『む・しの音通信』No.53
2006年3月3日発行


「む・しネット」2006年度企画


 2月16日にスタッフ会を開催し、次年度の活動と事業案について話し合いました。
 今年は、統一自治体選挙の前年でもあり、市民派議員をふやす活動に力を入れようということになり、5月に「公開講座」、7月に前宮城県知事の浅野史郎さんを招いてのシンポジウムを企画しました。以下に次年度企画(詳細はこれから)をお知らせします。 
 

「む・しネット」公開講座
「勝てる選挙〜市民派議員を増やそう」

とき:5月13日(土)13:30〜16:30
ところ:ウィルあいち 特別会議室
講師:寺町ともまさ&みどり

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シンポジウム「政治を市民の手に!」
講演会&パネルディスカッション
基調講演:浅野史郎さん(前宮城県知事)
 パネル:浅野さん+市民派議員と市民

とき:7月8日(土)13時〜16時 
ところ:名古屋市女性会館 ホール
参加費:1000円の予定(どなたでも参加できます)
主催「む・しネット」/共催「自治ネット」

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「M&T企画/選挙講座」スキルアップ編
 ●第1回  5月13日(土)17:00〜20:00 
 ●第2回  7月 8日(土)17:00〜20:00 
 ●第3回  8月12日(土)13:00〜20:00 
 ●第4回  9月 9日(土)13:00〜20:00 
 ●第5回10月 7日(土)13:00〜20:00 
 講 師:寺町みどり&ともまさ

会 場:ウイルあいち(名古屋市・宿泊可)を予定(7/8以外)。
対 象:無党派・市民派の議員・市民に限定。
参 加:全回通しでの参加を原則とする。
    要申し込み(単発希望は要相談)
参加費:会員1万円/1日(会員外2万円)

★翌日曜日は希望者対象の「オプション」講座。
個別課題をアドバイス&ディスカッション。
講 師:寺町みどり&ともまさ。

●申し込みおよび問い合わせは、みどりまで。
 参加を希望される方は、早めにご連絡ください
(前年度参加者も申し込みが必要です)。
「む・しネット」会員以外で、初参加の方は、所定の「誓約書」の提出が必要です。

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★会員継続のお願い★

 会員の皆さんには、「会員継続」の確認書と振替用紙を同封しました。
「む・しネット」は会費収入と事業収入、カンパで活動しています。
ぜひ継続をお願いします。
今回、非会員の方にも振替用紙を同封しました。会員になっていただければうれしいです。
カンパも大歓迎。

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★「運営スタッフ」大募集

 「む・しネット」のスタッフは自任制です。
運営スタッフの任期は今年4月から来年3月末まで。
「運営スタッフ」をやりたい方、関心のある方は、事務局までご連絡ください。
 また、シンポジウム開催のための「プロジェクトスタッフ」も広く募ります。
スタッフを引き受けていただける方もご連絡ください。
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「M&T企画/自主講座」1年目を終えて
−みどり&ともまさの本音トーク−

−1年目をふりかえって−

M−
1年間、ごくろうさまでした。今回の通信は「M&T企画」の総集編ですが、参加者の 皆さんの報告を読んでどう思いますか?

T−どの人も与えられたワクのなかで、よく表現できている(これも講座の成果かなぁ)。 それぞれの人なりに、必要なところを受け止めた。自分にとって、ここが必要だ、というところが分かってもらえたのだと思う。ふた りでやる1年かがりの選挙講座は4〜5ラウ ンド目になるが、今回は参加者がより身につくようにと、いろいろ考えた。たとえば、以前から蓄えたノウハウや℃送ソに加えて、チャートを考えたり、模擬投票をしてみたり工夫した。つくるほうもおもしろかったね。

M−参加者には好評だったようね。いままでは選挙講座を1年前にやっていたのに、今回、2年企画でやりたいと思ったのは、選挙の直前の年にやっていては準備が間にあわないと経験的にわかってきたから。

T−というより、同じことをふた回りやらないと身につかない。それと自治体合併で選挙がバラついてきていることもある。この1年は、統一選2年前で、プレとはいえ、いままでよりも早くノウハウを身につけてほしいと思って、講座にのぞんだ。

M−去年のいまごろ、2年計画でやりたいから、とあなたと組んでこの企画をはじめたよね。その理由は、前にひと通りやってみて、講座 に出て話を聞くだけでは、じっさいの行動になかなかつながらないと思ったから。1年目には基本的な手法をワークショップ形式で経 験してもらい、2年目には、候補者が必要な時期に、必要な情報を提供しようと考えた。

−2年目の講座に向けて−

M−
1年間やってみて、3カ月おきだと間のびするし、参加者も忘れてしまうみたいなので(笑)集中的にやったほうがよいと思った。2年目は、夏から秋まで月一回にする予定。
T−ひとを集めることを考えたら、選挙に近いほうがいい。準備のことを考えたら、早く終わったほうがいい。ということから、夏から 秋にかけての集中講座はいいと思う。
M−で、2年目はなにをしましょう。

T−基本のワクはつくるけれど、参加者の顔をみないと分からないんじゃないかな?

