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可児市の電子投票。選挙無効など問題 2005年3月から

選挙無効の判例のまとめ

可児市・市選管決定取消請求引用判例

《判例−1》

◆最高裁昭和27年(オ)第601号同年12月4日第一小法廷判決・民集6巻11号1103頁,最高裁昭和51年(行ツ)第49号同年9月30日第一小法廷判決・民集30巻8号838頁参照)。
◆ 「公職選挙法205条1項にいわゆる選挙無効の要件としての「選挙の規定に違反することがあるとき」とは,主として選挙管理の任にある機関が選挙の管理執行の手続に関する明文の規定に違反することがあるとき,又は直接そのような明文の規定がなくとも選挙法の基本理念である選挙の自由公正の原則が著しく阻害されるときを指すものである」

《判例−2》

◆落選候補者の異議申立に対して、【村選管は棄却】、【県選管は選挙無効の採決】し、原告である当選者の提訴に対して、高等裁判所は、原告請求を棄却し選挙は無効を追認した。
◆当選無効請求訴訟事件【事件番号】大阪高等裁判所判決/昭和30年(ナ)第5号
【判決日付】昭和30年9月29日
【判決本件関連要旨】当選の効力に関する訴訟を理由あらしめる当選無効原因とは、当選人の決定に違法の事由があること、すなわち、当選人を決定した選挙会の構成に違法があること、決定手続に違法があること、決定内容・・たとえば投票の有効無の判定、各候補者の有効得票数の算定、当選人となりうる資格の有無の認定・・に違法があることである。【参照条文】公職選挙法207、208、6【参考文献】行政事件裁判例集6巻9号2150頁
◆京都府天田郡上夜久野村村長選挙
◆【判示本件関連要点】
 公職選挙法第二〇七条にいわゆる当選の効力に関する訴訟を理由あらしめる当選無効原因とは、当選人の決定に違法の事由があること、すなわち当選人を決定した選挙会の構成に違法があること、決定手続に違法があること、決定内容・・たとえば投票の有効無効の判定、各候補者の有効得票数の算定、当選人となり得る資格の有無の認定・・に違法があることであり、前記事由はそのいずれにも該当しないし、原告の得票が公正無疵であることは以上のように解する妨げとなるものではない。当裁判所は原告の見解には従い得ない。
 ・・・原告は被告の裁決は政治裁決であると主張するが、本件選挙に無効原因が存することは上述のとおりであり、その無効原因が存しなかつたとすれば、選挙の結果につきあるいは異つた結果を生じたかも知れないことは、当事者間に争いがない前記伝達文書の伝達を受けた選挙人の員数、原告と訴外日和重次郎の各得票数、得票差、有権者数に照し明白であるから、「選挙の結果に異動を及ぼすおそれ」があるものといわなければならない。
 ・・・そして公職選挙法第二〇九条によれば、選挙管理委員会は、当選無効の訴願の提起があつた場合においても、訴願人の主張すると否とを問わず、第二〇五条第一項に該当する事由があるものと認めるときは、必ず選挙無効の裁決をしなければならないのであるから、本件裁決を政治的裁決と非難するのはいわれがない。
よつて原告の請求を棄却すべきものとする。

《判例−3》

◆落選候補者の異議申立に対して、【村選管は棄却】、【県選管も棄却】し、原告の提訴に対して、高等裁判所は、原告請求を認容し、県選管の裁決を取消し、選挙は無効とした件につき、県の上告を最高裁がが棄却した。
◆H14.07.30 第一小法廷・判決 平成14(行ヒ)95 選挙無効確認請求事件【参考文献】行政事件裁判例集第56巻6号1362頁
◆選挙無効確認請求事件 、最高裁判所平成14(行ヒ)95第一小法廷判決(原審H14.01.31東京高等裁判所(平成13(行ケ)300)
【参照条文】公職選挙法86条の4第4項,100条4項,100条6項,205条1項,法施行令89条2項1号イ(2)

【判示事項】
 村長選挙において,現職の村長が,選挙の管理執行に密接に関連する戸籍謄抄本の交付事務についての権限を濫用し,他の立候補予定者が立候補の届出書に添付すべき戸籍抄本の交付を受けることを妨げて,同人の立候補することを妨害し,自ら無投票当選を果たし,選挙人の投票の機会を奪った行為は,公職選挙法205条1項にいう選挙の規定の違反に当たる。

【判示要点】
 公職選挙法205条1項にいわゆる選挙無効の要件としての「選挙の規定に違反することがあるとき」とは,主として選挙管理の任にある機関が選挙の管理執行の手続に関する明文の規定に違反することがあるとき,又は直接そのような明文の規定がなくとも選挙法の基本理念である選挙の自由公正の原則が著しく阻害されるときを指すものである(最高裁昭和27年(オ)第601号同年12月4日第一小法廷判決・民集6巻11号1103頁,最高裁昭和51年(行ツ)第49号同年9月30日第一小法廷判決・民集30巻8号838頁参照)。
 そして,選挙管理の任にある機関以外の者の行為であっても,選挙の管理執行に密接に関連する事務を行う者が,選挙地域内の選挙人全般の自由な判断による投票を妨げ,選挙の自由公正の原則を著しく阻害したと認められるものである場合には,「選挙の規定に違反することがあるとき」に当たると解するのが相当である。(最高裁判所平成14年7月30日第一小法廷・判決平成14(行ヒ)95号選挙無効確認請求事件)


