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      原  告    寺  町  知  正   外九名 (略)

  被  告    梶  原    拓     外八名 (略)

  県営渡船委託料損害賠償請求事件
        訴訟物の価格   金九五〇、〇〇〇円
        貼用印紙額      金八、二〇〇円
予納郵券     金二五、七九〇円

  一九九九年八月二五日
岐阜地方裁判所民事部御中

         請 求 の 趣 旨
一、被告らは、岐阜県に対し、連帯して、以下被告毎に示す金額及びそれに対する本訴訟送達の日から.完済まで年五分の割合による金員を支払え。
 被告梶原拓は金二七一九万一七五〇円、被告伊藤俊樹は金五五五万七〇〇〇円、被告内田鉄男は金五六〇万四〇〇〇円、被告大杉幸靖は金五八〇万一〇〇〇円、被告渡辺武彦は金四三四万四七五〇円、被告渡辺建蔵は金五八八万五〇〇〇円、被告平野義明は金二七一〇万七七五〇円、被告横山信義は金一三八五万〇二五〇円、被告瀬古章は金一三二五万七五〇〇円。
二、訴訟費用は、被告の負担とする。
  との判決、ならびに仮執行宣言を求める。

         請 求 の 原 因
第一 当事者
一 原告は肩書地に居住する住民である。
二 被告梶原拓は、八九年以来、岐阜県知事の職にある。
三 被告伊藤俊樹は九五年度の、被告内田鉄男は九六年度の、被告大杉幸靖は九七年度の、被告渡辺武 彦は九八年度の、被告渡辺建蔵は九九年度の、それぞれ歴代の岐阜県大垣土木事務所長である。
四 被告平野義明は、九一以来、海津町長の職にある。
五 被告横山信義は海津町の日原渡船組合長、被告瀬古章は海津町の森下渡船組合長である。

第二 県営渡船事業の概要と事業委託契約
一 岐阜県、愛知県は道路法第二条において「『渡船』も道路の一つとされていること」を前提に、五 五年(昭三〇年)頃、県境を接する渡船の一部に関して、両県で協定を結び、それまで「慣行的に集落等が行なってきた渡船行為」を、「県道として認定」し、これを「県営無料渡船事業」としてきた。また、両県とも、それぞれの県内で行われてきた渡船も県道として認定し、それぞれ単独で運営してきた。岐阜県には、海津町に日原渡船、森下渡船があり、岐阜市に小紅の渡がある。愛知県には愛知・日原(塩田)渡船、葛木渡船、西中野渡船がある。
二 渡船業務は、県が地元自治体に委託契約(西中野のみ報酬)し、さらに自治体が地元渡船組合に委託する形態をとってきた。
  契約における運行時間は四月一日〜九月三〇日が午前六時〜午後七時、一〇月一日〜三月三一日が午前七時〜午後六時(除・小紅の渡)。運行日は、通年全日である(除・小紅の渡)。年度当初の契約で年間の委託料総額を明示し、事業後に業務実績(主として日数×人・日当)に応じて精算する。
 県道としての渡船であるから、誰がいつ利用しても無料であるものの、車の普及や道路整備の拡充で小紅の渡以外は、七〇年代頃より、利用者が激減した。この利用者の激減は、県作成の道路史や渡 船史、そして海津町史などにも記録・明示されており、関係者は十分に認識していた。

三 渡船業務契約の条項は、どの渡船も概ね同様である。
  岐阜県を甲、海津町を乙とする契約の要点は「第八条、乙は、次の各号に該当する場合を除き乗船を拒み、又は出船を拒絶し、若しくは出船を遅延させてはならない。(一)暴風雨、出水その他の災害が、発生し運行上の支障があるとき (二)船体に故障があるとき (三)その他甲が必要と認めたとき」とされている。「第九条、渡船の運行に当たっては、次の各号に定める事項を遵守する ( 一)越立期間中は、正当な理由がある場合を除き、渡船場を離れてはならない (二)船内に予備槽 具を設備し・・ (五)出船の中止又は遅発若しくは搭載量の制限をする必要がある場合には、直ちに甲の指示を受け、必要な措置を講じ、その旨を渡船場に掲示すること・・ (七)業務日誌を備えつけ、勤務中の状況を記載すること」とされている。なお、第三条で委託料は年間予算額を総枠として明示し、かつ四月及び一〇月の概算払いとされている(甲第二号証)。