M−まあ今年もそうだったもんね。連続講座なんだけど、毎回、参加者が確定してから内容を組んだ。文字どおり、参加者のニーズに合 わせた手づくりの講座だった。だからこそ、参加者が「腑におちた」「身についた」と感 じてくれたのだと思う。間をあけずにやって、実践につなげるという意味もあるよね。

T−
夏から秋までに、ふたまわり目をやって、冬に集まって、お互いに進み具合の点検をして、リフレッシュして4月にのぞむ、かな。

M−
選挙がズレてる人がいるので、近い選挙の人や、大きなまちなど、選挙の進み具合や熟度によって、急がないといけない人に、実践 的に個別対応することも必要だよね。

−候補者に伝えたいこと−

M−
前回2003年に向けての選挙講座のとき に、講座には出たけれど、聞いただけで何から手をつけていいのか分からなくて、実践につながらなかった人がいた。その反省から、今回はより密着型というか、伴走型にした。走るのは候補者本人なんだけど、それを確実にサポートしていこうという意識が、わたしはより強くなった。せっかく選挙に出るなら、 当選して市民派議員としてちゃんとはたらいてほしいし、講座を実践に生かしてほしい。

T−講座でやったことは、すべてやる必要はないけれど、ある程度はやらないといけない。いままでいろんな選挙を見て、選挙にのぞんでいる本人(候補者)には、何ができていて、何ができていないのかが、よく見えないものだということが分かった。だから、この前の2月の講座では、まだ1年も前なんだけど、「リーフレットはいつからどのくらい配るのか」「街頭演説は何回するのか」「仲間は何人いるのか」など、具体的に「選挙の準備チェック表」を書いてもらった。

M−この「選挙チェック表」が課題で届いて、「えっ、まだ何も考えていない」と、リクエストの内容が書けなくて困り果てた人が少なからずいた。そういういう人には、「いまから考えはじめてください」とアドバイスした。「一つひとつの項目を見て、考えて、全項目に何らかの答えを入れてください」「この項目は最低限、選挙には必要なことです」と。「講師側の意図は、記入した通りにやってくださいということではなく、あなたが一年後の選挙にどうのぞむのかを、具体的にイメー ジして、シミュレーションしてもらうためです」と説明したら、皆さんナットクして書いてきた。ところで、選挙の経験者(当事者)として、これからの人に伝えたいことは?

T−自分の選挙を何回もやってみて、これから出る人に言いたいことは、自分の主張や政策、姿勢や意気込みを、有権者に伝えることが大切なんだ、ということをわかってほしい。

M−
意気込みを伝える、って具体的にはどういうこと? 「ことば」ってことなの?

T−ペーパーの中身はもちろんだけど、回数も、量も。選挙本番になれば、演説で、議員になってやりたいこと、やる気をいかに確実に伝えるか、それがいちばん大事だと思う。

M−
わたしは、どんな選挙をしたか、がどんな議員になるか、を決めると思う。

T−
これから初めて選挙にのぞむ人で考えると、自分の考えをあらわし、伝えること。しかも、より多くの人に伝えることをすると、当選してからその通りの議員としてのはたらきができる。たとえば、議会での発言とか、スジを通すとか、おかしいことはおかしいと言うとか。それは、ちゃんと自分の考え、主張を持って選挙を実践した人にしかできないと思う。選挙をすることで、議員が育つ。

M−選挙と議員の仕事は地つづきだってことよね。ペーパーを出せない人には、技術的な問題と、もう一つ、ペーパーに書くことがない、という悩みがよくある。演説で話したいことがないのも同じ。そういう人に聞きたいのは、市民に伝えたいこと、訴えたいことがなくて、じゃあどうして議員になりたいの、ってこと。 議員になってやりたいことがなくて、当選するためのノウハウだけ身につけたって、当選はするかもしれないけど、議員として4年間はたらけないよってね。政策もなくて、口から出まかせの選挙をしたって、そもそも言ってることに責任も根拠もないんだから、口 から出まかせの議員になるだけでしょ。きびしいことをいうようだけど、そういう意味でも、選挙と議員は不可分だよね。

−参加者をふやすために−

T−
ところで、せっかく講座をやっても、選挙に出ようと思っている人に、選挙講座をやってるって情報が伝わってないんじゃないかなあ。

M−他にはないオリジナルな講座だと自負してるんだけど、たしかに、もったいないね。どうしたらもっとたくさんの人に伝わるんだろう。わたしも『市民派議員になるための本』を書いたし、本を読んで立候補したという話はよく聞くんだけど、本だけでは伝え切れていないところが多い。本には、かんじんな、実践的なスキルや、≠フ情報はほとんど書いてないから、じっさいどんな選挙をしてるんだろうって気になる。本がボロボロになるまで読んで、本だけで当選した、という人に出会うと、わたしは正直、すごいなあ、って感心しちゃうよ(笑)。選挙講座では自分の本をテキストに使ってるから(ほんとよくできた本で・笑)、ちゃんと読んでほしいんだけど、その上で、講座に出てもらえればわたしたちの手持ちのノウハウやスキルはすべて伝えるわけだから、確実に力がついて当選に近づく、と思うんだけど、どう思う?

T−
それはそうでしょ。そのためにやってるんだから。市民派議員を増やしたいのなら、参 加者を増やすための工夫がもっと必要だね。

M−講座もやっと折り返し地点、次年度はバージョンアップ編で盛りだくさんな内容になり そうだけど、これを読んで「M&T企画」に参加したくなるようなPRをしてください。

T−講座に出てちゃんとやれば当選します!

