岐阜県首都機能誘致対策費返還請求 住民訴訟

       2000/10/6 掲載

くらし・しぜん・いのち 岐阜県民ネットワーク
事務局 寺町知正 ケイタイ 090−1827−0949

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  控訴審の経過 
  平成11年(行コ)第22号


◆名古屋高裁民事2部 控訴審判決 言渡 
 00年10月6日(金) 1時10分

◆99年 7月29日 原告全員が名古屋高裁に控訴 
 被控訴人 梶原拓及び岐阜県
  10月8日 第1回控訴審弁論 11月26日、2000年1月12日、2月21日、
  3月22日、5月17日、6月21日、7月12日、8月25日(第9回で結審)

◆控訴の趣旨◆「被控訴人梶原拓は、岐阜県に対し、2億4227万1925円及びこれに対する平成8年12月28日から支払い済みまで年5分の割合による金員を払え。」

◆控訴審での主たる争点
 ●調査委託費(契約4本)への合計4250万4190円の支出の是非

 ●「岐阜県東濃新首都構想推進協議会」という団体が県の委託調査の成果を流用、しかも団体の経費を県費で負担することの是非
    (地裁判決→非営利的な民間組織であって、独自予算を持たず、県の負担により協議会が利得するといった関係でもないから問題ない。)
    (岐阜県は、この控訴審開始後、外部に対し「協議会」名を一切使っていない。)

 ●(契約に関する)控訴人の文書提出命令申立を認めるか。
    →高裁は被控訴人側に提出を勧告。提出されたので、控訴人は申立を取り下げた。

 ●裁判所は被控訴人側に対し、次の三点について主張するよう求めた。
   @首都移転構想の委託に関する学者の意見書(甲24号証)に対して、反論が概略的であるから、もっと内容に即して具体的に反論をするように。
     委託調査の成果の資料などをそのまま全部提出すべし。

   A委託調査の内容の重複、類似性について、個々の具体的な成果と調査の必要性の意味合いを積極的に出してほしい。

   B推進協議会の経費を県が出したことが適法であることの立証が少ない。
    支出することは、論理的につじつまが合うのか?
    「県」であるというためには協議会の構成員になるための「知事の委嘱状」などがあるのか?

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  一審岐阜地裁での経過 
    平成8年(行ウ)第16号


◆住民監査請求 96年9月11日(40人が請求) 10月30日(15人が請求) 
 岐阜県監査委員は、10月25日(11月15日付け)で「首都機能移転に関する活動は、県議会をはじめ多くの県民の支持を受け、推進していくことは政策判断であり、ポスター、シールなどの製作費、各種調査委託費、新聞広告などの支出は、議会の議決を経た予算に基づき適法になされており、県知事に対する措置請求は、理由がない」と棄却。

◆住民訴訟 提訴日96年11月28日
 原告 寺町知正・外18名  被告 梶原拓
 97年1月 岐阜県知事の被告参加申立 
 98年8月28日 原告・学者の意見書提出
 99年 5月27日 結審  
     7月15日 判決

◆訴訟での請求の趣旨
 「被告は、岐阜県に対し、金240、000、000円及びこれに対する本訴訟送達の日から完済まで年5分の割合による金員を支払え」

◆《岐阜県首都機能移転誘致経費の流れ》
 
      96年      97年      98年      99年 
当初予算  6638万円    6885万円  6135万円   4795万円
 執行分 2億4227万円  5233万円  5597万円

◆《他の候補地との比較(1996年度当初予算)》
   愛知県 1000万円   静岡県 1500万円  三重県  500万円
   滋賀県  250万円   栃木県 3000万円  福島県 1000万円
   宮城県 5600万円   茨城県 1100万円  北海道  300万円

◆1996年度、岐阜県の首都機能移転対策費用の概要(主として予算ベース)
    新聞広告             19000万円
    調査委託(民間会社などに随契)   4300万円
    大阪事務所三ケ月間分の広告塔    450万円
    たった二日間のシンポジウムに    570万円
    のぼり、懸垂幕、看板、花壇など   700万円
    テレカ、パンフ、VTRなど     800万円 
   ポスター、チラシ、シールなど    737万円  
            合計      26557万円

◆《首都機能移転誘致政策に対して、一審で原告の指摘した主な問題点》
 ・県民に、待望論とプラス面だけを強調し、マイナス面を示さず、住民無視が甚だしい。
 ・生活環境、自然環境などへの悪影響を県民に提示していない。
 ・東濃地域には、活断層も多く候補地としては極めて不適である。
 ・東濃地域に60万人増加すると、生活水確保の為の遠隔地からの導水路工事だけでも、少なくも700億円必要で、一人当6万円以上の莫大な負担を受益県民に課す。しかも、これらを、県民に一切明らかにしていない。
 ・このような事を無視して、広告宣伝費に莫大な県費を使うことは許されない。

◆《裁判での争点への双方の主張の主な点》
                              原告(住民)          被告・被告参加人  
☆移転地としての立候補について  県民合意がない         高度な政策判断   
☆移転の実施が不確定であること  だから、県民にメリット     支出しながら、選ばれ
デメリットを示すべき       ないことはどの県も同
☆他県に比して著しく多い     著しく不当だ           他県で多いところも 
     広告費用の妥当性                     ある。裁量のうちだ 
☆県費支出の県議会での      移転対策費として、議会     他の名目での支出は、た
  誘致としての議決の有無    説明は1億3千万ほど      またま移転広告に使った
                 他は説明がなかった       だけで議会説明いらない
☆新聞広告などについて      誘致に関係ない無駄遣い     岐阜県の名前が全国に
                                 売れるなら、それでいい
☆調査委託料            内容・相手方が不適当     適正
                 内容の割りに高額過ぎる     原告の独自の見解   
☆他の費用など           誘致に関係がない        会計手続きなど適正だ
                  単なる予算消化だ               

◆《訴訟提起に対する原告の評価》
☆監査請求後は、96年の首都機能移転テーマの新聞広告を執行しなかった。

☆97年以降も、県費での首都機能移転関連の新聞広告は行っていない
  (但し、一審判決後の99年9月に広告一本150万円だけ行った)

☆調査委託(1800万円+1000万円)「新首都構想」の中間報告は、第一回が96年7月、第二回が96年12月になされた。
 しかし続編である第三回報告書(99年3月)は県職員が手作りで作成した。

☆安易な委託や再委託(丸投げ)などが明らかになり、委託方式の見直しが必要。

☆監査請求、訴訟のための情報公開及び訴訟の中で岐阜県の説明責任が果たされて行く中で、職員の姿勢が適正・慎重になっていったと実感できる。

☆判決の如何にかかわらず、これらの現況をみれば、市民運動、岐阜県に対する県民運動としては、十二分な成果を得たといっていい。
                  以 上