県営北方住宅建設費差止請求 補充書


          01/11/09

第1 公営住宅法の趣旨・目的


1 戦後の住宅難の中で、1951年(昭和26年)、地方公共団体が公営の賃貸住宅を建設して低所得者層に提供するため、「公営住宅法」(以下「法」という)が制定された。全国で約300万戸が建設され、現在では借家の13%(209万戸)を占めている。
 公営住宅は、「住宅に困窮する低額所得者に対して低廉な家賃で住宅を提供すること」が第一の目的であることは、明白である。

2 公営住宅法第1条《目的》
 「この法律は、国及び地方公共団体が協力して、健康で文化的な生活を営むに足りる住宅を整備し、これを住宅に困窮する低額所得者に対して低廉な家賃で賃貸し、又は転貸することにより、国民生活の安定と社会福祉の増進に寄与することを目的とする。」とされるとおり、その趣旨目的が明確である。その他、以下のとおりである。
 第3条《公営住宅の供給》「地方公共団体は、低額所得者の住宅不足を緩和するため、公営住宅の供給を行わなければならない。」
 第6条《計画》「県住宅建設5箇年計画に基づいて行わなければならない。」
 第8条《災害の補助特例等》「低額所得者に」
 第9条《借上又は改良に係る補助》「低額所得者に転貸するため」
 第16条《家賃の決定》「家賃は、入居者の収入及び当該公営住宅の立地条件その他に応じ、かつ、近傍同種の住宅の家賃以下で定める。」
 第22条《入居者の募集方法》「公募しなければならない」
 第23条《入居者資格》「(1)同居親族がある、(2)収入が定める額を超えない、(3)現に住宅に困窮していることが明らかな者である。」
 第25条《入居者の選考等》「入居申込者数が公営住宅の戸数を超える場合は、住宅に困窮する実情を調査して入居者を決定しなければならない。」
 第29条《収入超過者に対する措置等》収入超過者の場合「明け渡し義務があり、「期限が到来しても明け渡さない場合には近傍同種の家賃の額の    2倍に相当する額以下の金銭を徴収することができる。」

3 公営住宅法施行令(以下「令」という)においては、次のとおり、住宅がない者、住宅に困窮している者等を対象としていることが、さらに明瞭である。
 第6条《法第23条の入居者資格》
   (1)50歳以上、(2)身体障害者、(3)戦傷病者、(4)原子爆弾被爆者、(5)生活保護者、(6)(帰国)5年以内の者
 第7条《入居者選考基準》「入居者選考は次の1に該当する者のうちから行う。(1)住宅以外の建物若しくは場所に居住し、又は保安上危険若しくは衛     生上有害な状態にある住宅に居住している者、
   (2)他の世帯と同居して著しく生活上の不便を受けている者又は住宅がないため親族と同居することができない者、
   (3)住宅の規模、設備又は間取りと世帯構成との関係から衛生上又は風教上不適当な居住状態にある者、
   (4)正当な事由による立退きの要求を受け、適当な立退き先がないため因窮している者、
   (5)住宅がないために勤務場所から著しく遠隔の地に居住を余儀なくされている者又は収入に比して著しく過大な家賃の支払を余儀なくされ     ている者、
   (6)前各号該当の者のほか現に住宅に因窮していることが明らかな者

第2 公営住宅法改正の趣旨


1 公営住宅法は、住宅に困窮する低額所得者の居住の安定と居住水準の向上を図ることを目的に51年(昭和26年)に制定されたが、高額所得者の長期居住などにより、高齢者や障害者など真に住宅に困窮する者に対して必ずしも的確に供給されているとは言い難い状況が発生している。このようなことから、真に住宅に困窮する者に対して良好な居住環境を備えた公営住宅の的確な供給を図るため、96年(平成8年)5月に法制定以来の抜本的な改正がされた。
 法改正の要点は以下のようである。

2 高齢者・障害者には収入基準を緩和
 入居する際の収入要件について、高齢者や障害者は、収入の多寡に関係なく、民間の賃貸住宅がなかなかみつからない実情があるので、収入による制限基準を引き上げ、さらに、老人等の世帯(単身も可)の年齢を50歳以上の者(従来は男60歳、女50歳)と緩和した。

3 優良賃貸住宅との役割分担
 一方、それ以外の世帯については収入基準を引き下げた厳しくした。これは、93年(平成5年)に制定された中所得者層により良質な賃貸住宅を安く供給しようとする特定優良賃貸住宅の供給の促進に関する法律の適用あるからである。
4 従来の家賃の算定は、公営住宅の建設にかかった費用をもとに負担の限度額が算出されていた。それを、基本的には、入居者の収入に応じた家賃とすることにした。

5 近傍同種の住宅の家賃が、公営住宅の家賃の法律上の上限となる。

6 買い取り、借り上げも可となる
 さらに広く供給するために、「建設」のみに限らず、民間や公社・公団が新設したりすでに所有している住宅をも利用、民間住宅等をも公営住宅として買い取ったり、あるいは借り上げることもできるようにした。

7 不正入居者などの明渡し措置を強化
 公営住宅はあくまで住宅に窮する低所得者のための住宅あるため、収入が多くなったり、あるいは所得などを偽って入居した場合は、明け渡さねばならない。これを強化し、罰則も規定した。

