『む・しの音通信』No.48(2005.6.18発行)
「M&T企画/自主講座」の報告
「M&T企画/自主講座」が始まった
東京都八王子市・甘利てる代
「M&T企画/自主講座〜候補者・市民派議員・政治を変えたい人のための講座」(連続4回)の第1回が、5月7日(土)13時〜20時に岐阜市内で開催された。
この講座は ’07統一自治体選挙を視野に入れつつ、再選を目指す人、立候補を考えている人、かつ政治にコミットしたい市民にも門戸を開けた画期的なものだ。講師は寺町みどりさん&寺町知正さん。二人とも「市民派」の選挙と活動を貫いてきた実践者でもある。
そのノウハウと情報を伝えるための連続講座は、少人数の参加者と講師が作りあげる「オーダーメイド」(みどりさん談)である。この稀代のプログラムを体験する参加者は9人。分刻みのタイムスケジュールは、脳が思考回路をフル稼働することを余儀なくされる。まさに息つく間もないほどの緊張感である。
《セッション@》は「私の選挙&市民活動
」。参加者が自分の選挙や市民活動を報告し、講師のコメント、ディスカッションへと続く。それぞれの選挙を瞬時に分析し、評価する講師のことばは鋭い。「市民派と名乗ることは容易だ。たたかわずして市民派と名乗る候補者も多い。しかし、市民派とは実践を積み重ねて始めてなれるもの」と言い切る。
《セッションA》「市民型選挙で当選する」では、市民型選挙とは何かを徹底的に探った。講師は従来型選挙と市民型選挙の違い、メッセージをどう届けるかなど、選挙を「変える」ための手法を明らかにしていく。圧巻は、一目で分かる「私の選挙の分析」。自分の選挙をグラフ化した参加者は、今後につなぐ羅針盤を得たように驚嘆した。
《セッションB》は「市民派議員の基本」を再認した。「自治とは?」「市民とは?」「市民派議員とは?」。講師から矢継ぎ早に質問が続く。いよいよこの日の核心に迫ってきた。「これまで誰もやらなかった政策に取り組む。波紋を恐れない。何よりも自分の考えで動くことができるのが市民派議員」と講師。目指す道筋が見えてきたのか、大きくうなずく参加者。この講座は「自分で自分を問う講座」でもある。次回は8月6日(土)。
「M&T企画」参加者アンケート
報告/文責・寺町みどり
「M&T企画/自主講座」はわたしが「企画、担当、講師」とひとり3役をこなしている。第一回終了後、次につなげるために、9人の参加者にアンケートを実施した。リクエストしたのは、セッションごとのテーマに沿
って、それぞれ「よかった点、インパクトがあった点→その理由」「難しかったところ→その理由」。届いたアンケートは力作ぞろい。スペースの都合で全文を紹介できないのは残念だが、抜粋して掲載することで、「M&T企画/自主講座」の事後報告としたい。
《セッション@》「私の選挙&市民活動」
インパクトがあったところ n その理由。
◆街頭演説を500回実践した話。市民に直接メッセージを届けることは市民型選挙でなければできないことを知った n 発表ごとに講師のアドバイスがあったことで、市民に向け自分を表に出すこと、とメッセージの発信の必要性がわかった。
◆「選挙の勝因」について話したことが違っていたところ n 勝因は人それぞれとは思っていたが、自分の思いの伝え方に違いがはっきり出ていたのは印象に残った。
難しかったところnその理由
◆プレゼンテーションの原稿を、そのまま読まないように言われ呆然とした。マイクを持つと、用意したペーパーを持っていても頭が「白紙」になることを身をもって体験した。 n 頭の中で考えたことを言語化し、伝えたい人に言葉で伝えることがこんなにも困難な作業であったということを痛感した。
◆自分をプレゼンテーションすること n プレゼン自体を認識していなかった。事前に連絡されていた言葉を見過ごしていたため、宿題を読むつもりで臨み、対応できなかった。
◆事前に原稿を作っていたにもかかわらず、伝えたいことを、話し言葉で決められた時間内に聞き手にわかりやすく正確に伝えることが難しかった n 3分で話せるように、時間を計り原稿を読んできたが、実際に人前でマイクを握り、原稿を見ないで話すことの訓練が、まだ足りないからだと思った。
◆3分間で聞く人に印象を残すような話をすることの難しさを実感した n 当初、指定された字数の原稿を完成させることに気を取られプレゼンであることを忘れていた。じっさいに話し始めると意外なほど3分間は短かった。原稿の作成に時間がかかり、リハーサルを一度もできなかったのが痛かった。
