件名 情報誌紙名等非公開取消  岐阜地裁民事二部 平成10年(行ウ)8号
提訴98年6月 3日  判決00年5月24日
被告 被告岐阜県知事梶原拓、被告岐阜県教育委員会教育長日比治男県知事
判決で命じた訴訟費用の負担 原告 1 : 県 9

《公開命令部分と理由》
 ◆法人事業者情報(岐阜県の条例の第6条4号)
   ◎債権者(出版社)の名称、店名、出版物名、住所、電話番号、代表者名、
   ◎債権者(出版社)の印影、金融機関名や口座番号
  ・・・・事業者に不利益や支障を生ずるおそれはないし、事業者は県が県の購入の実      態に限ってこれを公開することは忍受すべきこと。

 ◆請求の支出とそれ以外の支出とが合算された情報
・・・・請求された情報である      

《非公開を是認した部分と理由》
 ◆個人情報に関して(岐阜県の条例の第6条1号)
   ◎債権者(出版社)の従業員の印影
   ・・・・職業は個人に関する情報であり、個人を識別し得るため
 ◆上記非公開理由を訴訟の途中での追加・・・・追加は禁止されていないから可能

《地裁判決の概略》  00年5月24日言渡。
   主 文
「請求書等の取扱従業員の印影を除くその余の部分の文書の非公開決定部分を取り消す。」   理 由
1 本件条例6条4号該当性に関する判断
(1)@ 本件各公文書は、
(ア)諸新聞の購入ないし右新聞への広告掲載または協賛等のために支出した代金に関し岐阜県の出納事務担当者が作成した支出金調書、
(イ)諸新聞の発行者ないし販売店等が作成した請求書及び領収書であり、

Aそのうち本件各非公開部分には、
(a)発行者等の住所、社名、代表社名、印影、購入等の代金の振込先ないし振替先の口座番号等、発行者等自身に関する情報、
(b)購入等の代金の請求手続あるいは領収手続を担当した、発行者等の従業員の印影、(c)支払に係る諸新聞の紙名、月号、部数などが記載されているもの、
(d)一部の非公開部分には、支出命令額、控除額、支給額、事前決済未執行額、資金枠番号等が記載されている場合もあると認められるが、それ以上に、発行者等の営業上の有形・無形の秘密、ノウハウ等、同業者との対抗関係上、特に秘匿を要するような情報が記載されているとは認められない。
 また、本件公開請求で問題となっている諸新聞と類似の新聞中には、購入等の代金の振込先ないし振替先の口座番号を紙面に掲載しているものが相当数あるものと認められ、その事情は、本件の諸新聞において同様であると推認されるほか、本件各非公開部分に含まれる発行者の請求書等にも、右口座番号を記載したものが相当数あると認められる。

(2)右認定のとおり、本件非公開部分1ないし4、7には、発行者等の営業上の秘密やノウハウ等、同業者との対抗関係上、秘匿を要する情報が記録されているとは認められないうえ、右非公開部分が公開されたとしても、通常、岐阜県が諸新聞を購入等している状況や、発行者が一般の取引先に公開している振込先の口座番号等が明らかになるだけであるから、これから直ちに発行者等の営業実態が明らかになって、その営業上の秘密が侵されることになるとは認められない。
 また、岐阜県における諸新聞の購入等の事実が公開された場合に、特に発行者等が社会的評価の低下などの不利益を被る実態も容易に考え難い。したがって、右非公開部分の公開により、発行者等の競争上の地位その他正当な利益が損なわれるとは認められず、右本件非公開部分について、直ちに本件条例6条4号所定の非公開事由があるというのは困難である。

(3)諸新聞の売り先、数量等の情報は、発行者等の営業実態を明らかにする程度の量、規模であれば、発行者にとって営業秘密に属する情報である場合があり得るが、購読者が自己の購読している諸新聞を明らかにすることは何ら妨げがないのであり、このことは、公的機関が購読者である場合も同様であるから、自己の購読しているものに関する限度においては、発行者等も公表されることを忍受すべきであり、これらの情報は、発行者等の営業秘密に属する情報であるとは認め難い。
 本件では、一般に諸新聞の発行者等が特に小規模ないし零細業者であって、同業者との対抗上不利益な地位にあると認めるだけの証拠はなく、発行者等の中には相当規模のものも存する可能性もあるが、被告は、本件非公開部分に含まれるどの発行者等が問題となる小規模零細業者であるかを識別するに足りるだけの立証をしていない。

(4)請求書や領収書にある口座番号は、もともと諸新聞の発行者等が購入等の代金請求のために一般的に取引先に公開している情報であると認められる。
 また、右請求書等に押捺された発行者等の印影も、右代金請求等の際に、債権者の同一性を確認するための手段として同様に取引先に公開されるのが通常であると考えられる。

