次回期日  九九年一一月二五日(木)一〇時半〜
                                  
 平成一一年(行ウ)第一七号 県営渡船情報非公開処分取消請求事件

                 原  告  寺町知正  他九名
     被  告  岐阜県知事 梶原拓

準備書面(一)


                選定当事者    寺  町  知  正  
                選定当事者    山  本  好  行    

  (連絡先) (寺町)岐阜県山県郡高富町西深瀬二〇八番地の一
          TEL・FAX 0581−22−4989
  (山本)岐阜県揖斐郡谷汲村岐礼一〇四八の一
         TEL・FAX 0585−55−2627
一九九九年一一月二三日
岐阜地方裁判所 民事一部 御中

第一 個人識別情報(旧条例第六条第一号・新条例第六条第一項第一号)該当性について
一 氏名や債権者名等被告が本号に該当すると主張する部分は、いずれも個人情報ではない。
  船頭が本件渡船を操り、渡船場を管理する業務は、船頭の個人的、私的行為ではなく、県の公務である。「自治体の業務委託」というのは他団体の活動を側面的に支援する補助事業と異なり、自治体自ら行うべきことを、個別の理由、事情により他のものに委ねる事を指している。本件は、県の委託事業を海津町から渡船組合に再委託しているだけのことである。また、本件渡船業務は「県営渡船」と命名され(これは契約書に明記され、現地渡船小屋の大きな看板にも明示されていることである)、道路法上も県道と認定されている事業であるから、この維持管理にかかる職務についての情報は、県の公務中の情報であることは当然である。
  また、県営渡船の船頭は不特定多数の人たちにさらされることを前提としているのである。
  さらに、県が会計規則第七五条から八〇条に定めるところの、収支を確認し、収支の正当性を証明する「証拠書類」としても船頭名の記載された文書を求めているのであるから、船頭の氏名、執務状況等にプライバシー性はない。
  債権者に関する情報も、公的な検査業務に関する氏名等の情報にもプライバシー性はない。
二 この数年来、公文書非公開取消訴訟では、取消事例が相次ぐが以下に判例を示す。
  1 公文書非公開決定処分取消請求事件(平成九年三月二五日、大阪地裁判決)は、大阪市の食糧費支出に係る支出決議書、支出命令書及び歳出予算差引簿に記載された会議等の相手方の氏名、所属する団体名及び役職名につき、六条二号(個人識別情報)規定は、プライバシーを保護する趣旨の規定であるから、個人に関する情報であってもプライバシーに関係しないことが明らかな情報については非公開とすることは許されないとした上、会議等の相手方の氏名は、それ自体個人を識別する情報ではあるが、相手方が個人としての資格を離れて、公務又はその所属する団体の職務として行った行為についての情報は、私的な領域の問題とはいえず、プライバシーに関係のないものとして所定の情報に当たらないところ、前記各文書に氏名を記載された公務員等は公務又はその所属する団体の職務として出席したものであるから、これらの者の氏名は同号所定の情報に当たらず、また、相手方が所属する団体名及び役職名は、それ自体は所定の情報には当たらず、これらによって識別され得る個人について、同人の会議等への出席が私的な領域の範囲の行為であることの主張立証はないから、これらの団体名及び役職名が同号所定の情報に当たるとはいえない、とした。(行政事件裁判例集四八巻三号二一九頁)

 2 公文書非公開決定取消請求事件(平成七年一一月二七日、神戸地裁判決)は、兵庫県の条例八条一号(個人識別情報)該当性の判断に当たって、同号にいう「通常他人に知られたくないと認められるもの」とは、持定の個人の主観的判断のいかんを問わず、社会通念に照らして判断すると他人に知られたくないと思うことが通常であると認められる情報をいうものと解するのが相当であるとした。(行政事件裁判例集四六巻一〇・一一合併号一〇三三頁)
  