◆自分の勝因について発表した点 n 選挙ではやるべきことが十分できないまま投票日を迎えたという印象が強く、自分の活動がどれほど票になったのか分からなかった。
よかった点 n その理由
◇他人のプレゼンを聞くことで、マイクの持ち方、視線の向け方など3分で演説する手法の見本を見ることができた n 適切なコメントや体験談、参加者の意見を通して、自分の演説や他者の演説を客観的に見られたため。
◇個々の取り組みを聞き、自分の選挙を客観的に振り返ることができた。問題点・今後の課題が見えてきたように思う n 講師のアドバイスが具体的で的確であったことで、自分の選挙と重ね合わせることができた。
◇参加者それぞれが勝因としてあげた事例
n 選挙で勝つためには、具体的にどんな活動をすればよいのか参考になったから。
◇選挙の本番に向けてやらなければならないことが明確になり整理できた n 人前で失敗して悔しい思いをしたことがよかった。悔しさを忘れないうちにリベンジの策を練りたい。
◇ディスカッションが興味深かった n これから始めるべき選挙の準備のヒントをもらえた。また、近年の新人候補者の傾向についての話も初めて聞いた。
◇リーフレットから市民派議員かどうかを読み取ることができた n 他人のリーフレットを比較、分析したことにより、書き言葉で市民派議員を伝えられているかを視点として加えることができたため。
◇選挙の街頭演説の手法 n 街頭演説はうるさいというイメージが勝っていた。内容の点検が不可欠だということを再認識した。
◇スピーカーの音が小さいと肝心な政策が有権者に届かない。連呼はうるさがられるが政策は聞いてもらえる n 「話している時にだれに目線を向けているか」という講師の言葉は、自分を振り返り、日常の活動にも言えることだと参考になった。
◇「選挙の運動や選挙公約の提示で議員は育つ」の言葉が選挙に向き合う勇気をくれた n この一言で選挙が議員にとっていかに必要であるかを理解できた。選挙に対する認識を変えてくれた。
◇「自分から投げかけなければ返ってこない」という講師の言葉に、まず自分がアクションを起こさなければ何も動かないとわかった n 行動する前に結果を予測して行動に出ないでいる自分の姿が見えた。
《セッション2》「市民型選挙で当選する」
インパクトが強かったところ n その理由
◆「市民型選挙とは、候補者から市民に直接、メッセージを届ける選挙である」という講師の言葉 n 市民全部が、私の伝えたい相手である以上、言葉でメッセージを伝えることができていなければ、目指す市民型選挙も形にならないと思った。
◆「市民型選挙といっても、実はカンバンを持っている人が多い」という講師の指摘は鋭いと感じた。逆に支持母体がなくて、たった一人でも、市民に政策をダイレクトに届けることができるとして、「分母が大きいと考えればいい」という言葉に開眼の思いがした
n 自分がこれまでやってきた選挙は、はたして政策を届けることにどこまでこだわったのかと振り返ったため。
◆「私の選挙の分析」は衝撃的。分析図を見ることで、反省点、弱点がしっかり自分の中に入ってきた。当選後きちんと振り返ることもなく、現在の活動にのみ目をむけていたようだ。自分の選挙の実態を認識することができ今後の課題、方向を考えるきっかけをいただいた n 図式化することで、自分の選挙の事後評価を一目で確認でき、いかに自分の選挙が不十分であったかを認識した。次の選挙に向け客観的に見直し、早めに対策を考慮しなければいけなかったことが分かった。
◆6つの要素のグラフを作って、自分の選挙準備の完成度が視覚的に分かったのが、とても印象深い n 今まで見たこともないもの。直感的に自分に必要な対策を把握できて、すばらしい。
◆自分の選挙に対する分析と、分析表の項目に落とすことが難しかった n なぜなら、自分の選挙に対する分析が甘いため。
よかった点→その理由
◇市民型選挙に必要不可欠な6つのパーツを円グラフに記入したこと n グラフを作成することで、できていなかったところがわかり、次の選挙では、どこを強化すればよいかが一目瞭然になった。選挙でも事後評価をきちんとすることが、次につなげるために、必要不可欠であることを学んだ。
◇レーダーチャートの使い方を教わったこと n 6つの要素の達成度を図に書き入れたので、自分の現状を相対的に評価できるようになった。
◇グラフで各自の選挙が数字や面であぶり出されて非常に解りやすかったし、自己反省になった n 自分は選挙をしていないので皆さんの経験が新鮮だった。「地縁血縁を離れるのが市民型選挙」だと理解できた。
