岐阜県議会非会議日応招旅費返還住民監査請求   


一 請求の要旨


1 岐阜県議会は、九九年度、議会費一二億一二八五万六〇〇〇円の予算のうち、議員報酬が八億三三二六万円(一人当約一四五〇万円)、県政調査交付金が約二億円(一人当約四〇〇万円)、議員応招旅費は約五一〇〇万円(一人平均約一〇〇万円)であり、他に県政調査旅費三五九〇万九〇〇〇円、海外事情調査費二七六〇万一〇〇〇円もある。

2 議員が本会議や委員会など議会の招集に応じた場合は、費用弁償条例第四条二項「議長、副議長及び議員が議会又は委員会の招集に応じた場合の費用弁償の額は、別表のとおりとする」を根拠に、議員毎の距離に応じて、最低は岐阜市内等の九八〇〇円から最高の高山市内等の二一六〇〇円まで、支給している。


3 議員は「職務を行うため要する費用の弁償を受けることができ」(地方自治法(以下、法という)法第二〇三条三項)、この場合は「条例で定める」(同五項)とされている。この際、「本会議日」及び「委員会会議日」の出席のみが正規の職務として、費用弁償の対象となる事は、いかに明らかである。
  しかし、岐阜県議会では、「条例の応招とは会期中の全ての日を指す」と解釈し、議会開会中の正規の会議のない日にも、議会棟に登庁し、「議会事務局へ一枚の届出書を出す」だけで、会議へ出席したのと同じように費用弁償をしてきた。その額は、例年、一五〇〇万円前後である。

4 応招とは、首長もしくは委員長の招集を受けて、「当該議員が議事堂(会議室)に赴いた第一日目」のみを指している。
5 議案精読や調査をどのように、どこで行うかは議員の任意の行為であり、員外議員の委員会傍聴も費用弁償の対象ではない、とされている。


6 会期中の本会議・委員会の会議以外の議員活動も、閉会中の審査の議決を正しく経ていない委員会活動も、公務とは認定できない、とされている。

7 このように、議会の会議のない日にも費用弁償を行う本件支出は、別途報酬や調査費等があることを考慮すればなおさらに、社会通念上決して許されるものではなく、法第二〇三条三項及び五項、費用弁償条例第四条二項、法第二条一三項、地方財政法第四条一項に違反している。

8 もし、岐阜県議会の解釈が正しいとするなら、県議が費用弁償の一部を受領していない現状は、議員が、旅費請求権を放棄していることになり、議員は公職選挙法第一九九条の二の規定《公職の候補者等の寄附の禁止》に違反している。

9 よって、監査委員に対して、本件違法で不要な支出である金一五〇〇万円の全額の返還をするように関係者に勧告することを求める。

二 請求者



別紙 くらし・しぜん・いのち 岐阜県民ネットワーク  寺町知正 他  名

  以上、法第二四二条第一項により、事実証明書を添えて、必要な措置を請求します。

 二〇〇〇年四月一七日
 岐阜県監査委員 各位

    別紙事実証明書目録


第一号証 岐阜県平成一一年度当初予算説明書(関連部分)

第二号証 岐阜県平成九年度当初予算書説明(同じ支出がされているにもかかわらず、現在はこのような議会資料が作成されてないため過去のものを示す)

第三号証 会議規則・委員会条例・傍聴規則逐条解説(中島正郎著・発行「ぎょうせい」)

第四号証 議員の公務災害についての自治省通知

第五号証 議員の公務災害についての補償制度の解説
        以 上

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   住民監査請求  補充書
   


     二〇〇〇年四月一七日

第一  県議会の予算及び旅費等


一、県議会の予算


 岐阜県議会は、九九年度当初予算書及び説明書(第一号証)に示されるように、議会費一二億一二八五万六〇〇〇円のうち、議員報酬八億三三二六万円(一人当たり約一四五〇万円)、議員活動費二億五三二二万七〇〇〇円を計上し、議員活動費の内訳は県政調査交付金約二億円(一人当たり約四〇〇万円)、その他は議員応招旅費約五一〇〇万円である。また、委員会費三五九〇万九〇〇〇円が計上され、この内容は県政調査旅費である。また、別に、海外事情調査費として、二七六〇万一〇〇〇円(四年の任期中に全議員が一回行くように組むまれる)もある(第二号証)。