 3 都非公開処分取消請求事件(平成九年二月四日、東京地裁判決)は、都の執行機関が開催した都議会議員との会議の際の飲食費等の支出に関する、財務局主計部議案課の起案に係る起案文書及び所要経費見積書、債権者の請書、支出命令書、請求書、支払金口座振替依頼書並びに領収書に記載された会議の名称及び開催目的等、債権者名並びに開催場所につき、これらを開示することによって相手方が特定識別され得るとの事実について立証がなく、また、仮に相手方が特定識別され得るとしても、前記会議への出席が出席者個人のプライバシーを侵害するものと推認することもできないから、前記会議の名称等は、九条二号(個人情報適用除外)に定める非開示事由に該当しない、とした。さらに、都の超過勤務等命令簿に記載された職員氏名等につき、個人名を開示したとしても、これによって新たに判明する事実は、当該個人が所属する勤務部署において超過勤務命令権者の命令に従って既に開示されている超過勤務時間にわたって職務を遂行したという事実にとどまり、超過勤務の状況から特定個人の勤務態度又は個人に固有な事情が推認されるなどの特段の事情も認められないなどとして、前記職員氏名等は、九条二号に定める非開示事由に該当しないとした。(行政事件裁判例集四八巻一・二合併号三一頁)
  
 4 静岡県知事交際費情報公開請求事件(平成七年一一月二四日、静岡地裁判決)は、贈答品等の購入先等である債権者名、債権者の取扱者である個人の氏名、捺印を非公開としたことは違法、とした(判例地方自治一四九号九頁)。
  
 5 行政処分取消請求控訴事件(平成八年六月二五日、大阪高裁判決(差戻審))は、大阪府知事の交際費に係る領収書、歳出額現金出納簿及び支出証明書のうち、生花等は葬儀に際して大阪府知事の名を付して一般参列者の目に触れる場所に飾られるのが通例であるから、一般に公開されることが予定されているというべきであり、官庁関係連絡会など知事がその地位に基づいて会員となっている団体の会費に関するもの及び国会議員の後援会の会合等に出席した際に贈った祝金に関するものについては、知事がこれらの団体に関係し、又は、会合に出席することは秘密にされておらず、その交際が公開されていると認められ、報道出版関係各社の団体等への周年祝いの祝金に関するものについては、祝金が儀礼的なものであることに加え、当該団体の性質上、交際の相手方や支出金額を公開されても不満や不快の念を抱くおそれは認められず、公開しても知事の交際事務を適切に行うことに著しい支障を及ぼすおそれがあるとは認められないなどとして、前記各文書は、条例八条四号(機関内・機関間情報)、五号(狭義行政運営情報)所定の公開しないことができる公文書又は条例九条一号(個人識別情報)所定の公開してはならない公文書に当たらない、とした。(行政事件裁判例集四七巻六号四四九頁)
  
 6 東京高裁第三民事部・平成一〇年(行コ)第一五四号公文書開示拒否処分取消請求控訴事件(平成一一年四月二八日判決)では、「個人に関する情報とは、専ら私事に関するものに限定されるのであって、個人の行為であっても、それが公務としてされた場合はもちろんのこと、法人等社会活動を行っている団体において職務上の行為としてされた場合には、個人に関する情報には該当しない。・・たとえ行為者を識別可能とする事項であっても本号には該当しない」とした。
    そして同判決は、債権者の従業員の氏名、印影、サインについて、「債権者が県に対して提出した請求書等に記載されたものであるが、当該従業員の私事に関する行為ではないから、個人に関する情報とはいえない」とした。さらに「県職員の個人の口座番号も、公務に関連して記載されたものは個人に関する情報とはいえない」として、第一審原告敗訴部分を取り消した。

第二 事業活動情報(条例第六条一項四号)該当性について
一 県との直接取引、あるいは本件のごとく県道の維持や管理業務に直接関係する債権者及び県の機材等の法定検査の検査機関(者)らの住所、店名、印影、口座番号等は本号に該当すると被告が主張する情報は、それが知られたからといって事業者に不利となることはない。
  本号但し書きは「事業によって生ずるおそれのある危害から人の生命を保護するために公開することが必要である情報」、これに「準ずる情報」を公開するよう定めているが、県営渡船という極めて公共的事業において、安全を保証する機関の証明事項一連の情報は本号但し書きに該当する。
二 千葉地裁民事一部・平成九年(行ウ)第一六号公文書非公開決定処分取消請求事件(平成一一年三月三日判決)においてはタクシー会社の口座情報や印影に関して「悪用される危険性は公文書公開請求により公開されるか否かに関わらず、当初から存在している」として被告実施機関の主張を退け、事業活動情報には当たらないと判示している。

