平成一二年一〇月六日判決言渡 同日原本交付 裁判所書記官
平成一一年(行コ)第二二号 損害賠償請求控訴事件
(原審 岐阜地方裁判所平成八年(行ウ)第一六号)
 口頭弁論終結の日 平成一二年八月二五日

         判  決
岐阜県山県郡高富町西深瀬二〇八番地の一
  控訴人(選定当事者) 寺町知正
岐阜県揖斐郡谷汲村岐礼一〇四八番地の一
  控訴人(選定当事者) 山本好行
      (選定当事者は別紙選定者目録のとおり)

岐阜市御手洗三九〇番地の二〇
  被控訴人       梶原拓
  右訴訟代理人弁護士  端元博保
  同          伊藤公朗
  同          池田智洋
岐阜市薮田南二丁目一番一号
  被控訴人参加     岐阜県知事
             梶原拓
  右訴訟代理人弁護士  毛利哲郎

         主  文
一 原判決を次のとおり変更する。

二 被控訴人は、岐阜県に対し、一六四万八〇〇〇円及びこれに対する平成八年一二月二八日から支払済まで年5分の割合による金員を支払え。

三 控訴人らのその余の請求をいずれも棄却する。

四 訴訟費用(ただし、参加によって生じた訴訟費用を除く。)は、第一、二審を通じてこれを100分し、その九九を控訴人らの負担とし、その余を被控訴人の負担とし、参加によって生じた訴訟費用は、第一、二審を通じてこれを100分し、その九九を控訴人らの負担とし、その余を被控訴人参加人らの負担とする。

         事 実 及 び 理 由
第一 当事者の求める裁判
一 控訴人ら
 1 原判決を取り消す。
 2 被控訴人は、岐阜県に対し、二億四二二七万一九二五円及びこれに対する平成八年一二月二八日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。
 3 訴訟費用は、第一、二審とも、被控訴人の負担とする。

二 控訴人及び被控訴人参加人
 1 本件控訴をいずれも棄却する。
 2 控訴費用は控訴人らの負担とする。

第二 事実関係
 次のとおり付加訂正するほか、原判決の事実及び理由欄の「第二 事案の概要」欄に記載のとおりであるから、これを引用する。

1 原判決四頁一行目の「公金」の次に「(以下、一括して「本件公金」という。)を付加する。」

2 同七頁五行目の「争点」を「主要な争点」と訂正する。

3 同八頁一行目から二行目にかけての「関わらず」を「かかわらず」と、二行目の「公金を支出することは」を「本件公金を支出したことは」と各訂正する。

4 同八頁三行目の「違法である。」を「あるいは次に述べるような違法事由があって、違法であるところ、被控訴人は、少なくとも過失により違法に本件公金を支出することによって、岐阜県に対し、本均公金相当額の損害を与えた。」と訂正する。

5 同一三頁一行目の「配布されており」の次に「(『岐阜東濃新首都構想推進協議会』名を付した『岐阜東濃首都構想(案)《中間報告》』がそれであり、右『岐阜東濃首都構想(案)《中間報告》』が右(一)の調査委託費によって印刷された部数及び費用を具体的に明らかにすることはできないが、少なくとも後記3(二)の増刷印刷部数である一万部、一六四万八〇〇〇円を下回ることはない。)」を付加する。

6 同一三頁六行目と七行目の間に次のとおり付加する。
「(六) 契約締結方法の違法
 前記(一)ないし(四)の各調査委託に関する契約(以下、一括して、「本件各調査委託契約」という。)は、いずれも、地方自治法二三四条一項の随意契約の方法によって締結されているが、同条二項、同法施行令一六七条の二第一項各号に定める用件を満たしていないから、被控訴人が本件各調査委託契約を随意契約の方法により締結したのは違法である。そして、被控訴人が、本件各調査委託契約を随意契約の方法によらず、競争入札の方法によって締結していれば、その契約金額を本件各調査委託契約のそれの半額程度とすることができたものである。」