《判例−4》

◆落選候補者の選挙の全部無効及び最下位当選の当選無効を求めた異議申立に対して、【市選管は棄却】、【県選管は第2投票区に限り選挙無効の裁決】し、異議申立人は原告として全部無効確認の訴え、他の原告は各裁決の無効確認の訴えを起こし、【裁判所はそれぞれ棄却】した。即ち、第2投票区の選挙無効を追認し、最高裁も追認した。

◆徳島市議会議員選挙無効等事件【事件番号】高松高等裁判所判決/昭和30年(ナ)第5号,昭和30年(ナ)第6号,昭和30年(ナ)第7号【判決日付】昭和31年6月14日
【判決関連要旨】3 投票または開票事務に従事する選挙管理委員会職員がその事務執行中選挙の管理執行の規定に違反して偽造票の混入または投票の抜取り等の不正行為をした場合において、それらの投票数が算定できないときは、特にこれらの投票の効力、投票の概算数等の観点から明らかに選挙の結果に異動を及ぼすおそれなしと認められないかぎりは、選挙の結果に異動を及ぼすおそれあるものと解するを相当とする。
 4 投票および開票事務に従事する選挙管理委員会職員が、その事務執行中に、投票用紙を窃取し、これを投票済票中へ混入した行為は、それが他の管理執行者等の故意過失に起因すると否と、また、それが同時に別個の犯罪行為に該当すると否とをとわず、選挙の管理執行者の行為であることに変りはないから、選挙の管理執行の規定に違反するものというべきである。
 5 選挙事務係員が開票事務従事者中に投票済票中へ混入した偽造票に何人の氏名が記入せられていたかを裁判所において確定することは、公職選挙法第五十二条の規定の趣旨に抵触するものではない。
 6 選挙の効力に関する訴願裁決において、訴願人の主張しなかつた点につき審理判断しなかつたとしても、違法とはいえない。
 7 選挙争訟または当選争訟において、権限ある選挙管理委員会または裁判所は、公職選挙法第六十七条所定の手続を経ていない投票の効力を確定することができるものと解するを相当とする。
 8 開票事務従事者がその事務に従事中投票二票を抜き取つた所為は、選挙の管理執行に関する規定に違反するものというべきであるが、抜き取つた投票がいずれも白票であり、しかも、投票者総数と投票数とを一致させるためにやむなくした処置であると認められるときは、選挙の結果に異動を及ぼすおそれがあると認めることはできない。
 9 市選挙管理委員会職員が選挙人名簿に虚偽の登録申請をし、市議会議員選挙において詐欺投票をした所為は、選挙管理執行機関の管理執行に関する規定違反ではなく、当選無効の原因となることはあつても、選挙無効の原因とはならない。
 10 投票数が投票者総数より多いということだけでは、選挙無効原因とはならない。 11 選挙管理委員会における投票用紙の保管受払の不備のため、投票用紙を散逸しても、その一事のみをもつて直ちに選挙の無効原因とすることができない。
12 同一又は類似筆跡の投票の存在と選挙の効力
【参照条文】公職選挙法202、215、219、42、44、45、46、52、66、67、行政事件訴訟特例法1、訴願法13、訴願法14、民事訴訟法62
【参考文献】行政事件裁判例集7巻6号1413頁

◆徳島市議会議員選挙

◆【判示要点】
 三、選挙訴訟の性質につき検討する。
 選挙争訟における争の目的となるものは、特定の選挙区、開票区、または投票区における集合的行為(選挙期日の指定、選挙人名簿の確定、候補者の届出、投票用紙の調整、各選挙人の投票及その管理、投票の結果の審査、当選人の決定等多数の行為を包括する集合的行為を指す)としての選挙の全体の効力であり、当選争訟における争の目的は特定の選挙における当選人の決定の適否であつて、前者は選挙が全体として法律上の効力を保持しうるかどうか、換言すれば選挙の管理執行の手続が適法にして且選挙が自由公正に行われたものであるかどうかが争われるもの、後者は選挙が全体として有効に行われたものであることを前提として選挙会における当選人の決定がそれ自体適法な手続によつて行われたかどうか等の点が争われるのである。
 選挙無効原因の一要件としての公職選挙法第二〇五条第一項に所謂選挙の規定に違反するとは所謂選挙の管理執行の手続に関する法規の明文に違反する場合のみならず、明文はなくとも選挙の自由公正な施行を著しく阻害する場合をも指すものと解せられている。
(昭和二七、一二、四最高裁判所判決)又右無効原因の他の要件としての同法条に所謂選挙の結果に異動を及ぼす虞ある場合とは、もしその選挙規定違反がなかつたならば、選挙の結果につきあるいは異つた結果を生じたかも知れぬと思量せられる場合を謂うのであつて必ずしも選挙の結果に異動を及ぼすことの確実であることを要しない趣旨であると解せられている。
 而して投票又は開票の管理執行の事務に従事する選管委員会職員が右管理執行事務に従事中選挙の管理執行の規定に違反して偽造投票の混入或は投票の抜取り等の不正行為をなした場合においてそれらの投票数が算定出来ない場合には特に之等の投票の効力、投票の概算数等の観点から明かに選挙の結果に異動を及ぼす虞なしと認められない限りは選挙の結果に異動を及ぼす虞あるものと解するを相当とする。
 次に公職選挙法第二〇五条に所謂選挙の一部無効とは特定の選挙区全体に関する場合のみならず特定の選挙区内に数個の開票区又は投票区が設定せられている場合に一個又は数個の投票区若くは開票区における投票又は開票等の所謂集合的行為としての選挙全体の効力の無効である場合をも含むものと解せられる。
 従つて原告等主張の選挙争訟に関する見解の内以上の見解に反する点は採用し難い。