二、旅費・費用弁償の支給について


 本会議や委員会など議会の招集に応じた場合は、議員には岐阜県議会議員報酬及び費用弁償条例(以下、費用弁償条例という)第四条二項「前項の規定にかかわらず、議長、副議長及び議員が議会又は委員会の招集に応じた場合の費用弁償の額は、別表のとおりとする」によって議会費より旅費が支給されている。別表では、その支給額は居住地と議事堂の距離に応じて県内を七ブロックに分けて、例えば最低は岐阜市内等の九八〇〇円から最高は高山市内等の二一六〇〇円までとしている(これを応招旅費という)。
 なお、県内外視察に出席するための各県議(当該委員)の登庁行為に対しては、費用弁償条例第四条一項「議員が職務を行うのに要する費用弁償の額は、岐阜県職員等旅費条例(以下、旅費条例という)に定める知事職にある者の例による」との定めによって、知事と同額の日当及び宿泊料が支給される。この日当には「昼食代等」が含まれ、宿泊料は「一泊二食代」を意味する。   

第二  本件応招旅費支出の違法


一 地方自治法及び費用弁償条例違反
 1 地方自治法(以下、法という)によって本会議は会期中のみ開催することができ、委員会も原則的に会期中のみ活動能力を有し、法第九八、一〇〇条によって、議会にのみ調査権が与えられている。
   議員は「職務を行うため要する費用の弁償を受けることができる」(法第二〇三条三項)、この場合は「条例で定める」(五項)とされ、これを満たすものを法律上の根拠のある職務という。本件費用弁償は「職務の執行に要した経費を償うために支給される金銭給付」である。
   よって、@「本会議日」及びA「委員会会議日」の出席のみが正規の職務として、費用弁償の対象となる。
   しかし、岐阜県議会では、「費用弁償条例第四条二項の応招とは会期中のすべての日を指す」との解釈をし、B「会期中の正規の会議はないけれど、議員が登庁報告届を提出した日」にも、議会事務局へ一枚の報告届を出すだけで、会議へ出席したのと同じように費用弁償をしてきた。その額は、例年一五〇〇万円前後である。

 2 しかし県議会の現在の解釈のように「応招とは会期中すべてを指す」とし、執務の内容を問わずに「登庁したこと、即ち、公務」とするなら、C「会期中の会議がなく、議員が登庁報告届を提出していない日」もD「休日(土日)の登庁」にも支給しなければ、条例解釈としての整合性がない。また、議員は自宅や県庁外にあって議案検討することもあるから、E「会期中の議員が登庁していない日」にも支給して、「会期中の全の日」に支給しなければ、条例解釈としての整合性がない。   即ち、会期とは@+A+B+C+D+Eであるが、「応招とは会期中すべてを指す」としながらCDEには支出していないのである。
 3 また「応招とは会期中すべてを指す」なら、招集行為は一会期につき一回であるから、招集に応ずる行為は一会期につき一回だけであり、費用弁償も一回と見るべきことである、ともいえる。いずれにしても、現状が解釈を誤っていることになる。

二 自治体の会計原則違反
 地方公共団体の事務を処理するに当たっては、最小の経費で最大の効果を挙げるようにしなければならず(法第二条一三項)、経費はその達成するために必要且つ最小の限度をこえて支出してはならない(地方財政法第四条一項)とされているが、本件のように放漫な支出はこれに違反する。

三 以上、議会の会議のない日にも費用弁償を行うことは、社会通念上決して許されるものではなく、法第二〇三条三項及び五項費用弁償条例第四条二項に違反し、法第二条一三項、地方財政法第四条一項にも違反する。

第三  応招について  


一 法第一〇一条一項は「普通地方公共団体の議会は、普通地方公共団体の長がこれを招集する」、同二項「招集は、・・これを告示しなければならない」、同第一〇二条六項は「議会の会期・・・その開閉に関する事項は、議会がこれを定める」とされている。
 会議規則第二条は「議員は、招集日の開議時刻までに議事堂に参集し、その旨を議長に通告しなければならない」としている。
 岐阜県議会委員会条例(以下、「委員会条例」という)第八条一項では「委員会は委員長が招集する」、同三項では「委員長は、委員会を招集するときは、あらかじめ議長に通知しなければならない」としている。
 以上のように、議会の招集権限とは、普通地方公共団体の長に、委員会の招集とは当該委員長に専属する。そして、会議規則は本会議のみについて適用されるから、委員長は、会期中であれば議会の休会日にも委員会の会議を招集できる、とされている。
 招集行為の手続きは非常に重要であって、「長が議会招集の告示をした後は招集期日を変更することはできない(行政実例/昭二六・九・一〇)」、「急施を要するものに非ざるに拘わらず之を急施事件として法定期間を置かず村会を招集開会の助役及収入役を選定したるは違法なり」(行政裁、昭和三・一二・二七、昭和三・一七三、行録四〇輯二八頁)とされている。議会は応招議員が議員定数の半数以上に達し、かつ出席しなければ流会となる。