M−
5月の公開講座は、ズバリ「勝てる選挙−市民派議員をふやそう!」。講師はみどり& ともまさ。みなさん、ぜひご参加ください。

T−7月の目玉のシンポは浅野史郎さんにお願いしてるとこ。OKの返事がくるといいね。

   
(2006.2.27 寺町ともまさ/みどり談)


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「M&T企画/自主講座」に参加して
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使いたおすのはわたし   
長野県下諏訪町・青木利子

 2005年5月の第1回から4回の講座を受講し終わって獲得したことは、「次の選挙に立候補して市民型選挙に挑戦するという意識」をはっきりと持ったことだ。
 振り返ってみると、「む・しネット」の会員になって一年が過ぎた。『市民派議員になるための本』(寺町みどり著・学陽書房)を読んで、自分が市民派議員として、しっかり働いているか疑問に思い、勉強をしたいと会員になった。
 はじめて講座に参加したわたしは、事前に出される課題をこなせなかったり、講座後の通信の原稿が書けなかったり、と苦しいことばかりだった。それでも講師のみどりさんとともまささんから「課題をこなすことが次へつながる」と励ましをもらって、必死で挑戦した一年だった。
 第1回目の講座は、「選挙に当選する人、しない人」。「市民型選挙」だったと思いこんでいた前回のわたしの選挙は、実は「従来型選挙」だったとわかった。「お金を使わない女性だけの選挙」であったにすぎず、「市民型選挙」に必須のメッセージもリーフレットも、わずかな量しか発信していなかった。
 わたしの選挙についての認識も「市民型選挙は個人から個人に候補者がメッセージを届ける選挙」(『市民派議員になるための本』)とはほど遠く、有権者の1票を「数」としてとらえていた。
 第2回のテーマは、「法律やルールを使ってたたかう」。じっさいに自分のポスターやリーフレットを参加者全員で見ながら、「公職選挙法」に照らして、どこが問題かを具体的に指摘されたので納得できた。これまで公選法は「こわい」と思っていたが、公選法を理解すれば「こわくない」し、使いたおして最大限に利用することが選挙のコツだとわかった。「公選法」をよく理解して味方にすればいいのだ。
 第3回の「基本は『政策』と『公約』」がいちばん難しかった。講座の1ヶ月前に課題が出されたが、期限がきても回答ができずに困った。講座を受けて「行政のサービスやさまざまな事業が政策」だと再確認できた。  「政策は住民の生活のなかにある」「政策は市民をしあわせにするためにある」から、「何のために議員になったのか」「スタンスはどこにおいているのか」がもっとも重要だと肝に銘じた。
 第4回、最後の講座のテーマは「じっさいにメッセージをどうやって届けるか」。これまでの総ざらえとして、講座の中で3分の演説を実践した。事前の練習がまったく役に立たなかったことは衝撃だった。事前に街頭演説文を考えていたが、じっさいにマイクをもって立ったとき、頭が真っ白になった。思ってもみなかったことばが出てきて、自分で自分にあきれた。何を言ったかも覚えていなかった。「3分間で自分の政策を自分のことばで、有権者に届くように話す」には、「自分のことばで自分が何をしたいのかをもっていなければ言えない」と胸に刻んだ。
 連続講座を通して特に印象に残ったのは、毎回たくさんの資料が用意されていたことだ。事前に参加者から集められた情報が、統一された書式にまとめて提示され、比較がしやすかった。自分が他の人と比べて「どこがどう問題なのか」が一目瞭然で理解できた。書式もグラフや縦軸横軸をつかって毎回工夫されていて視覚から吸収できた。
 4回の講座を終わってから、あらためて『市民派議員になるための本』を読み返した。今までも何度も読んでいたが、今回一字一句をていねいに、4回の講座を振り返りながら読んでみたら、はじめて気がつくことや腑におちることが多く手ごたえを感じた。
 次の選挙を視野に、@定期的なニュースの発行。Aリーフレットや公選はがきの早めの準備。B演説をしっかりやって、いまからどうやるか想定し準備していく。この3つを実践していきたい。
 1年前の第1回の講座で「来月から毎月ニュースをだします」と宣言して1年。いまやらないでどうするという気持ちで、ニュース8,000枚を新聞折り込みした。地元でははじめてのこと、どんな反響があるかドキドキしている。


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「M&T企画/自主講座」全4回を終えて
       愛知県東浦町・神谷明彦

 小さなまちに閉じこもって議員をやっていると、まさに井の中の蛙。井戸の外をのぞこうとしていたそんなとき、講師の一人のともまささんから「M&T企画/自主講座」の案内をもらった。選挙というテーマはさておき、とにかく全国各地から集まる市民や議員たちと一緒に学んでみたくて応募した。
 参加してみて、選挙のノウハウやテクニックもさることながら、議員のあり方や日頃の議員活動にも通じる内容がふんだんに盛り込まれ、自分にとって本当に有意義なものになった。以下、学んだこと、印象に残ったことを書く。
 
●議会の仕事は
 自治体の意思決定をすること。意思決定とは、法を決めることと、予算を決めること。「地方自治法96条」に書いてあるが、議員をしていながら即答できないことに気付かされた。
 自治体の仕事は「住民の福祉の増進」だが、中でも重要なのは、自立、自活できない人のために富を再配分すること。住民票を持った住民に限らず、その自治体で暮らす人の、中でも最も低い人の暮らしに視点を置くべきとの講師の説明には、迫力があり感銘を受けた。
 
●予算を伴わないものは政策とは言えない

 自分が今まで発言し行動してきたことがどれだけ予算に反映されたか? 自問自答すると情けないものがある。言うだけのことを言
っただけではダメ。政策を実現しなければ成果を出したとは言えないことを心がけねばならない。
 