第三 委託料及び補助金の法的位置付け
一 本件県営渡船は、手続的・形式的には「県道の維持管理業務としての委託事業」である。同時に、元来民間の営業行為であったものを、多数通行の用に供するその公益性及び安全性確保のために県道として認定したものであるから、実体的・実質的には「地域の慣行の民間渡船業務に対する補助事業 」である。
二 委託契約には、公法上の契約と私法上の契約があり、後者は地方公共団体の事務事業、調査、研究等を他に委託し、その成果を得る場合に経費支出する。委託契約は地方自治法(以下、法という)第二三四条《契約の締結》によって結ばれ、契約の履行としての役務の提供に応じて、契約に定める額、方法で委託料を支出する。法第二三四条の二第一項《契約の履行の確保》は職員の監督、検査義務を定め、同項所定の契約の適正な履行を確保し、又はその受ける給付の完了を確認するものとされている。即ち、契約を締結した場合、契約の相手方の履行が誠実になされない限り所期の目的を達成することができないから、契約の履行を確保するために法律上の制度として定めたものである。右条項は法第二四三条の二第一項《職員の賠償責任》に例示する四種のうちの一つであり、普通地方公共団 体の財務分野において極めて重要な規定とされ、これらの事務に従事する職員の賠償責任を明文化し、その責任を明確化したものである。
三1 補助金は、法第二三二条の二《寄付又は補助》「公益上必要がある場合においては、寄付又は補助をすることができる」により公益性を有する特定の事業または活動に対して交付されるもので、法令に基づいて交付する場合及び特定の事業又は研究が公益上必要がある場合に、これらを助成するために交付するものである。
 2 補助金であるかどうかは、単に予算上の名目が「補助金」とされているかどうかではなく、公益性を有する特定の事業又は活動に対して交付される主旨であるかどうかによって判断される。さらに補助の是非について自治省は「公益上必要であるかどうかの認定は全くの自由裁量行為ではないから、客観的にも公益上必要であると認められなければならない」(昭二八・六・二九自行行発一八六号)と通知している。公益上の必要を欠く場合、当該支出は法第二三二条の二に違反する。
四 委託事業及び補助事業は、特別に外部に委託しあるいは補助してまで行うべき必要性、目的性があったのか、それが当該自治体の財政上の余裕との関連における重要性と緊急性の程度、合目的性、有効性、公平・公正など他の行政目的を阻害し行政全体の均衡を損なうことがないか、など諸般の事情を考慮してなされなければならない。支出された金員が、それに対応する給付あるいは補助目的に該 当する公益的活動、行為がなされていなければその支出は違法となる。