第3 岐阜県の規定等


1 前記法令を受けて制定された県の条例、その具体的運用である県営住宅ガイドも同旨である。

2 岐阜県県営住宅条例(昭和35年3月24日条例第2号)(以下、本件条例という)は、第1条《趣旨》「公営住宅法に基づき県が建設する公営住宅(以下「県営住宅」という)及び共同施設の設置及び管理については、法及び公営住宅法施行令に定めるもののほか、この条例の定めるところによる。」のとおり、法及び令の趣旨目的等が本件の県営住宅に適用されているのである。

3 県は、県営住宅ガイドにおいても、「県営住宅の目的は、住宅困窮者のために低廉な家賃で住宅を供給」「県営住宅は、県民生活の安定と福祉の増進を図るため、低廉な家賃で賃貸する住宅」であることを明示している。

第4 本件建設費の違法性


1 法第1条《目的》「住宅を整備し、これを住宅に困窮する低額所得者に対して低廉な家賃で賃貸し、又は転貸する」とされるとおり、「住宅困窮者のために低廉な家賃で住宅を供給し、県民生活の安定と福祉の増進を図る」(県営住宅ガイド)というのが県営住宅の目的である。即ち、通常一般程度の公営住宅の確保が本旨であって、住宅であるから居住性が最も重視され、同時に貴重な税金を原資とする公共事業であるから経済性も最も重視されるべきである。

2 (1)しかし、岐阜県知事は、「21世紀に向けた居住様式を提案し、市町村の公営住宅のモデルとなるものとする。また、素材の使い方、建築技術における新しい技法を提案し、他の先導モデルとなるものを造る。」(完成の記者発表レジメ/00年3月30日)という方針で前期南ブロックの設計・建設を行った。
 (2)さらに、後期中北ブロックについても「『新しい居住空間の提案』をめざした現・ハイタウン北方の方針をさらに進める」「3棟構成で、それぞれ別の建築家が設計する。3棟をデッキでつないだり、1棟の中の住居一つひとつを別々の様式で造ったりと、ざん新な構想がでているという」(01年3月31日/新聞報道)との方針である。

 (3)「中北ブロックでは、南ブロックでの経験をさらに3次元的、立体的に発展させた方法を提案している」(北方住宅中北ブロック(仮称)基本設計プロポーザル実施要領書/第5号証/1頁後段)

3 中北ブロックの設計に際して、南ブロック住宅入居者のアンケート(01年1月実施)を無視している。快適な住環境整備という公営住宅の本来目的の達成のためには、南ブロックの反省、住民の声等が反映されなければならない。

4 熊本県では88年から当時の細川知事のもと、アートポリス計画が進められ、磯崎新コミッショナーの指名のもと、内外の建築家の設計によって、99年までに50以上のさまざまな公共建築が県内各地に造られた。91年には、山本理顕氏によって、県営保田窪第1団地(戸数110)が造られた。建築に携わる人々の間では設計者の「作品」としての評価が流通する一方、マスメディアなどでは「生活を無視したデザイン重視の計画」というような評価が一般化している。  「調査した学生たちの表現を借りれば『当事者たちにとって、いまから振り返っても興奮を持って想起されるようなお祭りだった。ただし、このお祭りに参加できたのは役人と、設計者と、建築ジャーナリズムだけであった』。住民不在のお祭りだった。自己評価も業界評価も、住宅が完成したとき終わっている。しかし、住み手の生活はそこから始まる」(建築雑誌/建築学会/00年10月号5頁/山本理顕氏(建築家)と対談した上野千鶴子氏(東大大学院研究科教授)の弁)。 これに続くのが、本件北方住宅である。熊本県営保田窪団地は、公営の住宅としては明らかに失敗というしかないが、この前例を生かしていない。しかも、熊本の場合は、バブル時代に進められたものなのである。

5 「岐阜の地域特性、気候風土を反映させるために県内建築士事務所との共同事業(JV)方式を取り」(前記実施要領書/1頁中段)とされたにもかかわらず、南ブロックでは、気候対策としても重大な欠陥が指摘され、「夏は暑く、冬は寒い住宅」「冬は北側の網鉄板のラジエター効果で冷えっぱなし」、「変形だから隙間風が吹く」などの声がでている。
 岐阜に住んでいない建築家に、岐阜の気候風土は理解できないのである。実際、南ブロック設計者の一人は現地北方の気候を理解せずに設計した旨を述べている。 北方住宅方式のJVでは快適な住居の設計は困難である、というしかない。

6 (1) 「私は、80年代後期、都市の集合住宅の設計のプロデュースする機会があった。福岡県のネクサスU(1991)は小規模の集合住宅。その頃から、同時に熊本アートポリス計画のコミッショナーも努め、これは若い建築家たちを熊本県や市町村の公共建築を担当するべく推薦する役割であったが、ここでも幾つかの住宅団地にかかわることができた。山本理顕の保田窪第1団地(1991)は、コミューナルな都市空間をラディカルに提案しており、賛否両論であった。・・私がクライアントである岐阜県知事に提案したのは、・・常々ユニークな行政手段をもちいていた梶原拓知事は、私の提案を即時に了承した。1994年のことであった。」(建築ジャーナル 1999年12月号NO.953「磯崎新/ ’68年の結末 『計画』概念の崩壊 岐阜県北方住宅」)

 (2) 「静岡県が7億5千万円で静岡市の県立舞台芸術公園内に建設した小劇場『楕円堂』が、消防本部と保健所の立ち入り検査で劇場としての使用中止を求められた。楕円堂は磯崎新氏の設計で97年3月に完成し、演劇公演の会場となっていた。立ち入り検査により、木造の屋根や非常時の脱出通路の確保などに問題があるとして、劇場としての使用を中止するよう求められた。」(99年12月25日/産経新聞東京本社版)