●いかにして市民にメッセージを届けるか
 ひとつは文字によるメッセージ。もうひとつは言葉によるメッセージ(演説)だ。選挙前、選挙中に、どれだけのメッセージを発信したか、自己分析し、他の参加者と比較をする機会があった。自分の議会報告は限られた支持者向けに配っているのみで、数量も頻度も足りないことがわかった。また、演説の回数も比較にならないくらい少なかった。
 
●文字によるメッセージをいかに伝えるか
 前もって参加者が課題として提出した「政策」「スタンス」「プロフィール」「有権者へのメッセージ」を一堂に集め、模擬投票した。これは面白いアイディアだった。やはり自分に何票入るか、気になってしまうし、エキサイトする。
 限られた字数で自分を表現するのは結構難しい。プロフィールの中に人柄や温かみを盛り込めるか。政策は魅力的か。偏っていないか。わかり易い言葉に置き換えられているか。まんべんなく有権者に関心を持ってもらえるように、政策分野のバランスも必要だ。
 

●話し言葉によるメッセージ

 最終日には、実際にマイクを持って3分間の選挙演説、そして人気投票。
 「よろしくお願いします」と「がんばります」は禁句、いかにも内容がない。有権者にコンテンツを発信してなんぼの世界。やはり、スタンスと政策をどう訴えていくかがカギになる。3分程度で落ち着いて、わかりやすく語りかけ、聴き手の心をとらえられるようになりたい。
 
●公選法を知っておくこと
 選挙違反をしていては選挙を闘えない。公職選挙法で認められる範囲で、あらゆる手法を駆使して、有権者に自分のスタンスと政策を訴える必要がある。法で禁止されていないこと、他の市町村で認められていることは、どんどん利用すれば良い。
 慣習にこだわらず、新しい手法を開発して、まじめで楽しい選挙をすればよいのだ。
 
●講師のアイディアと熱意に感服
 「選挙の強み弱み分析レーダーチャート」、政策とスタンスをまとめた文書を競う模擬投票、街頭演説の人気投票などなど、毎回、新鮮なカリキュラムをひねり出してくる講師のアイディアと熱意には感服。
 とくに、みどりさんは議員であることを離れて、今では、市民派議員を育てることを自分の使命としているように感じた。

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勇気をもらった「M&T企画」
       福井県越前市・安立さとみ

 参加者と講師を前にして緊張でいっぱいの模擬街頭演説で、4回目の「M&T企画」の講座を終えた。1年間全4回の講座に参加することができたが、なぜか毎回終了時には、スポーツを終えた後のような快い疲れに包まれた。違うのは頭の中がこれ以上入れられないほどの飽和状態になっていることである。
 5月の第1回目の講座では「市民型選挙とは何か」「市民派議員とは何か」を考えさせてもらうことで議員の基本を再確認できた。選挙のときだけ市民派議員となる「保守系市民派」を名乗る議員がわたしの周りにもたくさんいるが、彼らとの違いをはっきりさせることができる自信はついたと確信している。
 また参加者が持参したリーフレットの細かいチェックから、政策の出し方、柱のたて方、言葉の使い方から文字の大きさまで学ぶ。特に演説との兼ね合いを学んだことでリーフレットの位置づけを再確認できた。
 8月の2回目では「公職選挙法」をしっかり学んだ。ザル法と言われる公職選挙法であるからこそきちんと理解し、守っていく必要がある。「政治活動」と「選挙運動」の使い分けがいかに大事であるか、また理解して行動するのと知らないで行動するのとでは大きな違いが出ることも分かった。組織を持たない市民派議員だからこそ公選法を理解し、公選法を使い倒せる選挙をしなければいけないのだと再確認した。当日資料として講師から配られた「選挙の進め方」は『市民派議員になるための本』と共に私の「バイブル」として机に並んだ。これからは強い味方として私を助けてくれることであろう。大切にしたい。
 11月の講座では政策を文字としてあらわし、参加者一人ひとりの政策をチェックすることで、選挙における政策の出し方、市民に理解してもらう言葉、市民に届く言葉の選び方など細かい部分までアドバイスを受けた。メッセージにメリハリをつけ、限られたスペースで市民に届くような政策と公約を入れることが大切であることは理解できたが、いざ自分の言葉で文章にしていくと、いかに難しいかを実感した。
 2月の最終の講座では当日に向け「現状確認のための準備チェック表」に必要項目を書き入れたが、一行一行書き込み、自分の現状を把握するたびに選挙に対する切迫感を感じてきた。わたしたちにこの気付きを持たせることも講師の目的の一つであったのではないだろうか。良い機会をもらったと痛感した。
 メインは模擬の街頭演説だ。「実際に市民を前にやるよりずっと楽でしょ」とみどりさんは軽く流したが、講師である二人を前に行うほうがずっと緊張する。実際みんなの前で演説を始めると、自宅で練習したそれらしき言葉はどこかへ飛んでいき、自分の言葉で話すのが精一杯であった。やはり自分のものとして腹に入ったものでなければ市民に届く演説はできないのだと実感。
 選挙に入ってからの選挙カーの回し方から、演説時の細かい言葉使いやマイクの使い方、動作や目線の使い方までアドバイスを受けた。
 最後に、1回目と同じチャートに「私の選挙分析」を書き込んだ。グラフの形がかわったことが、4回受けた講座の成果だと思うと何だか勇気が出てくる。
 目からウロコのような「選挙用ハガキの利用法」から選挙で「できること」と「できないこと」のノウハウまで、驚きの連続のような「M&T企画」であった。
 1回目の講座で「選挙運動と選挙公約で議員が育つ」の言葉をもらった。その時、自分のなかで重くのしかかっていた選挙に対する思いが変わった。4年に一度の選挙で自分を表現し、市民に評価してもらう。どのような評価が下されるのか7月の審判に向けて、動き出す勇気を「M&T企画」でもらった。
 毎日の活動に日々追われ選挙のための動きがとれず焦りが出てきているが、今回の3月議会も、他の議員のように選挙のために手を抜くのではなく、いつものように本気で取り組んでいる。この日々の積み重ねをきっと理解してくれる市民がいることを信じる。議会が終わり次第、選挙に向かっていこう。