7 同一四頁一行目から三行目までを次のとおり訂正する。
「 右報告書は、内容において意味がないだけでなく、岐阜県とは別団体である『岐阜県東濃新首都構想推進協議会』の名を付した印刷物であるのに、岐阜県が右印刷費用(以下札部数一万部で、その費用一六四万八〇〇〇円)を負担した。」
 しかし、同協議会は、岐阜県とは明らかに別団体であり、かつ、右報告書は、その記載から明らかなように、同協議会が策定した新首都構想の中間報告書であるから、右報告書の印刷は、いかなる意味でも、同協議会の事務であって、岐阜県の事務ではないから、右報告書の印刷費用は岐阜県の事務処理費用には当たらず、被控訴人がした右印刷費の支出は違法である。」

8 同一六頁一行目と二行目の間に次のとおり付加する。
「 また、右シンポジウムの企画等は随意契約の方法により民間業者に委託されたが、右委託契約ついても、地方自治法二三四条二項、同法施行令一六七条の二第一項各号に定める用件を満たしていないから、被控訴人が右委託契約を随意契約の方法により締結したのは違法である。」

9 同一九頁三行目から四行目の「当然であり、かつ」までを、「岐阜県が財団法人である委託業者に委託業務契約を締結したのは平成八年末であり、右」と訂正する。

10 同一九頁八行目から九行目の「配布されている。」までを「『中央都』構想の調査委託契約に基づく調査結果は、その一部が『岐阜東濃新首都構想推進協議会』の策定した構想に採り入れられ、岐阜県において右構想を整理して作成した報告書『岐阜東濃首都構想(案)《中間報告》』として外部に配布した。なお、右報告書の印刷は、中央都構想の調査委託契約に基づくものではなく、岐阜県が、別途、控訴人ら主張の新首都構想(中間報告書)の印刷(増刷)についての業務委託をしたことによるもので、その費用は首都機能移転対策費から支出した。」と訂正する。

11 同二〇頁二行目から九行目までを削除する。

12 同二一頁四行目と五行目の間に次のとおり付加する。
「(三) 本件各調査委託契約を締結を随意契約の方法によったことに違法はない。
 本件各調査委託契約は、それを競争入札の方法によって締結することが絶対に不可能又は著しく困難であるというものではないが、各その契約にかかる調査委託業務の種類・内容に照らし、いずれも、その調査目的を達するためには知的財産的な技術、ノウハウ、アイデア、経験等に依存する面が大きく、したがって、受託業者がそれぞれ有するノウハウ、技術、調査データ、過去の実績、得意とする分野等によりその成果物の優劣に大きな差異を生ずることが合理的に予想されるため、それぞれ、目的達成の蓋然性がより高度であると判定された特定の業者と間で随意契約の方法で締結したものである。
 したがって、本件各調査委託契約は、地方自治法二三四条二項、同法施行令一六七条の二第一項二号の「その他の契約でその性質又は目的が競争入札に適しないもの」に該当し、被控訴人がこれを随意契約の方法により締結したことに違法はない。」

13 同二一頁五行目と六行目の間に次のとおり付加する。
「(一) 新首都構想(中間報告)の印刷(増刷)の業務委託費について『岐阜東濃新首都構想推進協議会設置要綱』に基づき、岐阜県を首都機能移転候補地とする新首都構想を策定し、県民の相違を反映させた同構想を全県民的な運動として全国にアピールすることを目的とし、主に岐阜県内各種団体の長を会員とし、独自予算をもたない岐阜県の行政組織内に存在する法人格及び権利能力を有しない、右新首都構想について意見を聴取する場としての公的会議体であるから、同協議会の事務は岐阜県の事務である。
 岐阜県は、前記中央都構想にかかる調査委託の受託業者から中間的な報告を受けたので、その報告書案を同協議会に諮り、首都機能移転の必要性を訴える配布資料として有用であると判断し、同協議会の名を付した『岐阜東濃新首都構想(案)《中間報告》』として印刷に付し、その費用を負担したものである。
 したがって、『岐阜東濃新首都構想(案)《中間報告》』の所有者は岐阜県であり、岐阜県がその行政組織内に存在する会議体の名称である『岐阜東濃新首都構想推進協議会』を付して印刷配布し、その費用を負担したことは、岐阜県が自己の事務を処理してその費用を負担したにすぎない。
 仮に『岐阜東濃新首都構想推進協議会』が岐阜県の行政組織外に存在する会議体であるとしても、『岐阜東濃新首都構想(案)《中間報告》』の所有者は岐阜県であり、岐阜県が、同協議会の賛同を得て、首都機能移転の必要性を訴える配布資料として有用であると判断し、同協議会の名を付した『岐阜東濃新首都構想(案)《中間報告》』を印刷したのであるから、その印刷費の支出が違法となるのではない。」