 ・・・・原告等は被告のなした本件裁決において第二開票区以外の開票区にも次項に述べる如く第二開票区におけると同様の不正があるに拘らず、全開票区の無効を認めなかつたのは不当である旨主張するけれども原告等の主張事実は訴願において主張したことは認められないから裁決においてその点につき審理判断しなかつたとするも違法とはいえない。

《判例−5》

◆徳島市議会事件についての上告審
◆徳島市議会議員選挙無効市議会議員選挙の効力に関する裁決取消請求事件
【事件番号】最高裁判所第3小法廷判決/昭和31年(オ)第843号
【判決日付】昭和33年4月15日
【判決要旨】選挙事務従事者が投票の不正混入抜取をした違法があるときは、その数が確定でき結果に異動を及ぼす虞がないことの明白な場合のほか、その選挙はこれを無効とすべきである。
【参照条文】公職選挙法202−1、202−2、205−1、205−2、205−3、205−4【参考文献】最高裁判所民事判例集12巻5号805頁

【判示要点】 
 《上告理由第一点について》 所論の点に関し原判決の確定した事実の要旨は、「昭和三〇年四月三〇日徳島市全域に亘つて執行された同市議会議員の選挙(以下本件選挙という)に際し、四月三〇日の投票日に判示投票所で投票事務に従事中の事務従事者由利武雄は投票用紙五〇枚を窃取し、これを利用して議員候補者山内安高の面前で同候補者の氏名を記入して偽造された偽造投票五〇枚中約四十二、三枚を翌五月一日の開票日に第二開票所において開票事務に従事中の同事務従事者は秘かに正規の投票中に混入した、その結果、右偽造票はいずれも候補者山内安高の得票として算入された。
 次に、右開票日に第二開票所で開票事務に従事中の事務従事者西岡敏夫外二名らは、判示のような連絡の下に、開票立会人及び開票管理者の点検を経ずその有効無効の決定を経ていない正規の投票である疑義票の中から約四〇枚を抜き取つて焼却した。
 開票の結果最下位当選者と最高位落選者との得票差は二〇票であつた。というのである。論旨は、原判決が「選挙の管理執行の規定に違反して判示のような偽造投票の混入、投票の抜取等の不正行為がなされた場合に、それらの投票数が算定出来ない場合には、特にこれらの投票の効力、投票の概算数等の観点から明らかに選挙の結果に影響を及ぼす虞なしと認められない限りは、選挙の結果に異動を及ぼす虞あるものと解するを相当とする」旨を判示したのは公職選挙法二〇五条の解釈を誤つた違法あるものである、と主張する。
 しかし、選挙の規定違反があり選挙の結果に異動を及ぼす虞がある場合に限り、当該選挙の全部または一部を無効とすべきことは公職選挙法二〇五条の規定するところである。 前記原判決の認定にかかる本件選挙に際しての投票の不正混入及び抜き取りが選挙の規定に違反することはいうまでもない。
 選挙事務従事者のかかる悪質の規定違反は選挙の公正について一般選挙人に対し甚しい疑惑をいだかせるものであつて、選挙の自由公正及び選挙制度の信用保持の上からもかかる選挙の結果を維持することは許されるべきではない。
 もとより、その混入抜取数が確定でき結果に異動を及ぼす虞がないことの明白な場合は格別、本件の場合のようにその数も確定できない場合においては本件選挙を無効とするよりほかはないのである。

 《同第三点について》論旨は、原判決は公職選挙法二〇五条二項以下の適用について判断を遺脱した違法がある、というけれども、記録によれば、所論条項の適用については本件訴願の裁決において説示しているのに、その当否については本訴においては全然争われていないことが認められるから、原審がその適否について判断を示さなかつたのは当然であり、何等所論の違法あるものではない。