二 会議規則第二条は「議員は、招集日の開議時刻までに議事堂に参集し、その旨を議長に通告しなければならない」としている。
 「『参集』とは、長の招集に応じ会議に出席するめたに集合することで集会と同義語と解され、議会ではこの状態を応招と観念している。したがって、招集当日の参集者も第二日目に応招した者もむろん参集者である」(第三号証/二六頁・九行目〜)、「招集当日は『応招議員』であり、開会された会議に出席すれば『出席議員』となる。招集当日に欠席(不応招)し、二日目に出席したときは、この日が「応招」であり、かつ、出席となる」(第三号証/二七頁・一行目〜)とされている。
 このように、個々の議員がそれぞれ参集する最初の行為を「応招」というのである。

三 以上、応招とは、長もしくは委員長の招集を受けて、「当該議員が議事堂(会議室)に赴いた第一日目」のみを指しているのである。よって、応招が全会期を指す、との岐阜県議会の解釈は誤っていることは、明らかである。

第四  議員の公務とその費用弁償について


一1 法第一〇五条「議長は、委員会に出席し、発言することができる」とされている。
 行政実例(昭和二七・一二・二六 自行行発第一九三号 鹿児島県総務部長宛 行政課長回答)では   問 議長又は副議長が委員会に出席したとき、費用弁償の支給を受けることができるか。
  答 議長又は副議長(議長の職務を行う場合に限る)が法第一〇五条の規定により、委員会に出席したときは、支給すべきである。
  問 議員が議会の付議又は議長の命なくして調査旅行したとき、費用弁償の支給を受けることができるか。
  答 これを支給すべきではない。
  問 議員が議会の付議又は議長の命なくして、委員長の命で調査旅行したとき、費用弁償の支給を受けることができるか。
  答 これを支給すべきではない。


 2 行政実例
  問 議員の報酬及び費用弁償等に関する条例に「議員(議長、副議長、委員長及び副委員長を含む)が招集に応じ若しくは委員会に出席するため旅行したとき又は公務のため旅行したときは、その旅行について費用償として旅費を支給する」旨の規定があるとき、左記いずれの場合も議会等への出席の事実がなくても職務執行と要した経費の支出があったものとして、議員に対して費用弁償を支給すべきか。
     一 参集して応招の通知があったがその後に、事故の都合により会議に出席しなかったとき。
     二 応招の通知があり、開議されることなく流会となったとき。
     三 委員長の会議通知により正規の委員会に出席するため控室等で待機し、その事実が確認されたとき。


  答 自治法第二〇三条によれば、普通地方公共団体は、その議会の議員等非常勤の職員に対し、職務を行うために要する費用の弁償を支給しなければならない義務を負い、当該費用の支給方法につき条例で定めなければならない旨規定されている。
   設問においては、自治法第二〇三条第五項の規定に基づく条例により「議員(議長、・・・・・・を含む。)が招集に応じ若しくは委員会に出席するため旅行したとき又は・・・・・・ときは、その旅行について費用弁償として旅費を支給する」と規定しているところである。
   問一の場合は、長の招集告示に応じて、議員が指定された招集場所へ参集するため旅行したわけで、このことは条例上の「招集に応じ、・・・・・・旅行したとき」という要件に該当するものと考えられる。
     したがって、開会当日参集し、会議規則所定の手続をなしたときはその後会議に事故の都合により欠席したとしても、それは旅行の事実とは別個の行為であり、またこのような場合費用弁償はしない旨の規定がない(設問からだけでは不明であるが)以上、招集日における費用弁償そのものはこれを行う必要がある。
   問二の場合においても、問一の場合と同様、旅行の事実が、正当な招集行為に基づくものであれば、その後の事実を問わず、費用弁償をすべきだと考える。
   問三の場合においても、委員会が議会として活動能力を有している場合、すなわち議会が開会中又は閉会中であっても継続審査の議決がなされている場合は、一、二の場合と同じく、正当な招集権者(多くは当該委員長)の招集に基づき、指定された場所への旅行の事実をもって、「委員会に出席するため旅行したと・・・・・」に該当し、後発の事実を問わず、費用弁償すべきだと考えられる。
     以上、まとめると、招集に応じて指定された場所へ旅行したことに対して、費用弁償はなされるのであり、その後の事実によっては影響されないものである。