14 同二一頁六行目の「(一)」を「(二)」と、二二頁一行目の「(二)」を「(三)」と各訂正する。

15 同二二頁三行目と四行目の間に次のとおり付加する
「 また、右シンポジウムの企画立案業務についての委託契約は、受託業者の有するノウハウ、アイデア、経験等に依存する面が大きく、したがって、受託業者がそれぞれ有するノウハウ、技術、調査データー、過去の実績、得意とする分野等によりその成果物の優劣に大きな差異を生ずることが合理的に予測されたため、目的達成の蓋然性がより高度であると判定された特定の業者と間で随意契約の方法で締結したものである。
 したがって、右委託契約は、地方自治法二三四条二項、同法施行令一六七条の二第一項二号の「その他の契約でその性質又は目的が競争入札に適しないもの」に該当し、岐阜県がこれを随意契約の方法により締結したことに違法はない。」

16 同二二頁四行目の「五 被告の主張」を「4 被控訴人の主張」と訂正する。

第三 当裁判所の判断
 次のとおり付加訂正するほかは、原判決の事実及び理由の「第三 当裁判所の判断」欄一ないし五に記載のとおりであるから、これを引用する。
1 原判決二三頁六行目を削除する。

2 同二三頁七行目を「一 新聞広告費にかかる広告支出の違法性の有無」と訂正する。

3 同二四頁一行目から二行目にかけての括弧内を「甲一の3、4、6、9、10、13、14、25、二一の1、2、丙一の1ないし4、二ないし四、五の1ないし14、六の1ないし4、七の1、九」と訂正する。

4 同二五頁七行目りの「日本経済新聞ほか一紙、」の次に「同月一三日付け読売新聞、」を付加する。

5 同二六頁二行目の「平成八年度」から四行目の「一部について」までのとおり訂正する。
「同年度の広告関連予算は、総務費(款)六三三億二〇三二万九〇〇〇円のうちの総務管理費(項)二六四億九三一三万六〇〇〇円の一部として計上されているが、そのうち総務部所管分は、広報費(目)一二億一八九九万六〇〇〇円中に計上され、さらには右広報費が共済費以下一〇の節に区分され、右広報費(目)の具体的な使途の一部として」と訂正する。

6 同二六頁九行目から一〇行目にかけての「予算説明会においても議会に」を「議会外で行われた予算説明会においても議員にその旨が」と訂正する。

7 同二八頁一一行目の「本件公金」を「右新聞広告費にかかる公金」と訂正する。

8 同二九頁六行目の「議会の予算議決において重要な基礎資料となるから、目と節の」を「、議会の予算の議決のための審議において重要な基礎資料になるとともに、予算執行の適正確保の要請からも、目又は節間といえどもその」と訂正する。

9 同二九頁九行目から一〇行目にかけての「款、項、目及び節のいずれにも該当しないことが明らかであるし、」を「歳出予算における款、項、目及び節の区分に対応したものではなく、総務費(款)の総務管理費(項)の広報費(目)として計上された予算の使途別内訳を示したものである。したがって、前記(四)に認定した新聞広告費が右各事業のために右各事業費分から支出されたのであるから、目間における予算の流用がないことは明らかである。そして、右新聞広告費に支出が右広告費(目)の下位区分である節の、どの節から支出されたものであるかを具体的に明らかにするに足りる証拠はないが、弁論の全趣旨によれば、節間の流用もなく適正に予算執行がされたものと推認することができる(なお、証拠(甲一の11)及び弁論の全趣旨によれば、特別キャンペーン事業費七〇〇〇万円から支出された新聞広告費三四四〇万円については、右特別キャンペーン事業費が、当初総務部所管の総務費(款)の総務管理費(項)の広報費(目)として予算配分されていたが、年度途中で企画経済部所管の総務費(款)の総務管理費(項)の広報費(目)として再配分されたため、企画経済部所管の右広報費から支出されたことが認められるが、これは、予算執行上の所管部が異なっただけで、総務費(款)の総務管理費(項)の広報費(目)からの支出であるから、款・項・目における予算の流用には当たらない。なお、仮に節間に予算の流用があったとしても、議会の予算の議決の審議において予算使途として説明されていた事業費に実際に使用されている以上は、右流用をもって違法な予算執行であるということはできない。)。」と訂正する。