《判例−6》

◆選挙人の異議申立に対して、【市選管は棄却】、【県選管は選挙無効の裁決】し、当選人である原告の提訴に対して、高等裁判所は、原告請求を棄却し選挙の無効を追認した。
◆選挙無効裁決取消請求事件【事件番号】福岡高等裁判所宮崎支部判決/昭和32年(ナ)第2号【判決日付】昭和33年9月11日
【判決要旨】
 2 公職選挙法施行令第三十五条第一項の規定は、いわゆる訓示的規定ではなく効力的規定と解すべきである。
 3 投票所は、通常役場学校等の施設内に設けられるが、当該施設の全体が公職選挙法にいう投票所となるものではなく、そのうち選挙人と選挙人名簿との対照確認、投票用紙の交付、投票の記載、その投函がなされるまとまつた区画のみがこれに該当するものと解すべきである。
 4 投票所において投票立会人の席から受付ならびに名簿対照係の席を見とおすことができない配置がなされたときは、投票立会人をして真正な選挙人に投票用紙を交付するための前提をなす選挙人確認手続を監視させ、もつて選挙の自由公正を担保しようとする公職選挙法施行令第三十五条第一項の規定に違反するものであり、そのために不正な投票のなされた事実が推認でき、しかも最下位当選人と次点者二名とが同一得票数である場合には、右違法は、選挙の結果に異動を及ぼす具体的可能性があるものとして選挙を無効ならしめる。【参照条文】公職選挙法39、施行令31、35【参考文献】行政事件裁判例集9巻9号1841頁

【判示要点】
 ・・・ところが被告はさらに本件選挙において第一投票所での選挙人と選挙人名簿との対照が投票立会人の面前においてなされておらないので、それは公職選挙法施行令第三五条第一項の規定に違反すると主張(訴訟の段階に至つて、従前異議に対する決定、訴願に対する裁決において判断された事実以外の新たな違法事由を主張することは、訴願と訴訟の両者が同一手続における続審的形態をなすものではなく、それ故にこそ、これを制約する規定とてないのであるから、いわゆる訴願前置主義には背戻しないし、殊に本件において被告は当初から公職選挙法施行令第三五条第一項をあげて選挙人対照確認の違法を主張しているのであるから、その主張のうちには、その手続方法における違法のほかに、そのための設備に起因する違法の主張も、一連性をもち、当然含まれるものと解せられる)し、原告らはこれに対し右法条はいわゆる訓示的規定にすぎないから、その違反は直ちに選挙の無効を招来するものではないと抗争する。
 しかし選挙の公明性は、はじめに投票が真正の選挙人の自由且つ公正な意思に従つてなされることによつて確保されるのであるから、真正の選挙人を選別するための手続である選挙人と選挙人名簿との対照確認が厳正に行われるように配慮することは、信を選挙につなぐためにも、選挙の管理執行機関としてゆるがせにできない事項であるといわなければならない。
 してみるとこの点に関する選挙法規はこれを厳格に解釈すべきであつて、かりそめにも便宜に堕するが如きことは許されないものと解するのが相当である。
 ・・・このような市委員会の規定違反は選挙の自由公正に対する一般選挙人の疑惑を避けることができず選挙制度に対する信用を阻害することは免れないので、かくてなされた選挙の結果を維持することは本来許されないものといわなければならないが、更にかゝる規定違反にもかゝわらず選挙の結果に異動を及ぼす虞がないことが明かであれば格別、むしろかゝる規定違反からして少くともさきにあげた中島輝光名義の投票をなすに至らしめたものとも推察できるし、しかも本件選挙における最下位当選人と次点者二名の得票数がともに同数であることに着眼すれば、右違法は選挙の結果に異動を及ぼす具体的可能性があるものといわなければならない。
しかして本件は名瀬市一二投票所中の一投票所に生起したものではあるが、さきに記したように全市が一開票区となつている以上、一の違法を他と区別するによしないので、本件選挙は結局その全部を無効とせざるをえない。
しからばその理由において差異こそあれ、本件選挙を全部無効と結論づけた被告の裁決は相当であり、原告らの本訴請求は理由がないので、民事訴訟法第八九条第九三条を適用して、主文のとおり判決する。

《判例−7》

◆立候補者の異議申立に対して、【町選管は棄却】、【県選管は選挙無効の裁決】し、原告である当選人の提訴に対して、高等裁判所は、原告請求を棄却し選挙は無効を追認した。
◆町議会議員選挙の効力に関する訴願裁決取消請求事件【事件番号】仙台高等裁判所秋田支部判決/昭和34年(ナ)第3号【判決日付】昭和37年2月28日
【判示事項】1 不在者投票の投票用紙および投票用封筒の交付ならびに不在者投票の受理手続につき、選挙の規定に違反しかつ選挙の結果に異動を及ぼす虞があるとした事例
2 選挙の管理執行機関において選挙の事務処理に適正を欠き選挙の自由と公正が阻害されたと認められた事例
【参照条文】公職選挙法49,205,法施行令50−1,52−1、52−3、56−1、60、62、63【参考文献】行政事件裁判例集13巻2号126頁

