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地域情報化事業及び行政防災無線事業に関する山県市職員措置請求書(住民監査請求書) 要約版


【1 請求の趣旨】
第1−A 本件事業内容の経過と概要(CATV事業)
1, 山県市は、2004(H16)年度から来年度、町村合併の目玉事業として、高富町が10年ほど前から実施していた公営の有線テレビ事業を、美山・伊自良地域に拡大し、さらにインターネット、IP電話を実施する地域情報化事業を計画している。

2, 市民一人当たり約10万円、一世帯当たり平均約30万円もの税金を使う。

3, 計画策定の予算
 今年度26億7373万4000円で機器や幹線の光ケーブル敷設、来年度7億4858万6000円で加入者宅までのケーブル配線などの経費で合計34億2232万ある(甲第1号証)。財源は、合併特例債と一部は美山地域の過疎債が中心である。

4, 2004(H16)年度6月1日、一般競争入札を告示、仕様書等をインターネットに掲載、同時に、入札参加資格の申し込み期限を6月1日から同6月11日までとし、この間を標準仕様書などの閲覧期間として、希望者に市役所303会議室で閲覧させ、書類の写しを交付した。入札は、7月16日実施予定である。


第1−B 本件事業内容の経過と概要(防災無線事業)
1, 山県市は、2004(H16)年度から来年度にかけて、町村合併の目玉事業として、防災無線整備を計画している。公用車等の移動系のデジタル地域防災無線設備整備、アナログでの親機やマスト整備のため同報系設備整備、高富地区の全世帯への受信機(約6000台)無償貸し出しなどである。

2, 市民一人当たり約3万円、一世帯当たり平均約9万円もの税金を使う。

3, 今年度は、山県市全域における公用車等の移動系の防災無線として「山県市デジタル地域防災無線設備」整備として3億8865万4000円、アナログで親機やマスト整備のための「山県市防災行政無線(同報系)設備」整備として2億7098万6000円である。来年度は、アナログの「山県市防災行政無線(同報系)設備」整備として4億6462万5000円を予定し、以上合計11億2426万5000円である(甲第1号証)。
 財源は、主として合併特例債が中心である。入札は8月ないし9月を予定している。


第2 基本姿勢の誤り
1, 住民のコンセンサスがないこと
2, 住民ニーズの把握の欠如
3, 計画策定業者選択の誤り
  「日本農村情報システム協会」らは、国会でも問題とされた不適正業者である。
4, デジタル放送の必要性について
 山県市は、7年後のデジタル化対応を目的として強調したが、テレビ事業(自主放送を除く)は結局は市の直接管理から外す、つまりデジタル放送を扱う意志がないのだから、33億円も使って、現在の全市に拡大する必要はない。
 現行の共聴組合を維持する、整備する、復活する、ということで大幅に自治体の負担が安くできることは、明白である。
5, CATV事業の価格競争力について
6, FTTC同軸のケーブルの場合のインターネットのサポートについて
7, FTTHに対する市の見解について(【別紙−1】で補足する)
8, 防災無線整備
 相変わらず、アナログであるなど現状及び将来について十分な検討がなされていない。国は、市町村防災行政無線のアナログに対する補助金を廃止した(甲第2号証)。

9, @無線については、伊自良・美山地区は既に防災無線設備が整備され各戸に受信機も配布され、高富地区では防災無線が整備されていない、他方で ACATVについては前者の逆で高富地区では整備され、伊自良・美山地区では導入されていないが共聴施設は完備している、という山県市固有の事情を前提とする組立てがなされていない。
 以上、違法で予算を投入することは市の損害というべきである。


第3 事業方式選択における誤り
1, 受託業者から提案が示された地域情報化計画や防災無線計画を受けて、市は、事業の意志決定においては、最小経費、最大効果を追求して手法を選択する義務を負うところ、市の主体性及びこの責務を放棄し、業者の示すままの計画にした。

2, 議会の審議欠如
3,具体的問題点
4,最低制限価格を設定すべきでない

5, しかも、両事業を同時進行させることは極めて無駄が多い。例えば、CATV事業ではインターネット接続及びIP電話のためのモデムを全戸に無料配布し、防災無線では受信機を全戸配布するなど、その不合理はいうまでもない。送信側の機器についても、共用であれば合理的であることはいうまでもない。
 本件事業の遂行には市の関係者に許された裁量を著しく逸脱する不当もしくは違法がある。本件事業遂行に一定額以上を支出することは許されず、一定額を越える支出は市の損害というべきである。

