『む・しの音通信』No.34
(2004年2月10日発行)

おいしい魚を釣って食べよう−Part2 
   「議員と市民の勉強会」
 2004.1.31〜2.1:ウィルあいち

1月「議員と市民の勉強会」
         (報告:今大地はるみ)


 1月31日〜2月1日の10時間におよぶ「議員と市民の勉強会」には、遠方からの初参加4人をいれて16人が集合した。市民会員は2名。講師はみどりさん・ともまささん。 1日目は、3月議会の「予算審議」を見すえての「予算でおいしい魚を釣る」ための講座。まずは1分間の自己紹介ののち、《セッション1》では「自治体における『予算』とは何か」の総論。つづいて《セッション2》では「予算案審議」。議会での審議の流れを理解するための講師の基本レクチャーのあと、2期目議員の経験報告に対しては、厳しいコメントも出された。《セッション3》はいよいよ、参加者持参の予算書を見ながらの各論。『予算の見方・つくり方』をテキストに予算審議のポイントを勉強した。
 午後8時。遅い夕食のあと、宿泊棟では夜中まで交流会がつづいた。
 2日目の《セッション4》は、「一般質問でおいしい魚を釣るため」の、ハウツー編だ。一般質問の手法のレクチャーのあと、宿題のレジメにもとづき、「ひとり報告2分、ディスカッション3分、コメント1分」の「む・しネット流」実践習得勉強法が繰り広げられた。最後は、「予算審議にむけての抱負」を、参加者全員が1分間スピーチでまとめとした。 勉強会のたびごとに、講師から出される宿題をこなし、マイクをにぎり時間内に発言する「む・しネット流」勉強会は、着実に市民派議員の資質を高めることを実感しつつ、心地よい疲労感につつまれながら会場をあとにした。      
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「勉強会」に参加して       
    岐阜市・高瀬芳


  予算案審議は、私にとって初めてのトピックであった。行政と一緒に仕事をしていたときは、いかに産業振興の課題解決に有効な事業を実現するか頭を悩ませ、財政課を説得するために腐心したが、今回はそうして作られた事業を市民の立場から検証するという、興味深い体験だった。
 参加者が持ち寄った予算書の厚さは、2〜3センチくらい。事業数はどのくらいか分からなかったが、これだけの書類が審議のたった1週間前に配布されるというのは、審議をするなと言われているようにさえ思えてくる。それでも、この厚い書物を効率よく、議員として最低押さえておきたいポイントを押さえるべく、ともまささんが説明してくださった。 一方、本当に無駄がないか確かめるには、経常経費を点検したほうがいいというコメントがみどりさんから出された。確かに、企業に対して行うコンサルティングも、業務プロセスの改革を目的としたものが大きな部分を占めている。ただし最近は、業務の効率化だけを目的にした場合より、今までの業務の枠組みを取り去り業務全体を改革しようというアプローチが取られると、さらに大きな成果が得られると言われている。そのためには、行政は一層外部に対して情報公開を進め、業務プロセスに行政外部の識者、企業、市民を巻き込まねばならないだろう。
 時間が限られた議員を支援するため、また複数の視点から予算を検討するために、予算書を複数もらえるといいのではないかと思えるが、現時点で市民が予算書をもらうのは、容易ではない。私はこの勉強会に先立ち、予算書を入手するため、岐阜市役所の情報公開センターに行った。しかし、そこで予算書が欲しい旨を伝えると、予算書は議員の審議のために発行しており、差し上げられないとのことだった。代わりに予算の概要が説明された広報をもらってきたが、後でみどりさんから、議会図書室に頼み込んで貸し出してもらったらどうかというアドバイスをいただいた。
 勉強会に参加されていたもう一人の市民である甘利さんは、八王子市役所で粘りに粘って(?)予算書を入手されたようである。  「市民の私が予算書をもらおうとしたら、『何に使うのだ』などと根掘り葉掘り聞かれて、不愉快な思いをした。議員の皆さん、ゆめゆめ忘れないでくださいね」と、甘利さんは議員の参加者に訴えた。私も不愉快な思いをするほど、粘ればよかったと思った。私も行政と仲良く、事を荒立てずという姿勢に陥ってしまっているようだ。
 そう、「行政と仲良くなろうとしないこと。」とのみどりさんからのアドバイスもあったのだ。「仲良くなったというのは単に取りこまれているだけ。行政との間は、ピリッとした緊張感のある関係が必要」なのだそうだ。奇しくもこのコメントは、コンサルティング会社時代の最初の上司が言っていた言葉に似ている。その人は、「コンサルタントは常に正論を言わなければならない。」と言っていた。しかし、「コンサルタントのレポートは、行政がやりたいことを結論として導き出す"ちょうちん持ち"のようなものが多い」という感想も今大地さんから聞いた。それでも、基本的にはコンサルタントも職員も税金を有効に使い、市民のためになる事業を実施したいと考えていると私は信じたい。そういう思いをつないで、同じ方向を向いたベクトルにしていけないだろうか。市民によるメディアを立ち上げようとしているこれからの私の課題だ。
 3月の議会はもう1ヶ月後に迫っている。恥ずかしながら、まだ私は市議会を傍聴したことがない。まずは議場に行って、勉強会でさんざん聞いている議会の働きぶりを、この目で見てこようと思う。幸い、今の私には時間もある。パソコン、ビデオ、デジカメを携え、自転車に乗り、各地の議会行脚も行ってみたいと思っている。
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「予算を どう乗り切るか」
   北海道旭川市・山城えりこ