 3 行政実例(昭五七年)は、
  問 議会において常任又は特別委員会のいずれでもない委員会を設置し、その委員会に出席した議員に対して費用弁償を支給することができるか
  答 議会に置き得る委員会は、法一〇九条の規定による常任委員会と第一一〇条の規定による特別委員会に限られるものと解すべく、したがって、できないと解する。

 4 このように、第二の一で述べた場合か、議長を正規に代理したときの副議長とか、正規の委員会への当該委員の出席など、法定の根拠ある活動だけが費用弁償の対象となり得るものである。

二 右のように会期中、副議長が正規の委員会に出席しても「議長代理という正規の職務」でない限りは公務性は認められず、これに費用弁償は認められないのであるから、当該委員でない委員会を他の議員が傍聴する行為に対して費用弁償ができないのは当然である。議案精読や調査は県庁外で行うことが必要な場合もあるし、自宅で行うこともあり、また会議や打ち合わせは、どこでもなし得るのであり、これらを議事堂や県庁で行うことは議員の任意の行為であって、公費で費用弁償する法的根拠も公務性もない。別途報酬や調査費等があることを考慮すればなおさらである。


三 以上から、岐阜県の定例会における費用弁償が可能である公務は、「費用弁償条例第四条二項に定める招集に応じ議事堂に赴いた場合(成立の有無を問わない)」、「招集に基づき会議が成立し、会期が決定された場合の当該会期中の本会議に出席した場合」「会期中の委員長の招集に応じ指定場所に赴いた場合(無論、閉会中の審査議決を得た委員会は別途あり得る)」である。

第五 公務災害と認定できる公務とは


  公務もしくは直接公務に関係なければ公務災害補償はなし得ないから、議員の職務、すなわち「公 の仕事」といえる場合を確定するために、公務災害と認定できる場合を明らかにする。
一 《議員の公務上の災害の取り扱いについて》自治省行政局公務員部長通知(昭四三・五・六・自治 給第五一号)(第四号証)は、「公務とは議員が議員としての職務を遂行する行為」であり、「公務上の災害とは、公務に起因、又は公務と相当因果関係をもって発生したもの」で、「会期中の議会活動に従事中」「閉会中、正規の手続きを経て開かれた委員会」を公務災害の認定の前提事実として明確に位置付けている。さらに、右通知は「議会の議員の議会への出席義務は公権力が作用しかつ費用弁償の対象とされている法制的関係から、特定のときのみでなく、一般に、議会の議員の議会への出席途上の災害は公務上と認めて差し支えないか」の問いに対して、これを「公務上の災害とは認められない」としている。「会期中の議会活動(に従事中)」とは、続語が「閉会中、正規の手続きを経て開かれた委員会」として法定の委員会を指していることからも、本会議及び正規の委員会の会議への出席を指すことは明らかである。同様に、右の「出席義務」がある場合とは、本会議及び正規の委員会以外にあり得ない。

二 一般職の災害補償は全国を一本化した地方公務員災害補償基金から支払われるが、非常勤職員は地方公共団体の独自に定めた条例によって当該地方公共団体が支払うことが基本である。この際、右基金との整合が必要であることから、地方公務員災害補償基金愛知県支部は「公務災害質疑応答集」を、従来より作成配布している(九九年三月版・第五号証)。ここに示されることは、災害補償制度として公平公正を求められるものであることから、当然、全国共通の原則である。この質疑応答のE項は、議員の公務遂行性は「会期中の本会議、委員会」「正規の委員会としての出張」等にあると、明確に位置付けている。ここにいう、「議会代表として」は、議長としてもしくは議長の代理としての意味である。


三 「公務災害」は公務の場への途上も対象とするという意味で、空間的、時間的に「公務」より広い概念であるが、逆に公務災害を認定できない前提事実の中に公務性を見いだすことは不可能である。
 以上明らかなように、会期中の本会議・委員会の会議以外の議員活動も、閉会中の審査の議決を正しく経ていない委員会(不正規の委員会、通常は協議会という)活動も、公務とは認定されないのである。