6, 違法と損害
 以上のとおり、本件事業の現行の方式での遂行には市の関係者に許された裁量を著しく逸脱する不当もしくは違法がある。
 地方自治法(以下、法という)第2条14項「地方公共団体は、その事務を処理するに当たっては、住民の福祉の増進に務めるとともに、最小の経費で最大の効果を挙げるようにしなければならない」、地方財政法第4条1項「地方公共団体の経費は、その目的を達するための必要かつ最小の限度を越えてこれを支出してはならない」とされている。次項第4で述べる方式や諸点から判断すれば、このまま支出されるなら、「最小経費で最大の効果」の原則に反し、「必要かつ最小の限度」を越えているから上記法令を著しく逸脱した違法なものである。
 本件事業遂行に一定額以上を支出することは許されず、一定額を越える支出は市の損害というべきである。

7, 支出の許容額
 支出の許容額は、@ 両事業を統合して行った場合は、下記第4で25億円が導かれ、この額を根拠として、ACATV事業に関して34億円×(25億円÷45億円)≒19億円、B防災無線に関して11億円×(25億円÷45億円)≒6億円である。

第4 現実に他の方式が存在していること
 両方の目的を達するためには、他の観点による場合など各種ある。
 例えば、岩村町は、光ケーブルと無線を組み合わせて、インターネットや防災無線その他ユビキタスネットワークシステムを確立し、平成16年10月からは地上波デジタル放送中継システムも開始する。各家庭の受信設備まで含めて4億円程度の経費である(人口5400人1600世帯)(甲第3号証)。
 岐阜県や国が出資して作った第三セクターの(株)VRテクノが山県市に提案する方式では、テレビ、インターネット、防災無線に加えて、現在の市の計画では全く不可能であるユビキタス環境の構築も可能となる方式では、約25億円である(甲第4号証)。 山県市には、これら各種の方式を比較検討して事業遂行すべき義務がある。

第5 テレビ、インターネット業務の外部委託
1, 外部委託
 市は04年5月に美山・伊自良の各地区で説明会を行ったが、その際のパンフには、 @nifty のサービスを提供する、と印刷されている。つまり、山県市は当時既に インターネットのサービスに関して、 @nifty 運用会社ジャパンケーブルネット鰍ノ委託することを意志決定している。
 その後、市は、6月3日付けで、ジャパンケーブルネット梶iJCN)と仮契約し、アットニフティ @niftyも位置付けられている。
 山県市の支出をともなう契約であるから、事業開始の前年度に契約することはできない。予算議決もない。よって、本件で市がいう仮契約は手続き上違法である。
 テレビやインターネットサービスの提供を可能とする業者は当該予定業者系列以外にもたくさんある。これを入札に付さず随契したことは、違法である。
 結局、本件契約は法第234条2項、同施行令第167条の2の第1項に違反する。

2,契約の位置付け 
3,当該契約の違法 
4,事前交渉及び仮契約の違法

5, 契約の違法と無効
 法第2条16項「地方公共団体は、法令に違反してその事務を処理してはならない。」、同17項「前項の規定に違反して行った地方公共団体の行為は、これを無効とする」とされている。つまり「法令に違反してなされた行為は無効」であるから、本件契約は成立しないのも明白である。

6, 市の公営事業なのに市民ユーザーを民間業者のために囲い込むこと
 今、インターネット業界はユーザーの獲得に奔走している。地方公共団体が、税金で設備を整える事業であるから、民間業者の市民の囲い込みに加担することは許されない。 住民がプロバイダー(インターネットの接続業者)を選べない方針だが、民間事業でなく、市民の多額の税金を使う事業なのに極めて不合理だ。市は全国に提携プロバイダーを募集して提携の契約をし、市はアクセス回線を提供するのみならば、別のプロバイダー料金設定もありうるので市民の負担は軽くなる。市には、このようにする義務があ

7, 条例は違法で無効である
 10M2100円、30M2625円という条例規定部分は、@違法な契約手続きを前提とし、Aサービス提供に関して誤りかつ根拠のない議会説明に基づいて議決されたもので、B「最小経費で最大の効果」の原則に反し、C「必要かつ最小の限度」を越えているから上記法令を著しく逸脱した違法なものである。よって、受託先に一定額以上を支出することは許されず、一定額を越える支出は市の損害というべきである。

