県営渡船に関する情報公開訴訟で住民側

の上告を受けて最高裁が弁論開始の決定

                          2005年3月10日
         くらし・しぜん・いのち 岐阜県民ネットワーク 寺町知正
                TEL・FAX 0581−22−4989
  
    本日最高裁から、本日、下記の通知が届きましたのでご案内します。

 ≪訴訟の意義≫
 岐阜県及び愛知県は、単独あるいは共同で県営(舞料)渡船事業を行っていま
す。しかし、この多く(岐阜市の「小紅の渡」を除く)は、殆ど利用のない実態
です。それにもかかわらず周年全日執務した、として多額の委託料等が支出され
続けて来ました(総額方式)。1999年度からは運行実績に応じて支払う契約
に変わりました(実績方式)。
 “カラ”業務というしかないにもかかわらず、常時勤務したとして虚偽の業務
報告をなし、県もこれを黙認してきたと判断されます。業務報告が事実と異なる
ように故意、秘密裏に粉飾されていたわけですから、極めて悪質であり、同時に
これらを県民が知ることは困難で、正当な理由がありますので、1999年6月
から過去4年分と1999年の予算分約2200万円について住民監査請求、住
民訴訟としました。
 “カラ”業務の核心の証拠というべき「業務報告書(船頭の勤務日誌)」のほ
か、県の支出関係の各種書類等の公開請求に対して、非公開(部分公開)とされ
たので、住民訴訟の提訴と同日に非公開処分取消訴訟を提訴したものです。
 最高裁が、原告の上告を受けて弁論を開くということは、高裁判決が見直され
ることが確実といわれています。私たちに対する04年1月16日、同6月29
日の最高裁判決に続いて、県の非公開体質が強く指摘されるものと予想します。
 なお、この情報公開訴訟で多くの点で敗訴していた県も無論上告していますが、
これは、3月8日付けで全て棄却されました。

 本日3月10日(木)2時半〜

        岐阜県弁護士会館2階会議室

  レクチヤー及び関連資料の配布

《事件》  平成13年(行ツ)第280号  平成13年(行ヒ)第263号
 県営渡船情報非公開処分取消請求上告事件 最高裁判所第三小法廷
上告人兼申立人  寺町知正 9外   被上告人兼相手方 岐阜県知事
提訴1999年8月25日→岐阜地裁判決  00年9月28日
        双方控訴→名古屋高裁判決  01年9月28日
    双方上告→     弁論05年4月19日午後1時半

《経過》
◆平成11年(行ウ)17号  県営渡船情報非公開処分取消請求事件
原告・県民ネット運営委員10名 被告・岐阜県知事 提訴・99年8月25日 結審00年6月29日   ◇岐阜地裁判決 00年9月28日

◆控訴審 10月10日 県が控訴    平成12年(行コ)第53号
      2月27日 原告も附帯控訴 平成13年(行コ)第9号
 結審01年3月27日   ◇名古屋高裁判決 01年9月28日


《非公開情報に関する判決の整理》
◆岐阜県情報公開条例第6条に規定する非公開処分理由のうち次を被告が主張
    1号=個人情報、4号=事業活動情報、8号=行政運営情報

◇合算情報=文書中の公開請求された渡船業務に関する情報と渡船業務に関する      以外の情報が合算されて記録されている情報

◇請求外情報=文書中の公開請求された渡船業務に関するもの以外の情報

 ○=原告勝訴部分   ●=原告敗訴部分  県土木=大垣土木事務所

    非公開部分の分類 処分理由 地裁 高裁 最高裁
◆非公開処分1= 県土木の渡船に関する文書◆ 見込み
 (三)委託の検査調書中の立会人の氏名      1  ○  ○  ○
 (四)渡船場業務日誌に記載の勤務者名(船頭名) 18 ○  ● ●
 (五)渡船組合の代表者名(組合長名)      4  ○ ○ ○
 (六)領収証(書)に記載の納入業者の印影 4  ● ○ ○
 (七)領収証(書)の納入業者の住所、氏名等   4  ○ ○ ○
 (八)支出金調書中の海津町の口座番号  8  ○ ○ ○
 (九)旅費支出金調書・内訳書中の合算情報(旅費)×  ● ● ○

◆非公開処分2=県土木の船の検査に係る文書◆
 (一)船舶検査手帳に記載の検査員の氏名・印影  1  ○ ○ ○
 (二)振込票・受取書の出納印の取扱銀行担当者名 1  ○ ● ●
 (三)日本船舶検査機構の銀行名、口座番号、印影 4  ○ ○ ○
 (四)物品登録調書に記載の船や備品等の取得先  4  ○ ○ ○
 (五)請求外情報(取得物品一覧表関係) ×  ●  ● ○

◆非公開処分3=県土木の海津町への出張に関する文書◆
 (一)(三)(五)職員の氏名・印影(H9年6月以前)   1  ○ ○ ○
 (六)請求外情報、合算情報(出張旅費関係) ×  ● ● ○

◆非公開処分4=岐阜土木事務所の県営渡船に関する文書
    請求書に記載された担当者名(岐阜市職員) 1  ○ ○ ○

※ 非公開処分1の(一)(二)、非公開処分3の(二)(四)は、職員の給与の号・級、出張旅費の振り込み口座等であり、原告は訴訟の当初より公開を求めていない。

◆ 船頭名について
◇1号の個人情報該当性
 第1審判示において、「本件渡船場越立業務は、私的な団体である本件渡船組合の組合員が海津町に代わって右業務を遂行するものであり、公務そのものとはいえないが、本件渡船組合によって運営されている渡船場の路線は、道路交通法上は県道と認定され、かつ、本件渡船組合は、岐阜県から、海津町を通じて右業務に関する委託料の支払を受けているのであるから、本件渡船場越立業務は公務に準じるものというべきである。したがって、本件渡船組合の勤務者名は、特段の事情のない限り、私生活上の事実に関する情報ではなく、性質上公開になじまないようなものでもないから、本号により保護が予定されている情報には当たらないというべきである。そして、本件においては、右特段の事情は見当たらない。」(第1審判決文、40頁10行目ないし41頁5行目)と明確に、岐阜県の公務に準ずる、として公開を命じた。