 (3)「icc online インタビュー・シリーズ/磯崎新/建築家、都市デザイナー/磯崎新アトリエ主宰/「人間が入らなきゃいいんです。人間が入ってさえいなければ建築の型は変えることができる。」

7 前記2のような意図で高額な住宅を建設するのでなく、@通常の建設費におさえて、もし必要であれば、A同じ経費で建設戸数を増加させること、あるいはB一戸当床面積を増やすこと、これらが法令にも規定される県営住宅の建設目的に合致するのは明らかである。
 総事業費のうち、少なくても、岐阜県知事らの公営住宅の目的を逸脱した意図の実現のための過剰な経費については、県費を使う根拠はないのである。

8 法6条《公営住宅の計画的整備》「公営住宅の整備は、住宅建設計画法第6条第1項に規定する都道府県住宅建設5箇年計画に基づいて行わなければならない。」とされている。しかし、岐阜県は、「岐阜県第8期住宅建設5箇年計画(平成13〜17年)」を未だ作成していないから、本件基本設計に着手したことは、整備根拠を欠く。

9 「家賃は、近傍同種の住宅の家賃以下で定める。」(同第16条《家賃の決定》)とれさているのであるから、建設費用等も周辺の民間の実態との乖離は許されていない、というべきである。

10 以上のとおり、本件北方県営住宅の「中北ブロック」の建設計画は、公営住宅法、本件条例の趣旨・目的を著しく逸脱し、違法である。

11 自治体の会計原則違反
 地方公共団体は、その事務を処理するに当たっては、最小の経費で最大の効果を挙げるようにしなければならず(地方自治法第2条14項)、経費はその達成するために必要且つ最小の限度をこえて支出してはならない(地方財政法第4条1項)とされているが、本件のように放漫な支出は、両規定に違反する。

12 公営住宅法、本件条例について「素材の使い方、建築技術における新しい技法」の導入、「新しい居住空間の提案」「南ブロックでの経験をさらに3次元的、立体的に発展させた方法を提案している」(前記2)等を目的として設計・建設することができると解釈し、運用することは、「地方公共団体に関する法令の規定は、地方自治の本旨に基づいて、これを解釈し、及び運用するようにしなければならない」(地方自治法第2条12項)との規定に違反する。

13 公営住宅法、本件条例に基づく本件県営住宅建設について、前項同様「素材・・・」の導入、「新しい・・」「南ブロック・・」(前記2)等を目的としてこれを設計・建築することは、「地方公共団体は、法令に違反してその事務を処理してはならない」(地方自治法第2条16項)との規定に違反する。

14 民間マンションの事業者は、厳しいコスト計算をしつつ固有の建築としての特徴を発揮させ、市場経済の中で流通させている。同様のことが行政にできない理はない。

15 国も県も財政は極めて厳しいから、この社会的要請は一層強い。
 県営住宅と美術館とは明らかに違う。本件のような、趣味的かつ放漫な建設方針に基づいて、基本的建設費に上乗せされることになる浪費的支出は、そもそも許されない。
 加えて、県民の生活が厳しく、快適な住環境整備も未だ不十分な岐阜県の現状からすれば、公営住宅に関する社会通念からも許されないというべきである。

16 請求人が違法で、県の損害を生ずるとして差し止める額を示す。その基本は、設計費、監理料、外溝等を除いた純粋な本体工事費に関しての、民間マンションの建設単価との比較である。
 (1) 南ブロックの全体事業費は、次のとおりである。
      基本設計料    6281万円 (構成比 0.68%)
      実施設計料  2億4737万円 ( 同  2.67%)
      工事監理料  1億4010万円 ( 同  1.52%)
      本体工事費 79億2877万円 ( 同 85.78%)
      外溝等    8億6427万円 ( 同  9.35%)
      全体工事費 92億4332万円 ( 同 99.97%)

 (2) 中北ブロックの事業費に関して、国の補助金申請書(8月16日申請/第10〜13号証/事実上「申請書の受理が補助決定である」とのこと)の補助申請額等が非公開とされ秘匿されている。他に公開された情報の中に、01年度に委託された基本設計業務1億1550万円と、同仕様書等で明示された「建設の条件 工事費 約110億円程度」がある。
 即ち、県の予定する工事費は約110億円である。

 (3) 民間の場合、建設経費試算のために用いる面積には、通常、バルコニーのうちの建築基準法で面積として認定する部分を含めているところ、本件においては、設計の詳細の資料がないから、本件ではバルコニーの面積の加算に関して「極めて多めに見て『半分』加える」(つまり、建設単価が安く計算される)こととする。
 南ブロック全4棟の住棟合計床面積(430戸)は、合計床面積は37747u、住戸部分の面積は31121u。この差はバルコニー部分にある、とみれる。 よって、本件においては、両者の中間の面積、34434uを基本とする。
 中北ブロック全4棟の住棟合計床面積(620戸)は「北方住宅 北ブロック再生・活用調査報告書(H12年度作成版)」(第9号証/8頁)に示されている。合計床面積は50014u、住戸専用部分の面積は43032u。この差は、バルコニー部分にある、とみれるから、前記と同様に考えて、両者の中間の面積、
46523uを基本とする。 

