岐阜県議会、食糧費・旅費返還訴訟

    証人尋問を傍聴しました
          
02年5月30日、岐阜地裁で、午後2時から4時まで「岐阜県議会、食糧費・旅費返還訴訟」の証人尋問があり、傍聴しました。
 原告側が証人申請したのは、被告で今年3月まで県議会事務局長だった種田さん。議会事務局長といえば部長クラスのエライ人で、司法の場に証人に呼べただけでも画期的です。原告側が申請した証人を裁判所が認めて実現したもので、双方とも尋問しました。

 はじめに被告参加人の岐阜県の代理人から約40分、証人尋問がありました。当然ですが、違法を容認するように誘導するような質問ばかりで証人は苦しい受け答えをしていました。議会の実態を知らない弁護士の勉強不足にけっこう笑えました(自治法を理解してるのかすら疑問)。とバッサリ切っておいて、被告側の尋問に貴重なスペースをさくのは惜しいので、原告の証人尋問にうつりましょう。
 原告側で尋問するのは、原告選定当事者の寺町知正さん。約90分の証人尋問は、結論から言えば、シロウトとは思えないほど、見事な展開でカッコよかった。これは同居人としてのわたしのヨク目ではありません。被告側のある弁護士からも、「行政訴訟のアドバイスを仕事にしたら」と言われていました。
 かれは現職の議員ですから、議会のルールに精通しているのは当然ですが、論点が被告側も(たぶん)予想していなかった展開で、証人の答弁の矛盾を引き出していました。
 原告側の尋問が始まってすぐに、被告側の4人の弁護士の間に動揺が起きました。かれらはもっぱら証人が県議会事務局長の職にある時の質問を予想して綿密にシミュレーションしてきたのでしょう。 
 でも、原告側の質問は、証人の職歴を調べて、食糧費については議員を接待する側の出先機関の長だった時のこと、議会運営については地方課時代の経験を問うものでした。
 まず「地方自治法が市町村にも県にもひとしく適用される(同じ)ルールである」ことを証人に確認した上で尋問が始まりました。
 委員会後の懇親会について、「会場設定はだれがするのか?」「あいさつは?」「何を話すのか?」「だれが酒をつぐのか?」etc。具体的で詳細な質問が続き、懇親会が飲んだり食ったりの公務員同士の宴会にしかすぎないことが、つぎつぎに証人自身の口からあきらかにされました。委員会が懇談会の日程にあわせていたこともバクロされました。終了の儀式が「中締めの手打」であることは、二次会の存在を、容易に想像できます。
 出色は、少し専門的になるのですが、「閉会中審査」の議決を受けて行われた委員会視察との関係についてでした。「付議された特定事件と夜の懇談会の関係をどのようにとらえているか?」の質問に、「委員会は公務であるが、懇親会は別の任意の会です」と、証人自身が言い切ったのです。これで、委員会と懇親会は一体ではないことがあきらかになりました。一泊二食の委員会の旅費が支給されながら、出先機関で懇談会費を負担していることについては、最後まで二重払いだとは認めませんでした。 
 証人は、県の地方課(市町村課)にも長く在籍していたので、市町村を指導する立場の、地方自治法の専門家でもあったハズです。「議会事務局は違法を是正するために議会にアドバイスする立場にある」と認めながら、「当時の県議会に違法はなかった」と矛盾する答弁を繰り返していました。議会休会中(議会のない日)の旅費についても、県地方課は「公費は支出できない」と明確な見解を持って市町村を指導していました。国の解釈も同じです。当時、県の上級庁は国だったのですが、「国(旧自治省)の解釈とわたしの解釈が違ってもいい」と言った言葉は、マイクでも聞き取れないほど小さな声でした。

 証人尋問により、新たにあきかになった事実に対し、裁判所はどのような判断を下すのでしょう。       (報告・みどり)