訴    状  


 岐阜県山県郡高富町西深瀬二〇八番地の一  原告 寺町知正
                               他九名(目録の通り)

 岐阜市薮田南二丁目一番地の一   被告 岐阜県知事 梶原拓
    同      被告 岐阜県教育委員会教育長 日比治男

氏名等非公開処分取消請求事件

   訴訟物の価格   金九五〇、〇〇〇円
    貼用印紙額      金八、二〇〇円
予納郵券 金一一、二三〇円

 一九九九年七月一二日
岐阜地方裁判所民事部御中

   請 求 の 趣 旨

一 被告岐阜県知事が原告に対して、一九九九年五月二六日付けで、「一九九五年、九六年、九七年、九八年に実施された県議会の企画経済委員会の新規構成(五月)に伴い実施した事務事業説明会後の懇親会に関する支出関係書類(請求書、領収書などを含む)、参加者を表す書類などのうち一九九八年分を除く書類」の文書を公開しないとの処分決定(事政第三七六号、地政第九九号、商政第一二九号)(別紙−一の通り)を取り消す。

二 被告岐阜県教育委員会が原告に対して、一九九九年五月二六日付けで、「一九九五年、九六年、九 七年、九八年に実施された県議会文教・警察委員会の県内・県外視察(国外を除く)に同行した県職員に関する以下の公文書。(一)旅費の執行に係る支出負担行為兼支出金調書、旅費請求書、旅費命令(依頼)書及び旅費請求(精算)書・領収書など。(二)需用費の執行に係る支出負担行為兼支出金調書(付属文書を含む、以下同じ)、支出金調書、支出負担行為書及び経費支出伺書など」の文書を公開しないとの処分決定(教総第一七九号の二)(別紙−二の通り)のうち「旅行命令(依頼)書中職務の級欄に記載されている、出張した職員の給料の級及び号給。支出負担行為兼支出金調書の添付書類である支出内訳書中受取人支払方法欄に記載されている口座名義。」を除いた部分に関する処分決定を取り消す。
三 訴訟費用は、被告の負担とする。
  との判決を求める。

   請 求 の 原 因

第一 当事者

一 原告らは肩書地に居住する岐阜県民であり、本件各文書の公開請求を行った。
二 被告岐阜県知事梶原拓(以下、被告知事という)は、岐阜県情報公開条例(以下、本件条例という)第二条第一項の実施機関である。
三 被告岐阜県教育委員会(以下、被告教育委員会という。)は本件条例第二条第一項の実施機関であり、教育長は日比治男である。

第二 非公開処分の存在・その一

一 原告らは、一九九九年五月一七日付で県議会と執行部の懇親会に関する食糧費関係の公文書についての公開請求を行った。

二 右請求に対し、被告知事は、一九九九年五月二六日付けで、左記のように、「一九九五年、九六年、九七年、九八年に実施された県議会の企画経済委員会の新規構成(五月)に伴い実施した事務事業説明会後の懇親会に関する支出関係書類(請求書、領収書などを含む)、参加者を表す書類などのうち一九九八年分を除く書類」(以下、本件文書@)の文書の一部を非公開とする処分(事政第三七六号、地政第九九号、商政第一二九号)(以下、本件処分@という)を行った(甲第一号証)。

       記

 (公文書の公開をしない部分)

  経費支出伺書中の支出予定先欄、支出負担行為書中の債権者欄、支出金調書並びに支出負担行為兼支出金調書中の受取人欄及び支払方法欄及び当該調書に添付されている請求書中の債権者に関する情報並びに出席者名簿中の職名及び氏名欄
 (理由)
 ・岐阜県情報公開条例(ただし、平成九年岐阜県条例第二二号による改正前のもの。以下同じ)第六条第一号に該当出席者名簿中の職名及び氏名欄には、懇談会の相手方及び懇談会に出席した県職員に関する情報が記載されており、これを公開することにより、特定の個人が識別され、又は識別され得るため。

 ・岐阜県情報公開条例第六条第四号に該当経費支出伺書中の支出予定先欄並びに支出負担行為兼支出金調書及び支出金調書、支出負担行為書中の受取人欄及び支払方法欄及び当該調書に添付されている請求書中の債権者に関する情報には、債権者及び債権者に係る住所、店名、印影、口座番号等の情報が記載されており、これらを公開すると、債権者の営業の実態、取り引きの状況が明らかとなり、当該債権者の競争上の地位その他正当な利益が損なわれるため。

第三 非公開処分の存在・その二

一 原告らは、一九九九年五月一七日付で県議会と執行部の視察に関する旅費や食糧費関係の公文書についての公開請求を行った。


二 右請求に対し、被告教育委員会は、一九九九年五月二六日付けで、左記のように、「一九九五年、九六年、九七年、九八年に実施された県議会文教・警察委員会の県内・県外視察(国外を除く)に同行した県職員に関する以下の公文書。(一)旅費の執行に係る支出負担行為兼支出金調書、旅費請求書、旅費命令(依頼)書及び旅費請求(精算)書・領収書など。(二)需用費の執行に係る支出負担行為兼支出金調書(付属文書を含む、以下同じ)、支出金調書、支出負担行為書及び経費支出伺書など」(以下、本件文書Aという)の文書の一部を非公開とする処分(教総第一七九号の二)(以下、本件処分Aという)を行った(甲第三号証)。