10 同三一頁六行目を「二 調査委託費にかかる公金支出の違法性の有無」と訂正する。

11 同三一頁八行目から一〇行目にかけての括弧内を次のとおり訂正する。
「甲一の23の1ないし3、一二の1ないし3、一三の1ないし3、二二、二三、二七ないし三〇、三五ないし三七、四六ないし四九、五二ないし五五、丙八、九、一八ないし二〇」

12 同三二頁四行目の「県内の業者との間で、」を「株式会社三菱総合研究所との間で」と訂正し、五行目の「新首都」の前に「同社との間で」を、六行目の「新首都」の前に「財団法人都市みらい推進機構との間で」を八行目の「新首都」の前に「財団法人ソフトピアジャパン(以下「ソフトピアジャパン」ともいう。)との間で」を各付加する。

13 同三三頁五行目から七行目までを「『岐阜県東濃新首都策定調査ー報告書ー』としてまとめられ、これが平成八年一二月ころに岐阜県に提出され、これによって、右調査委託業務の履行が終了した。」と訂正する。

14 同三四頁三行目の「まとめられた。」を「まとめられ、これが平成八年一二月ころに岐阜県に提出され、これによって、右調査委託業務の履行が終了した。」と訂正する。

15 同三四頁一〇行目の「まとめられた。」を「まとめられ、これが平成八年一二月ころに岐阜県に提出され、これによって、右調査委託業務の履行が終了した。」と訂正する。

16 同三四頁一〇行目の「まとめられた。」を「まとめられ、これが平成八年一二月ころに岐阜県に提出され、これによって、右調査委託業務の履行が終了した。」と訂正する。

17 同三五頁五行目の「まとめられた。」を「まとめられ、これが平成八年一二月ころに岐阜県に提出され、これによって、右調査委託業務の履行が終了した。」と訂正する。

18 同三五頁七行目と八行目の間に次のとおり付加する。
「 また、右調査委託にかかる業務の中心的な内容をなす『情場』に関する調査研究については、慶応義塾大学教授石井威望を代表とする『国際情場学会』が国内唯一の専門的な研究組織であるが、同学会は、インターネットを活用したネットワーク乗で展開されている任意の研究組織であり、その組織実体から右調査委託先として適当でないため、岐阜県が出資する財団法人で岐阜県の実情にも精通し、かつ、同学会の事務局を担当する財団法人ソフトピアジャパンを委託先として、同財団法人に調査委託業務履行責任を負わせつつ、同財団法人の責任において、同学会に調査業務を再委託されることを前提として、右調査委託にかかる契約書(甲三七)には、他の調査委託にかかる契約書とは異なって、再委託の禁止条項が入れられなかった。そして、同財団法人は、右調査委託業務を岐阜県から約束された契約金額と同一の金額で同学会に再委託し、右報告書は同学会により取りまとめられたものであった。」

19 同三五頁九行目を次のとおり訂正する。
「2 右1に認定した事実に基づいて検討する。
(一) 調査委託@ないしCの業務内容は、単に調査報告書」

20 同三四頁七行目の「そして」から九行目の「ものであって」までを「そ して、証拠(丙二一、二二)及び弁論の全趣旨によれば、本件各調査委託にか かる前記各報告書は、いずれも、公表されていないが、東濃地域への首都機能 移転の推進を担当する岐阜岐阜県の担当部局等において、調査研究資料として 利用されていることが窺われるから」と訂正する。

