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                           2002年9月6日
岐阜県知事 梶原拓 様
                 くらし・しぜん・いのち 岐阜県民ネットワーク 
                         事務局 寺町知正
                     岐阜県山県郡高富町西深瀬208

  住基ネット問題に関する申し入れ


 今年8月5日、住民基本台帳に記載された日本「国民」に11桁の住民票コードが付番されました。そして、各市区町村、都道府県と全国センター、そして国の行政機関等をオンラインで結ぶ住基ネットで住所・氏名・生年月日・性別・住民票コード・変更履歴の本人確認情報が流されています。

 住基ネットは、コンピューターシステムを利用し恩給の支給・雇用保険等の本人確認等10省庁93件の行政事務の効率化を図ること、住民票が全国どこでも取得できるようになる等がメリットとされています。そのための経費としてシステム構築に約400億円使用、維持に年間約200億円が必要とされています。
 先のメリットに対する投下経費としてはあまりに大き過ぎる額ですから、今後、「経費に見合う利用」として当初説明の利用範囲を大幅に拡大されることが予定されていることは間違いありません。
 今後、住民票コードをマスターキーとして国民の個人情報のデーターベースが作成・利用され、国民生活のあらゆる個人情報が国等の行政機関によって管理されることになります。
 現在でも様々な分野で個人番号が付され利用されていますが、これはその分野だけで利用されているものですから、意味が違います。

 基本的人権であるプライバシーの権利とは、自分の個人情報について自分でコントロールすること、すなわち自分の情報が何の目的で収集され、どのように利用されるのか予測でき、訂正、削除等できることです。

 防衛庁の情報公開請求者のリスト問題、原発の給付金拒否者のリスト問題、その他最近の各種事件で明らかなように、公務員の個人情報保護・プライバシー保護に関する認識と責任感の欠如ははなはだしいものです。
 個人情報を行政機関に集中することの基本となる住基ネットを導入する危険性は明らかです。
 加えて、住基ネットにおいて利用されるコンピューターのセキュリティが完全なものではないことは周知のとおりです。
 この住基ネットが、歯止めなき個人情報の不正利用につながり、プライバシー・人権侵害につながることへの不安は、とうていぬぐうことができません。

 「住基ネット」の稼動を定めた住民基本台帳法の99年の改正の国会決議において、施行の条件として個人情報保護法の制定が附帯決議されており、当時の小渕総理大臣の答弁でも個人情報保護法の制定が前提であると明言しています。
 ところが、現在この個人情報保護法は成立しておらず、このまま「住基ネット」の稼動・運用を続けることは、国民のプライバシーが侵害されるおそれが非常に高いものといわざるを得ません。
 このことから、「個人情報保護のための法整備を伴わない制度実施は違法」との主張があることはご承知のとおりです。

 電子政府、電子自治体の実現にあたっては、公的部門を対象とした個人情報保護に関する法整備が優先的に策定されるべきです。また、個人信用情報、医療、電気通信事業、教育等の各分野における個人情報保護について、その特性を考慮したうえで、厳しい罰則を伴った個別法がすみやかに制定されるべきです。これらの実現のないままに改正住民基本台帳法を施行したことは間違っています。

 自治体は、基本的人権である住民のプライバシーを守るべき責務がありますが、一旦流失した個人情報は回収不可能で、取り返しがつかないこととなります。
 いくつかの自治体は住基ネットに参加していません。他方、8月5日の稼働とともに初歩的なミスを含めて自治体でのトラブルが相次ぎました。
 横浜市は市民の自主的な選択制を発表しましたが、これに対して神奈川県は、「部分的なデータは受け取らない」と表明しています。
 住基ネットは都道府県が運用主体です。しかし、実際にはすべての都道府県が全国センターに事務委任を行っているために住民データの国家管理に道を開くものとなっています。しかも、住基ネットのアクセスログ(いわゆる照会の記録)は誰のことを照会したのかの記録が不明確なおそれが高いとされています。
 貴職は現在、全国知事会・情報化推進対策特別委員会委員長を努めておられますが、岐阜県は、アクセスログの開示は予定していません。
 また、アクセスログを当人や市町村に通知することも予定していません。

 貴職は日頃より、地方分権時代に真に地方自治を確立しようと提唱されているのですから、これだけ問題の多い住基ネットから離脱する決断をすべきです。
 住民の個人情報を適正に管理し、またこれを保護する責務を有する貴職に対して、納税者・自治体住民として、以上のような認識に基づき申し入れます。

1 個人情報保護法制が整わない現在、住基ネットを中断するよう国に申し入れること。

2 「住基ネット」稼動の条件とされる個人情報保護法の制定がなされるまでは、県として、「住基ネット」から離脱すること。

3 国に、既送信データの削除を求めること。

4 アクセスログの改善と、国や県の段階でのアクセスログの開示を行うこと。


5 国や県のアクセスログを当人及び市町村へ通知すること。

6 県内の市町村が当該住民の求めに対して、個人情報の削除等を決定した場合、
  その判断に対して介入することなく、尊重すること。

 また別紙のとおり、岐阜県個人情報保護条例第25条に基づき是正を申出ます。
 
                                           以 上