第四 海津町の森下、日原渡船はカラ委託である
一 小紅の渡は契約が履行されている。葛木、愛知日原(塩田)、西中野渡船は、船頭待機時間が契約に照らすと短縮されてはいるが、一応は船頭らが駐在している時間が実際にある。しかし、海津町の二渡船においては、船頭の駐在は全くなされてこなかった。渡船施設の管理も殆どなされていない。本件支出は「県営渡船業務のために常駐し、かつ、誰から運行を求められても直ちに運行する」という行為が契約通り実行されていることに対してなされる支出である。しかるに海津町及び日原・森下渡船組合は、業務実態とまったく異って、一年中全ての日に駐在したように公文書を虚偽作成し、運行人員なども偽って記載した業務報告書を県に提出し、結果として海津町及び両組合は岐阜県から契約所定の委託料を得続けてきた。
二 渡船組合及び海津町の故意=カラ委託の実態的裏付け
 1・常駐小屋海津は連日待機可能な小屋の状況になく、赤旗(欠航)、白旗(運行)もない。他の渡船駐在小屋は掃除、整備もされて、テレビもあり、待機状態を伺わせる。  
  ・小屋装備森下はロープがあるだけ。日原は何もない。他の渡船駐在小屋は浮輪、救
    胴衣、カッパなどがある。
  ・救命胴衣小屋に配置されていない。
・ 着船場海津町は未整備で土のまま、乗降の安全にも大きな危惧がある。自動二輪やリヤカーが乗降できる状態ではない。とうてい「管理」とはいえない。他の渡船は整備済み。
・ 対岸小屋 森下は荒れてゴミ捨て場同様。赤旗白旗の表示も全くの虚偽。看板も直していない。視界を遮る樹木高等から、長年来「対岸の旗は目視不可能」であったことは明瞭。
  ・着船場から背割堤(中堤防)にある小屋までは、全く未整備、未管理状態。
   腰や背丈の草が生え放題(夏に堤防管理者の建設省が草刈りしてくれるとのこと)。  
   日原(塩田)渡船対岸小屋も荒れ放題。
  ・アプローチ 着船場から相対する着船場までの通路は、自転車など通行できる状態ではないが、業務報告書では、自転車を多数運送したとされている。
 2・葛木渡船、日原(塩田)渡船関係者は、「海津の方は船頭は常駐していない」と述べている。
 3・各渡船業務報告を比較すると愛知県側や小紅の渡と比べて、海津町は「運送数(人員、自転車)
   天候・増水など河川状態、欠航状況、燃料・暖房用灯油使用状況など」の諸点が不整合である。
・海津では自転車が多く、利用者が奇数も多い。
  ・草刈りなど関係者を除くと、利用実績はほとんど無い。
 4 九九年五月〜六月、原告らが、渡船小屋の県の掲示した看板に従って海津町役場建設課に電話(五月二〇日、二六日、三一日、六月一一日)もしくは訪問(五月二一日、六月一一日)して「乗船したい旨」申し出たが、「今すぐや明日というのはできない。三〜四日、できれば一週間位前には連絡して欲しい」との回答であった。九九年になってすら、県との委託契約違反である。
三 県の監督検査の杜撰・職務怠慢
 1 以下は、海津町や組合の隠蔽工作に関係なく客観的に明瞭な事実であって、県の検査の際に直ちに認識されて当然のことである。
・ 日原は「定員一八名・岐阜県」と看板が掲示されているが、船は構造上一二名とされ(船検査申請書及び船の記載)、契約も一二名とされている。森下は、定員や運行時間などの表示すらない
・ 日原丸は、九七年に「中間検査」が実施されてはいるが、船には済証を表示していない。
・ 森下対岸小屋の渡船案内を、長年来、重大な誤記のまま掲示し続けた(但し、原告らが監査請求を告知したとを聞き、関係者らが現地へ急行、巡回し、目についたこの看板を急遽撤去した)。
・ 赤旗、白旗の常備もなく、対岸小屋が見えないことは、現地へ行けば直ちに認識可能である。
・ 着船場は自転車や普段靴では難渋な状態。とても着船場とはいえず、周辺川岸と何ら変わらない 
2 土木事務所関係者は、道路パトロールや委託業務検査などで現地を日常的に訪れ、時には乗船し、対岸の船着場の管理状態も承知していてるにもかかわらず放置してきた。
 3 九九年からは「船頭は常駐せず」の看板を岐阜県自ら設置するなどあまりに故意、杜撰である。