21 同三八頁二行目から五行目までを次のとおり訂正する。
「などと主張するが、調査委託Cが岐阜県からソフトピアジャパンに委託された経緯は前記認定のとおりであり、しかも、ソフトピアジャパンは、岐阜県との契約金額と同一の金額で岐阜県から委託された調査業務を他に再委託していて、調査委託Cを受託したことによって経済的な利益を得た事実もないのであるから、控訴人らの右主張は失当である。」

22 同三八頁八行目から三九頁二行目までを次のとおり訂正する。
「とも主張する。しかし、証拠(丙九、一八)及び弁論の全趣旨によれば調査委託@を受託した株式会社三菱総合研究所は、右調査委託@に基づき、平成八年一二月に『岐阜県東農新首都策定調査ー報告書ー』を岐阜県に提出して委託業務を履行したこと、『岐阜東濃新首都構想(案)《中間報告》』は、岐阜県が調査委託@を受託した同社から受けた中間報告書案を『岐阜東濃新首都構想推進協議会』に諮り、首都機能移転の必要性を訴える配布資料として有用であると判断し、別途予算措置を講じて、同協議会の名で印刷したものであり、右調査委託@に基づき印刷物でないことが認められるので、控訴人らの右主張は、その前提を欠き、失当である。」

23 同三九二行目と三行目の間に次のとおり付加する。
「(二) 次に本件各調査委託契約を随意契約の方法で締結したことの可否について考えるに、本件各調査委託の内容は前記1に認定したとおりであるから、本件各調査委託契約にかかる調査業務は、被控訴人ら主張のとおり、その種類・性質・内容等に照らし、いずれも、その調査目的を達成するためには知的財産的な技術、ノウハウ、アイデア、経験等に依存する面が大きく、したがって、受託業者がそれぞれ有するノウハウ、技術、調査データー、過去の実績、得意とする分野等によりその成果物の優劣に大きな差異を生ずることが合理的に予測されるものであると認められる。そして、証拠(甲五二ないし五五)及び弁論の全趣旨によれば、被控訴人が、本件各調査委託契約の受託業者として、従前の同種調査の実績、調査対象地である岐阜県との関わりなどを考慮して、それぞれ、本件各調査委託の受託業者として前記各法人を選定したことが認められる。
 したがって、地方自治法二三四条二項、同施行令一六七条二第一項二号に該当するものということができるので、被控訴人が岐阜県知事として本件各調査委託契約を随意契約の方法で締結したことに違法性があったものということはできない。」

24 同三九頁三行目を「三 その他の費用にかかる公金支出の違法性の有無」と訂正する。

25 同三九頁一〇行目の「しかも」から一一行目の「実施しているが」までを「しかし、前記一及び二に認定した事実並びに証拠(甲一の11、18ないし22、一六の1、2)及び弁論の全趣旨によれば、岐阜県は、東濃地域への首都機能移転誘致を推進する方策として、広告等の設置、懸垂幕の掲示、テレホンカードの頒布、関係書籍の購入のほか、新聞広告、各種調査委託など様々な施策していることが認められるのであり」と訂正する。

26 同四〇頁二行目及び三行目の各「採用する」をいずれも「実施する」と、三行目の「採用した」を「採用して実施した」と各訂正する。

27 同四一頁三行目の「及び一六(枝番を含む。)」を削除し、九行目の「甲一七の1ないし3」を「甲一七の1ないし4」と訂正する。

28 同四二頁九行目の「五〇〇本」の次に「(単価一〇〇〇円)で契約予定価格一一〇〇万円」を付加する。

29 同四三頁九行目の「ビデオ作成費の大部分が必要でない」を「ビデオ製作による公金支出が不必要なものであった。」と訂正する。

30 同四三頁一〇行目から四四頁八行目までを次のとおり訂正する。
「3 新首都構想(中間報告)の印刷(増刷)の業務委託費について
(一) 前記のとおり、『岐阜東濃新首都構想(案)《中間報告》』(以下「本件中間報告」という。)は、岐阜県が、調査委託@を受託した株式会社三菱総合研究所から受けた中間的な報告書案を『岐阜東濃新首都構想推進協議会』(以下「本件協議会」という。)に諮り、首都機能移転の必要性を訴える配布資料として有用であると判断し、別途予算措置を講じて、同協議会の名で印刷に付して配布したものである。