【判示要点】
 したがつて右投票用紙及び封筒の交付は違法といわねばならない。・・・
(2)、不在者投票の受理手続の違法について。
令第五六条一項、第六〇条、第六二条、第六三条によれば、法第四九条各号に掲げる不在事由によつて投票用紙及び投票用封筒の交付をうけた選挙人がその登録されている選挙人名簿の属する市町村において投票をしようとする場合においては、・・・したがつて投票管理者は不在者投票管理者から送致された投票につき、投票用封筒が前記法定記載要件を欠いている場合には之を受理しない決定をした上所定の手続をとらねばならないところ、・・・本件選挙において投票管理者は不在者投票管理者より送致をうけた投票のうち、投票用封筒の(イ)表面及び裏面の記載を全く欠いたもの五票(乙第六号証の一乃至五)、(ロ)表面の記載だけあつて裏面の記載を欠いたもの七票(同第七号証の一乃至七)、(ハ)裏面の記載だけあつて表面の記載を欠いたもの一票(同第八号証)合計一三票につき受理の決定をしたことが認められるから、投票管理者の右受理の決定は違法であるといわねばならない。
 而して前記市町村選挙管理委員会の委員長による不在者投票の投票用紙及び投票用封筒の交付についての規定及び、投票管理者による不在者投票の受理についての規定はいずれも選挙執行機関の選挙の管理執行に関する規定というべきであるから、本件選挙は法第二〇五条にいう「選挙の規定」に違反したといわねばならない。

 そこで次に右違法が選挙の結果に異動を及ぼす虞があるかどうかにつき考えると、前記(1)の無効票合計一七票、(2)の無効票合計一三票以上合計三〇票が本件選挙の有効投票数に算入されていることは弁論の全趣旨より明らかなところである。
 ところで前記(1)の各選挙人が、若し不在者投票の不適格者として投票用紙封筒の交付を拒まれゝば選挙当日棄権した者があるかも知れないし、また不在者として投票した場合と選挙の期日に投票した場合とで同じ候補者氏名を記載するとも限らず、ことに不在者投票は立候補期間満了前にも行い得るのであるから、これらの者が選挙当日投票したとすれば、その後に立候補した者に投票したかも知れないのであり、(この点につき最高裁判所昭和二八年(オ)第一〇二九号同二九年九月一七日第二小法廷判決民集八巻九号一六四四頁参照)、(2)の投票については、そもそも法が不在者投票の方法、送致、保管につき前記のごとく厳重な規制をしているのは、不在者投票が選挙の当日投票管理者により投票箱に入れられるまでの間に票のすり替え等が行われないための配慮によるものと解されるから、前認定のごとく投票管理者において右(2)の一三票の投票の受理に違法があつた以上、選挙人による投票後之が投票箱に投入される迄の間に何人かの手により右投票のすり替えが行われなかつたとは断定できない。
 以上の観点に立つて考えると、前記合計三〇票は、本件選挙の次点者と全当選者との関係ではいわゆる潜在的無効投票の性格をもつが最下位当選者と全落選者との関係ではいわゆる潜在的有効投票の性格をもつといわねばならない。
 そして成立に争いない乙第一号証と証人佐々木吉之助の証言によれば、本件選挙における各候補者の得票数は別表中「〔1〕選挙録の記載」欄に記載したとおりであること、最下位当選者は第二六位の伊藤忠吉(一四八票)で、次点者は戸田藤三(一四六票)であることが認められるから、本件選挙はその管理執行が前記選挙の規定に違反した結果、全候補者三四名中一二名(第二〇位三浦重春より第三一位佐々木吉之助までの一二名、三五パーセント強)全当選者二六名中七名(二七パーセント弱)の当落につき異動を生じる虞があるといわねばならない。

二、選挙の管理執行一般について。
更に成立に争いない乙第一号証、証人三浦利七、同佐々木吉之助、同高橋正雄の各証言、検証の結果によれば、
1 本件選挙の投票者数六一二〇名に対し、成規の投票用紙による投票総数は六一四三票で二三票の過剰投票があつたこと、ところがその後天王町選挙管理委員会において前記異議申立に基き投票の点検をしたところ当選者原告加賀谷幸太郎の得票数二二七票が三一票減少し、当選者中村政雄の得票数一九四票が二票増加していることが判明したこと、(この点について原告等は当初の選挙会の決定に誤算があつたにすぎないというのであるが、中村政雄の分はともかく、他の候補者の得票数に一票の誤算もないのに、原告加賀谷幸太郎の分について三一票もの多数の票の誤算があつたと考えることは、特段の事情の認められない本件では著しく社会通念に反するといわねばならない。)