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「市民」を極める        
 東京都八王子市・甘利てる代

 一年間で4回の連続講座という学びの期間が終わった。この講座で何を学んだかといえば、「市民」という自分が持つ「武器」を改めて知ったことだ。武器ということばが適切でなければいったい何といおうか。そうだ「市民力」とでもいおうか。
 そもそも、ただの市民がなぜ選挙講座で学ぶのか。明確な理由として、「選挙に出る」といえば分かりやすい。ただ、最初から私には「その気」はなく、これまで自分がかかわってきた選挙手法の点検がしたかったというのが本音だ。これまで何としても女性議員を増やしたい、そんな思いだけで女性候補者を意思決定の場に送ってきた。「出たい」と言った女性たちは当選し議員となった。なかにはそうならなかった女性もいたが・・・。
 講座を重ねるたびに思い知ったのは、私がそれまで実践してきた活動が、実は「市民型選挙」とは「似て非なるもの」であったということだ。
 「無所属・市民派」と言いながら、組織的な動きをしてきた。小さかったが、まぎれもなく組織があった。今だからそのことが分かる。組織的な活動を展開しつつ、「市民派」と連呼することに違和感もなかった。
 疑問符を抱いたのは、‘03統一自治体選挙の活動をしたときだった。「無所属・市民派」と名乗った候補者のなんと多かったことか。当選後、会派に入れてくれと言い出し、政党や会派に所属した議員も少なくなかった。
 いったい(自称)市民派の選挙とはなんだったのか。市民のために働く議員とは誰のこと? 議員に頼らなければ市民はなすすべを持たないのか。市民はそんなに無力なのか。そんな混沌とした思いだった。
 ところが、2003年の秋に「市民派議員アクションフォーラム」に参加した時、そんな疑問をぶっ飛ばしてくれた人がいた。なぜ市民派にこだわることが重要なのか、みどりさんのことばと、市民派政治の方法論に驚いた。この人はすごいノウハウを持っている。そう直感した。
 今回の「M&T企画/自主講座」に参加しながら、市民型選挙のあり方、議会の仕組みや議員の仕事、議会における市民派議員の役割を知ることができて、2003年以来抱いてきた疑問は解けた。その上で市民としてできることがたくさんあるということを知って、夢がふくらんだ。
 3回目の講座の際に、講師のともまささんが、政策実現のために市民と議員はどうアプローチできるか、を表にして示してくれた。そこでは、市民ができないことはたった2つ。「一般質問」と「本会議・委員会での質疑」だけだった。市民は、請願・陳情、情報公開請求、行政訴訟だってできるのだ。今までそんなこと、誰も言ってくれなかった。署名をしても、請願を出しても、その先は議員頼み、それが実情だった。
 これからは、市民力を行使しよう。ただの市民から、「ただものではない市民」になりたいと思った。
 以前私は、初回の講座の意義を「自分で自分を問う講座だ」(『む・しの音通信』48号)と言ったことがある。講座を終えた今、自分を問えたかと自問すれば、できたと答えたい。選挙ノウハウを学んだことよりも、正直これがうれしい。
 講座を記録したノートがある。4回の講座のキーワードを私なりに出してみた。
 「ことばを持つ」。
 これに尽きた。自分のことばを持つことである。
 自分のスタンスを自覚し、思いをことばにする。そのことばは正真正銘、オリジナルなことばでなければならない。市民はごまかせない。あなたが発するメッセージが、本物かどうかをちゃんと聞き分けられる力を持っているということだ。
 1人ひとりのことばが「政策」そのものであり、「よい政策は必ず実現する」と、明快に言い切ってくれた講師からのメッセージが心強い。