 議員活動がスタートして9ヶ月、わくわくする期待感と共に真っ暗な中でのジェットコースターに乗っているような、先の見えない不安感も否めない毎日でした。
 その不安な部分を解決の方向へ導いてくださったのが、今回の「む・しネット」の勉強会でした。
 勉強会は当日の数日前の課題提出から始まり、課題をどのように分かりやすく簡潔にまとめられるかもサブテーマになっており、丁寧な対応に感心しました。
 多くの人にわかりやすく思いを伝えることこそ議員の基本であることを、課題を通して学ぶことができました。これは質疑においても通じることであり、熱中するあまりの独りよがりや自分の目標が的確であるかの判断の甘さを知らされた思いでした。
 コースがどこでどう曲がり、上り、下るのか、コースが何たるものか、何のためのコース作りなのかを知り、法律を頼りに進むことができることを、改めて確認できたことも安心感につながりました。
 エネルギーを出し切った9月の決算議会では、調査・質疑を無我夢中で1ヶ月間繰り返し、閉会後の脱力感をまともに自覚してしまいました。
 そんな下り坂の気力を回復するまもなく常任委員会、12月議会、更に1月常任委員会と質疑を続け、息切れしたままで予算審議に掛かれるか・・・身も心も限界だっただけに、ともまささん・みどりさんの予算や課題の一般質問に対しての厳しいご指摘、参加者の取り組み、意見を新鮮な感覚で受け入れることができました。 
 ありがたいことに旭川市議会は少数会派が3分の1と多く、無所属議員の権利もほぼ同等に認められています。その点においては他の市民派議員の皆さんより悩みの量は少ないのでしょうが、いつ足をすくわれるかわからないという状況に関しては同じ立場で、他の参加者の熱心な活動・取り組みに触発されたことも大きな収穫でした。
 私自身、自分を守るためには新人であっても新人を通してはいけない、プロであることを認めてもらわなければと自分に言い聞かせ進んできました。
 しかしながら、こと予算に関しては的確な審議ができるか、今でも不安でいっぱいです。 途方もなく大きなうねりのあるコースをどう分析し乗り切ることができるか。
 今回のともまささん、みどりさんから頂いたたくさんの情報・エネルギーを基に、少なくとも乗せられていた立場から脱皮し、コースに挑み、醍醐味を楽しめる立場をめざしたいものです。
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  参加する勉強会だからこそ
      東京都八丈町・奥山幸子