2 開票に際し、投票箱の中から不成規の紙片一一八枚(内一一七枚現存)が発見され、右紙片は選挙人により投票所において投票箱の中に投入されたと思われること、右紙片は形状の不規則なもの数枚を除くと、殆んどが定規をあてがい鋭利な刃物で裁断したと思われる成規の投票用紙に似せた略正方形又は矩形のもので、形状、紙質からみると、内一〇枚は「不二の小間紙」「のし紙」又は「かけ紙」と、同一字体ですかしの入つた同じ薄黄茶色の同質ハトロン紙、内一五枚は同じ薄カーキ色の同質ハトロン紙で殆んど同じ大きさの略正方形、内二一枚はいずれも同じ大きさの矩形の同質西洋紙であり、右紙片投入行為に組織的集団的な計画性が認められること、(被告はこの点から本件選挙において相当組織的且多数の「たらい廻し投票」の行われた蓋然性が大であると主張するが、他に特段の事情の認められない本件では右認定事実だけから投票のたらい廻しの行われた蓋然性が大であるとまで認めることはできない)以上の事実が認められ、他に右認定を左右するに足る証拠はない。
 そうすると右事実は本件選挙の管理執行機関において選挙の管理執行に関する規定に違反したということはできないとしても、少くとも選挙の事務処理に適正を欠き、選挙の自由と公正が阻害され、そのため選挙の結果につき選挙人において多大の疑惑の念を生ぜしめる結果となつたといわねばならない。
 以上説示のとおり、本件選挙は、選挙の管理執行機関において不在者投票の投票用紙及び投票用封筒の交付及び不在者投票の受理について選挙の管理執行に関する規定に違反し、その結果全候補者のうち三五パーセント強、全当選者のうち二七パーセント弱の者の当落に異動を生ぜしめたのみでなく、選挙の管理執行機関において選挙事務処理に適正を欠き、選挙の結果につき選挙人に多大の疑惑の念をいだかせ、選挙の自由と公正の理念が全体的に阻害されたと認められるから、本件選挙はこれを無効とした被告の裁決は正当であり、これが取消を求める原告の本訴請求は失当であるからこれを棄却し、訴訟費用の負担につき民事訴訟法第八九条を適用して主文のとおり判決する。

《判例−8》

◆落選した立候補者の異議申立に対して、【町選管は棄却】、【県選管は選挙無効の採決】し、原告である当選した立候補者の提訴に対して、高等裁判所は、原告請求を棄却し選挙の無効を追認した。

◆町会議員選挙無効裁決取消請求事件【事件番号】広島高等裁判所判決/昭和31年(ナ)第1号【判決日付】昭和31年9月27日
【判決要旨】町議会議員選挙において、ある投票所の投票立会人および事務従事者が三十四票の詐欺投票(いわゆる替玉投票)を故意に看過した事実があり、また、総投票数は一一、○六六票、投票者数は一一、○三九人で二十七票の過剰票が存在し、投票用紙の使用枚数が一一、○四○枚であつて、右数字の不一致を解明できない場合には、右各事実は、いずれも町選挙管理委員会の事務を行う係員が選挙の管理執行にあたりはなはだしい違法を行つたか、またはその違法行為に基因するものであり、選挙の公正に対しはなはだしく疑惑を抱かせるものであるから、右選挙の開票所が一箇所であるときは、たとえ前記の瑕疵を有する各投票数を確定することができる場合であつても、選挙全部の結果に異動を及ぼす可能性があり、選挙全部を無効ならしめるものと解すべきである。
【参照条文】公職選挙法42、44【参考文献】行政事件裁判例集7巻9号2167頁
◆広島県安芸郡音戸町議員選挙
【判示要点】 本件選挙の投票数は一、一〇六六票で投票者数は投票録を基礎とする場合は一、一〇三九人となり過剰票が二十七票存在し、投票用紙使用枚数は一、一〇四〇枚であることは当事者間に争がない。
 右のような過剰票がどうして生じたかについて検討してみるに、各投票所では受付係が選挙人が持参した入場券又は入場券を持参しなかつた者に対し入場券に代る入場メモにより選挙人名簿にチエツク又は丸印を附して投票用紙を交付することにしているが、受付係がその執務の厳正を怠つていたため後で選挙人名簿と入場券を対照するとチエツク又は丸印の符号があつて入場券のないもの、符号がなくて入場券のあるものが十数人あり結局現実に投票した選挙人と選挙人名簿との対照整理が杜撰であり入場券と選挙人名簿の対照符号とを基礎としては正確な投票者数が得られないこと、更に投票用紙の交付数、残数等についてもこれらの数を裏付けるに足る受領証、精算書等を各投票所管理者から徴して居らずその真相が確認し難いこと、又町選挙管理委員会は投票用紙の印刷を安芸地方事務所に一括共同印刷することを依頼し、これを受領する際及び受領後もその数の確認をせず、投票用紙に捺印する際常時監督監視をせず、捺印した枚数の確認もせず単に捺印時に五十枚の束を作成したにとゞまりその束数の計算をせず又捺印に用いた公印を机上に放置したこと等があつて結局投票用紙が盗難にかゝりそれが不正に使用された結果過剰票が生じたと云う疑を否定できない状態である事実が認められ右認定を左右するに足る証拠はない。
 然らば右認定事実は投票用紙の管理更に選挙の管理執行が著しく厳正を欠き選挙の管理執行の規定に違反するものであることが明白である。
 右各選挙法違反の事実につき原告等は何れも投票の瑕疵であつてその投票数を確定し得べく所謂潜在無効投票として扱へば足り選挙無効の事由ではないと主張するが、詐欺投票を故意に看過したり、過剰投票を生じた所以を解明できないのは何れも町選挙管理委員会の事務を行う係員が選挙の管理執行に当り甚しい違法を行つたか又はその違法行為に基因するもので、右違法は選挙の公正に対し著しく疑惑を抱かせるものであつてしかも本件選挙の開票所が一ケ所であることは選挙全部の結果に異動を及ぼす可能性は十分である。
 かゝる選挙は公職選挙法第二百五条に則り全部無効とすることが選挙の自由公正を理念とする法の精神に照して当然である。
従つて当選の効力に関する問題であるとする原告等の前記主張は理由がない。
 然らば右認定の範囲の事実の存在により本件選挙が無効であること極めて明白なので爾余の被告主張の各事実についての判断を省略し、被告の本件選挙を無効とする旨の裁決は相当であるから右裁決の取消を求める原告等の本訴請求は理由がない


