カラ渡船情報
非公開処分取消訴訟


   名古屋高裁民事1部 判決

 6月28日(木)1時15分〜  メモ

    くらし・しぜん・いのち 岐阜県民ネットワーク  寺町知正
         TEL・FAX 0581−22−4989
               ケイタイ 090−1827−0949

《経過》

◆平成11年(行ウ)17号  県営渡船情報非公開処分取消請求事件
◆原告 岐阜県民ネットワーク運営委員 10名
◆被告 岐阜県知事梶原拓
◆提訴 99年8月25日(結審00年6月29日)
◆判決00年9月28日
◆控訴審 10月10日 県が控訴    平成12年(行コ)第53号
      2月27日 原告も附帯控訴 平成13年(行コ)第9号
◆12月14日(協議)1月16日(同)2月27日(弁論)3月27日(結審)
◆01年5月29日(火)判決予定を6月28日(木)に延期

《関連訴訟)

◆平成11年(行ウ)16号 県営渡船委託料損害賠償請求事件
◆原告 岐阜県民ネットワーク運営委員10名 
◆被告 梶原拓、歴代大垣土木事務所長の個人5人、渡船組合長2人、海津町
◆提訴日 1999年8月25日 
◆請求額 金2719万円
◆公開訴訟と同時に提訴。01年5月24日、被告渡船組合長側から和解の申し出があったので、裁判長が双方に受容し得る額を示すように指示(つまり、訴訟経過の中で、裁判所も被告も、違法で損害があったことを認識しているということ)。原告には和解の意志はない。

《処分にかかる文書》



◆処分@◆99年6月3日付け「大垣土木事務所の渡船に関する委託契約書・業務報告書・委託料の支出金調書・証拠書類・旅行命令書及び支出金調書・復命書」

◆処分A◆99年6月14日付け「大垣土木事務所の、県営渡船越立業務に関する船の検査に係る事前決裁書及び支出金調書・船舶検査手帳・物品品目一覧表」

◆処分B◆99年7月28日付け「大垣土木事務所の、管理課及び道路維持課に関する海津町への出張に関する旅行命令書・海津町への出張に関する支出金調書」

◆処分C◆99年6月7日付け「岐阜土木事務所の、県営渡船越立業務に関する以下の公文書・委託料の支出金調書・証拠書類」

争点


◆ 個人情報(プライバシー)(1号)への非該当性
・「個人に関する情報」であって、かつ、「個人が識別できるもの」を非公開の対象としている。
氏名や職名によって個人を識別することはできるが、それは「個人識別」への該当性を認めることができるというだけであり、「個人に関する情報」に該当しない以上、該当性は認められない。

・県の解釈運用基準の例示にもない。逆に「職員が職務を遂行する(した)場合における当該職務に関する情報については、当該職員が識別される場合であっても、該当しない」とされている。

・県の業務の受託者は、契約に従って業務に相応して所定の委託料を得るのであるから、その業務は、当然に県の公務の一部であって、県の職員と同格に本件条例の適用が及ぶことはいうまでもない。業務の対価として日当を得る勤務者も当然である。

・検査関係書類記載の氏名や印影などは、検査確認終了の重要な構成要素である。
 ◎渡船場業務日誌に記載されている勤務者名(船頭名)◆処分@◆
 ◎渡船組合の代表者名(組合長名)◆処分@◆
 ◎船舶検査手帳に記載されている検査員の氏名及び検査員の印影◆処分A◆
 ◎振込依頼票及び振込金受取書の出納印にある取扱銀行の担当者名◆処分A◆
 ◎委託料支出金調書に添付文書に記載の岐阜市の担当職員名◆処分C◆

◆ 事業活動情報(4号)への非該当性(法人の内部管理・営業活動情報)
・本件渡船委託契約は、歴史的・実態的にも、将来的にも、独占・寡占的契約であって、他の者に代替し得るものではなく、氏名等の公開が組合業務に悪影響するおそれは全くない。

・債権者及び債権者に係る住所、店名、印影、口座番号等の情報は、通常の取引において公になっている情報であり、およそ「競争上の地位その他正当な利益が損なわれる」などあり得ない。

 ◎領収書記載の納入業者の住所、氏名等(ガソリンスタンド等)◆処分@◆
 ◎                  同じく納入業者の印影◆処分@◆
 ◎日本小型船舶検査機構の銀行名、口座番号等◆処分A◆
 ◎    同じく検査手帳等の(法人の)印影◆処分A◆
 ◎物品登録調書に記載された船や備品等の取得先◆処分A◆

◆ 行政運営情報(8号)への非該当性
・地方公共団体の口座番号は、各種文書などで広範に周知されている。
 ◎支出金調書中の海津町の口座番号◆処分@◆

◆ 請求外情報、合算情報の非公開の違法性

《条例にない「混同される恐れ」を理由として非公開処分することの適否》



・非公開としていよいことの根拠条文がない以上、違法である。
・他との混同のおそれについては公開の際、請求者に対して説明すれば済む。
・検査機構への振込等の情報は検査の実施を証明、担保する材料の一つ。
 ◎公開請求された県営渡船越立業務に関するもの以外の情報◆処分@◆
 ◎渡船業務に関するもの他のものが合算して記録されている情報◆処分@◆
 ◎物品一覧表中、公開請求された渡船業務に関するもの以外の情報◆処分A◆
 ◎他の情報、合算情報◆処分B◆ 