三 右に引用した東京高裁判決(平成一〇年(行コ)第一五四号)は、取引金融機関名、金融機関コード、預金種別、口座番号、口座名義について「債権者らが自ら積極的に取引先以外の者に開示することはないとしても、取引先を通じて第三者に知られることを一般的に拒絶しているとは認められない。
 (被告のいう)不利益の具体的な内容は明らかでない」として原審を取り消した。

第三 行政運営情報(条例第六条一項八号)該当性について
  海津町の口座番号について被告は「納税通知などは限定的に行われている」というが、その通知数は海津町所帯の相当部分を占め、他の事務での納付通知、催告等を考慮すれば、自治体の公費納入口座番号は極めて広範に告知しているものであり、一方、そうでなければ自治体の事務事業の速やかかつ合理的な運営に支障が生ずるものである。
  右東京高裁第三民事部の判旨は、自治体の口座番号にも等しく通ずる。
  口座番号は海津町の内部管理情報ではなく、公開しても事務に支障は生じない。県の情報公開の手引きの規定の趣旨の説明において「支障が軽微であるときは、当該公文書は公開されるべきである」とされているにもかかわらず、本件処分は、支障の程度について何ら考慮をしていない。

第四 合算情報等の非公開規定はない
  本件公開請求にかかる支出と他の目的の支出が合算された数字等は、公文書公開請求事項に密接に関係する、というより請求した情報そのものというべきであり、公開すべきは実施機関の当然の責務である。それを「混同されるため」という理由だけで、黒塗り(非公開)とすることは許されない。
  混同されるおそれがある場合は非公開(部分公開)とすることができる、との条例の定めはないから、たとえ公文書の一構成部分であっても非公開とすることは、許されない。
  本件条例の対象とする公文書は、原則として一枚、一葉をもって最低単位としている。この一枚一枚を公開するとき、その一枚に記載されている全ての文字、図表、絵写真などに関して、非公開事由に該当する内容を有しない文字、図表、絵写真などを全て公開するのが公文書公開制度である。
  「請求されていないものは公開する必要がない」との被告の主張は、本件条例の原則公開の精神を根本から否定するものでる。一枚の文書に記載されている情報であるから、特別に手間を要する墨塗り作業をあえて行うことは誤っている。加えて、このことによって、非公開とすることができる事由に該当しないのに「公文書の原本を公開に供する」(本件条例第一一条に関する手引きの趣旨)という基本に反することになる。特別の著しい障害のない限り非公開事由に該当しない場合は、当該ページはそのまま公開されるべきものである。本件情報が公開されても何ら支障、不都合は生じない。 
  仮に、公開に当たって行政庁に不都合な内容が記載されていようと非公開事由に該当しない限り全て公開し、もって県政への県民の信頼を確保することが条例の立法趣旨であり、無用な疑いを生じさせるような処分は、条例の原則公開の精神を意図的に否定するものであり、許されない。
      
               以 上

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  次回期日  二〇〇〇年一月二〇日(木)一時一〇分〜
                                
 平成一一年(行ウ)第一七号 県営渡船情報非公開処分取消請求事件

                       原  告  寺町知正  他九名
     被  告  岐阜県知事 梶原拓

準備書面(二)


                       選定当事者    寺  町  知  正  
                       選定当事者    山  本  好  行    

      (連絡先) (寺町)岐阜県山県郡高富町西深瀬二〇八番地の一
         TEL・FAX 0581−22−4989
 (山本)岐阜県揖斐郡谷汲村岐礼一〇四八の一
         TEL・FAX 0585−55−2627
二〇〇〇年一月一九日
岐阜地方裁判所 民事一部 御中

第一 個人識別情報(旧条例第六条第一号・新条例第六条第一項第一号)該当性について
一 答弁書被告の主張二の2「委託業務を行わせる者は非公開とした」との主張に関して、本件船頭の業務は「県営渡船」という県の業務であることは、現地の通行量の多い堤防道路横に建てられた渡船の待機小屋に大きな看板で「県営渡船」と表示され、岐阜県の案内看板もある(甲第五号証)ことからも、衆知のことである。このことは、船頭が不特定多数にさらされることをも示している。
  岐阜県から岐阜市鏡島地域における長良川の渡船「小紅の渡し」を委託されている岐阜市は、地元「一日市場自治会」にこれを再委託しているが、この契約書(甲第六号証)を何ら墨塗りする事なく全面公開している。岐阜県と岐阜市は概ね同様の公開条例であるけれど、岐阜市が公開していることは、受託者らの氏名を公開しても何ら支障のないことの証しである。
  例えば、岐阜市は、納税組合連合会という市の補助金交付団体の組合長名や住所を以前から公開している(甲第七号証)が、何ら支障は生じていない。