(二) 証拠(甲一の10、11、三三の4、丙五の8ないし12及び14、九、二一、二四、二五、二七の1、2、二八ないし三〇、三一、三二の1、2)及び弁論の全趣旨によれば、岐阜県は、東濃地域への首都機能移転に向けて、幅広い県民レベルでのコンセンサスづくり、全県民的な気運の盛り上げを図るため、同県内の各界各層を代表する各種の団体等の長を構成員とする組織を作ることを計画し、被控訴人は、岐阜県知事として、岐阜県議会議長、岐阜県市長会長、岐阜県町村会長らとともに設立発起人となって、同県内の公私の団体の長に参加を呼び掛けるなどして、平成八年二月二七日本件協議会の設立総会が岐阜県庁内会議室において開催され、岐阜県知事の被控訴人が会長に選出されたこと、本件協議会は、同日、『岐阜東濃新首都構想推進協議会設置要綱』に基づき、岐阜県を首都機能移転候補地とする新首都構想を策定し、県民の総意を反映させた同構想を全県民的な運動として全国にアピールすることを目的とし、右設立発起人らを含めて岐阜県内の公私三六団体又は組織の長(行政庁としての岐阜県関係者としては、岐阜県知事としての被控訴人のみ)を会員として設立された団体であること、右設置要綱には、本件協議会は、総会において決定される会長が協議会を統括し、かつ、代表するものとされ、総会は会長が招集し、会議に付議する事項について、県民の意見を広く聴取するため、必要に応じて県民フォーラムを開催し、協議会の事務局は、岐阜県地域県民部地域計画政策課及び多治見市企画部企画課におくこと、協議会の運営に関し必要な事項は会長が定めることなどの定めがあるが、会費等独自の収入や支出の存在を予定する定めはないこと、岐阜県は、同年八月になって、本件協議会に参加を求める新規会員を募ることとし、予め選定し、参加意志を確認した新規会員候補者に対し、被控訴人が本件協議会会長名で参加依頼を行った結果、同年九月一八日、本件協議会に新たに岐阜県内の35団体の長が会員として本件協議会に加入したこと、本件協議会は、設立以降、平成八年度に一回県民ふれあい会館において開催されたほかは、いずれも岐阜県庁内において開催され、また、岐阜県の費用負担で、開催時に看板、飾り花を用意し、出席した会員に対しジュース等の飲み物が提供されてきたが、参加会員に対する交通費や日当等の費用弁償をしたことはないこと、他方、会員は、本件協議会の会合に参加する際の交通費を自己負担するほかは、本件協議会等の費用負担したことはないことが認められる。

(三) 前記二1の認定事実及び右認定の事実によれば、岐阜県は、首都機能の東濃地域への移転実現を行政上の施策として行政活動をしていたため、右行政活動の一環として、右施策に協賛する組織として、岐阜県知事としての被控訴人らが中心となって本件協議会を設立したものであり、本件協議会の設立後の運営も、被控訴人が主導する岐阜県が中心となって行われ、その必要費用等も岐阜県が負担してきたものということができる。
 被控訴人らは、右のような事実から、本研究議会は岐阜県内の行政組織内の公的会議体であるので、本件協議会の事務は岐阜県の事務である旨主張する。
 しかし、本件協議会は、その会員(構成員)は、岐阜県知事としての被控訴人を除くほかの会員がすべて行政庁としての岐阜県には属さない公私の団体又は組織の長であり、総会で選出決定された代表者が会務を統括し、会を代表するものとされ(被控訴人が本件協議会の会長であるのは、右選出の結果である。)、協議会の運営に関し必要な事項は会長が定めることができるものとされていたのであるから、本件協議会が岐阜県の行政組織内の会議体であるとすることはできず、岐阜県の行政組織とは別に存在する団体であるとみるほかない(本件協議会については、右のとおり会長が運営に関し必要な事項を定めることとされていたが、右定めの有無が証拠上不明であり、そのためもあって、会としての意志決定方法に関する定めの有無等も不明であること、さらには、本件協議会について、会費等独自の収入や支出の存在を予定する定めがなく実際にも本件協議会の運営に必要な諸費用は岐阜県がすべて負担していたことなどの事情から、本件協議会がいわゆる権利能力のない団体として一定の範囲で権利能力の帰属主体としての実質を備えているとするには疑いが残るものの、そのことがあるとしても、本件協議会が岐阜県内の行政組織内の会議体であるとすることはできず、右の点は、本件協議会を岐阜県の行政組織は別に存在する団体であると認定する妨げにならない。)。
 また、本件協議会は、その設立の経緯等からして、法律又は条例に基づいて設置されたものでないことは明らかである。
 したがって、本件協議会の運営等の事務が、当然に岐阜県が処理すべき事務に含まれるということはできない筋合いである。