第6 県内、市内事業者が存在する
1, 県内では、例えば、県や国が出資して作ったVRテクノセンターが積極的に事業展開し、格安で豊富にサービスを提供している。市民の多額の税金で実施するのだから、最小経費最大効果は最重要な判断基準である。

2, 例えばVRテクノセンターの方向は適切である。
 VRなら、月額(105000円+一加入者当たり525円)で可能である。
 JCNが山県市で予定するのと同様なサービス提供はVRテクノも可能である。

第7 両事業計画の統合、修正可能性の検討責務
1, 以上のことから、山県市は、「山県市地域情報化計画」と「山県市防災行政無線設備設置計画」をミックスしても目的達成は可能であるので両計画を統合もしくは修正するべく計画を変更すべきことが具体的に明らかである。

2, 双方ともH年度に委託して計画ができ必要経費も試算された。何ら検討なく双方推進することは著しい誤りがある。今年度はまず両者の統合あるいは修正の可能性の調査の委託をすべきである。

3, 財政が厳しいから合併するとされた。安易に高額な方式を選択することは、その原点に反する。合併特例法の趣旨にも反する。
 再検討の結果、できないなら双方をより適切かつ低価格で進めるべきである。

第8 結論 
 本件事業は、意志決定過程において著しい裁量の逸脱があり、議会議決も同様に瑕疵があるし、アウトソーシング委託手続きにも違法があるから、直ちに、方式を含めて全面的に再検討をしなければならないのは明白である。
 このまま事業を推進すれば、山県市及び山県市民に多大な損害が生ずることは明白であるから、この損害を未然に防止するために、請求人は次のことを監査委員に求める。

1, 本件CATV事業と防災無線事業に関して、当面、2003年(H15年)に策定された計画の統合や修正の検討のための調査及び計画策定の検討委託費相当額を越えた額を支出してはならない、と市長に勧告すること(差止請求)。

2,(1) 本件CATV事業に関して、仮に山県市が事業を遂行する場合でも、19億円を越えて支出してはならない、と市長に勧告すること(差止請求)。

 (2) 本件CATV事業に関して、19億円を越えて支出した場合は、市長ら権限を有する関係職員は市に損害を与えたものとして、連帯して市に同額を返済せよ、と市長に勧告すること(差止請求中に支出した場合の措置請求)。

3,(1) 本件防災無線事業に関して、仮に山県市が事業を遂行する場合でも、6億円を越えて支出してはならない、と市長に勧告すること(差止請求)。

  (2) 本件防災無線事業に関して、6億円を越えて支出した場合は、市長ら権限を有する関係職員は市に損害を与えたものとして、連帯して市に同額を返済せよ、と市長に勧告すること(差止請求中に支出した場合の措置請求)。

4, 本件CATV事業に関して、市の @nifty を前提とするジャパンケーブルネット鰍ヨの委託契約は違法かつ無効であるから改めること、と市長に勧告すること(無効確認)。

5,(1) 本件CATV事業に関して、市は、@niftyを前提とするジャパンケーブルネット鰍ノ一加入者あたり、1000円を越えて支出してはならない、と市長に勧告すること(差止請求)。

 (2) 本件CATV事業に関して、市が1000円を越えて支出した場合は、市長ら権限を有する関係職員は市に損害を与えたものとして、連帯して市に同額を返済せよ、と市長に勧告すること(差止請求中に支出した場合の措置請求)。

 なお、上記主張を補充するために【別紙1〜5】を添付する。

【2 請求者】別紙のとおり 寺町知正  他7名

以上、地方自治法242条1項により、事実証明書を添えて、必要な措置を請求します。
                             2004年7月8日
山県市監査委員 様 

    別紙事実証明書目録

甲第1号証 平成16年度山県市予算書の債務負担行為調書の関連部分の抜粋
甲第2号証 防災無線に関する国の通知文
甲第3号証 岐阜県岩村町の地域情報化計画の概要
甲第4号証 県内業者の提案書
甲第5号証 山県市のCATV事業の住民説明会の配布パンフ(3頁中に @nifty)
甲第6号証 第5の1の(4)で引用した業者選定関係書類等目録と当該文書他
甲第7号証 地元市内業者の提案書
                         以上