二 以上は、原告準備書面(一)の第一の二の6、第二の三で引用した東京高裁第三民事部・平成一〇年(行コ)第一五四号公文書開示拒否処分取消請求控訴事件(平成一一年四月二八日判決)(甲第八号証)の主旨からも明らかである。

第二 事業活動情報(条例第六条一項四号)該当性について
一 県との直接取引、あるいは本件のごとく県道の維持や管理業務に直接関係する債権者及び県の機材等の法定検査の検査機関(者)らの住所、店名、印影、口座番号等は本号に該当すると被告が主張する情報は、それが知られたからといって事業者に不利となることはない。
  右同様、岐阜市は「小紅の渡し」に関して、受託者の金融機関、口座番号等を公開している(甲第九号証)。
  また、岐阜市は、右に引用した納税貯蓄組合連合会の金融機関名、口座番号を以前から公開している(甲第七号証)が、何ら支障は生じていない。当該自治体の事務事業を直接代行する「委託」の相手より、単なる公益上の必要から行う「補助」の相手の方が当該団体にとって遠い関係であることは当然であるにもかかわらず、である。
  愛知県は、岐阜県と同様のシステムで県営渡船を実施しているが、「船検査手数料」の振込金融機関、口座番号を明らかにしている(甲第一〇号証)。

二 検査・証明業務は、検査機関が機関及び法定の資格を有する直接の検査担当者の責任において、検査依頼者に保証すると同時に、第三者に対して基準合致・安全等を保証するものであるから、検査機関等の印影、担当者名なども含めて公開を当然に予定されているもの、というべきである。
  もし、これが秘匿されていたら、その証明の効果に疑義をいだかれても当然である。
  例えば、自動車運転免許証には免許許可権者の朱の印影が必須であるのと同様である。
  検査・証明関連の情報は、本来的に公開を前提としているのである。
 
第三 行政運営情報(条例第六条一項八号)該当性について
  口座振込は、一般に、現金の直接払い込みより安全、簡便であるから採用される納入方法であるが、民間よりはるかに多種類の諸費等の納入の件数の多い自治体の口座番号は、公にされてこそ、直接払い込みに対する利便性が増すものである。
  本号に相当する狭義行政運営情報の公開に関して、行政の交際の相手方となった者を識別し得る公文書の情報の公開は他の情報より慎重にする傾向があるにもかかわらず東京高等裁判所は、「東京都知事の交際の相手方となった者を識別し得る公文書の記載は、その交際事務がもともと公表、披露等が予定されているような公開性の高い交際に関するものである場合には東京都公文書の開示等に関する条例九条八号により公開しないことがてきる情報に該当しない。」(公文書非開示決定取消請求事件/平成四年(行コ)第一一五号、平成四年(行コ)第一一六号/平成九年五月一三日判決)としているのである。
  
   以 上

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 平成一一年(行ウ)第一七号 県営渡船情報非公開処分取消請求事件

                  原  告  寺町知正  他九名
     被  告  岐阜県知事 梶原拓

   期日変更申請


                 選定当事者    寺  町  知  正  
                 選定当事者    山  本  好  行    
      (連絡先) (寺町)岐阜県山県郡高富町西深瀬二〇八番地の一
         TEL・FAX 0581−22−4989
 (山本)岐阜県揖斐郡谷汲村岐礼一〇四八の一
         TEL・FAX 0585−55−2627
二〇〇〇年二月一日
岐阜地方裁判所 民事一部 御中


一、事件   平成一一年(行ウ)第一七号 県営渡船情報非公開処分取消請求事件

一、期日  二〇〇〇年三月九日  午後二時四五分

 右事件の口頭弁論期日、準備手続の期日左の事由により御変更下されたく申請いたします。

事 由
一、選定当事者寺町知正は、現在、岐阜県山県郡高富町議会議員の職にある。
一、来る三月九日に高富町議会第一回定例会が開会されることとなった。
一、よって、三月二日(木)一時一〇分への期日の変更を希望する。
一、相手方代理人らには、変更を要請、協議し、基本的に了解をいただいている。

       以 上