(四) ところで、地方自治法二三二条一項によれば、地方公共団体は、当該地方公共団体の事務を処理するために必要な経費を支弁するものとされているのであるから(なお、地方財政法九条本文)、その反面として、地方公共団体は、当該地方公共団体の事務に属しない事務の処理のために費用を支弁することは許されないのである。
 そして、証拠(丙九)及び弁論の全趣旨によれば、本件中間報告書は、その体裁(表紙の下部に本件協議会名のみが記載され、裏表紙には、問い合わせ先として、本件協議会事務局が掲げられている。)や内容(前書部分には、本件中間報告書の内容をなす岐阜東濃新首都構想が本件協議会の策定にかかることなどの記載)等からして、本件中間報告書は、本件協議会がその事業の一環として作成し、その成果として発表したものであると認められる。
 そうすると、本件中間報告書を印刷に付することは到底岐阜県の事務ということはできず、したがって、被控訴人が、岐阜県知事として、その費用を支弁したことは岐阜県の事務を処理するための支弁には当たらないものというほかない。
 なお、被控訴人らは、仮に本件協議会が岐阜県の行政組織外に存在する団体であるとしても、本件中間報告書の所有権が岐阜県にあり、岐阜県が、同協議会の賛同を得て、首都機能移転の必要性を訴える配布資料として有用であると判断して、本件中間報告書を印刷に付したのであるから、その印刷物は岐阜県の所有に属し、その印刷費の支出が違法となるものではないと主張するが、被控訴人が、岐阜県の行政組織に属しない本協議会の事業について、本件印刷物に担当する金額の補助をする等の措置を講ずることなく、その事業経費を直接支弁することが許されないことはすでに説示したとおりであり、また、本件中間報告書はその体裁から本件協議会の作成にかかるものであることは明らかであるから、仮に右印刷物の所有権が岐阜県にあるとしても、右公金支出の違法性に関する結論を左右するものではない。

 4 シンポジウム費用について
  証拠(甲一の24、三一、三二、三三の1ないし3、五六、丙五の13、七の1)及び弁論の全趣旨によれば、平成八年四月二九日及び三〇日の両日、岐阜県多治見市の同市文化会館において、東濃地域への首都機能移転誘致運動の一環として、「二十一世紀型首都への提案“東京から東濃へ”」をテーマとする首都機能移転シンポジウムなどが実施されたこと、被控訴人は、岐阜県知事として、同市でイベントの企画やイベント会場の設営等を業とする株式会社アップル企画との間で、同社に対し契約代金五七一万四四四〇円で右シンポジウムなどの会場設営及び運営業務を委託する内容の委託契約を締結したこと、同社が右業務委託契約に基づいて受託した業務は、具体的には、会場設営業務として、映像装置の設置、会場の装飾、会場の撤去を、運営業務として、シンポジウムの企画・演出及びVTRの放映、音響・照明、具体的な進行管理の実施を内容とするものであったこと、同社は、右両日、右委託契約に基づき右各業務を行ったこと、岐阜県は、右大人数の参加を得て行うシンポジウムの企画、設営及び運営が特殊な業務であるため、専門業者の助言及び指導が必要である上、頻繁な打ち合わせが必要であるため、会場となる多治見市文化会館のある多治見市あるいはその近辺の専門業者に業務を委託するのが相当であって、地方自治法二三四条二項、施行令一六七条の二第一項二号に該当する場合であると判断し、同市内で唯一の専門業者で、多治見市から同文化会館の管理業務を委託され、その舞台設備や照明、音響設備等を熟知する同社との間に随意契約の方法により右業務委託契約を締結したことが認められる。 右認定の事実によれば、被控訴人が右業務委託契約に基づいて支払った五七一万四四四〇円が不当に高額であるということはできず、また、岐阜県が株式会社アップル企画との間に随意契約の方法により右業務委託契約を締結したことについて、地方自治法二三四条二項、施行令一六七条の二に違反するところはないというべきである。」