◇選挙に勝つには、総合力が必要だということがよく分かった。また自分には何が足りないのかも分かった n 自分ではペーパーをたくさん配った点を評価していたが、配った枚数と労力で評価しただけで、全体からみるとまったく少なかった。逆に勝因とは思わなか
った「切迫感」と「選挙中のメッセージ」が分析の結果よかったので、自分の評価と客観的評価がまったく違うことが分かり良かった。◇『市民派議員になるための本』をより、深く理解することができた n ていねいに本を読んだ上で、読み手の側から著者にちょくせつ質問できたから。
◇市民派議員としての大きな役割である「直接メッセージを届ける」手法が少し整理できた n リーフレットとニュース、そして演説との関係が意見交換の中で明確になった。
《セッション3》「市民派議員の基本」
インパクトが強かったところ n その理由
◆「議員とは何か」など、議員として候補者として、知っていて当然と思えるようなことでも、定義を述べるのは難しいと思い知った n 「知っていて当然」と思ってしまうほど基本的なことは、あえて原点を紐解こうとは思わないからだろう。答えを求めて自治法を開いたときに、「あ、これが議員の仕事の基本(いつでも法律などのルールに立ち戻ること)なんだな」と思った。
◆「議員に求められていることは何か?」の問いに1分間で答えること n 自分の言葉で答えることが難しかった。「議員に求められていることは何か」と「議員とは何か」をごちゃまぜにしていた。
◆「議員として求められていること」を1分で発表したこと n 自分が議員として行うべきことと思っていることが、はたして議員として求められていることなのか自信がなかった。市民とのかかわりが一部の人に限られてきているので、もっと市民の中に入っていく必要があると感じた。
◆「議員に求められていることは何か」という問いに「情報公開・行政のチェック」「弱い人の立場に立つこと」と答えたが、自治法の「住民の福祉の増進をはかること」という基本理念を答えられなかった n 「議員に求められていること」を1分で述べるという問いに対して自分の考えが何か、それをどういう言葉に置き換えて話せばいいか、ということを必死で考えて答える作業に苦しんだ。
◆「無党派・市民派議員とは何か」を自分の言葉で表現すること n 「無党派・市民派議員」として、私のスタンスをどこに置くのか、私は何をしたいのかが私の中で整理できていなかった。答えはたくさんあるにもかかわらず、自分自身の言葉で表現できないのは、私の「無党派・市民派議員」としてのスタンスや政策に対する思い入れが不十分だから。
◆「無党派・市民派であること」を言葉であらわすことの難しさを感じた n 「無党派・市民派」とは自分自身であり一人ひとり違
っていいはず、と講師に助言されたとき、自分をどこに置くか、しっかりとしたスタンスを持つことの重さを実感した。
◆「直接民主主義があれば議会はいらない」という言葉に勇気づけられた n 議会に入って変えるのが議員であれば、はたして市民には変える力があるのかと自問してきたため。
よかった点→その理由
◇「市民派議員は自分のことばで語る」という講師の言葉は説得力があった n 自分がどの位置に立つかということを常に自覚していなければ、議会の雰囲気に飲まれ、声の大きな誰かの代弁をしてしまうから。
◇「自分で考えて腑に落ちてからしか、自分のことばで伝えることはできない」という指摘 nたとえ同じ意味を持つ言葉を聞いてそのまま伝えても、自分の意志が入ってなければ相手に伝わらないという基本が納得できた。
◇基本的な事柄の理解度を深めることができた。「住民」「自治」という言葉の持つ意味が納得できた n 著者本人にていねいに説明していただいたため。
◇個別の疑問を問題化でき、さらに次へとつながること n 本会議と委員会の関係、公選法の説明を受け、わがまちの、わたしのリーフレットの問題点がクリアーとなったこと。
◇「議員は法やルールではたらく」ということを再認識した n 議会改革が思うように実現できておらず、議会のシステムを変えるために個々の議員を説得しして賛同を得ようとしがちになってしまう。そうではなくて、法律は、根拠は、と論理的に説得して、既存のシステムを変えるのであって、個々の議員は変わらないことを肝に銘じることができた。
◇「政策は広い範囲で、濃く出す」の助言をいかした公約を早い時期に作っていく心構えができた n 広く浅くになってしまわないかという不安があったが、ニュースと演説で細部は補足していくとの説明で納得できた。
