県議会関連情報非公開処分取消訴訟の経過

  2000/7/19
  くらし・しぜん・いのち 岐阜県民ネットワーク 
  事務局 寺町知正 
            
◆99年7月12日(月)に岐阜地裁に提訴
◆被告は岐阜県知事・岐阜県教育長の二機関 
◆原告は県民ネットワークの運営委員の10名
◆岐阜地裁平成11年(行ウ)13号 
《氏名等非公開処分取消請求事件》(民事一部)

◆《経過》

 岐阜県は情報公開条例を施行して6年目になります。しかし、当初より条例に反して、需用費・食糧費や旅費に関する文書において、当事者や参加者など関係者の氏名等あるいは請求書などに記載された店名や担当者、口座名などを非公開として来ました。
公務員氏名については、一部条例改正しましたが、改正施行日以前に作成した文書は、現在でも従前の黒塗りのままで、本質的には、非常に後退した情報公開状況です。
 県の情報公開審査会に申立しても、審議着手が1年以上先になる(今現在は、早くなったらしい)し、過去に、私たちがこの種の情報の非公開取消を求めた申立に対して、当該審査会は、これを認めませんでしたので、情報公開条例の運用の原理原則を明確するために、提訴したものです。
 内容は「条例制定(95年)以後の毎年の文書に関して、需用費・食糧費や旅費に関する文書の、当事者や参加者など関係者の氏名等あるいは請求書などに債権者情報」を非公開とした処分の取消を求める行政訴訟です。
 これは、98年7月21日提訴した(岐阜地裁平成10年(行ウ)13号)《県議会食糧費・旅費支出金返還請求事件》「97年度、県議会常任委員会に関係した宴会等の食糧費(約800万円)とその二重払い、視察の旅費(約1700万円)、会期中会議日でない日に登庁しただけで支給した旅費(約1500万円)の返還(合計約4000万円)などを求めた住民訴訟の内容を基礎づける文書の墨ぬりをなくす、つまり宴会、宿泊等をした飲食店、旅館、ホテルに関する情報や、参加者名等を明らかにさせる、ということでもあります。
 さらに、現在、岐阜県の職員は、公開請求を受けたき、公開非公開の判断に当たっては、個々の非公開理由への該当性の検討のほかに、文書の作成・取得時期によって、4つの段階に分けて検討する必要があり、大変繁雑な作業を強いられています。
これは、当初からの条例の解釈を誤って運用し続け、しかも溯っては運用改正しないという頑なな岐阜県の姿勢に原因があります。この訴訟は、その整理をする、という目的もあります。今回の処分が取り消されれば、今後の一般的な公開文書は墨塗りがほとんどなくなるでしょう。

◆《訴訟の争点》

※職員・県議・民間人の氏名等を個人情報(1号)として、どう評価するか
※県に物品や会場等を提供した債権者に関する情報(4号)をどう判断するか
※県の条例や運用の改正による公開度合いの変更をどう評価するか

《本件の非公開部分と非公開の理由=被告の主張》

◎《本件非公開処分の存在》

 99年5月17日請求「県議会と執行部の懇親会(6委員会×6回/年)、視察(6委員会×3回/年)に関する旅費や食糧費」に関する文書。
 これに対して、5月26日付けで、一部を非公開とする知事や教育委員会の処分がされた。
(類似処分が多数だから、6委員会のうち、企画経済委員会と文教・警察委員会分のみ提訴した)

◎(非公開部分)《出席者名簿中の職名及び氏名欄》

◆出席者名簿中の職名及び氏名欄には、懇談会の相手方(県議や他の自治体職員等)及び懇談会に出席した県職員に関する情報が記載されており、これを公開することにより、特定の個人が識別され、又は識別され得るため(第1号に該当)。

◎(非公開部分)懇談に参加した私立学校職員の職氏名

◆特定の個人が識別される(第1号に該当)。

◎(非公開部分)債権者に関する情報

◆債権者に関する情報には、債権者及び債権者に係る住所、店名、印影、口座番号等の情報が記載されており、これらは債権者の内部管理に関する情報であり、これらを公開すると、債権者の営業の実態、取り引きの状況が明らかとなり、当該債権者の競争上の地位その他正当な利益が損なわれるため(第4号に該当)。