31 同四四頁九行目の「五」を「四」と、「各公金の支出には」を「各公金の支出は、前記二3の本件中間報告書印刷(増刷)の業務委託費にかかる公金支出分を除き、」と各訂正する。

32 同四六頁四行目の「本件公金の総支出にも」を「本件公金の総支出が著しく過大であるということはできず、そのことを理由とする」と訂正する。

33 同四六頁五行目と六行目の間に次のとおり付加する。
「五 本件中間報告書印刷の業務委託費にかかる公金支出による損害賠償責任について
 1 前記二3に説示したとおり、被控訴人が本件中間報告書印刷の業務委託費として一六四万八〇〇〇円を支出したこと(以下「本件印刷費支出」という。
)は、岐阜県の事務でない事務の処理のため公金を支出したものとして違法であるところ、被控訴人は、岐阜県知事として、本件協議会の設立に深く関与し、かつ、本件協議会の会長として本件協議会に運営を主導していたものであるから、本件協議会が岐阜県の行政組織の一部ではなく、本件協議会が本件中間報告書を作成する事務が岐阜県の事務に属さないことを知り得、したがって、本件印刷費支出が違法なことも知り得す他ものと推認できるから、被控訴人は、少なくとも過失により違法に右公金を支出したものというべきである。
 2 そして、右によれば、岐阜県は、本件印刷費支出により、その支出にかかる一六四万八〇〇〇円と同額の損害を被ったものと認められる。」

第四 結論
 以上によれば、控訴人らの請求は、被控訴人に対し本件印刷費支出にかかる一六四万八〇〇〇円及びこれに対する本件印刷費支出後の平成八年一二月二八日から支払済みまで民事法定利率五分の割合による遅延損害金の支払を求める範囲で理由があり、その余は失当である。
 よって、原判決を右の趣旨に変更し、訴訟費用の負担につき行政事件訴訟法七条、民事訴訟法六七条、六四条、六五条、六六条、六一条を適用して主文のとおり判決する。

名古屋高等裁判所民事第二部
      裁判長裁判官 大内捷司
        裁判官    長門栄吉
        裁判官    加藤美枝子

      選 定 者 目 録
岐阜県養老郡上石津町上鍛冶屋九七番地の一  三輪唯夫
岐阜県可児郡御嵩町上恵土一二三〇番地の一  小栗均
岐阜県瑞浪市宮前町一丁目四三番地      藤中智恵美
岐阜県大垣市田町一丁目二〇番地一号     近藤正尚
岐阜県揖斐郡池田町上田九八番地の三     国枝従三
岐阜県山県郡高富町西深瀬二〇八番地の一   寺町緑
岐阜県大垣市田町一丁目二〇番地一号     近藤ゆり子
岐阜県養老郡上石津町上鍛冶屋三三一番地   松島勢至
岐阜県養老郡上石津町下山七二六番地     安藤恵
岐阜県瑞浪市釜戸町三四四八番地       市川千年
岐阜県瑞浪市釜戸町三四七七番地の九     小岩井新一
岐阜県不破郡垂井町岩手一〇五二番地     所秀雄
岐阜県不破郡垂井町岩手一〇五二番地     所やなぎ
岐阜県養老郡上石津町時山一一三番地     安川直樹
岐阜県山県郡伊自良村大森六三一番地の一一四 佐藤啓子
岐阜県加茂郡八百津町潮見四〇七番地     宮澤杉朗

 右は正本である。
平成一二年一〇月六日
名古屋高等裁判所民事第二部
      裁判所書記官 後藤照幸