《判例−9》

◆落選した立候補者の異議申立に対して、【村選管は却下】、【県選管は第7開票区の選挙無効の裁決】し、原告である当選者の提訴に対して、高等裁判所は、原告請求を棄却し選挙は無効を追認した。

◆市会議員選挙無効裁決取消請求事件【事件番号】福岡高等裁判所判決/昭和29年(ナ)第1号【判決日付】昭和30年1月26日
【判決要旨】1 公職選挙法第百七十三条ないし第百七十五条の規定において候補者の氏名等を投票所等に掲示させることにしたのは、選挙公営の立場から候補者の氏名等を一般選挙人に周知させ、もつて選挙人の意思を誤りなく選挙の結果に反映させようとする趣旨に基くものであるから、これら規定は訓示規定と解すべきではなく、その違反は、同法第二百五条第一項にいわゆる選挙の規定の違反にあたるものと認むべきである。
 2 市議会議員の選挙において、ある投票所の候補者氏名掲示中一候補者の分のみがその掲示当初から選挙当日まで脱落していたときは、もし選挙当日右投票所における前記候補者の氏名の掲示が脱落していなかつたならば、同日同所に投票におもむいた選挙人中右候補者に投票しあるいは棄権したであろう者がその脱落のために他の候補者に投票したかも知れないと考えられ、したがつて、右脱落がなければ候補者の得票に多少の異動をきたしたであろうことが想像されることおよび右選挙の最下位当選者と次点者の得票差が十六票にすぎないことにかんがみれば、右の違法は、選挙を無効ならしめるものと解するのを相当とする。
 4 公職選挙法第二百五条第二項ないし第四項の規定は、選挙一部無効の場合にその選挙にかかる議員または委員の全部の当選を失わせることにより議会、委員会の運営に多大の支障をきたすことを考慮し、無用な手続をできるだけ回避するために設けられたものであるから、なんら憲法第十四条に違反するところはない。
【参照条文】日本国憲法14 公職選挙法173、202、203、204、205、206、207、208、209、209の2
【参考文献】行政事件裁判例集6巻1号92頁

◆熊本市議会議員選挙

◆【判示要点】
 原告等は「処分庁である熊本市選挙管理委員会がなした異議申立却下決定に対しては、氏名掲示脱落によつて不利益を受けた当該候補者前田宣雄のみが訴願適格者であつてその他の候補者角田時雄等一二名は、法第二〇二条第二項の訴願提起の権能を有しない」と主張するけれども、同法は選挙の効力に関して選挙人又は候補者に広く異議申立の権能を認めており、その異議申立につき市町村選挙管理委員会の為した決定に不服ある選挙人又は候補者は所定期間内に都道府県の選挙管理委員会に訴願をなし得るのであつて、直接不利益を被るべき候補者に限定すべきでないのは勿論、異議申立をなした者たることも要しないものと解するのが相当であるから、被告のなした本件裁決には、原告等主張のような違法な点はない。

 次に原告等は、「前記訴外角田時雄等の訴願は訴願法第二条に違反する不適法な訴願である」と主張するが、公職選挙法第二一六条によつて、選挙の効力に関する訴願の場合には、右訴願法第二条の適用が除外されていて処分行政庁経由の必要ないことが明かであるから、前記訴外人等が直接訴願書を被告に提出したとしても無論適法で、原告等主張のような違法な点はない。

 更に原告等は、「公職選挙法第一七三条の氏名掲示の規定は訓示規定であり、しかも、前田宣雄の投票所における氏名脱落の如きは、仮にかような事実があつたとしても、単なる事務上の些細な手落に過ぎないものであるから、同法第二〇五条に所謂選挙の規定に違反するものと為すべきではない、のみならず、本件の場合選挙の結果に異動を及ぼす虞もないのに、被告は右第二〇五条の解釈を誤り本件選挙の一部無効を裁決したのは違法である」と縷々主張するのであるが、同法第一七三条乃至第一七五条の規定によつて候補者の氏名等を当該選挙の投票所等に提示させることとした所以は、選挙公営の立場から候補者の氏名等を一般選挙人に周知せしめ、以て選挙人の意思を誤りなく選挙の結果に反映せしめようとする趣旨に基ずくのであつて、原告等の挙示する根拠を以てしてもこれらの規定を訓示規定とは解し難い。