    記

 (公文書の公開をしない部分)

 ※旅費に関する公文書
 ・旅行命令(依頼)書中職務の級欄に記載されている、出張した職員の給料の級及び号給。
  支出負担行為兼支出金調書の添付書類である支出内訳書中受取人支払方法欄に記載されている口座名義。
  (理由)公務負個人に関する情報であるため。
          ・・岐阜県情報公開条例第六条第一項第一号に該当

 ・支出負担行為兼支出金調書及び支出内訳書、旅費(合算)請求書中の公開請求された同行職員の旅費以外の情報及び同行職員の旅費と、それ以外の旅費とが合算された情報。
   (理由)旅費が合算して関係書類が作成されているため、これらを併せて公開すると、全て公開請求の旅費であると混同されるため。

 ・出張した職員の職名(ただし、平成九年六月三〇日以前の出張に係るもの) .
   (理由)特定の個人が識別され得るため
          ・・岐阜県情報公開条例(平成九年岐阜県条例第二二号による改正前のもの)第六条第一号に該当

   ・出張した職員の氏名(ただし、平成一〇年三月三一日以前に作成した文書に係るもの
      (理由)特定の個人が識別され得るため
          ・・岐阜県情報公開条例(平成九年岐阜県条例第二二号による改正前のもの)第六条第一号に該当

 ※需用費に関する公文書
 (公文書の公開をしない部分)

 ・経費支出伺書、支出金調書の添付書類中、私立学校職員の職氏名
      (理由)特定の個人が識別されるため。
          ・・岐阜県情報公開条例第六条第一項第一号に該当

 ・支出負担行為兼支出金調書、支出金調書及び支出負担行為書の添付書類中、債権者に係る印影及び債権者口座番号等
   (理由)これらは債権者の内部管理に関する情報であり、公開すると、当該債権者の競争上の地位その他正当な利益が損なわれるため。
           ・・岐阜県情報公開条例第六条第一項第四号に該当


 ・経費支出伺書中の支出予定先欄、支出負担行為兼支出金調書、支出負担行為書及び支出金調書中の受取人欄、支払方法欄、並びに当該調書に添付されている請求書中の債権者が識別され得る情報(ただし、平成一〇年三月三一日以前に作成された文書に係るもの)
   (理由)これらを公開すると、債権者の営業の実態、取り引きの状況が明らかになり、当後債権者の競争上の地位その他正当な利益が損なわれるため。
           ・・岐阜県情報公開条例(平成九年岐阜県条例第二二号による改正前のもの)第六条第四号に該当

・懇談会に出席した職員等の職名(ただし、平成九年六月三〇日以前の開催に係る文書)
   (理由)特定の個人が識別されるため。
           ・・岐阜県情報公開条例(平成九年岐阜県条例第二二号による改正前のもの)第六条第一号に該当
  
・懇談会に出席した職員等の氏名(ただし平成一〇年三月三一日以前に作成した文書に係るもの)
   (理由)特定の個人が識別され得るため。
           ・・岐阜県情報公開条例(平成九年岐阜県条例第二二号による改正前のもの)第六条第一号に該当

第四 本件条例の主旨、目的、適用除外等

一 本件条例の主旨、目的
  本件条例第一条は、条例制定の目的を「県民の県政への参加を促し、県政に対する理解と信頼を深め、もって開かれた県政を実現すること」と規定している。本件条例は、県政の実情などに対する県民の理解を深め、県政に対する県民の信頼を高めるために制定されたものである。

二 非公開事由の判断基準
  一般的に情報公開条例が、過去において、行政機関の保有する文書が、行政庁側の種々の名目のもとに、ややもすれば恣意的、濫用的に秘密扱いにされ、住民の知る権利を妨げ、ひいては地方自治の健全な発展を阻害する面のあったことに鑑み、それらの弊害を除去する点をも考慮に入れて制定されたことは公知の事実である。
  そのようにして制定された情報公開条例の非公開事由該当性(適用除外事由)を、専ら行政機関の側の利便等を基準・根拠に、その主観的判断に基づいて決するとすれば、その範囲が不当に拡大する危険性があり、情報公開制度の実質的意味が失われることにもなりかねない。
  本件条例は、情報を公開することこそが県民の県政への参加を促し、県政に対する理解と信頼を深めるという考え方にたって制定されたからこそ(第一条)、「実施機関は、公文書の公開を求める権利が十分に尊重されるようこの条例を解釈し、運用するものとする」と規定したのである(第三条前段)。
そうだとすれば、本件条例は実施機関が管理する情報について公開を原則とし、非公開は例外的に認められるべきことになる。そして、例外規定を緩やかに解釈運用するならば、第一条の目的に反することになるから、例外規定の解釈は厳格かつ制限的でなければならない。