 今回のテーマは「予算」です。8月の決算の勉強会には出られませんでしたが、これで決算と予算という議会の重要議案をひととおり学ぶことになるのです。ですから、今回はぜひにと参加しました。
 昨年12月議会前に、講師の知正さんに八丈町の決算書を郵送して精査していただきました。この結果と11月勉強会の成果を12月議会の一般質問と決算質疑にいかそうと思いました。追及の仕方を含め質問の仕方は確実にうまくなったと思います(??)。

 とはいっても、講師から見たらまだまだと思われるかもしれませんが。また質問の方法も工夫しました。聞いている方が飽きないようユーモアも交えて適度な長さに、を目標にしました。「質問は短く簡潔に、再質問はしつこく、再々質問は鋭く相手を追い詰める」などと自らのモットーを念頭に臨みました。ヒアリングも十分してあったので、答弁に対しても余裕をもって対応できました。
 議員になった当初は、ただ熱意があれば要望は実現できるものと思い込み、勇み足になっていました。なにしろ初議会にはヒアリングなしで臨んだのですから、その無謀さは今考えると冷や汗がでます。予習を十分した上で作戦を練ることがいかに大事かということは、講師おふたりのご指摘の通りです。
 さて今回の勉強会。はじめの1分間スピーチ。参加者の話しはみな印象深くて上手だったと思います。さすが市民派議員。議員になる動機も戦い方も活動内容もユニークで面白い。「予算」については、まだわからない部分もありましたが予算というもののおよそのイメージが描けたかな、という感じ。
 「一般質問」の宿題は、2分で要点を説明し、質問する要領を学ぶというものでしたが、これがなかなか難しいのです。講師の知正さんとみどりさんから、「前おきが長い」「質問の仕方や追及が甘い」「何を獲得しようとしているのか不明」などの指摘がありました。私への指摘も含めて納得できるものばかりでした。また、取り上げたテーマが重なることなく、しかも同じ価値観・視点から取り上げている内容なので、自分の町に置き換えて考える材料になりました。みんな、こんなことを解決しようと努力しているんだな、私もトライしてみようと思うのです。
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 自信につながる勉強会
      兵庫県中町・高澤栄子


 勉強会は、次の議会の自信につながっていきます。とはいうものの、その時は「これでバッチリや!」と思っていても、帰ってきたとたん、「あれどうやったかな」と、さっきの自信が半分ほどにしぼんでしまい、知正さんやみどりさんに電話をかけて、助けを求める羽目に陥ることもしばしばですが・・・・。
 けれど、やっぱり、勉強会で次の議会のことを予習し、学習しているってことは、どんな形であれ私のなかに蓄積されていっていることは間違いなし。
 3月議会は、はじめての予算審議です。「よしっ」という意気込みはあるものの、どう臨めばいいのか・・・・。道筋は見えてきました。
 まず、「予算とはなにか?」からはじまり、「予算における議員の役割とはなにか?」 何が目的で、何を獲得するのか。根拠のない予算は許されない等、法律に基づいた講師の話には迫力があります。そして、そのような中で、チラチラと出てくる現場からの声。講師からの一方通行でないところが、この勉強会のよいところです。かいま見る他の自治体の姿に、わが自治体を重ね合わせることにより、また見えてくるものもあります。
 2日目の「一般質問で釣った魚、逃がした魚」のセッションでは、参加者それぞれが課せられた宿題を持ち寄りました。毎回、何らかの形で一般質問の組み立て方やポイント等については、勉強会のなかに組み入れられてはいます。しかし、今回は失敗例あり成功例あり、その途上ありで、参加者のみなさんそれぞれの手法は、とても参考になりました。
 市民派議員は実践あるのみ。住民の満足度、施策の有効性をキーワードに、予算書にどれだけのフセンが付けられるのか。フセンの数が、勉強会の私の成果です。
 今回は、学んだ予算審議の着眼点「適法性のチェック」から、納税組合の報奨金問題について、魚をつりたいと意気込んでいます。
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勉強会がうれしい「自分」
    三重県松阪市・海住恒幸


