平成17年2月23日判決言渡 同日原本領収 裁判所書記官
平成15年(行ウ)第4号 公有財産引渡請求行政事件
平成16年11月24日 口頭弁論終結
             判        決
第3 当裁判所の判断
2ア 地方自治法242条の2以下に規定する佐民訴訟は,「普通地方公共団
  体の住民」のみが提起することのできるものであり,同条1項に規定する
   「住民」とは,「市町村の区域内に住所を有する者」(同法10条1項)
   をいうと解される。したがって,住民訴訟においては,原告が当該地方公
   共団体の区域内に住所を有することが訴訟要件となる。
    ところで,民法において自然人の「住所」とは,「各人ノ生活ノ本拠」
    (民法21条)をいうところ,地方自治法において特に別異に解すべき事
   由はないから,同法10条1項における「住所」とは,各人の生活の本拠
   を指すものであり,生活の本拠とは,当該居住者の生活関係の集中してい
   る場所的中心をいうと解される。
    被告は,地方自治法242条の2第1項に規定する「住民」に該当する
   か否かは,当該市町村に住民票を有するか否かにより判断すべきであると
   主張する。しかし,住民票は住民の生活の本拠を椎認する重要な資料では
   あるものの,住民票の有無のみによって生活の本拠を認定するのは相当で
   はなく,居住者の客観的居住の事実を基礎として,これに居住者の主観的
   居住の意思を総合考慮して判断するのが相当である。
  イ そこで検討するに,前記認定事実よれば,原告は,高山市内に土地及び
   建物を所有し,1年のうち約9か月は同建物に居住しており,原告の生活
   の中心は亀岡市よりも高山市であると認められる。また,原告自身も高山
   市の住民であるとの意識を有している。原告はいずれ亀岡市に帰ろうと考
   えているが,それは将来のことであり,また,現在の客観的居住の事実及
   び主観的居住の意思を総合考慮すれば,原告が亀岡市に住民票を有し,1
   年に1か月程度亀岡市で生活している事実を考慮しても,原告の生活の本
   拠は高山市にあると判断するのが相当である。
    したがって,原告は高山市の「住民」であり,本件住民訴訟の原告適格
   を有するというべきであるから,被告の主張は採用することができない。
平成17年2月23日