2 本件条例6条1号該当性に関する判断
 事業を営む個人に又は法人等の代表者の印影は、右個人事業者の事業ないし右法人の営業の遂行のために押印されたものと推認することができる。
 本件条例が、形式的には6条1号の個人に関する情報に該当する情報であっても、事業を営む個人の当該事業に関する情報を同号の対象から除外して、その公開の当否をもっぱら本件条例6条4号によって決定する構造に出ている点に鑑みれば、個人事業者の事業ないしこれと同等の法人の営業の遂行のために用いられた事業を営む個人又は法人等の代表者の印影は、本件条例6条1号の個人に関する情報に該当しないと解するのが相当である。したがって、事業を営む個人に又は法人等の代表者の印影に関する部分も取り消されるべきものと認められている。

3 混同のおそれによる非公開に関する判断
 この点について、被告は、諸新聞の購読に係る報償費とそれ以外のものとの混同のおそれがある場合は、本件条例8条を基礎として報償費の合計額に関する情報を公開しないことが許される旨主張している。しかしながら、本件条例8条は、同6条所定の公開除外事由がある場合に公文書の部分公開ができる旨を定めた規定であるところ、諸新聞の購読に係る報償費について本件条例6条所定の公開除外事由が認められない。したがって、本件非公開部分の非公開決定は違法というべきである。

4 以上の次第で、原告らの請求は、請求書及び領収書中の取扱者欄に押印されている取扱従業員の印影の非公開決定部分を除くその余の部分の各取消を求める限度で理由があるから、これを認容する。              (岐阜地方裁判所民事第二部)

《名古屋高裁控訴審の経過》
 ◆県知事、教育委員会側は00年6月7日付けで控訴(平成12年(行コ)31号
 ◆住民は10月24日付けで附帯控訴(平成12年(行コ)49号)
 ◆第1回 11月2日 ◆第2回弁論 1月16日 双方とも準備書面(5)。結審
 ◆3月29日(木)午後1時〜 名古屋高裁 民事4部 判決言渡
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《高裁判決の概略》  01年3月29日言渡。
  主 文
1 本件控訴を棄却する。
2 本件附帯控訴に基づき、原判決中被控訴人ら敗訴部分を取り消す。
3 控訴人岐阜県知事が被控訴人ら及び選定者らに対してした原判決別紙3記載のうち、  支出金調書中及び請求書中にある取扱従業員の印影の非公開決定部分を取り消す。
4 控訴人岐阜県知事が被控訴人らに及び選定者らに対してした原判決別紙4記載の処分  のうち、Cの部分について、取扱従業員の印影の非公開決定部分を取り消す。
5 控訴人岐阜県教育委員会教育長が被控訴人ら及び選定者らに対してした原判決別紙5  記載の処分のうち、Cの部分について取扱従業員の印影の非公開決定部分を取り消す。6 訴訟費用は、第1、2審とも、控訴人らの負担とする。

◆要点 「取扱従業員の印影は、その従業員自身は、事業を営む個人ではないから、6条4号が適用される余地はなく、6条1号の個人に関する情報に該当するかどうかを判断すべきことになる。その印影によって表示されている名字に、従業員名簿などの適当な資料を参照することによって、特定の個人を識別することが可能であり、特に雇用している事業者の従業員の人数が少ない場合には、個人を識別することが比較的容易であるといえる。 ところで、本件条例6条1号が、個人に関する情報であって、特定の個人を識別され得る情報を、原則として非公開とする趣旨は、個人のプライバシーを最大限保護する必要があるが、一方では、プライバシーの概念及び範囲が未だ明確となっていないことから、個人に関する情報であって、特定の個人が識別され得る情報については、原則として非一公開としたものと解される。そして、本件条例では、県民の公文書の公開を請求する権利を明らかにするとともに、情報公開の総合的な推進に関し必要な事項を定めることにより、開かれた県政を実現することを目的とし(1条)、実施機関は、公文書の公開を求める権利が十分に尊重されるようこの条例を解釈し、運用するものとする一方、個人に関する情報がみだりに公にされることのないよう最大限の配慮をしなければならない(3条)と定めている。そうすると、本件条例6条1号の「個人に関する情報」とは、およそ特定の個人が識別され得る全ての個人情報を意味するものではなく、その情報内容が、以下のような情報などとの関連において、当該特定個人の権利を侵害するおそれがあるものを指す相関関係概念であると解するのが相当であり、それ以外のものは、同号によって保護される「個人に関する情報」には含まれないと解するのが相当である。
 本件において、取扱従業員の印影は、特定の個人が識別され得るものであるが、請求書及び領収書に押印された取扱印であるから、それによって、当該個人がある時点においてある諸新聞の従業員であったという情報が明らかになるおそれがあるにすぎず、それ以上の情報は何ら明らかになるおそれがない。一般的には、ある個人が特定の事業者又は法人の従業員であることが明らかになると、その個人の権利を侵害するおそれがある場合もあるが、既に検討したとおり、本件の場合は、当該個人がその諸新聞の従業員であることは、その諸新聞を購読する全ての者に対し、明らかにされているものであって、第三者に知られるとを一般的に拒絶しているとは認められないし、公開されたとしても、当該個人の権利を侵害するおそれがあるとは認められない。
 したがって、取扱従業員の印影は、本件条例6条1号の個人に関する情報に該当するとは認められない。」