 日の短かった冬からだんだん春の兆しが感じられるこのごろになると、日の光のまぶしさが全然違ってくる。なんだか、自然のエネルギーが地上に帰ってきたみたいで、わたしはこの季節が年中でいちばん好きだ。
 しかし、いまから1年前は春の統一地方選を控え、ホントに複雑な気持ちだった。そんな折知ったのも、「む・しネット」の勉強会。今回、勉強会に行って、あのころと同じような日の光を木々の間に感じながら、「あれから1年たったんだ」と思えばこれまたホントに不思議な気持ちになる。良い縁だったなあと思う。そう考えると、どんなに厳しい講師の方が待っていようとも、宿題のチェックが厳しかろうとも、この勉強会に行くのは、春の訪れとおんなじくらい、うれしくなる。
 あれ以来、何度、勉強会に行っただろう。5月、8月、11月、そして、1月31日、2月1日のこの回。もし、これに参加していなかったら、どのような議員活動をしていただろう。5月から議員になり、もうすぐ1年になろうとしている。自分の客観的な実力評価をしなければなるまい。
 議案質疑での突っ込み力、一般質問のテーマ性、問題の普遍性、獲得すべき目標への肉迫度合い、そして、その成果は・・・。
 今回の勉強会では、自分の一般質問をどれかひとつ持ち寄り、成功したか失敗したか、失敗したとしたら何が原因かを事前に提出しておく宿題があった。一般質問は6月、9月、12月と毎回やっている。が、成功したと思っているものでもその場限りの成果、言い換えれば、自己満足の域を出るものではない。
 勉強会に参加していると、そのヘンのことを自分に厳しく評価するようになる自分がいる。
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 出すぎた杭は打たれない
     長野県穂高町・小林純子



  私の町では合併に関する住民投票条例の住民請求運動の真っ最中、連日連夜、署名集めに駆けずり回り疲れ気味の私としては「せっかくの勉強会なのに居眠りしてたらみっともないな」と、そんな心配をしながら会場へやってきました。講義が始まってみれば、眠気もすっ飛ぶ濃い内容で、随所に差し挟まれるおふたりからの鋭い指摘は他人事とは思えず、眠くなるどころか頭がだんだん冴えてくるではありませんか・・・。充実の10時間となりました。
 一番の収穫は「出すぎた杭は打たれない」の再確認ができたこと。「出る杭は打たれる」を乗り越えてやってきたつもりが、議会に入ってみれば「出すぎた杭は無視される」雰囲気でメゲそうになっていた私。無視されないためには、「小林さんていい人ね」そう思わせなくちゃと見当違いのことを考えていた私に、喝を入れてもらったような気がします。
 「現状を変えるために市民派議員をやっているのだからきらわれて当然」というみどりさんのことばを改めて噛みしめ、「出すぎた杭は打たれない」の勇気をもって何事にも当たっていこう、私の初心ともいうべきところに立ち返ることができました。
 議場での皮肉やからかいの発言には「ここは議会ですから、個人的なことに関する発言は止めてください」と毅然としてストップをかけることなど具体的に示され、目からウロコ。そして、いつでも正攻法でいこうと思うあまり、的外れなところまで正面突破しようとして、まんまと「相手のペース」にはまっていた自分が見えてきました。
 「相手」が正攻法でないとき、すかさずそれを指摘し、こちらのペースに引き戻すこと、まずはこれを次の3月議会の私の獲得目標の一つとしました。