 (4) 南ブロックの全体工事費に占める本体工事費の割合、即ち前記の「約85.78%」を中北ブロックの工事費約110億円に適用すると、94億3580万円が中北ブロックの本体工事費と試算される。
 ところで、ある専門家は110億円を前提にして概略で想定できる本体工事費は概ね95億円であろう、との推測を示す。
 これらから、約94億円を中北ブロック本体工事費とみて良い、といえる。

 (5) 南ブロック全4棟の基本面積は34434uだから、本体工事費は
 792877÷34434u=23.0万円/u=76.0万円/坪となる。
 一方、中北ブロックの基本面積46523uだから、本体工事費は
 940000÷46523u=20.2万円/u=66.7万円/坪とみれる。
 南ブロックに比して中北ブロックは外形的にはシンプルそうであること等考えると、この額の比較からも、約94億円万円を中北ブロックの本体工事費とみることは、不自然ではない。

 (6) 民間の分譲マンションの本体工事費は、概ね45万円/坪でかなりな水準のものができる。
賃貸マンションは、もっと低い本体工事費である。
 50万円/坪なら、かなりな豪華な分譲マンションができる。
 よって、中北ブロックにおいて、45万円/坪を超える建設費については、県民の税金で賄う必要はなく、敢えて南ブロックのようにしようとするなら、知事や設計者らの個人的な趣味の実現として、知事らが支払うべきである。
 即ち、民間相場の「45万円/坪」を超える「21.7万円/坪」が浪費的支出というべきであり、その額は30億5924万円となる。
 工事費が概算であることから、本件においては、過剰な部分は30億円、と見ることとする。(以上は、消費税込み)
 よって、本件請求において、違法であって県の損害が生ずるとして差止すべき額は、現時点で予定する工事費110億円のうちの30億円である。
 もし、工事費が110億円でない場合は、民間相場の「45万円/坪」を超える支出が県の損害となるものとして差止すべき額である。

第5 本件随意契約の違法性


1 岐阜県は、事業を委託発注等する場合の契約について定め(岐阜県会計規則第125条)、まず一般競争入札を規定している(岐阜県会計規則第109条)。 指名競争入札の場合(同会計規則第137条)、発注する事業毎に入札参加資格者名簿の中から選定基準に基づいて指名した5人以上により競争入札を行う方式(同規則137条3項)を採用している。実際に、指名競争入札を行うに当たって、多くの自治体では入札参加資格を有する業者を予め登録させ、その入札参加資格登録業者を一定の基準で格付けし(格付等級制)、個々の工事に見合った業者の中から指名業者を選定しており、岐阜県でも、発注する工事の種類ごとに業者登録をし、業者の多い工種については格付等級制を採用して、工事に応じて適切な業者を指名しているのである。
 しかし、全国的に業者による談合が発生している中で、岐阜県においては、これを防止するため、様々な工夫をこらし、談合に関する情報があった場合には調査を開始するマニュアルもつくり、実行してきた。

2 一方、随意契約は、契約の相手方を競争によらず自治体が任意に決定することから、不適正になったり、不公正になったりするおそれが常に指摘されており、その公正さが特段に要求されている。
 地方自治法234条1項は「売買、貸借、請負その他の契約は、一般競争入札、指名競争入札、随意契約又はせり売りの方法により締結するものとする。」とし、同条2項は「前項の指名競争入札、随意契約又はせり売りは、政令で定める場合に該当するときに限り、これによることができる。」としているが、これは、地方自治法が、普通地方公共団体の締結する契約については、機会均等の理念に最も適合して公正であり、かつ、価格の有利性を確保し得るという観点から、一般競争入札の方法によるべきことを原則とし、それ以外の方法を例外的なものとして位置づけたうえで、随意契約の形式は、手続が簡略で経費の負担が少なくてすみ、しかも、契約の目的、内容に照らしそれに相応する資力、信用、技術、経験等を有する相手方を選定できるという長所がある反面、契約の相手方が固定化し、契約の締結が情実に左右されるなど公正を妨げる事態を生じるおそれがあるという短所も有することから、同法施行令167条の2第1項は一定の場合に限定して随意契約の方法による契約の締結を許容することとしたものである。

3(1) 違法な契約は、地方自治法第2条16項及び17項(「前項の規定に違反して行った地方公共団体の行為は、これを無効とする」)により無効である。
 (2) 特別な事情により随意契約する場合、岐阜県会計規則第4章《契約》第4節《随意契約》の第141条において「随意契約をしようとするときは、二人以上の者から見積書を提出させなければなない」とされている。

4 このように、自治体の契約、特に随契に関しては、制度の宿命として不正の温床ともなり得るからこそ、手続き上制限を受けているのである。
 本件随契は、いずれも、複数社から見積書を徴して行なわなければならないもので、しかもそれが可能であったことは、客観的に見て明らかであるから、下記判示に照らしても、違法は明らかである。
 静岡地方裁判所判決/昭和50年(行ウ)第5号/昭和51年(行ウ)第8号/昭和56年5月26日判決は、「町と民間計算センターとの間のコンピューターによる事務処理委託契約が地方自治法施行令(改正前)167条の2第1項1号の「その性質又は目的が競争入札に適しないものに当たる」として契約の締結が町財務規則に違反してされた違法なものであり、町長に対し、システム開発費用相当額の損害賠償を命じた。「なるべく2人以上の者から見積書を徴する」としている自治体の場合に、経緯や当該契約相手方以外に多くの計算センターが受託態勢にあったと判断した上で、「1人から見積書を徴して随契した場合」について裁量権の濫用であるから違法であるとし、その結果損害が生じたとして、返還を命じたものである。(要点は添付資料のとおりである)