「わかりたい人のための自主勉強会」

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〜予算総ざらえ〜
  長野県安曇野市・小林純子

 2年前のいまごろのこと、1年生議員として初めての予算案審議にどう向き合うか、わたしは正直なところよくわからずとまどっていた。そんなとき「む・しネット」から予算の勉強会の案内があり、一も二もなく参加を申し込んだ。講座の冒頭、「予算とはなにか」の問いにわたしは何も答えられず、次々と発言する受講者の姿に圧倒されたものだった。
 それからというもの、予算とは何か、予算の持つ意義や考え方を常に念頭におくようになった。予算審議の実際的な手法についても学び、ヒヤリングの方法や目のつけどころなど少しずつではあるが身につけ実践してきた。
 今回の勉強会は、ハートフルスクエアGで、2月5日(日)の一日講座。題して「わかりたい人のための自主勉強会〜予算総ざらえ」。講師は寺町知正さんとみどりさん。
 「予算に関する講座も回を重ねてきたし、どうすれば皆さんの得るものが多く、レベルが上がるかと思案しています」という知正さんの配慮のもと、受講者に課題が出された。 @予算を増額修正させたい事業や内容、 A予算から削除させたい事業や内容、 B予算に新規に追加させたい事業や内容、 C議会の予算審議のあり方など問題と思うところなど。受講者はそれぞれこの4つの課題を持ち寄り、講師も含め皆で議論する方式で勉強会を進めることになった。
 わたしが課題として取り上げたのは、学校教育環境整備事業(県産材木製机椅子セット購入)現行0円を812万円に増額したいというもの(合併前穂高町の事業計画では812万円だったものが、合併後の予算では0になってしまった)。これについては、「合併においては合併前の事業は引き継ぐのが原則。予算カットになった経過とだれがその意思決定に関わったかを確かめること」とのアドバイスがあった。
 ほかの受講者の課題では、市内の各学校を巡回する移動図書館の提案について、とかく利用率が低いことを想定して相手にされないことが多いが、教育・文化関連の予算では理念を優先して論ずることが大事であること。また、心のケア相談事業に男性向け相談窓口をプラスする要望については、相談員を1人増やす予算を考えるより、むしろ相談に行きづらい男性に向けて「男性の相談も受けていますよ」という広報に予算を付けた方がいいのでは、といったように意見交換が活発になされた。
 合併前の自治体の首長を新市のアドバイザーに据えて謝礼を支払っているという問題については、講師から「住民監査請求で追求する手もある」という力強い「激励」とも取れる話もあった。
 あっという間に3時間あまりが過ぎ、講座の最終章では「議会の予算審議のあり方」でさらに盛り上がった。議員の基本的な権利である「発言」や「傍聴」を制限されたり、議長の議事進行が公平に行われていないなどの実態が浮かび上がってきたからである。市民派議員としては放っておけない。
 たとえば、予算を審議する常任委員会が同時開催になっているため、自分が所属しない委員会を傍聴しようにもできないという。実はそういった議会は少なくないのだが、同時開催の不当性をたった一人で訴え続け、別日開催に変えさせた体験者が受講者のなかにいたので、具体的な打開策を聞かせてもらうこともできた。
 講座全体を通して、同じような取り組みが進んでいるところから参考事例が聞けたり、似たような悩みを抱え困っているようなケースでは、話をすることで励まされた。そしてなにより、講師の的確なアドバイスにより俄然やる気が出てくる、そんな実践的かつ実戦的な予算勉強会であった。
 「予算は3月議会だけではない、年間通して見ていくこと。一般質問や質疑のあとは、それらが政策や予算にどう反映されるかチェ
ックを怠らないこと」という講師の締めのことばを改めて肝に銘じ、講座を終了した。


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今年度の「自主勉強会」で獲得したもの
   三重県桑名市・小川まみ

 私は「議員と市民の勉強会」でひと通り議員に必要なことを学んできたが、なかなか自分の抱える問題に当てはめられずに、得た知識を活かすことができなかった。いつも場当たり的に予算書、決算書と格闘してきた。
 今年度は、参加者それぞれがどこでつまずいているのか、その原因を解決するためのより実践的な内容だったと思う。

●5月7日:テーマ「一般質問の事後評価か ら問題を意識化する」
 「政策評価」に関する本を読んで、自分の一般質問を評価し、それをお互いに批評し合った。今まで自分でしてきた評価が甘く不充分だったことが良く分かった。いくら一般質問の作り方ばかり勉強しても、中身は自分で入れるしかない。自分の失敗は自分自身が一番よく分かっているのに、私は無意識のうちに避けていたのかもしれない。

●8月7日:テーマ「あなたの決算審査のど こが問題か」
 講師からは決算だからといって議会審査だけでなく、情報公開請求や監査請求の必要性が説かれ、「何でもいいから自分の関心のある事業一つを最初から最後まですべて情報公開請求してみること」と言われた。予算の細かい内訳を聞いたぐらいで、計画段階から事業完了まですべてをながめたことはなかった。そこで、合併前から旧多度町が進めていた「温泉計画」をさっそく情報公開請求した。

●11月6日:テーマ「政策実現の手法を実 践的に身につける」
 まず始めに調査の企画書を出す宿題に対して、私の手元には8月の勉強会後に「温泉計画」に関して情報公開請求した資料しかなく、温泉計画をストップさせるために何をどう調査したらよいのか戸惑った。今までちゃんと調べていなかったのかがはっきりした。
 「旅行に行くのにルートを調べるでしょ。地図を持っていれば、行き止まりになっても別のルートを探せる。手持ちの資料は多いほうがよい」と講師に言われた。私は地図も持たずに出発していたから、途中で道に迷ったり、道がないのにまっすぐ進んで崖から落ちたりしたんだと妙に納得してしまった。

●2月5日:テーマ「予算総ざらえ」
 予算から削除させたい事業や新規に追加させたい事業など個別の事例を持ち寄って講師と参加者全員で議論をした。事例に即した話し合いだったので、具体的でよりわかりやすかった。お互いの経験やノウハウを共有することが問題解決の近道だと思った。

●私にとって今年の収穫
 11月の勉強会で学んだことを、そのまま12月議会で一般質問した。温泉計画の白紙撤回を求めたが、答弁は「早期建設を目指す」だった。しかし、「18年度予算」には事業実施のための予算はついていなかった。安心はできないけれど、事業を止められる自信が持てた。
 今まで何度も講座で「決算を次年度予算に活かす」と耳にしていたけれど、私には「予算」「決算」「一般質問」はまったく別物でバラバラだった。それが今年、私の中で有機的につながった。「腑に落ちた」のだ。今までは、一つの事業を単年度でこま切れにしか見ていなかったのが、「温泉計画」を足かけ3年分情報公開請求したことで、ひとつの事業の進む様子から、予算、決算をとらえ直すことができた。
 また、情報公開請求した資料の中には、部内の会議録もあり意思形成過程や事業の進捗具合が確認できた。これからは、担当者に口頭で進捗状況を確認するだけでなく、きちんと意思形成過程から文書で確認する必要があると痛切に感じた。住民監査請求も勉強しただけでは何もならないので是非やってみようと思う。今まで見えなかったものが見えてくるかもしれない。
 基本の勉強と手法は学んだのだから、あとは実践あるのみ!