第六 県議会議員の公職選挙法違反


一 自治体職員は、法令に則って旅費を支給するから、岐阜県議会の「費用弁償条例第四条二項の応招とは会期中すべてを指す」との解釈が正しいとするなら、第二のCDEの場合に費用弁償を支出していないのは、論理的には「議員が報酬や費用弁償の受領を拒否している」との解釈しか成り立たない。
 即ち、議員が、旅費請求権を放棄していることになるのである。
 つまり、現在の応招旅費の支給態様では、議員は公職選挙法第一九九条の二の規定《公職の候補者等の寄附の禁止》の第一項「公職の候補者又は公職の候補者となろうとする者(公職にある者を含む。)は、当該選挙区内にある者に対し、いかなる名義をもってするを問わず、寄附をしてはならない。」に違反する事は明らかである。
 これに違反した場合、公職選挙法第二四九条の二第一項で「一年以下の禁錮又は一〇万円以下の罰金」とされている。

二 議員の請求権放棄にいての行政実例において「市長や市議会議員が、支給された給与のうち一定部分を返還すること、また具体的に生ずる給与請求権の一定部分をあらかじめ放棄することは、いずれも寄附に該当する。したがって、給与の返上又は辞退の問題の処理については、その行為が直ちに社会的公正に反するものとは言い切れない場合もあろうが、そのような場合においても、条例を改正し、給与の暫定的な減額措置をとる事が相当である」(昭五〇、一一、二〇)、「市長が事故の財産を、@当該市A当該市を包括する県B国、に対し寄附することは、いずれも公職選挙法第一九九条の二に違反する」(昭五〇、一一、二〇)とされている。

三 議員報酬の受領拒否について、明確な解釈がなされている(「議会運営質疑応答集」全国町村議会議長会監修・第一法規発行)。
 問 本町では、議員報酬・費用弁償について議会事務局長が各議員から一括受領の委任を受け、議員名義の口座に振込むことになっているが、諸種の事情により議員が報酬の受領を拒否した場合、どのように取り扱うべきかご教示下さい。
  1 公職選挙法第一九九条第一項の規定による寄付の禁止にあたるか。もし、あたるとすれば、報酬条例の改正により減額措置をとらなければならないと思うが、特定の議員だけが受領を拒否した場合、条例の改正はどうすべきか。
2 予算経理方法について
    報酬条例改正前に受領拒否した場合に、経理方法としては、歳入(雑入)として取扱うべきか、当該支出科目(報酬)の戻入とすべきか。

 結論 1の議員報酬の受領拒否については、公職選挙法第一九九条の二の規定に抵触するものと考える。
    なお、報酬条例は議員全員を一体不可分として適用するもので、一部議員を対象とする改正ではない。
    2 1により承認されたいが、受けとらない以上供託するより方法がない。

四 以上、「応招とは会期中すべてを指し、費用弁償が可能」との岐阜県議会の解釈が正しいとするなら、請求権を有する県議が費用弁償の一部を受領していない現状は、県議が公職選挙法に違反していると言わざるを得ない。

第七  本件住民監査請求の意義


 税金である自治体の公費の使い道に対する世論は厳しく、近年、各地で不適正な支出があらわにされるにつけ、住民、納税者の批判は一層強まっている。
 岐阜県では、県議会関連の懇談会や視察に関する支出についての九七年以来住民監査請求が何度かなされ、九八年七月二一日には、住民訴訟が提起された。そして、議会側も懇談会の中止や視察の改善など行った。一方、同じ訴訟で、議会開会中の正規会議がない日の議員の登庁行為に対する費用弁償の違法支出であることも争点となっているものの、これは一切改められていない。その後の九八、九九年の二年間の支出額は約三〇〇〇万円の巨額になる。実際に、議員は、会期内外にかかわらず議事堂には赴くのであり、この多くは、正規の会議(年間おおよそ三〇日程度)の目的以外の議員個人の様々な活動、所要の目的である。実際会期中に個別の政党活動を行う者も少なくなく、会期中に記者会見や政党の会議を議事堂で行うことすら日常である。これらを何らの区別なしに、届け出さえあれば一律に公務とみなすという岐阜県議会の習慣は許されない。
 そこで、本来的かつ健全な行政と議会の在り方の実現を願って本件住民監査請求を行う。

第八 本件財務会計行為に関する責任と返還


 本件と同様の支出について、九七年以来、問題提起されてるところ、岐阜県知事及び県議会関係者らは、これを何ら改善する事なく九八、九九年と費用弁償を続けたのであるから、故意、過失責任は極めて重大である。よって、請求者は、監査委員に対して、本件違法で不要な支出である金一五〇〇万円の全額の返還をするように関係者に勧告することを求める。
                         以 上