※(「出張した職員の、級・号給、口座名義」は本件取消請求から除外した) 

《原審被告敗訴部分の適示・判決文別紙の番号》


 1号該当/個人情報、 
 4号該当/事業活動情報、 
 8号/行政運営情報

◆処分@◆ 大垣土木事務所の渡船に関する文書の中の次の部分を非公開
  (三)委託の検査調書中の立会人の氏名              1号 
 (四)渡船場業務日誌に記載されている勤務者名(船頭名)     1号 
 (五)渡船組合の代表者名(組合長名)              1号 
 (七)領収証(書)の納入業者の住所、氏名等           4号
 (八)支出金調書中の海津町の口座番号  8号

◆処分A◆ 大垣土木事務所の船の検査に係る文書等の中の次の部分を非公開
  (一)船舶検査手帳に記載された検査員の氏名・印影        1号
  (二)振込依頼票・振込金受取書の出納印にある取扱銀行担当者名  1号
  (三)日本小型船舶検査機構の銀行名、口座番号、印影  4号
  (四)物品登録調書に記載された船や備品等の取得先        4号

◆処分B◆ 大垣土木の海津町への出張に関する文書の中の次の部分を非公開
  (一)(三)(五)出張した職員の氏名・印影(H9年6月以前)  1号
  (六)請求外情報、合算情報   非条例

◆処分C◆ 岐阜土木事務所の県営渡船に関する文書の中の次の部分を非公開・委託料の請求書送付文書に記載された担当者名(岐阜市職員)  1号

《控訴審での附帯被控訴人(岐阜県)の新たな主張》 
「船頭名が公開されるなら、もう渡船業務は請け負わないと船頭が明言しており、他に替わりにやれる人たちもない。よって、公開すると県営渡船が維持できなくなる。だから、船頭名などは、8号(行政運営情報/公開により行政運営に支障が生ずるおそれがある場合)に該当することを、控訴審で追加主張する。その点を立証するため、海津町の建設課長を担当者として証人とする」と主張したが、裁判長は証人申請を却下した。

《原告敗訴部分の適示》


◆処分@◆(六)領収証(書)に記載されている納入業者の印影
     (九)旅費支出金調書・内訳書中の公開請求された渡船業務に関する
        情報と渡船に関する以外の情報が合算され記録されている情報
◆処分A◆(五)物品一覧表中の公開請求された渡船業務に関する以外の情報

◆処分B◆(六)支出内訳書・請求書中の公開請求された海津町への出張情報と
       海津町以外への出張情報が合算して記録されている情報

《地裁判決文より原告敗訴理由の適示》◆【領収書中の納入業者の印影】
 「県に対して物品等を提供した納入業者の印影等が一般に公開されていることを示すべき資料は見当たらず、納入業者の印影が、偽造等によりその事業活動を損なうおそれも否定し難い。原告は、納入業者の印影等は、通常の取引において公になっており、競争上の地位その他正当な利益が損なわれることはあり得ない旨主張する。しかし、納入業者の印影が一般的に公開されていることは、本件全証拠によっても、これを認めるに足りない。」(判決文46頁5行目以降)
 「以上、納入業者の印影は、公開すると、当該法人等の競争上の地位その他正当な利益が損なわれると認められ、四号に該当する」(判決文47頁9行目以降)

◆【請求対象外情報及び合算情報の取扱いについて】
 「本件条例は、請求書には請求しようとする公文書を特定するために必要な事項の記載を要求するとともに、公文書の公開の請求に対する決定において、公開をするかどうかの決定をしなければならない対象は右請求に係る公文書としている(9条2号、10条1項)から、実施機関は、請求に係る公文書の件名又は内容を特定した上、右公文書の公開をするかどうかの決定をすべき義務を負うものであるが、それ以上に、請求に係る公文書以外の情報が記録されている公文書についてまで、公開をするかどうかの決定をすべき義務がないことは明らかで、公開をしないとしたことに違法はない。」(判決文51頁3行目以降)
 「合算情報は、請求の対象に係る情報を含んではいるものの、それ以外の情報とが不可分一体となっているからこそ、これが公開されるべきであるか否かがまさに問題となる。前示のとおり、実施機関において、請求の対象外の情報は公開をすべき義務を当然に負うものではないから、この場合には、公文書の部分公開の可否によって解決すべき問題である。合算情報は、一つの数字として現れ、容易に分離することができないから、当該分離により請求の趣旨が揖なわれることがないかどうかを検討するまでもなく、公開すべき義務はなく、公開をしないとしたことに違法はない。」(判決文52頁7行目以降)

◆控訴審での附帯控訴人(原告)の新たな申出◆
 附帯控訴人(原告)は、「印鑑の偽造は極めて難しい、ということを立証するため、土地の不正取得目的で印鑑を偽造したが、その印鑑偽造に失敗したことが証言された刑事事件記録(岐阜地裁)があるので、その取り寄せ」を求めたが、裁判長は「偽造が難しいことは、良く分かっている」として却下した。

                  以 上