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市民と議員/公募型の視察研修
〜杉並区・文京区・我孫子市〜を企画して
          無党派・市民派 自治体議員と市民のネットワーク・海住恒幸


 わたしの所属する松阪市議会の過去の視察先を調べたら、なぜか北海道、九州が多かった。施策や事業、施設の「先進事例」を調査するのが視察目的となることが多いが、なぜ北海道、九州にばかり集中するのだろう。議員になって間もなく3年。この間、何度か、常任委員会の視察を経験し、本当に必要な視察とは何かを模索していたところへ、みずから企画するチャンスが巡ってきた(主催は、「無党派・市民派 自治体議員と市民のネットワーク(自治ネット)」)。
 インターネット環境が充実した今日、知りたいと思う全国の自治体の政策的資料は自宅にいながらあらかた入手できる。しかし、逆を言えば、それだけ多くの外的刺激に接しているので、なおさら他を知りたくなるのも事実。気になる自治体の政策決定のプロセスやそれに関わる組織や人、首長のリーダーシップ。直接、首長に会って話を聴いてみたい。
 1泊2日という日程で依頼をかけたのが、千葉県の我孫子市(市長・担当課)と、東京の杉並区(区長・担当課)、文京区(担当課)の3自治体だった。自治体選びで基準にしたのは、「分権時代の自治体経営」をテーマに、▼首長の強いリーダーシップが見られる▼独自色のある改革に取り組んでいる▼政策自治体として改革プランを示している−−などの点だ。
 首長が申し出に応じてくれるだろうか、また、応じてもらったとしても日程の調整がつくか心配したが、ラッキーだった。我孫子市の福嶋浩彦市長、杉並区の山田宏区長からは1〜3日以内に「お受けします」という返事が届き、財政健全化計画と条例についての聴き取りを担当部局にお願いした文京区からも職員の即断即決でオーケーが出た。
 その時点では自治ネットの会員向けの移動式勉強会のつもりだったが、メンバーに限定するより広く公開した方が良いと判断し、いくつかのメーリングリストやブログなどを使
って参加者を公募することにした。夜の意見
交換も活発にしたいという意図もあった。
 結果、三重、愛知、岐阜、埼玉、東京から男女14人がそろい、女性は5人を占めた。内訳は議員8人(女性3人)、市民4人(女性2人)、それに2人の男性の自治体職員。いわゆる、議員の"視察"とはまったく異なる構成で、実のある意見交換ができる条件が出来上がった。
 行政改革などに成果を上げている杉並区の山田区長は、横浜市の中田宏市長と同様、新しい保守主義に類型され、中央政府に対する自治体政府の立場を主張している。区長就任5年で500人の職員を削減(10年で1000人を目標)し、民間委託を大幅に増やすことで「小さな政府」を目指す一方、住民にはスピーディーな苦情処理を図るなどして行政サービスの品質向上を図る。
 「あらゆる決定に市民感覚を」という我孫子市の福嶋市長は、質疑を含め、市長自身が2時間以上ほとばしる思いを語った。福嶋市長は自治体経営の中で徹底して市民自治の可能性を追求し、市民自治の担い手となる人づくり、市民参加の量質の向上、透明性、条例づくり、市民債(市民から借金)の発行による資金調達などの制度面の斬新さなど、きわめて多くの点に特徴を見ることができる。
 さらに、市民の自治能力を高めるために「市民同士が合意をつくっていく能力」が必要と語り、「市民参加の先」を展望した。
 「我孫子市はハコ物を造らないのでほとんど借金がありません。皆さんをお迎えしている市役所(の会議室)もこのようにプレハブですから」。市長の話を聴いている間も、「ドンドン」と人の歩く音や椅子を動かす音が聞こえた。
 3自治体とも、「小さな政府(役所)」を目指している点で共通している。が、その手法においてそれぞれの自治体と首長のカラーがあった。それ自体、「分権時代の自治体経営」をテーマにしたことの意義である。しかし印象に残ったのは、福嶋市長の「大きな公共と小さな政府」という言葉だ。

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だれが意思決定したのか?
〜市民参加型事業の問題点〜
       岐阜県山県市・寺町みどり