第五 本件支出の違法性
一 道路法第一〇条「一般交通の用に供する必要がなくなったと認める場合においては、当該路線の全部又は一部を廃止することができる」とされており、客観的に不要となった道路は、廃道とすることができる。用地取得・所有権設定及び路面整備も不要な「渡船」は、利用者が激減しかつ将来の利用の予測がなければ、無用多大な支出を強いられるのであるから、速やかに「廃道」とすべきである。
 もし、廃道としないとしても、例えば、一部の山間峠など長年来「(期間)通行止め」がみられるが、本件「道路」も「通行止め」にすれば無用な支出は防げたのであり、県の著しい怠慢である。
  少なくても、海津町における渡船はもはや、県が公費でなすべき事業とはいえない。
二1 海津の二渡船は、利用者が皆無に近く、渡船行為の公益性もなく、よって道路としての必要性もないにもかかわらず、県は廃道の検討を怠り、契約に反した従事態勢を黙認したまま、業務委託を漫然と継続し、毎年毎年多大な支出を継続してきた。
   以上、「委託料」としての本件支出は業務がなされていないから、当然に違法であり、法第二三四条の二第一項《契約の履行の確保》に違背する違法な支出である。
   また、実質的に補助金であるが、本件渡船事業は長年来、何らの公益性も持たず、補助事業に値しないから、法第二三二条の二《寄付又は補助》に違背する違法な支出である。
   そもそも、普通地方公共団体は、法第二三二条一項《経費の支弁等》によって、その事務を処理するめたに必要な経費を支弁するものであるが、具体的な支出を普通地方公共団体の事務処理のための経費と解することができない本件支出は違法である。加えて、不要、不効率な支出として法第二条一三項「最小の経費最大の効果をあげる」、地方財政法第四条「必要かつ最小の限度をこえて支出してはならない」に反した違法な支出である。
 2 これに該当する九五〜九八年度の既支出額は、海津・日原渡船分一一一〇万一二五〇円、森下渡船分一〇二〇万五五〇〇円、これに九九年に設置したとされる「船頭は常駐せず」の看板二枚の代金八万四〇〇〇円を加えて、総合計二一三九万〇七五〇円である。
   さらに、契約締結は支出行為とみなされ得ることから、以下も支出と認定される。その額は、九九年四月一日の契約締結によって正規に確保されている日原渡船分二七四万九〇〇〇円、森下渡船分三〇五万二〇〇〇円、合計五八〇万一〇〇〇円である(別表−1)。
   なお、日原・森下両渡船の委託精算額は、九五年〜九七年はほぼ満額であり、かつ、両渡船とも全く同額である。ただし、九八年の森下渡船分が前三年より極端に少ないのは、当年九月の台風で船が損壊し名実ともに運行不能であったから、同じく日原渡船も、前三年より少ないのは、同様に台風で運行日数が減じたから、とされている。

第六 被告らの責任と返還すべき金額
  被告は、以下被告毎に示す金額について、対応する金員を、連帯して返還する責任がある。よって原告は、地方自治法第二四二条の二第一項四号に基づき、岐阜県に代位して損害の賠償を請求する。
一 岐阜県知事は県の支出全てに責任がある。近時、公費支出に厳しい姿勢が求められており、本件を 多年にわたって放置してきたことは、看過しがたい責任がある。よって、海津町の九五〜九八年度の 渡船分として支出した金二一三〇万六七五〇円と、看板代八万四〇〇〇円、九九年度契約締結分として措置している金五八〇万一〇〇〇円の合計二七一九万一七五〇円を賠償しなければならない。
二 本件委託契約は岐阜県知事(代表は大垣土木事務所長)と海津町長が締結したものである。毎年度の大垣土木事務所長は、当該事務所の支出に関し権限があり、かつ検査監督にかかる権限と責任を有している。加えて現地を自ら訪れるなど、本件の具体的状況を知り得たにもかかわらず、正確かつ厳正な検査を行い、改善をはかることを怠った故意、過失責任は重大である。よって、
 1 被告伊藤俊樹は、九五年度所長として委託料金五五五万七〇〇〇円の返還責任がある。
 2 被告内田鉄男は、九六年度所長として委託料金五六〇万四〇〇〇円の返還責任がある。
 3 被告大杉幸靖は、九七年度所長として委託料金五八〇万一〇〇〇円の返還責任がある。
 4 被告渡辺武彦は、九八年度所長として委託料金四三四万四七五〇円の返還責任がある。
 5 被告渡辺建蔵は、九九年度所長として委託料金五八〇万一〇〇〇円と看板代八万四〇〇〇円の合計金五八八万五〇〇〇円の返還責任がある。
三 被告平野義明は、九一年以来海津町長であり、本件契約の相手方であって、さらに、地元渡船組合へ再委託する契約の名義人である。被告は、毎年の海津町一般会計予算に本件事業委託料を歳入として計上し、年度途中に当該事業に支出しており、渡船の全容を承知している立場である。海津町長は、県からの業務委託契約に則り忠実に渡船運行業務をなすべきところ、長年にわたってこれを故意になさず、しかも虚偽の報告をなし、多年にわたって委託料を得た。よって悪質かつ重大な責任があり、その返還すべき不当利得は九五年から九九年の委託料合計金二七一〇万七七五〇円である。
四 本件委託は海津町を介在させたとはいえ、実質的には岐阜県が地元渡船組合を構成する船頭らの集 団に委託料支出を行ったものである。日原、森下地区渡船組合長及び組合員は、契約に則り忠実に業務遂行すべきところ、これを故意になさず、しかも虚偽の報告をなし、多年にわたって委託料を得た。組合長は、本件事業の請負契約の代表であり、当該渡船業務及び施設管理の全体を把握しており、悪質かつ重大な責任がある。よって、
 1 被告横山信義は、海津町の日原渡船組合長として、その返還すべき不当利得額は九五年から九九年の委託料合計金一三八五万〇二五〇円である。
 2 被告瀬古章は、海津町の森下渡船組合長として、その返還すべき不当利得額は九五年から九九年の委託料合計金一三二五万七五〇〇円である。