5 90年頃より、知事梶原氏と磯崎新氏が北方住宅の建て替え設計を委託する合意があったことをもって、南ブロックに続いて、中北ブロックを同一人が設計する必要性はなく、このような大規模な事業の場合は、なおさらである。なお、この関係は県の他の事業にも及び、「岐阜県現代陶芸美術館/セラミックパークMINO」(多治見市)は磯崎新アトリエの設計のもと、84億円の建設費をかけて01年度末完成、02年10月オープンの予定で事業が進められている。
 一般に、設計において、随契契約とすることができる場合があるとしても、本件では、南ブロックと中北ブロックとは明確に分断されており、設計上、同一視をする必要性はない。
 南ブロックの建設費は極めて高額であったし、公営住宅の基本を著しく逸脱し、住民からも極めて不評であったから、中北ブロックに関しては、少なくても基本設計の段階では、他の設計者に委託する、あるいは設計方針を変更することは容易であった。入札に付していれば、はるかに安価に実現できると考えて不合理はない。

6 00年に約1000万円で実施した「北方住宅 北ブロック再生・活用調査」業務の委託契約(「本件第1契約」、という)において、磯崎新アトリエと随意契約したが、他にも適当な事業者は多々あったし、入札に付していれば格段に廉価にできた可能性は高い。磯崎新アトリエと随契したことには、合理的理由がなく、違法で、無効である。
 この違法で、無効な契約を前提に、プロポーザルを行い(第1〜4号証)、磯崎新アトリエと県内設計事務所とのJVを契約の相手方とした「北方住宅中北ブロック(仮称)基本設計」業務の委託契約(「本件第2契約」、という)(第6〜9号証)も、合理的理由がなく、違法で、無効である。
 仮に、本件第1契約が違法でないとしても、磯崎新アトリエも含めて複数の者から何らの見積書も徴収しておらず、他者の場合の比較検討を怠った。そして、磯崎新アトリエが主体であることを前提にして、磯崎新氏を選定委員会の委員長として県内設計事業者を絞り込んで選定した手続きは、契約の公正確保の手段とはいえない。「磯崎新アトリエを決定済でのプロポーザル」という過程を経た本件第2契約は、随契とする合理的理由がなく、違法で、無効である。
 しかも、本件第2契約の日(8月28日)の当日に相手方JVから「総額のみを記載した見積書」を取得しただけであるから、会計規則に反して見積書を徴収していない、と言うしかない。

7 本件第2契約は、随意契約の方法によることができないにもかかわらず、随意契約により締結したことは、知事がその裁量権を著しく逸脱、濫用したものであり、地方自治法第234条第1項、2項、同令第167条の2の第1項各号に定める特定一社と随意契約をすることができる事情があるときにあたる、とはとうていいえない。
 本件契約は違法であり、本件委託契約の効力は、地方自治法第2条16項、17項により無効である。
 無効な契約に係る経費について県費を支出することは許されないから、本件第2契約(精算払契約)の契約額である1億1550万円の支出を差し止めなければならない。

8 実質的に、どのような基本設計をするかによって、本体工事費が決まるのであるから、一刻も早く差し止める必要がある。

9(1) 本年01年6月初旬、請求人らが、岐阜県住宅課に、北方住宅の建設(計画)等に関する文書はどのようなものがあるかの教示を求めた。「南ブロックの建設の計画書的な文書や基本方針に関する文書は何か」の問に対して、「何も残っていない。自分たちは知らない。建設が済むと、過去のものは必要ないので保存しない」とのことだった。「次の建設の方針や計画についての文書は、どうか。少なくても、これから造るものについては、何もないことはあり得ない」との問いに対しては、「まだ、今年基本設計に出すので、文書は特別にない」との答弁であった。「基本設計は今年度に委託、とのことだがいつ頃か」との問いに対しては、「現在、検討中で、まだすぐには委託できない」とのことだった。 そこで、「こういうものがある」と回答のあった文書のうちから、適宜選択し、6月13日に公開請求した。

 (2) 7月2日の文書公開の際にも、「委託は」との問いに「まだすぐには委託できない」とのことだった。

 (3) 10月16日に確認したところ、既に委託した、とのことなので委託契約書等の公開を請求した。

 (4) 16日に、「補助金申請は済ませた」と聞いたので、10月17日に補助金申請書の公開を請求した。国は、「補助申請書の受理が補助決定だ」という、とのこと。

 (5) 10月30日に公開された文書のうちの業務委託仕様書の2頁中、5(2)Cに【「北方住宅再生計画(H4年度作成版)」(第9号証/3〜5頁)及び「北方住宅 北ブロック再生・活用調査報告書(H12年度作成版)」(第9号証/6〜8頁)に基づき基本設計業務の骨格を形成すること】との記述を発見し、驚愕した。何もない、といわれていたのに。
 11月1日、当該文書の公開を請求した。
 公開されたプロポーザルの会議資料(H13年3月26日付け/第1号証)にも、中北ブロックの建物の基本外形の図面などもあり、少なくても、本年6月には、計画や方針が具体的であったのは、明らかだ。

