『む・しの音通信』No.44
(2005年1月22日発行)
特集:11月勉強会報告 「KJ法を体験する」
「KJ法」勉強会報告
(勉強会スタッフ・安立さとみ)
2004年11月14日、「議員と市民の勉強会」のセッション@「KJ法を体験する」では、参加者12名が、A・B・Cの3グループに分かれ、3人のインストラクターのもと、4時間45分にわたって「KJ法」のワークショップを行いました。
それぞれのテーマは、Aグループ(講師:小川まみ)は「市民派議員と市民の関係は?」。Bグループ(講師:小池みつ子)は「一般質問を使ってどう政策実現するか?」。Cグループ(講師:今大地はるみ)は「書きことばで、他者にメッセージをどのように伝えるか?」でした。
「KJ法」ワークショップは、カードづくりに始まり、カード分類、メタカードづくりと各グループループ順調に進みましたが、最後の文章化までは届かず、各自持ち帰りました。その後、グループごとに講師の指導を受けて、全員の文章化が完成したことで、勉強会は終了しました。それぞれの講師に1作品ずつ選んでいただいた「KJ法文章化」を掲載します。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
《Aグループ》
「市民派議員と市民の関係は?」
参加者:安立さとみ・篠原咲子・山根一男・寺町ともまさ
インストラクター:小川まみ
文責:寺町ともまさ
----------------------------------------
1.市民派議員って何?
世の中には、自治体議会の議員からの見返りを期待する市民もいれば、見返りを期待しない市民もいます。いずれにしても、市民による自主的な行政への働きかけということに関しては、市民は興味があることしかしない傾向が強い、ということは確かなようです。
また、自治体の職員は、公僕とはいえ、職場を離れれば市民です。この点は自治体の非常勤職員と位置付けられている議員も同じで「議員」にも私生活があります。
そういう制約のある現状の中で、市民の願いを実現し、市民の暮らしを守るためには有能かつ行動力のあるパイプ役が不可欠です。
ところで、世の中には「モノを配る議員」がたくさんいます。しかし、市民派議員はモノを配りません。世の中には、「ドブ板こそ政治家の使命」と考える議員がたくさんいます。しかし、市民派議員はドブ板には興味がありません。
こんなことから、「いったい市民派議員って何?」との声も聴こえてきます。そこで、考えを進めてみます。
2.市民派議員と市民の関係
市民に、より多くの情報を発信する市民派議員は、町の期待を集めます。だから、市民と平場の関係にある市民派議員は町で買い物をしていても、知らない人から声をかけられます。そればかりか、いろいろと頼まれます。市民派議員は市民の声をよく聞くのです。
また、市民派議員は個別の課題をかかえた市民活動をしてきた人が多いので、「市民運動とつながる市民派議員」という現状も共通しています。それゆえ、市民派議員はまちの接着剤です。
他方で、市民派議員は、市民の声援や期待に助けられることも少なくありませんから、「持ちつ持たれつの市民派議員」ともいえます。
もちろん、時には、市民とずれる市民派議員もいます。だから、市民派議員は常に市民の声をきく必要があるのです。
市民の声をきくとともに、みずからの判断で、的確な情報を発信する市民派議員は、市民とのつながりが固まります。
3.市民派議員の選挙は読めない
ところで、市民派議員は、その理念として、カネ、カンバン、カバンを持ちません。つまり「3K」と縁がありません。しかも、市民派議員は利益誘導しません。だから、市民派議員になろうとする人は、お金をかけず、すべて自分たちの手作りの選挙を進めることになりますので、その選挙はとても大変です。
とはいえ、ニュースをまちじゅうにばらまく市民派議員は、性別を問わず幅広い世代、かつ、いろいろな範囲の不特定の多くの市民にさまざまな期待をいだかせます。その結果として、たくさんのニュースをばらまく市民派議員は3Kや個別利益と縁がなくても選挙をクリアできます。このように、「特定できない支持者でもつ」、つまり、隠れ支持者でもつ市民派議員が多いのも特徴です。
このように、大事な選挙が隠れ支持者によって支えられているケースが多いので、たいていの市民派議員の選挙はいつも「霧の中」なのです。
4.市民派議員をふやしたい
市民に的確な情報を発信するためにも、市民とずれないためにも、隠れ支持者とつながり続けるためにも、市民派議員は常に学ぶ必要があります。何より、市民に貢献するために、学ぶべし市民派議員。
市民派議員はしっかり学ぶことで、やる気満々の市民派議員となり、「ひとりでも活動する市民派議員」となります。もちろん、順風満帆、楽なことばかりではありません。
「やる気満々なこと」や「ひとりでも活動すること」などの反面として、市民派議員は、他の同僚議員からひがまれて、「いじめの対象、市民派議員」と称される現実に遭遇することがあるのもまた事実です。時として、懲罰やワナもあります。それを軽々と越え、巧みにかわしていくためにも、学ぶべし市民派議員。
多くの市民派議員は、それにもめげす、市民を守る市民派議員として日々、奮闘しているのです。だから、市民は、遠慮なく、市民派議員を使いたおせ!