第七 住民監査請求の前置
一 原告らは、一九九九年六月二一日付けで「委託料は、渡船に実態がなく違法であるので、岐阜県関係分について、岐阜県関係者らに四九六二万六九四七円の損害賠償及び海津町関係者らに二一五〇万六七五〇円の不当利得返還の勧告、さらに九九年支出予定額合計一三二四万三五〇〇円の差し止めを求める。」との内容の住民監査請求を行った。
二 これに対して岐阜県監査委員らは、八月一九日付けで、次の主旨で却下、棄却した(甲第一号証)。 
1 平成七年の岐阜県情報公開条例の施行によって、公文書の開示請求が可能であったから、平成一〇年六月二一日以前の請求は、一年を越える正当な理由はない。よってこれ以前の分は却下する。
 2 海津町関係者について請求は「県の職員」ではないから、要件を欠くので却下する。
 3 渡船は県道の一部として管理すべき責務があり、町、そして地元と委託契約している。奨励的な意味合いである補助金の性格はない。渡船場近くや漁等を行っている組合員が、当番の組合員に連絡を取ることで、常駐せずに越立業務に就く体制をとっていた。利用者の有無にかかわらず、運行を確保する契約であるから、違反ではない。
   業務日誌の記載は正確を欠き、誤解を招く記載があった。大垣土木事務所の管理不備もあった。
   渡船の存続の判断を含めた管理のあり方は、利用者数だけでなく、将来計画等を考慮して、知事が総合的に判断すべきものである。
《意見》 より的確な渡船事業の管理運行がなされるよう望む。

第八 業務の秘匿
 本件業務の実態、書類の虚偽報告など極めてごく一部の関係者のみが極秘裏に行ってきたことであり、県民が渡船への支出の額、報告の内容、収支の実態などを知る事は到底不可能であった。本件に先立つ住民監査請求は、原告らが、本年五月にこれらを察し、支出負担行為兼支出金調書や各添付の証拠書類、あるいは現地で実態を確認した中で問題を整理・認識し、かつ速やかな期間のうちになすものであるから、九五年以来の、一期一件ずつのそれぞれの支出毎に、いずれも法にいう「正当な理由」があるものである。

第九 結論
 貴重な県民の税金がカラ支出され続けていることは、許されない。
 監査委員室で聴取しているだけでは何も見えてこないが、現地へ行けば問題は一目瞭然である。飛び移るようなつもりでなければ下船できない『船着場』で、実際に乗客を運んで、あるいは、わずかの風の日の運行ですら船頭が「事故が怖い」「一回の乗員数を五人に制限する」「気が散るから話しかけないで」という状態において、もし事故でも発生したら、道路施設者である知事らの責任は重大である。 
 地方分権の時代の地方の実力及び自浄力を高めるためにも、本件住民訴訟を提起する。

以 上

《添付資料》
別表−1 県営渡船 年度別委託料支出額(九五年〜九九年)集計表

《証拠方法》 
   訴状副本 九部
甲第一号証 監査結果報告書
甲第二号証 本件業務委託契約書
       その他、口頭弁論において、随時、追加提出する。
             右  原  告    寺  町  知  正  外九名
岐阜地方裁判所民事部御中

当事者目録《原告》 略