 本件における右氏名掲示の脱落が選挙の結果に異動を及ぼす虞れがあるか何うかの点について考えてみるのに、・・・前田の氏名の掲示の脱落がなかつたとすれば、候補者の得票に多少の異動を来たしたであろうことは想像に難くないのみならず、本件選挙における最下位当選者(原告緒方一人と同荒木喜市の両名)の得票は八九二票で、最高位落選者(甲第八号証によれば訴外内田幸吉)の得票は八七六票であり、その差僅かに一六票にすぎないことは本件当事者間に争いのないところであるから、右前田宣雄の氏名掲示の脱落は、結局選挙結果に異動を及ぼす虞れありとの結論に達せざるを得ない。
氏名掲示の脱落が選挙の結果に異動を及ぼす虞が全くないものとは断定し難いのである。 従つて本件選挙の第七開票区の選挙は無効と認むるの外なく、被告の本件裁決には何等違法な点はないのであるから、原告等の本訴請求はすべて失当として排斥を免れない。

《判例−10》

◆落選した立候補者からの異議申立に対して、【村選管は選挙無効の決定】、【県選管も選挙無効の採決】し、原告である当選した者の提訴に対して高等裁判所は、原告請求を棄却し選挙の無効を追認した。
◆選挙無効決定取消請求事件【事件番号】福岡高等裁判所判決/昭和34年(ナ)第2号【判決日付】昭和35年11月21日【判示事項】開票区内の各投票所および開票所における選挙事務従事者の不正行為ならびにその不正行為の故意の看過が選挙の結果に異動を及ぼす虞のあるものに当たるとされた事例【参考文献】行政事件裁判例集11巻11号3061頁◆鹿児島県大島郡伊仙村開票区の選挙を無効

《判例−11》

◆落選人の異議申立に対して、【村選管は当選を取消】、取消された候補者が県選管に決定の取消を求め【県選管は棄却し当選の取消を認容】したので、取消された候補者が原告として提訴したことに対して、高等裁判所は、原告請求を棄却し当選取消を追認した。
◆裁決取消請求事件【事件番号】福岡高等裁判所判決/昭和30年(ナ)第4号
【判決日付】昭和32年7月31日
【判決要旨】開票事務を選挙会事務に合わせて行つた場合、選挙長および選挙立会人が、投票の大部分についてこれを点検せず、かつ、選挙長が投票中有効投票の大部分および無効投票の一部について選挙立会人の意見を聞かないでその効力を決定したことは、公職選挙法第六十六条第二項、第六十七条に違反するものであり、右違反は、投票の大部分についてなされた効力の決定が公正に行われたことを保証しがたく、選挙の結果に異動を及ぼすおそれがあり、選挙を無効ならしめるものと解すべきである。
【参照条文】公職選挙法66    公職選挙法67
【参考文献】行政事件裁判例集8巻7号1218頁   訟務月報3巻9号45頁
◆長崎県西彼杵郡香焼村議会議員選挙
【判示要点】・・・法第二〇九条第一項によれば、当選の効力に関する訴願の提起があつた場合に於て、その選挙が選挙の規定に違反することがあり、選挙の結果に異動を及ぼす虞がある場合に限り、当該選挙管理委員会は、その選挙の全部又は一部の無効を裁決しなければならぬ旨規定しているから、本件裁決が右規定に従い、本件選挙には之を無効とすべき原因ありとしてなされている限り、その形式的効力には何等かくるところはないものといわねばならない。されば原告等の本訴請求の当否は、右裁決に於て、被告の挙示する事実が、本件選挙の無効原因たりうるや否にかゝるわけである。
 ・・・・而して法第六六条第二項によれば、開票管理者(本件選挙にありては選挙長)は、開票立会人(本選挙にありては選挙立会人)とともに、当該選挙における各投票所の投票を開票区ごとに混同して投票を点検しなければならない旨規定し、法第六七条によれば、投票の効力は開票立会人の意見を聴き開票管理者が決定しなければならない旨を規定している。そして右各法条の趣旨とするところは、開票事務が公正に執行せらるゝことを担保するに出でたものであつて、若し開票事務が右各法条に違反して執行された場合に於ては、右開票事務は公正に執行されたことの担保を失い、選挙の公正を害しその結果に異動を生ずる虞あるものといわねばならない。
 ところで、叙上認定の事実に徴すると、選挙長及び選挙立会人は、本件選挙の開票手続に於て、その投票の大部分について之を点検せず且つ投票中有効投票の大部分及び無効投票の一部については選挙長は選挙立会人の意見を聴くことなくその効力を決定したものというべく、右は正に前示各法条に違反したものであり、右違反は本件選挙の投票の大部分についてなされた効力の決定が公正に行われたことを保証し難く選挙の結果に異動を及ぼす虞あることは容易に推測し得るところであるから、本件選挙を無効たらしめるべき原因と解し得るのである。
・・・本件選挙は爾余の争点について判断する迄もなく、右の違反事実により無効なものというべく、右の同旨の理由により本件選挙を無効とした本件裁決は相当で、原告等の本訴請求は理由ないものとして之を棄却せねばならない。

以 上