 (6) 請求人は、6月以来「計画や方針」の文書の存在を確認しているのに、住宅課職員は「H4年度作成版」「12年度作成版」の存在を秘匿し続けたのである。もし、6月に両文書の存在が回答されていれば、計画面積等も分かり、本書面で述べるとおりの経費試算や、余りに高額の建設費用であることも容易に判明したから、8月26日の委託契約締結の前に本件と全く同様の差し止め請求をなし得た。契約締結以前に差し止め請求すれば、計画の見直しがより容易であったのは明らかである。
 請求人らは、今までに、岐阜県に対して数百件の文書公開を行い、担当各課の職員らと日常的に話し合っているが、本件住宅課のごとき、存在する文書を「何もない」との虚偽の説明をするような文書非公開体質は経験がない。隠蔽体質も甚だしい。
 本件差し止め請求が、契約後になったのは、正に知事の支配下にある岐阜県職員の不正な行為、意図に因るのである。

第6 まとめ


 本件は「当該行為がなされることが相当の確実さをもって予測される場合」(地方自治法第242条1項の括弧書)に当たる。
 よって、請求人は、
@随意契約の違法及び無効を確認し改善措置をとるよう勧告すること、
A基本設計委託料1億1550万円の支出を差し止めるよう勧告すること、
B現計画の本体工事費のうちの30億円の支出を差し止めるよう勧告すること、C本体工事費が110億円でない場合は45万円/坪を超える額の支出を差し止めるよう勧告すること、
 以上を監査委員に求める。
  以 上

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆添付資料・判例◆◆◆◆◆◆◆◆◆
1 地方自治法施行令第167条の2の第1項2号についての最高裁判例
 2号(改正前1号)の「その性質又は目的が競争入札に適しない」とは、「当該契約の性質又は目的に照らして競争入札の方法による契約の締結が不可能又は著しく困難というべき場合や不特定多数の者の参加を求め競争原理に基づいて契約の相手方を決定することが必ずしも適当ではなく、当該契約自体では多少とも価格の有利性を犠牲にする結果になるとしても、普通地方公共団体において当該契約の目的、内容に照らしそれに相応する資力、信用、技術、経験等を有する相手方を選定しその者との間で契約の締結をするという方法をとるのが当該契約の性質に照らし又はその目的を究極的に達成する上でより妥当であり、ひいては当該普通地方公共団体の利益の増進につながると合理的に判断される場合をいうものと解されるところ、右の場合に該当するか否かは、契約の公正及び価格の有利性を図ることを目的として普通地方公共団体の契約締結の方法に制限を加えている同法及び同法施行令の前記趣旨を勘案して、個々具体的な契約ごとに、当該契約の種類、内容、性質、目的等諸般の事情を考慮して当該普通地方公共団体の契約担当者の合理的な裁量判断により決定されるべきものと解するのが相当である(最高裁判所/昭和57(行ツ)第74号/昭和62年3月20日/第2小法廷判決/民集41巻2号189頁)。」とされている。

2 第6の5の随契違反の判例
 「本件各契約は、住民記録異動処理などの地方自治体の各種事務処理を民間計算センターに委託するものであり、その事務処理が正確効率的にされること等のほかに、地方自治体の行政事務の秘密保持、住民のプライバシー保護の要請等がきわめて強く望まれるものであって、この点に関する委託業者の信頼性及び自治体の委託業者に対する監督権を確保しなければならない等の特殊性がある。
 したがって、本件各契約はこのような観点から、委託業者を選択するにあたり、総合的判断、裁量に任されなければならない部分が大であると解され、地方自治法施行令167条の2第1項1号(前記改正後は2号)の『その性質又は目的が競争入札に適しないものをするとき』に該当するものといえる。
 小山町規則第3号小山町財務規則164条は、『随意契約によろうとするときは、あらかじめ第154条の規定に準じて予定価格を定め、かつ、なるべく2人以上の者から見積書を徴するものとする。』とされている。
 被告は、小山町長として他の業者や市町村に対し、コンピユータ導入の実情、システム開発の要否、委託費用等について深く調査することがなく、見積書をM・I・Kから徴しただけで、2人以上の者から徴したことはまったくなかった。
 随意契約の方法により被告が小山町長として民間計算センターとの間にコンピユータによる事務処理委託契約を締結するに当り、業者の選択、価格等契約内容の決定に広い自由裁量を有することは否定できないところである。
 しかし、自由裁量といえども裁量権者の恣意を許すものではなく、裁量の本質や目的に従った限界があることは当然であって、遵守すべき法規があればこれを尊重しその目的を考量して行使されねばならず、右制限を超えた裁量は、裁量権を濫用した違法な行為としなければならない。
 ところで、財務規則164条前段が『随意契約によろうとするときは、予定価格を定める』ものとしたのは裁量権者の技術的判断を尊重して所定の方法によれば、予定価格を一応適正に定めることが期待できるとして、そのよるべき方法を示したにほかならないのであるが、右方法によって予定価格を定めるものとするほかに、164条後段が、『かつなるべく2人以上の者から見積書を徴するものとする』と定めたのは、裁量権者が154条2項所定の方法によって予定価格を定めたとしても、2人以上の者から見積書を徴し、更に価格を検討することによって、予定価格がより客観的、具体的に公正となり、より高い経済性を確保することができるし、ときに、裁量権者の技術的判断を補充して、裁量が過誤独善に陥ることのないよう機能させることとなるところから、裁量権者が154条2項所定の方法によって予定価格を定めたとしても、更に、164条後段所定の方法によるべきことを示したものといえる。
 従って、164条後段に、『なるべく2人以上の者から見積書を徴するものとする』というのも見積書を1人の者から徴すれば足りるか、2人以上の者から徴しなければならないかの選択を裁量権者の恣意に委ねたものではなく、裁量権者の技術的判断によって、予定価格を適正に定めることが一般的、客観的に期待できる程度の契約であれば、見積書を1人の者から徴しただけであるからといって、ただちに、裁量が違法となるとはいえないとしても、契約の種類、性質、内容等からして予定価格を定めるについて、明らかに裁量権者の技術的判断だけではまかなえないような特殊なもので専門的知識が必要であるとか、あるいは価格が非常に高額で慎重な検討が必要であるとかその他実例価格が区々で価格が適正であるか否かの判断に著しい不安、困難がある場合等には、2人以上の者から見積書を徴するか否かの裁量は財務規則が所定の手続を義務づけた前記目的に従って合理的に制限されるものと解すべきであって、この制限を超えた裁量は、裁量権の濫用として違法となるものといえる。
 被告が小山町長として、以上のとおりにして本件各契約につきM・I・Kからしか見積書を徴さなかったのはその裁量権を濫用したものといわざるを得ず、M・I・Kとの間に本件各契約を締結した被告の行為は財務規則164条に違反した違法なものであるといえる。
 町長である被告の本件各契約締結の行為は、地方自治法243条の2第1項1号の支出負担行為であるところ、前記のとおり小山町財務規則に違反するものであるから同条1項後段に該当し、被告は、本件各契約の締結によって、小山町に与えた損害を賠償すべき責任を負わねばならない。」