とはいえ、市民派議員は、市民に使いたおされないためも、いっそう学ぶべし。
市民派議員と市民との関係において、市民は、市民派議員のその活動にふれて市民派議員をふやしたいと思う人たちが広がっています。市民派議員自身も、市民のために、より有意義な成果を得るために、市民派議員をふやしたいのです。
----------------------------------------
《Bグループ》
「一般質問を使ってどう政策実現するか?」
参加者:熊谷祐子・倉知幸子・呉羽真弓・田島公子
インストラクター:小池みつ子
文責:呉羽真弓
----------------------------------------
1.議員の日常生活が大切
議員は日常の生活の中にあるさまざまな事柄について、足でかせぎながら幅広い分野において問題意識をもつことが要求されます。そして、その意識をもとに、先進地を調べたり、法的な根拠と照らし合わせるなどを通して、いろいろな角度から問題意識を絞り込んでいきます。
2.市民の声を聞く
顕在化してきた問題については、当事者に聞き、その思いを確認したり、まったくそのようなことに関心のない他人の反応を見ることなどもしながら、政策として自分が取り上げるか否かを見極めていく必要があります。
3.実現が難しくても一般質問で取り上げる
それゆえ、実現不可能に感じるものであっても、新しい政策で難しいと感じたとしても、取り上げることが必要だと思ったものについては、回答を引き出すための努力を惜しまず進めていくことがツールを持っている議員の責務でもあると思います。
4.回答を引き出すための方法
いったん自分が取り上げようと思った政策については、種々の工夫を重ねるべきです。まず、常にテーマをはっきりと意識しておくことは大切です。また、不必要な摩擦を避けるための方策もわすれずに。たとえば、職員を動かす工夫をとりながら、実現できそうなテーマから取り上げ、こちらが呈示しなくても相手から引き出すなどです。じっさいに質問する際には、正しい情報のもとで、棒読みにならないよう話し言葉にも工夫しながら、筋道を立てて質問をし、実現しますといわせるように相手を追い込んでいくよう工夫すべきです。
5.再質問は難しい
そのようにいろいろ工夫しても、じっさいに質問するとなると、自分の力不足に直面します。相手の答弁に瞬時に切り返す再質問は、その仕方によって答弁が変わりますが、それがなかなか難しいのです。
6.議会改革が必要
また、議会として一般質問の形式が問題である場合もあります。たとえば、「一括質問・一括答弁」の方式は、聞いている側も質問している側にもわかりにくく、議会答弁自体が形式的に進められているような活気のない議会になります。そのような問題については、改革が必要です。
7.他人の政策に無関心な他の議員
しかしながら、実際は他人の政策に無関心な議員がいたり、質問するのは同じ議員に偏っていたりと議会を変えようという意識からは、到底程遠い議員も存在するのが現状です。
他の議員の意識が低いことや、本気で議会改革の必要性を感じる議員ばかりではないため、ここでも難しい状況に直面することになります。
8.逃げるな行政
質問した後の行政の答弁は、というと、財政難で難しいといわれたり、「検討します」といって逃げられたり、反対派の議員ということで受け入れがたい返答をされたり、やる気がなかったり、決まったレールの上しか走らなかったりで逃げの姿勢が取られることが多いのです。
9.みんなに知らせる
これらの議会の状況は、今まであまり表に出ることはありませんでした。そのことが、住民を無関心へと追いやっていたわけです。市民派議員はこれらの議会の情報をすべて、住民へ報告し、政策が市民に見えにくい状況を打ち破っていくことができる議員なのです。
---------------------------------------
《Cグループ》
「書きことばで、他者にメッセージをどう伝えるか?」
参加者:甘利てる代・小林純子・鈴木至彦・中村史子
インストラクター:今大地はるみ
文責:甘利てる代
---------------------------------------
<疑問>
書きことばと話しことばの違いは何でしょうか。どっちが上だと思いますか。文字を使うと何かが伝わるのだろうか。疑問だ。
<話しことばもいろいろ>
議員のことばは口先だけと思っている人もいます。話しことばはしゃべりすぎます。いくらでもしゃベることができるし、次から次へとイメージはふくらんでいきます。だからどうしても冗漫に話しがちです。確かにしゃべりすぎたり、散漫になっていく話しことばは、耳障りであるという側面もあるのですが、時に美しいと感じさせることばもあります。話しことばもいろいろだなあ。
<読みたい人、書きたい人>