◇最後が、自分のまちで「おかしい」と思っていることを挙げる、だったのはよかった n この問いの答えを文章化することが宿題になるとのことなので、次回へ維持すべき問題意識・モチベーションを持ち帰ることができる。企画として非常にいい。自分の問題について、時間を見つけて調べてみたくなった。
2)第一回企画、全体についての感想。
◎「事前に本を読む→発表する→参加者で意 見を言う」という能動的な姿勢は、充分理 解していたと思っていたが、さらに一歩進 んだ視点や関わりが要求されるということ を体験できた。この作業のおかげです。
◎進行に無駄がない。時間設定が的確で、集 中力が高められた。
◎発表が多く、緊張感があって楽しかった。 グラフを作るなどの作業が入ったので興味 や集中力が持続したのではないか。
◎自分の考えを延べ、それに対して忌憚のな い批評をもらい、参加者同士で批評する、 講師の的確な指摘で気がつくという勉強会 に、今まで参加したことがなかった。受け 身の聞くだけの講演会がほとんどだったの で驚きの連続だった。真剣勝負だとひしと 感じた。人前で時間内に言うべきことを相 手に伝わるように話すという、勉強会の経 験はなかったので願っていたやり方だった。
◎言葉でメッセージを伝える市民型選挙の大 切さを、改めて認識することができた。実 際にマイクを握り話すことの難しさも痛感 した。市民型選挙を実践することが、すな わち「無党派・市民派議員として働く」た めに必要であることも、理解できた。
◎講師の言葉一つひとつが、しっかり自分の ものとして残しておきたいものばかりだっ た。あまりの内容の濃さに、時間の経過が 非常に短く感じるほど充実した講座だった。
以 上
インフォメーション
6月議会ウォッチ ング
いつも「議員と市民の勉強会」の講師をし ていただいている、岐阜県山県市議の寺町 ともまささんの一般質問を、傍聴に行きま す。あなたも一緒に参加しませんか。
会 場:山県市役所(4階)議場
日 時:6月21日(火)13:30〜
連絡先: 090-4113-8980(高瀬)
−事務局より−
今年度の活動方針について、6月4日のスタッフ会で話し合ったことをお知らせします。 事業や活動は、「やりたい人が、やりたい企画を自主プロジェクトでおこなう」ことを基本とします。昨年までは、運営スタッフが企画して参加者を募るという方法でやってきましたが、負担が大きかったので、今年度は、会員参加型に変えることにしました。当然ですが、やりたい人がいない企画は、今まで継続してきた事業であっても、自然消滅します。
自主プロジェクトは、基本的に、会場費は「む・しネット」が負担。その他経費は、独立採算です。なにか「自主プロジェクト」をやりたい人は、プロジェクトスタッフとして、スタッフ会に企画案を提出してください。
やってみたいけれどやり方が分からない方は、事務局までお問い合わせください。
【運営スタッフの紹介】
甘利てるよ(通信)/小川まみ(会計)/ 今大地はるみ(自主企画)/高瀬芳(自主 企画)/寺町みどり(通信および事務局) /新田幸子(通信・自主企画)
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●第2回「M&T企画/自主講座」
と き:8月6日(土)13時〜20時
ところ:ばるるプラザぎふ(JR岐阜駅西)
講 師:寺町みどり&ともまさ
テーマ《法律やルールを使ってたたかう》
@ 公職選挙法の基本と概念
A「議会」と「議員」を理解する
B 公選法を使いたおす
お問い合せは、090-3566-2281(みどり)まで。
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●夏季特別企画〜わかりたい人のための〜
「決算」総ざらえ
と き:8月7日(日)9時〜14時
会 場:ハートフルスクエアG中研修室
講 師:寺町みどり&ともまさ
対 象:「む・しネット」会員
参加費:1万円
申込み締切:6月30日(木)
申込み方法:参加を希望される人は、
tel/fax 0581-22-4989(みどり)まで。
編集後記
通信スタッフ初仕事。現在の仕事の延長線上とはいえ、時間が足りない。
能力以上のことを受けてしまったと反省。ギブアップ宣言をしたいのが本音だ。
8ページの通信に、想像以上に手間ひまかけて作っていたことも分かった。
私の「できる範囲で」は意外に狭かった。かかわり方を再考したい。(てるよ)
一昨日に続いて最高裁で勝訴が確定した。
いずれも「情報非公開取消訴訟」。判決確定で、情報公開は確実にすすむ。
全国に与える影響も大きい。うれしい一日だった。
通信スタッフも増えてよかった。(みどり)