児童・生徒の事故報告書
 全面非公開処分
 取消訴訟の概略


2000年11月16日
 岐阜地裁判決  


《訴訟の概略》

《提訴》99年8月2日 岐阜地方裁判所
  (民事一部・平成11年(行ウ)15号 事故報告書非公開取消訴訟)
《第一回口頭弁論》9月2日
《結審》5月18日 8月24日に判決とされた
《県教委の再開上申書・8月》 → 判決延期
《再開審》10月12日・結審
◆原告 県民ネット関係者と教育問題に取り組む有志 7名
◆被告 岐阜県教育委員会教育長 日比治男

《提訴の動機》

 岐阜県教育の教育現場では、教師による非違行為や児童・生徒の事故について、現状の正確な把握と改善のために事故報告書が従来より作成されている。
また教師による体罰問題の把握改善のために体罰報告書も作成されている。
 これらは、主たる原因(者)が教師のものは「体罰報告書」「教師の事故報告書」、主たる原因(者)が子どものものは「生徒の事故報告書」の何れかに分類、作成されるがその事案により記述内容は双方の状況・主張の記述があるはずである。
 しかし、保護者や生徒からは、その内容が簡略すぎる、教師に都合よく書かれ過ぎている、報告書に基づく教師の処分は軽すぎると指摘されている。
 一方、児童・生徒へのいじめ、体罰などの事故は現状より少なく報告され、生徒の問題行動への学校の対応、身分扱いは厳しすぎるなどの意見が根強い。
 各種事件が報道されるたびに、県教委は「事実関係を十分に把握し、厳正に対処した(い)」と述べているが、県教委の非公開体質、対応、姿勢はあまりに、無責任かつ杜撰と考えざるを得ない。

《経緯》

 99年6月16日の公開請求に対して、6月25日「児童・生徒の事故報告書は全面的に非公開」と決定された。よって、同年8月2日に、県教委によってなされた「公立小・中・高校、養護学校に関する児童・生徒の事故報告書」の公文書を全面非公開とした行政処分は県情報公開条例に違反している、として処分の取消を求めた。

《原告の主張の要点》

 問題解決のためにも諸情報は公開されるべきで、プライバシーの侵害となるものではない。どうしてもそのおそれがあるなら、部分公開の方法もある。

《被告の主張の要点》

 いろいろな情報を組合わせれば、個人が特定し得るもので、通常は当事者が他人に知られたくないと思う情報でもあるから全体として個人情報として非公開とすべきである。このような場合はプライバシー侵害が明確でなくとも非公開とできる。また、公開するということになると、今後報告書が取得しにくくなるおそれもある。

《公開の意義》

 愛知県教委は従来より、岐阜県と同様に全面非公開としており、愛知県公文書公開審査会も答申で公開すべきでない旨答申している。実際、愛知県の「情報公開条例・個人情報保護条例の運用状況報告書(平成10年版)」には、この答申を要約し、児童・生徒の事故報告書は公開すべきでない、と明記されている。

《まとめ》

 本年4月に一度は「結審」として終結させた裁判所に対して再開を求め、さらに再度の結審後も準備書面を提出するなど、県教委のこの問題に対する「こだわり」は強かった。

            以 上