書きたい人は伝えたい「何か」があるから書きます。そしてそれを読みたいと思っている人がいます。書きたい人は読み手の立場になって書こうとします。読んでくれる人に思いが届くように書こうとします。時には書いたら他人に読んでもらって、素直に感想を聞き、それを反映しようとしている人もいます。
<書き手の現状>
書きことばで「何か」を伝えようとしている人々の現状はどうでしょうか。すんなり書けているのだろうか。たとえば議員になったからレポートなどで報告しようとする時、急に書く立場になった自分にとまどってしまうことがあります。書くことに気後れしてしまうのです。正確に書こうとして緊張して書けなかったりすることがあります。書くことは手間がかかるし、それをめんどうだと考えたりもともあります。伝えたいことはそんなに難しいことではないはずなのに、書けないのは勉強不足だと思うことがあります。これが書き手の現状です。
<単なるテクニック編>
うまく書くためにどんな技術が必要なのでしょうか。書く時、伝えたいものを明確にするためにキーポイントを探します。他者との違いも書きたいです。書く際には、レポートなのか感想なのかを確認してから書き始めます。文章は吟味しながら、分かりやすいことばで、漢字とカタカナがポイントです。ダラダラと書くと主張が薄れてしまうので、文章は短めにバランスよく書きます。でもこれって、単なるテクニック編じゃあないのかな。
<むだな書きことば>
気をつけたいのは、いらない書きことばがあることです。しゃべりことばと同じように、思いつくままにどんどん書いていくとテーマからずれていくことがあります。要注意です。
<読み手の関心をひく>
書くときは、読み手が楽しく、おもしろいと興味を持ってもらえるように書きたいものです。批判も入れながら書いていきます。議員レポートだからって、政治の話だけじゃあつまらないから、いつも読み手を意識しながら、読み手の関心を引くように書きます。
<ことばのイメージ>
書きことばは硬いイメージがあります。そこでやさしいことばを使って書くと、どうしても軽くとらえられがちです。
<分かりやすい文章はなあに?>
読み手の関心を引くように書きたいけれど、難しい文章がいいとは思えません。小学生の文章は分かりやすいし、一方で高学歴と言われる人の文章は難しいことばの羅列で分からないことも多いです。ただ、専門家の書く文章は説得力がありますから、正確な情報は伝わるということです。
<私を伝える>
じゃあなぜ書くのかといえば、私を伝えたいからです。ことばを使って「私が感じていること」を伝えたいのです。些細な出来事を織り交ぜながら書きます。日々感じていることを伝えたいのです。だから書きます。
<ことばの力>
書いた文章には使命があります。たった一言のことばでも、人の心を打ち、変える力を持ちます。ことばの力は大きい。
<ことばでなくても伝えられる>
確かに書きことばには力があります。でも、ことばでなくても伝えられることもたくさんあります。私たちは、ことばを使うことができるがゆえに、ことばに頼りすぎてはいませんか。そんな反すうをしながら、書きことばで私を発信するときは、率直に、謙虚に、それでいてパワフルに書きたいものです。それが私らしいことだから。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
−会計より−
2004年度は、新入会員が5名、退会者が2名あり、現在の会員は58名(市民会員45名、議員会員13名)です。
今年度も残すところ2カ月となりましたが、会費の未納者が10名ほどみえます。年会費3000円のほとんどが月1回発行している通信の経費です。「む・しネット」の活動は、みなさんの会費で成り立っています。
「む・しネット」は、退会の場合も本人の意志表示が必要で、会費未納がすぐに退会とはなりません。次号の通信には、会員への意志確認書を同封しますので、かならず継続か退会かの意志表示をしてください。あわせて2005年度会費の早期納入にもご協力くださますようお願いします。
(会計・小川まみ)
−編集後記−
あす23日は岐阜県知事選の投票日。知事後継者はもちろん、どの候補者もぱっとしない。
そんななか「〈改革〉の技術 鳥取県知事・片山善博の挑戦」(田中成之 著/岩波書店/1800円)が、改革の「正」の部分も「負」の部分も含めておもしろい。「役所と議会が本来の役割を果たすこと」を「改革」の基本とするのは市民派の手法と似ている。
「その先はどうなるの」「あるべき自治体の姿は?」という人には、自分で考えろ、と言いたいね。
ところで、わたしも『地方自治職員研修』2月号の特集 「自治体議会の処方せん」に「だれが議会を変えるのか?」という原稿を依頼されて書いた。なにを書いたかは次号に載せるからお楽しみに。今年もよろしく。 (みどり)