◎(非公開部分)公開請求された同行職員の旅費以外の情報。
        同行職員の旅費とそれ以外の旅費とが合算された情報。

◆同行職員の旅費以外の情報及び旅費が合算して関係書類が作成されているため、これらを併せて公開すると、全て公開請求の旅費であると混同されるため。


《原告の主張》

◆ 第1号(個人情報)への非該当性

 第1号は、「個人に関する情報」であって、かつ、「個人が識別できるもの」を非公開の対象としている。本件非公開部分はいずれも、公的な活動に関するものだから「個人に関する情報」に該当しない。

◆ 第四号(事業活動情報)への非該当性

 債権者及び債権者に係る住所、店名、印影、口座番号等の情報は、通常の取引において公になっている情報であり、およそ「競争上の地位その他正当な利益が損なわれる」類いの情報などではあり得ない。

◆ 合算情報の非公開の違法性

 右情報を非公開とすることを正当化する根拠条文が示されていない以上、違法である。他との混同のおそれについては公開手続きの際、実施機関において請求者に対して説明すればよいだけのことである。

 《岐阜県の情報公開の規定の変遷》

@条例施行(95年4月1日から) 
A《通知》(97年7月1日以降に作成、取得した文書について)
 「会議に出席した、県職員の職名・相手方の所属団体名等・会議の目的・開催場所の所在市町村及び施設種別(債権者が識別されない範囲)」 「出張した県職員の職名」


B《条例改正》(98年4月1日以降に作成、取得した文書について)
 「国及び地方の公務員の職氏名」 「会議等に付随して行われる飲食に要する経費(会議費、対外交流経費及び式典費)に関して『県との契約の相手方たる法人の名称、事務所又は事業所の所在地、代表者名、電話番号、商標その他類する情報』」 「県との契約の相手方たる個人の氏名、住所、電話番号、その他類する情報」

・《条例改正》 (98年10月1日) 「個人情報保護条例との整合を明記」


C通知(99年4月1日からの文書について) 
 「会議費、対外交流経費及び式典費の支出関係公文書中の公務員以外の出席者の氏名等の公開(開催通知に「公開請求があれば氏名等公開する原則を明記」し、当人からの公開拒否の申し出なければ公開)」


・通知「取扱要綱の改正」(99年8月1日から運用) 
 公文書の写しの交付の費用を一枚当たり、30円から10円に減額する。

 《本件非公開部分と情報公開条例の運用の変化》

(@〜Cは上記説明に対応している)
 ※ 岐阜県は「条例改正は遡及しない」つまり、「改正前の文書を改正後に公開する場合、従前の墨塗りで非公開とし、改正後に作成・取得した文書だけ、改正を適用して公開する、という方法。

 条例運用の変遷 
本件非公開部分                   
       
@制定
95年
4月〜
A通知
97年
7月〜
B改正
98年
4月〜
C通知
99年
4月〜
原告
@〜
◎に
  
 
  
1 
号 
  
  
   
 懇談会に出席した県職員の職員等の職名  ×  ◎
   同上氏名 ×  × ◎   ◎
 懇談会に出席した他の役所等の職員等の職名 ×  ×   ◎   ◎
    同上氏名 ×  ×
 懇談に出席した民間人の氏名等           ×  ×   ×   ◎
             同上(本人拒否あり) ×   ×   ×   ×
 旅費に関して出張した県職員等の職名 ×   ◎   ◎   ◎
         同上氏名    ×   ×   ◎   ◎
  
4 
号 
 会議に付随する食糧費に関して
 債権者の住所、店名、電話番号、代表者名等   

 × 

 × 

 ◎ 

 ◎

 
 債権者の印影、口座番号等     ×   ×   ×   ×
  
  
 公開請求以外の情報 ×   ×   ×   ×
 請求の支出とそれ以外の支出とが合算された情報    ×   ×   ×   ×

    出張した職員の給料の級及び号給、口座名義     ×   ×   ×   ×
本 
件 
外 
 相手方の所属団体名等 ×   ◎   ◎   ◎
 会議の目的・開催場所の所在市町村、施設種別 ×   ◎   ◎   ◎
 食糧費以外で県との契約の相手方(債権者)情報    ×   ×   ×   ×

※本年5月24日岐阜地裁H10年(行ウ)8号《情報誌誌紙名非公開処分取消請求事件》(民事一部)
《原告 勝訴部分》・購読料支出に関する支出金調書等や請求書・領収書の債権者情報
             (社名、住所、代表者名、印影、口座番号等)
・請求の支出とそれ以外の支出とが合算された情報
《原告 敗訴部分》・請求書・領収書中の法人従業員の印影
・(取消を求める「処分」ではないが、訴訟の中での非公開理由の追加は可とした)
《被告岐阜県》  ・6月7日 敗訴部分の全部を控訴した

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