第五 本件処分@の違法性

一 本件条例第六条第一号への非該当性
  第一号は、「個人に関する情報」であって、かつ、「個人が識別できるもの」を非公開の対象としている。「個人に関する情報」とは、岐阜県が作成した本件条例の解釈運用基準によれば、同号の解釈として「2(1)思想、信条、信仰、意識等個人の内心に関する情報 (2)職業、資格、犯罪歴学歴、所属団体等個人の経歴、社会的活動に関する情報 (3)所得、資産、住居の間取り等個人の財産の状況に関する情報 (4)体力、健康状態、病歴等個人の心身の状況に関する情報 (5)家族関係、生活記録等個人の家族・生活状況に関する情報 (6)個人の名誉に関する情報 (7)個人の肖像 (8)その他個人に関する情報」というものであり、本件非公開部分はいずれも「個人に関する情報」に該当しない。
  氏名や職名によって個人を識別することはできるが、それは「個人が識別できるもの」への該当性を認めることができるというだけのことであり、「個人に関する情報」に該当しない以上、第一号への該当性は認められない。
  特に、本件条例の解釈運用基準において、同号の解釈として「7《職員の職・氏名等の情報》職員が職務を遂行する(した)場合における当該職務に関する情報については、当該職員が識別される場合であっても、条例第一条及び第三条並びに本号ただし書きの規定の趣旨から、公開しないことができる情報に該当しない」と明確に述べているのであるから、本件処分における被告の判断は明らかに誤りである。

二 本件条例第六条第四号への非該当性
  債権者及び債権者に係る住所、店名、印影、口座番号等の情報は、通常の取引において公になっている情報であり、およそ「競争上の地位その他正当な利益が損なわれる」類いの情報などではあり得ない。

三 以上、本件文書を公開しないとの処分は理由がなく違法であるので、取消されるべきである。

第六 本件処分Aの違法性

一 出張した職員の給料の級及び号給及び公務員個人の口座名義に関する非公開部分(本件条例第六条第一項第一号の該当性)については争わないことにする。


二 合算旅費情報の非公開の違法性
  右情報を非公開とすることを正当化する根拠条文が示されていない以上、違法である。ちなみに、他との混同のおそれについては公開手続きの際、実施機関において請求者に対して説明すればよいだけのことである。


三 右一及び二の情報を除く本件各文書に関しての本件条例第六条第一号(第六条第一項第一号)、第六条四号(第六条第一項第四号)への非該当性については、右第五と同様である。

四 以上、右一の情報を除く本件各文書を公開しないとの処分は理由がなく違法であるので、取消されるべきである。

第七 結び


 岐阜県知事や教育委員会と県議会や県議会議員がどのような経緯や関係の中で事務事業を執行し、あるいはチエックしているかが正しく公知されるためには、これら公文書が公開されることが必要で、公開によって県民の県政への理解と信頼が高まることは明らかである。本件情報が公開されることは、本件条例の解釈、運用として正当なものである。                 
                  以 上

       証 拠 方 法


甲第一号証 知事の処分通知(事政第三七六号、地政第九九号、商政第 一二九号)

甲第二号証 右処分に係る文書の一例(墨塗り部分は一号及び四号該当とされる)

甲第三号証 教育委員会の処分通知(教総第一七九号の二)

甲第四号証の一 右処分に係る文書の一例(墨塗り部分は四号該当とされる)
の二 右処分に係る文書の一例(一号該当及び合算情報が墨塗りとされている)

その他、口頭弁論において、随時、追加提出する。

            添 付 資 料
一 訴状副本          二通
二 甲第一乃至四号証

     岐阜県山県郡高富町西深瀬二〇八番地の一
    原告 寺町知正 外九名

岐阜地方裁判所民事部御中

当事者目録
岐阜市御望九五六番地の十四
原  告     別  処  雅  樹 

岐阜県加茂郡八百津町伊岐志津一四〇五番地の一
原  告 白  木  康  憲

岐阜県養老郡上石津町上鍛冶屋九七の一
原  告 三  輪  唯  夫

岐阜県山県郡高富町西深瀬二〇八番地の一
原  告     寺  町    緑  

岐阜県美濃市大矢田一四三四番地
原  告     後  藤  兆  平

岐阜県不破郡垂井町一二九二番地
原  告     白  木  茂  雄

岐阜県可児郡御嵩町上恵土一二三〇の一
原  告 小  栗    均

岐阜県加茂郡八百津町潮見四〇七
原  告     宮  澤  杉  郎

岐阜県揖斐郡谷汲村岐礼一〇四八の一
原  告 山  本  好  行    

岐阜県山県郡高富町西深瀬二〇八番地の一
原  告     寺  町  知  正  
     以上
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