3 随意契約の場合、住民に理解されにくいことから、住民訴訟が多々あり、違法性が認定されることもある。
(1)損害賠償請求事件/広島地方裁判所/平成元年(行ウ)第9号/平成10年3月31日判決は、市が民間会社と汚土の収集について随意契約にしたことは違法である。として住民訴訟による損害賠償請求を認容した。その要点は次のようである。
 「本件各契約及びそれ以前の汚土収集運搬業務委託契約の締結に際してとられた手続が、次のような不公正、不透明なものであったことからも窺われる。すなわち、本件規則が予定価格は契約の目的となる物件又は役務について、取引の実例価格、需給の状況、履行の難易、数量の多寡、履行期間の長短等を考慮して適正に決めなければならず(30条、41条及び42条)、そのために、なるべく2名以上の者から見積書を徴しなければならない(43条)と規定して、随意契約の方法により契約締結する場合であっても(あるいは官商結託の弊害の生じる恐れの高い随意契約の方法によるからこそ)、見積書を複数徴することにより、契約の公正、価格の経済性を確保し、契約担当者の技術的判断の補充することとしているにもかかわらず、起案における単価の算出のための計算方法や基礎となる資料が明らかでないこと、被告が右起案に基づきその金額を予定価格と決定したこと、被告備掃社と本件各契約を締結する過程で、被告備掃社からしか見積書を徴しなかったこと、右予定価格は、被告備掃社からは被告牧本が決定した予定価格とほぼ同額の見積金額が提示されたという事情が認められるから、本件各契約を随意契約の方法により締結したことは、その裁量権の逸脱、濫用したものであるといわざるを得ない。
 したがって、本件各契約は、随意契約の方法によることができないにもかかわらず、随意契約の方法により締結されたものであり、随意契約の方法を制限する法令(地方自治法234条1項、2項、同法施行令167条の2)に反するものであるから違法であり、本件各契約の効力は、その余の点(本件各契約内容の公序良俗違反の有無)につき判断するまでもなく、地方自治法2条15項、16項により無効というべきである。」としている。

 (2)呉羽丘陵健康とゆとりの森整備事業差止等請求事件/富山地方裁判所/平成5年(行ウ)第3号/平成5年(行ウ)第4号/平成8年10月16日判決は、「森林整備事業の基本計画、基本設計の委託契約を随意契約の方法によって締結したことを違法とする」として住民訴訟による損害賠償請求を認容した。

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆補充書添付資料◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
公営住宅法(抄)
 第1条《目的》「この法律は、国及び地方公共団体が協力して、健康で文化的な生活を営むに足りる住宅を整備し、これを住宅に困窮する低額所得者に対して低廉な家賃で賃貸し、又は転貸することにより、国民生活の安定と社会福祉の増進に寄与することを目的とする。」

第3条《公営住宅の供給》「地方公共団体は、常にその区域内の住宅事情に留意し、低額所得者の住宅不足を緩和するため必要があると認めるときは、公営住宅の供給を行わなければならない。」

 第6条《公営住宅の計画的整備》「公営住宅の整備は、住宅建設計画法第6条第1項に規定する都道府県住宅建設5箇年計画に基づいて行わなければならない。」

第8条《災害の補助特例等》「国は、災害により滅失した住宅に居住していた低額所得者に賃貸するため公営住宅の建設等をするときは、要する費用の3分の2を補助する。」
第9条《借上又は改良に係る補助》「公営住宅として低額所得者に転貸するために必要となる住宅又はその附帯施設の建設又は改良を行う者に対し、その費用の一部を補助することができる。」

 第16条《家賃の決定》「家賃は、入居者の収入及び当該公営住宅の立地条件その他に応じ、かつ、近傍同種の住宅の家賃以下で定める。ただし、収入の申告がない場合、近傍同種の住宅の家賃とする。
 2 近傍同種の住宅の家賃は、近傍同種の住宅(その敷地を含む。)の時価、修繕費、管理事務費等を勘案して、毎年度、事業主体が定める。
5 家賃に関する事項は、条例で定めなければならない。」

第17条《家賃に係る国の補助》「国は、国の補助を受けた公営住宅について、近傍同種の住宅の家賃の額から入居者負担基準額を控除した額に2分の1を乗じて得た額を補助する。」