 東京都国分寺市が、国の「人権推進事業」に上野千鶴子さんの講演会を市民参加で企画したところ、東京都教育庁が、上野さんが「ジェンダー・フリー」という用語を使うのではないかと、国分寺市に圧力をかけ、中止になったという事件を、わたしは、1月10日の毎日新聞夕刊で知った(新聞記事は、前号のP8に掲載)。
 読んですぐ、ひどい話だと思った。上野さんが「当事者主権」講演会で、「ジェンダー・フリーを使うかも」というのは、根拠のない言いがかりである(ブログに検証記事を書いた) 
 この事業は文科省の「人権教育推進のための調査研究事業」で、「国→都道府県→市町村」に再委託する形のもの。根拠法は「人権教育・啓発推進法」。この法律を元に基本計画、実施要綱が定められている。法や要綱の趣旨にてらしあわせても、上野さんが講師として不適任と判断される理由はまったくない。
 この事件に関しては、当事者の上野さんが、「いかなる手続きによって意思決定に至ったか、その責任者は誰か」「上野が講師として不適切であるとの判断を、いかなる根拠にもとづいて下したか」と、「公開質問状」(1.13付)と「督促状」(2.7付)を送付し、その中で問題点をあげて、詳細に反論し批判している。
 上野さんの質問状に対して届いた、都と市の言い分には食いちがいがある。都教委は「都は問い合わせをしただけ」で「市が考慮して実施しないことにした」とし、いっぽうの市教委は「意思決定権者は教育長」と認めながら「都の意向から事業実施が困難と判断」しただけで、「(上野さんが)不適切とは判断していない」と応えている。疑問なのは、「都の意向」だけで、法に照らしあわせてどうなのか、実施要綱の趣旨に反しているのか、という判断をどちらもしていないことだ。さらに、事業は市民のために実施するはずなのに、市民に対しての配慮も視点も、ぬけおちている。この回答を読んで、都教委がより悪いと思った人は多いと思うが、わたしはべつのことを考えていた。
 この市民参加型事業をいちばん実現したかったのは、きっと市民だ。しかし事業は中止となり、結果として市民が不利益を受けた。事業の意思決定権者は市教育長。市教委が「都の意向」ではなく、「市民の意志」を尊重すれば、事業の目的と趣旨を精査して、市の判断に間違いはないと、都に対抗することもできたはずだ。  市民と行政が対立関係ではない時代にはいったいま、同種の問題は「市民参加」が(むしろ)すすんでいる自治体で日常的に起きている。市民と行政の「協働」がすすんだまちの友人の市民派議員と意見交換した。彼女はいう。
 「市民参加の事業が、最終段階になって、市民の意見が通らないという理不尽なことが起きたとき、市民の側に情報がないとはじめて気づく。職員は『市民参画』と口ではいいなから、都合のよい情報と事実だけしか市民に知らせていなかったということ。情報は、さいしょから『チョイス』され『粉飾』されている。行政は立場を守るために、土壇場で市民を裏切る」。
 責任と権限は不可分である。行政と市民が対等に仕事をし信頼関係を結ぶには、なれあいになるのではなく、市民の側も、自分たちの権利と、責任と権限がなんなのか、誰が最終的に意思決定するのかを、あらかじめ確認し、事業の仕組みと市民の位置づけを知っておくことが必要だ。そして行政が、市民に不利な選択や判断をすることを、見のがさないことだ。
 もとに戻れば、もしこの問題が、手続き的には、事業が立ち上がる意思形成過程(意思決定前)のできごととして、うやむやに葬り去られるなら、市民は使い捨てにされたということになる。この「市民に不利益なルール」こそが、市民参加型事業の、手続き的瑕疵(かし)である、とわたしは思う。
 市民が、今後も行政をパートナーとして「市民参加」「協働」をすすめたいなら、市教委に非を認め謝罪させることだ。市民の損害を回復するためには、いまからでも、「人権講座」と「当事者主権」講演会を実現させることである。
 不利益や損害を受けたとき、市民自身が、現場で行政に対峙することでしか状況は変わない。 行政や制度も前よりはずっとよくなった。  「情報公開」や市民の使えるノウハウを駆使して事実関係を精査し、いつ、どこで、だれが市民に不利益な意思決定をしたのかを明らかにすることが、「市民自治」につながると思う。

(この事件の詳細については、「みどりの一期一会」
http://blog.goo.ne.jp/midorinet002/ を参照のこと)
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インフォメーション

私も入りたい「老人ホーム」
(NHK出版生活人新書/777円)
高齢者ケアの達人たち
(CLC刊/甘利てる代著/1900円+税)

「ホームの職員が迷惑だから来るなって言うの」。
 友人が泣きながら電話をしてきた。彼女は『私も入りたい「老人ホーム」』(NHK出版生活人新書)の7章に登場している。友人は特別養護老人ホームに入所している寝たきりになった祖母のもとに、毎日、昼と夜に通っている。しゃべることも、食べることもできなくなった祖母に、この人は「目に話しかけて」心を通わせている。施設の理不尽は許せない。
 大きな施設で流れ作業の「もの」のように扱われるお年寄りの姿をなくしたい。そんな思いで10年ほど宅老所(小規模多機能ホーム)の取材を重ねてきた。制度も前例も何もない時代に、「目の前に困っている人がいるから」と、小規模で多機能なお年寄りの居場所を作ってきた人たちがいる。前著と『高齢者ケアの達人たち』(CLC刊)では、現場で高齢者に向かい合う宅老所の創設者にスポットを当てた。
 今年4月から介護保険で施行される「小規模多機能型居宅介護」は、紛れもなく宅老所創設者たちがモデルだ。私は彼らの実践は、日本で生まれたオリジナルなケアであると思っている。 ある実践者が言った「ケアは哲学だ」と。
 私もそう思う。 (本の著者:甘利てる代)

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編集後記
通信発行まぎわに、講師依頼を担当していた 知正さんの元に、
浅野史郎さんからOKの返事が届いた(嬉)。
たった4人でこんな盛り だくさんな事業案を決めちゃうなんて、
やっ ぱ、「む・しネット」だね。   (みどり)