 しかし、原判決は、「渡船場業務日誌の勤務者名については、本件渡船場越立業務は、私的な団体である本件渡船組合の組合員が海津町の委託の結果、同業務を遂行するものであり、その勤務者は私人であることが認められる。」(第2審判決文、7頁19行目から23行目まで)とし、「私人からみれば、同業務における各私人の勤務状況に関する情報という側面をも有するものであって、この種の情報の公開により、常に、識別された各私人のプライバシーの侵害を引き起こすことがないと断定し得るか否かは疑問である。」(第2審判決文、8頁5行目から8行目まで)と極めて情緒的に判断している。
 「その私人の所属する私的団体が地方公共団体から業務の対価として委託料等の支払いを受けている等の事実を指摘する部分もあるが、本件条例には、その事実のある私人に関する情報の公開を義務付ける規定は存せず」(第2審判決文、8頁19行目から21行目まで)と判示して、非公開を追認した。

◇8号 行政運営情報該当性
 「そうすれば、上記勤務者名の情報の行政運営情報該当性を検討するまでもなく、上記渡船場業務日誌に記録された情報について、私人のプライバシーを侵害しないか否かを審査しないまま、勤務者名の情報を公開しないとした本件処分一の判断部分を、本件条例の下で、違法とまで断ずることは困難である。」(第2審判決文、8頁下から3行目から次頁1行目まで)と判示した。
 しかし、船頭名は公開されるべきであるから、非公開事由8号の追加主張に従い、上記勤務者名の情報の行政運営情報該当性を検討する必要がある。検討すれば、行政運営に支障がないのは明白である。
 もっとも、追加の時期が控訴審になってであり、理由が「住民訴訟など起こされているし、船頭名が公開されたら渡船業務を引き受けない、というので県営渡船業務に支障がでる」との旨であるから、公開請求時の状況ではないので、追加理由としてはそもそも認められないものである。

◆指定金融機関の職員の「姓」に関して 「振込依頼票(控)等の銀行の担当者についても、担当者が私人であることは明らかであり、これについて、ただし書各号に該当するものとは認められないから、公開しないことのできる情報に該当すると認めることができる。」(第2審判決文、9頁3行目から6行目)と判示して、非公開を追認した。

◆【請求対象外情報・合算情報の扱い】 「本件条例は、請求書には請求しようとする公文書を特定するために必要な事項の記載を要求するとともに、公文書の公開の請求に対する決定において、公開をするかどうかの決定をしなければならない対象は右請求に係る公文書としている(9条2号、10条1項)から、実施機関は、請求に係る公文書の件名又は内容を特定した上、右公文書の公開をするかどうかの決定をすべき義務を負うものであるが、それ以上に、請求に係る公文書以外の情報が記録されている公文書についてまで、公開をするかどうかの決定をすべき義務がないことは明らかで、公開をしないとしたことに違法はない」(第1審判決文、51頁3行目以降)とし、 「合算情報は、請求の対象に係る情報を含んではいるものの、それ以外の情報とが不可分一体となっているからこそ、これが公開されるべきであるか否かがまさに問題となる。前示のとおり、実施機関において、請求の対象外の情報は公開をすべき義務を当然に負うものではないから、この場合には、公文書の部分公開の可否によって解決すべき問題である。合算情報は、一つの数字として現れ、容易に分離することができないから、当該分離により請求の趣旨が揖なわれることがないかどうかを検討するまでもなく、公開すべき義務はなく、公開をしないとしたことに違法はない」(第1審判決文、52頁7行目以降)とした。
 第2審も同様である。

【過去の最高裁判例】
 《合算情報》 最高裁判所第二小法廷2004年1月16日判決/平成13年(行ヒ)第323号事件(上告人岐阜県教育委員会教育長高橋新蔵/被上告人寺町知正外9名)は、本件条例に係るものである。原審(高裁判決)は、条例○号該当という通常の非公開部分だけでなく「合算情報」についても公開を命じた。上告人は、「請求されていない情報が加わっており容易に分離できないから公開しないことができる」、との旨の主張をしたが、当該最高裁決定において排除されたから、合算情報を公開すべきことが確定した。
 これ以外の最高裁判例は見当たらない。

 《請求外情報》 最高裁判例は見当たらない。

 全国で、合算情報や請求外情報を理由として非公開とする自治体は聞くことがなく、それだけ、岐阜県の非公開体質が如実である、と考えられる。

《関連訴訟)
◆平成11年(行ウ)16号 県営渡船委託料損害賠償請求事件
◇原告 岐阜県民ネットワーク運営委員10名 
◇被告 梶原拓、歴代大垣土木事務所長の個人5人、渡船組合長2人、海津町
◇提訴日 1999年8月25日     ◇請求額 金2258万円
◇公開訴訟と同時に提訴。01年5月、渡船組合長側から和解の申し出があったので、裁判長が双方に額を示したが原告は和解を拒否した。その後、審理が続行されている中、04年12月、裁判所がさらに高額の額を示して和解を双方に求めたが、原告は拒否した。まもなく第1審が結審する見込み。