ふたつの勝利宣言
   福井県敦賀市・今大地はるみ

 「福井県生活学習館」の書籍の排除というかたちで、姿をあらわした福井県でのジェンダーバッシングは、劇的な終焉となった。
 20名による原告団で、書籍の公開を求めて提訴することを表明した直後に、福井県が突如として、153冊の書籍の公開をしてきたのである。しかも排除させた当の本人が、福井県に公開するようにと申し入れたためという、いわくつきである。
 8月26日、福井県民会館でジェンダーバッシングに対する抗議の集会を開催。その席上、まぼろしとなってしまった原告団代表の上野千鶴子さんは、開口一番「私たちの勝利です」と高らかに宣言した。つづいての、上野さんと信田さよ子さんの「ちづことさよこ『結婚帝国・女の岐れ道』続編トーク」では、会場中が爆笑の渦。笑いと拍手はとぎれることがなかった。
 この日の集会のために奔走してくれた方たちや、原告になってくれた編集者のみなさんも、ジェンダーバッシングに対するそれぞれの思いのたけを熱く語る場面もあり、たたかうおんなたちの熱気が満杯の会場を沸かせた。
 乳がんの手術を受けるために、2日後に入院するわたしにとっては、免疫力がUPしっぱなし! たくさんの元気と勇気と、乳がんに対抗する力が、からだ中いっぱいに満たされてゆく。
 しかし、くだんの福井県男女共同参画推進員K氏が登場すると、空気は一変、総会屋まがいの怒号までが飛び交い、騒然となる一幕もあった。
 結びは会場で賛同者を募り、福井県男女共同参画推進条例20条2に基づき、「苦情申し出」を提出することとなった。この集会の模様は、新聞紙上だけではなく様々な女性誌にも取り上げられた(「みどりの一期一会」 http://blog.goo.ne.jp/midorinet002/ で詳細をどうぞ!)。
 ジェンダーバッシング抗議運動の事例として見習っていただき、全国各地で勝利の女神のほほえむ日が来ることを願ってやまない。4月28日から始まったわたしたちの抗議運動は5ヵ月後、ここまで到達した。
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 勝利の美酒に酔い、温泉でさらなる英気を養ったあと、わたしは朝一の電車で福井の病院へと向かった。今度は、乳がんを克服し、わたし自身の勝利宣言を勝ち取るために!
 病院はなんと!「福井県生活学習館」の目の前。現館長さんともお友だちになれたし、病室のある3階のロビーの窓から、生活学習館を眺め、男女共同参画社会の実現に向けてガンバってね、とエールを送った。
 8月28日と29日は手術前の精密検査。手術は30日の午後2時と決まった。
 マジックで描き込まれた手術する部位を、さっそく携帯のカメラでパチリ。画像を見て思わず吹き出してしまった。乳首を目玉にして、黒々とアイラインを入れたように見える。
 血栓症を防ぐために、白いストッキングをはかされた足は、まるでバレリーナ。手術着に着替えて手術室へむかい、全身麻酔が始ま
った。午後4時に手術が終わったらしい。6時に一度目覚めたが、その後はまた眠りに落ちたり、覚醒したりを繰り返す。
 翌朝はおかゆを食べ、からだを拭いてもらい、歩いて病室へ移動。昼食から普通食になり、午後からはリハビリが始まった。
 医師から説明があり、乳房を全摘出し、転移していたリンパ節からも1個見つかったとのこと。手術は成功したからあとは、がんばってリハビリを受け、腕が上がるようにしましょうといわれた。
 2日目には腕がまっすぐ上がるようになり、痛みもほとんどなく、運動のためにエレベーターを使わず階段を上り下りした。
 術後1週間で抜糸。退院前の説明では、抗がん剤は使わず、当分はホルモン剤の服用のみにするとのこと。2週間の入院で体重が2キロ増加し、抗がん剤の副作用で、アトピーのように荒れていたお肌もツルツルになった。
 鏡にうつる、残った左のおっぱいが可愛く見える。なくなった右の胸は、少しプヨプヨしていてさわるととっても気持ちがいい。なんだかとっても得した気分だ。
 9月議会にも委員会から復帰、最終日には反対討論もやってのけるぐらいに元気になれた。
 ツルツルとプヨプヨのふたつを手にしたわたしの勝利宣言に乾杯!