控 訴 状



      控 訴 人   (原告) 寺町知正  他六名
      被 控 訴 人 (被告) 岐阜県教育委員会教育長
                        日比治男

  事故報告書非公開処分取消請求控訴事件


      訴訟物の価格 金九五〇、〇〇〇円
      手数料額  金一二、三〇〇円
      予納郵券     七六〇〇円
          一〇〇〇−六   四〇〇−二
           一〇〇−二    五〇−二
            二〇−二〇   一〇−一〇

        控訴人選定当事者 寺 町 知 正  
      (連絡先) 岐阜県山県郡高富町西深瀬二〇八番地の一
        TEL・FAX 0581−22−2281

 二〇〇〇年一一月三〇日
名古屋高等裁判所 御中

      記


 右当事者間の岐阜地方裁判所民事第一部平成一一年(行ウ)第一五号事故報告書非公開処分取消請求事件について、二〇〇〇年一一月一六日に言い渡された判決は、一部不服であるから、控訴をする。

      原判決の表示
       主 文
一 被告が原告選定者らに対して平成一一年六月二五日付けでした別紙文書目録一記載の1の公文書に係る非公開決定処分のうち、同目録一記載の2の各欄の公開をしないとした部分を取り消す。

二 被告が原告選定者らに対して平成一一年六月二五日付けでした別紙文書目録二記載の1の公文書に係る非公開決定処分のうち、同目録二記載の2の各欄の公開をしないとした部分を取り消す。

三 原告選定当事者のその余の請求を棄却する。

四 訴訟費用はこれを二分し、それぞれを各自の負担とする。

       控訴の趣旨
一 原判決の一部を取り消す。

二 被告が原告選定者らに対して平成一一年六月二五日付けでした別紙文書目録一及び二記載の各1の公文書に係る非公開決定処分のうち学校名、非行・事故の概要欄、事後措置等欄(但し生徒の氏名、住所、生年月日を除く)を公開をしないとした部分を取り消す。

三 訴訟費用は、第一審、二審とも、被控訴人の負担とする。
  との判決を求める。

控訴の理由
第一 原判決は、控訴人敗訴部分のうち生徒の氏名、住所、生年月日を除く部分につき、本件条例の解釈及び事実認定を誤っているから、取り消されるべきである。

第二 控訴の趣旨の説明
 原判決は、本件事故報告書の大要を、@ 非行・事故の名称、 A 発生日時、 B 発生場所(学校名を含む)、 C 生徒の所属、氏名、性別、生年月日等、 D 管理面、 E 非行・事故の概要、 F 事後措置等 の各項目に分かれていると認定分類し、B 発生場所のうちの学校名、 C 生徒の所属、氏名、性別、生年月日等、 E 非行・事故の概要、 F 事後措置等 の各欄についての非公開処分を容認したものである。
 これに対し、控訴人は C 生徒の所属、氏名、性別、生年月日等、のうちの「生徒の氏名、(住所)、生年月日」等の明らかに個人を識別することのできる部分については争わず、その余の原審原告敗訴部分の非公開処分の取消を求めて控訴するものである。

第三 原判決には本件条例の趣旨、目的(第一条)の認識がない
 本件条例第一条は、この条例の目的を明らかにし、岐阜県における情報公開制度の基本的な考え方を定めたものであり、「この条例は、県民の公文書の公開を請求する権利を明らかにするとともに、情報公開の総合的な推進に関し必要な事項を定めることにより、県民の県政への参加を促し、県政に対する理解と信頼を深め、もって開かれた県政を実現することを目的とする」と規定(乙第四号証)している。
 岐阜県が保有する情報は県民生活と深くかかわるものであり、本来的には県民共有の財産と考えられることから、県民が自ら公文書の公開を請求する権利を行使し、これに対して県が保有する情報を公開することは、県民が県政の運用を有効に監視することで県政に対する理解と信頼を深め、もって住民自治、住民参加を実現して行くことであり、県民が自分自身の情報を支配し、コントロールするここと同じであって、県民固有の権利といえる。
  岐阜県の情報公開制度は、この県民固有の権利を具体化し、県民の県政への参加を促し、開かれた県政を実現することを目的とするものである。
 よって、非公開処分が誤っているとして処分の取消を求める裁判は、本件条例第一条の目的を大前提として進められる必要がある。
 しかし、原判決は処分の根拠法令である本件条例について

   「2 本件条例
      本件条例には、次のとおりの規定がある。
     (解釈及び運用の基本)
      第三条 実施機関は、・・・」(判決文五頁)

 とあるとおり、第三条から本件条例の認識を始めているのであり、第一条を基に判断していない。
 右に述べたとおり、本件条例が県民の公文書の公開を請求する権利を明確にし、もって県政への信頼の深まりと県政への参加を目的とするものであることを認定していないのであるから、そもそも法令解釈を誤った判決である。

第四 判示の公開情報では請求の趣旨目的は達せられない
 原判決は「右のとおり公開される情報により、いつ、どこで、どのような類型の事故等が何件あったのかを知ることができ、請求の趣旨目的は相当程度満たされる」(判決文三二頁)としているが、「いつ、どこで、どのような類型の事故等が何件」という程度の情報は通常も統計として集計され時に報道される程度の情報でしかない。子どもを取り巻く状況や教育の現状を理解しようとする県民の願い、適切に対応したいとする県民の志向は、教育委員界関係者らと同様であって、この状況や現状についての主たる情報、核心部分の情報は原判決が非公開を是認した部分、つまり E 非行・事故の概要、 F 事後措置等 の各欄等にこそ示されているのである。 それは多数の甲号証から明らかであり、文書の意味や情報公開に対する理解と判断を誤っており、この誤りは判決に影響を及ぼす重大なものである。

第五 個別の判断をしていない
 原判決は、岐阜市で同様同種の文書が氏名等除いて公開していることを認定している(判決文二一、二九頁)にもかかわらず、 E 非行・事故の概要、 F 事後措置等 の非公開処分を是としたものであるが、「公文書の公開の可否及びその範囲は、条例の趣旨や当該公文書の具体的な記載内容等により個別に判定すべきもので、一概に比較する事は相当ではない」(判決文二九頁)と即断していることは、論理矛盾がある。何となれば、本件訴訟にかかる一六件の文書のうちの少なくとも一件は六月四日付け事故報告書(甲第二三号証)であることに原被告双方の争いがないところ、右判示に従うならば、六月四日付け事故報告書(甲第二三号証)についてはその具体的な記載内容等により公開の可否及び範囲を個別に判定しなければならないが、原審は E 非行・事故の概要、 F 事後措置等 の情報の条例への適合性の判断を行っていないからである。
 明らかに審理不尽、理由不備の違法がある。
 さらに、この判断をなし、後に他の一五件の文書について類推すれば、それら一五件の文書に関する本件処分についての判断も可能であって、このことが判決に影響を及ぼすことは明らかである。
 加えて、この個別の判断をしていないことは、「一件ずつの情報について、個別に判断すべきで、一括して判断することは誤っている」として東京高裁に差し戻した最高裁判決(《栃木県知事交際費情報公開訴訟》平成三年(行ツ)第六九号、平成六年一月二七日第一小法廷)にも明らかに違背している。

第六 後日、控訴理由(補充)書を提出する。

            右控訴人 原告選定当事者 寺町知正 外六名  
                                   
                              以 上