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●岐阜県裏金事件・住民監査請求のページ


                                  監委第101号
                               平成18年11月7日
「(らし・しぜん・いのち岐阜県民ネットワーク」と
「市民オンブズマン・ぎふ」の呼びかけに賛同した県民
         寺 町 知 正 様
             岐阜県監査委員 木 股 米 夫
             岐阜県監査委員 市 川 尚 子
           岐阜県監査委員 田 中 敏 雄
             岐阜県監査委員 河 合   洌
           住民監査請求について(通知)
 平成18乍9月29日及び平成18年10月25日に提出のあった岐阜県庁不正資金
問題に関する住民監査請求書について、請求の内容を審査した結果は下記のとおりであ
る。                    記
 請求人が、岐阜県庁不正資金問題に関して返還等を求めてなした、本件請求の内容は
概略次の3点と解される。
1 過去20年分の岐阜県の不正資金の全額(含む利息)を返還すること
 2 過去20年間に監査委員であった者に対して支給した給与等を全額返還すること
 3 梶原前知事は、16年間に受領した退職金全額を返還すること
 地方自治法第242条第1項に規定する住民監査請求は、違法又は不当な財務会計上
の行為により、地方公共団体に財産的損失を生じ、又は生じるおそれのある場合に、当
該行為の是正又は未然の防止を目的としてなされるものである。
 また、同条第2項では「前項の規定による請求は、当該行為があった日又は終わった
日から1年を経過したときは、これをすることができない。ただし、正当な理由がある
ときはこの限りではない。」としている。
1の本件請求において、請求人は、特定性について、不正資金として不正に捻出され
た財務会計行為を個別に特定しなくても、本件違法行為による岐阜県の損害の発生を明
らかにできるから、住民監査請求としての特定性に不備はないと主張している。
特定性については、平成2年6月5日最高裁判所判決によれば、「住民監査請求におい
ては、対象とする財務会計上の行為又は怠る事実を監査委員が行うべき監査の端緒を与
える程度に特定すればたりるというものではなく、当該行為等を他の事項から区別して
特定認識できるように個別的、具体的に摘示することを要するものというべきであり、
監査請求書及びこれに添付された事実を証する書面の各記載、請求人が提出したその他
の資料等を総合しても、監査請求の対象が上記の程度に具体的に摘示されていないと認
められるときは、当該監査請求は、請求の特定性を欠くものとして不適法であり、監査
委員は当該請求について監査する義務を負わないものといわなければならない。」旨判示
しているところである。
 この判決の趣旨を踏まえて本件請求についてみると、本件請求の対象とすべき財務会
計上の行為は不正資金の捻出行為自体であり、請求人が事実を証する書面として提出し
た「プール資金問題検討委員会」の報告書には、不正資金を総出した財務会計行為を個
々具体的に摘示されているとは言えない。したがって本件請求は、請求の特定性を欠く
ものというべきである。
 また、請求人は民法上の不法行為に関する規定を基に過去20年分の返還を請求して
、いるが、対象とされた金額は証言等に基づき推測したものにすぎず、返還請求権の対象
たり得る債権として成立しているとは言い難いものである。
 よって、本件請求は、地方自治法第242条に規定する住民監査請求の要件を欠き不
適法である。

 2の「過去20年間監査委員であったものに対して支給した給与・報酬・手当等の全
額返還」については、請求人は、請求要旨によれば、過去に一部の代表監査委員、監査
委員事務局でも不正資金づくり、隠蔽、分割管理がされていたことや、過去20年間不
正資金づくりを発見、是正できなかったことをもって「全ての職務を行っていない。」と
いう理由に基づいて返還を主張している。
 監査委員の給与等は、岐阜県各種委員等給与条例に基づき支払われているが、当該条
例の中では監査委員の給与が月額報酬であるため、一日も勤務しなかった場合は支給し
ない規定はあるが、返還の規定はない。また、過去の不正資金づくりを発見・是正でき
なかったとしても、監査委員の職務の遂行に係る問題であり、公金の支出、いわゆる給
与等の支出の違法性若しくは不当性を摘示しているものではない。
 請求人の主張は、財務会計上の具体的行為の違法性、不当性の主張とは認められず地
方自治法第242条の住民監査請求として不適法である。

 3の「梶原前知事の退職金全額の返還」について、請求人は、請求要旨によれば、前
知事は、知事就任当時から「不正資金づくり」を黙認し、是正しなかったこと及び退職
手当は、地方公務員法や刑法に抵触した場合に返納する定めがあるため、返還を主張し
ているが、知事の退職手当の支給については、知事・副知事及び出納長給料その他給与
条例第5条に規定されており、「この条例に定めるもののほか、給料及び手当の支給に関
しては、一般職員の給料及び手当の例による。」とされている。岐阜県職員退職手当条例
第12条の3によれば、「退職した者に対し退職手当の支給をした後において、その者が
基礎在職期間中の行為に係る刑事事件に関し禁錮以上の刑に処せられたときは、その支
給した退職金を返納させることができる。」とされている。
 請求人は、前知事が就任当時から「不正資金づくり」を黙認し、是正しなかったこと
を原因行為として、地方公務員法や刑法に抵触するとの理由で、退職金の返還を主張し
ていると推測するが、請求人の主張は、知事の職務上の問題であり、財務会計上の具体
的行為の違法性、不当性の主張とは認められず、本件請求は地方自治法第242条に定
める住民監査請求の対象として不適法である。
 以上により、本件全ての請求については、地方自治法第242条に定める住民監査請
求の対象には該当しないため、請求を却下する。