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(本データ掲載者記/2005.5.12)
 岐阜県選管が、上告理由書及び上告受理申立理由書を提出しました。
県選管の反論の ○ は個々の要点、 ■ はまとめ的な部分とみられます。上告受理申立書もおおむね同様の内容のようで、それを理由に公表されなかったようです。

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 可児市議選を無効とする名古屋高裁判決に対する上告理由書の提出について


 平成17年3月9日付けで判決言い渡しのありました可児市議選を無効とする名古屋高裁判決につきまして、3月18日に、「原判決を破楽し、さらに相当の判決を求める。」という趣旨で最高裁判所あての上告状を送付したところです。
 このたび、上告に必要な上告理由書を、本日(5月11日)、名古屋高等裁判所あて発送しましたのでお知らせします.
 なお、上告理由書の概要は、別添のとおりです。

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可児市議選を無効とする名古屋高裁判決に対する上告理由の概要
                            岐阜県選挙管理委員会

1 上告理由のポイント:トラブル発生時における市選管の管理上の過誤について
【名古屋高裁の判断】
● 投票の記録が確実に行われることが保障されていない状況下で投票させたこと、投票機の異常を短時間で解消し、待機中の選挙人に復旧を要する時間について正確な情報を提供する等、所要の措置をとらなかったことに過誤がある。

【県選管の反論】
 ○ 電子投票は機械で行う以上、トラブルが絶対に起こらないとはいえない。
  ・ 電子投票特例法自体が、機械的な事故は不可避であることを想定している。
  ・ 投第の記録が確実に行われることが保障されていない状況であったことは、ログ分析を待つまでは誰にも判別できなかった事情である。

○ トラブルの原因を短時間で突き止め、適切な解消や正確な復旧時間の予測は、電子機器トラブルの性格上不可能を強いるものである。

○ 投票現場では、投票の記録が確実に行われているかどうか判別できなかったことを、できる、との前提に判別せよと義務づけ、結果できなかったことを過誤とするのは、不可能を強いるものと言わざるを得ない。

○ 一部の投票端末に異常ランプが表示される等通常の状況ではなかったとはいえ、可能な限り投票の機会を確保しようとして、動作可能な他の投票端末によって投票を行わせようとした投票管理者等の対応を過誤と評価することはできない。
 
○ 異常事態を短時間で解消するには、電子投票特例法では紙の投票に切り替える等の措置は認められないことから、投票機の交換等の措置が必要となり、これには時間を要する。

○ 電子投票制度は、迅速かつ正確な開票作業を行わしめるとともに、様々な条件を有する有権者に投票の機会を確保するため採用された制度である。


■ 投票機の異常が発生した際の対応として、その異常を短時間で解消することや正確な復旧時間を提供することはほとんど不可能と言えるが、これらの対応ができなかったことを選挙管理上の過誤とする判決に従えば、投票の機会の保障を拡大する機能を有する電子投票は、実質行えないことになる。

■ このことは、公職選挙法が目指している「投票の機会の拡大」、憲法第15条の保障する参政権に含まれる「投票の機会の実質的確保」に反する、違憲、違法の判断と言わざるを得ない。

2 上告理由のポイント:電子投票機の異常により、投票を断念した選挙人の数について
【名古屋高裁の判断】
● 受付前で、投票できず待機した1,000人を相当上回る選挙人のうち、投票せずに帰宅し、投票所に再投票に訪れなかった選挙人が8人以上存し、8票以上は投票されていなのは確実であるとして、無効と判断した。
〔参考:8票について〕
 ◇ 本件選挙における最下位当選者と次点者との差35票から、本件投票機が電子投票特例法の要件を満たしていないこと等を原因として発生した選挙の結果に影響を及ぼす恐れのある票27票を差し引いたもの

【県選管の反論】
○ 人数の証拠について、原告側に協力している数人の陳述書を鵜呑みしているだけで、客的証拠に基づく認定を行っていない。また、裁判所が再投票しなかったと認定している9人の陳述書のうち、2人については再投票したと陳述しており、証拠の意味づけに重大な問題がある。

○ 1,000人の待機者は全体の数字であって、現実に滞留したのは各投票所当たり単純平均30数人であり、1回の異常発生(延べ44回の異常が発生)による待機者は、単純平均で20数名となり、従来の紙による投票においても、ピーク時に発生しうる状況である。

○ 管理上の過誤とそれを理由として再度役票に来なかったこととの因果関係が必要とされるところであるが、その検討がなされていない。
 ・ 選挙権は、権利性が非常に強い国民の権利であることから、その行使は国民の任意に委ねられていると解すべきであり、再度投票に来なかった者の全てを管理上の過誤にすることは、広きに矢する判断である。

■ 裁判になって初めて作成された陳述書に対する評価が、経験則ないし採証法則の適用を誤り又は審理不尽の違法があると言わざるを得ない。

■ 当該選挙が無効となれば、投票した者の投票行為が全く無に帰することになることや当選者の地位を奪うことになり、選挙人及び被選挙人の参政権を損なうことになる。

■ 投票を断念した選挙人の数の雑認に当たり、選挙人の自由意思により投票を断念した選挙人について何ら言及していないことは、自由な意思での投票行為の取捨を重視する憲法第15条の解釈に反していると言うべきである。

3 上告理由のポイント:本件選挙の特殊性について
【県選管の主張】
○ 電子投票の最初期に行われた、今後のリーディングケースともなる重要な事件である。 
・ トラブルが発生したときの対応等について、電子投票の特殊性を検討せず漫然と従来の紙での投票と対比する考え方で判断すると、今後電子投票の採用が躊躇されてしまう。

○ 電子投票の経験の蓄積がほとんどないこと、また、電子投票機器の特質(電子機器のトラプル発生の可能性を完全に排除することは困難であり、かつ、原因の解明も困難である場合が多いこと。)を踏まえると、市選管の対応を管理の過誤と評価するのは、不可能を強いるものである。

■ 裁判所の判断も、このような電子投票の特殊性を加味して判断されるべきであり、電子投票において電子機器のトラブルが発生した場合、選挙を無効としないために、現行法上可能であった対策が指摘されるべきである。