 第18条《敷金》「3月分の家賃の範囲内において敷金を徴収できる。
3 敷金の運用に係る利益金は共同の利便のために使用するように努める。」

 第21条《修繕の義務》「事業主体は、公営住宅、附帯施設について修繕する必要が生じたときは、遅滞なく修繕しなければならない。ただし、入居者の責めに帰すべき事由によって修繕する必要が生じたときは、この限りでない。」

 第22条《入居者の募集方法》「事業主体は、公営住宅の入居者を公募しなければならない。
2 公募は、新聞、掲示等区域内の住民が周知できるような方法で行わなければならない。」

 第23条《入居者資格》「少なくとも次の各号の条件を具備する者でなければならない。
 (1) 現に同居し、又は同居しようとする親族があること。
 (2) その者の収入が、それぞれ、(イ 身体障害者)(ロ 災害で住宅を滅失した低額所得者)(ハ イロ以外の場合)に定める額を超えないこと
 (3) 現に住宅に困窮していることが明らかな者であること。

第25条《入居者の選考等》「入居申込者数が公営住宅の戸数を超える場合は、住宅に困窮する実情を調査して、政令で定める選考基準に従い、条例で定めるところにより、公正な方法で選考して、当該公営住宅の入居者を決定しなければならない。」

第29条《収入超過者に対する措置等》の場合の明け渡し義務を、引き続き入居している場合の家賃は近傍同種の住宅の家賃とする、期限が到来しても明け渡さない場合には近傍同種の家賃の額の2倍に相当する額以下の金銭を徴収することができる。

第41条《説明会の開催等》「事業主体は、公営住宅建替事業の施行に関し、説明会を開催する等の措置を講ずることにより、当該事業により除却すべき公営住宅の入居者の協力が得られるように努めなければならない。」

◆公営住宅法施行令公営住宅法施行令
《家賃の算定方法》
 第2条「法第16条第1項の規定による公営住宅の毎月の家賃は、家賃算定基礎額に次に掲げる数値を乗じた額(当該額が近傍同種の住宅の家賃の額を超える場合にあっては、近傍同種の住宅の家賃の額)とする。
2 前項の家賃算定基礎額は、次に定める額とする。
         入居者の収入額 家賃算定基礎額
    12万3千円以下の場合             3万7千百円
    12万3千円を超え15万3千円以下の場合    4万5千円
    15万3千円を超え17万8千円以下の場合    5万3千2百円
    17万8千円を超え20万円以下の場合      6万千4百円
    20万円を超え23万8千円以下の場合      7万9百円 
    23万8千円を超え26万8千円以下の場合    8万千4百円
    26万8千円を超え32万2千円以下の場合    9万4千百円
    32万2千円を超える場合           10万7千7百円

《近傍同種の住宅の家賃の算定方法》
第3条 法第16条第2項の規定による近傍同種の住宅の家賃は、近傍同種の住宅(その敷地を含む。)の複成価格(当該住宅の推定再建築費の額から経過年数に応じた減価額を除いた額として建設省令で定める方法で算出した価格及びその敷地の時価をいう。第12条第1項において同じ。)に建設大臣が定める1年当たりの利回りを乗じた額、償却額、修繕費、管理事務費、損害保険料、貸倒れ及び空家による損失を埋めるための建設省令で定める方法で算出した引当金並びに公課の合計を12で除した額とする。

2 前項の償却額は、近傍同種の住宅の建設に要した費用の額から建設省令で定める方法で算出した残存価額を控除した額を次の表の上欄各項に定める住宅の区分に応じてそれぞれ下欄各項に定める期間で除した額とする。
  耐火構造の住宅 70年。準耐火構造の住宅 45年。木造の住宅 30年 (準耐火構造の住宅を除く。以下この条及び第12条第1項において同じ。)
《入居者資格》
第6条 法第23条に規定する政令で定める者は、次の各号の1に該当する者とする。(1)50歳以上の者、(2)身体障害者、(3)戦傷病者、(4)原子爆弾被爆者、(5)生活保護法の被保護者、(6)(帰国)して5年以内の者

2 法第23条第2号イに規定する政令で定める場合は、次のいずれかの場合とする。
(1)入居者又は同居者の障害の程度が建設省令で定める程度のものがある場合(2)入居者が50歳以上かつ同居者のいずれもが50歳以上又は18歳未満 (3)入居者又は同居者に前第3号、第4号又は第6号に該当する者がある場合
3 法第23条第2号イ、ロ及びハに定める金額は、当該各号に定める収入の額。 (1)イは26万8千円、(2)ロは26万8千円、(3)ハは20万円

《入居者の選考基準》
第7条(超えた場合の)入居者選考は条例で次の1に該当する者のうちから行う。
(1)住宅以外の建物若しくは場所に居住し、又は保安上危険若しくは衛生上有害な状態にある住宅に居住している者
(2)他の世帯と同居して著しく生活上の不便を受けている者又は住宅がないため親族と同居することができない者
(3)住宅の規模、設備又は間取りと世帯構成との関係から衛生上又は風教上不適当な居住状態にある者
(4)正当な事由による立退きの要求を受け、適当な立退き先がないため因窮している者(自己の責めに帰すべき事由に基づく場合を除く。)
(5)住宅がないために勤務場所から著しく遠隔の地に居住を余儀なくされている者又は収入に比して著しく過大な家賃の支払を余儀なくされている者
(6)前各号に該当する者のほか現に住宅に因窮していることが明らかな者

    以 上