『む・しの音通信』59号(2007年1月30日発行)

特集:「選挙公営」その後

《リレーエッセイ あしたは晴れ》
選挙の公費負担、再考を
   敦賀市議・今大地はるみ 
 

 今年は選挙の年。敦賀市は県内で唯一、統一地方選で4つの選挙が行われることになる。選挙につきものといえば、まず思い浮かべるのはだれしもお金。今回はそのお金の話である。
各自治体には、公職選挙法に基づいた「選挙運動の公営に関する条例」があり、公費負担でまかなわれるガソリン代やポスター作成費、車の借り上げ料などが、定められている。
ポスター代は印刷会社、ガソリン代は給油所から直接、選挙管理委員会に請求する仕組みになっている。
2003年の敦賀市議選では、37人の立候補者があり、ポスター代で1,243万円、ガソリン代で90万円が公費負担だった。
 昨年の12月議会には、この選挙公営の費用負担の見直しを求める議員提案や一般質問が、東海地方を中心とした市民派・無党派の議員によって数多く出された。
わたしも「ポスター代の上限額の引き下げと、ガソリン代を実費請求にする見直し」の一般質問をした1人である。
 市長答弁は「議会から提案してもらいたい。実費請求が当然だと思う」だった。12月議会では、議員提案での条例の見直しには至らなかったが、3月議会には、ぜひ実現させたいと思っている。
 今や夕張市を引き合いに出すまでもなく、どこの自治体も財政難にあえいでいるのが現状だ。
経費削減が当然の状況のなか、財政のチェックが仕事のひとつである議員みずからが、自分たちの選挙費用の公費負担の見直しを図るのは当然のこと。
当選すれば、市民の大切な税金から多額の報酬を受ける身でもある。
 ぜひみなさんも、自分が支援する議員に、公費負担の費用の見直しを図るように、求めてはどうだろうか。
仲間のひとたちと、議会に「選挙費用の公費負担の見直しを求める請願」を出すという手段もある。
 わたしたちの大切な税金がどんな使われ方をしているのか、わたしたちが選んだ議員がどんな仕事をしているのか、それをチェックするのは、選挙権を持った市民としての責任でもある。
 あなたの1票がまちを変える大きな1票であることを忘れないでほしい。
(2007.1.23 朝日新聞)
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選挙公営の条例を廃止する
   直接請求を開始  岐阜・寺町知正 
 

「選挙公営」は、首長や議員の選挙の時のポスター代、選挙カーの賃貸料やガソリン代、運転手の日当などを負担する制度だ。候補者から請求があったら税金で負担する。都道府県や市では各自治体が条例を制定すれば実施でき、ほとんどの自治体は国の基準額をスライドしている。他方で、公職選挙法は、なぜか、町や村での制度化を認めていない。
全国を見ると、市民の批判もあり、基準の変更や額の引き下げなどの改革が始められている。1999年、栃木県栃木市では選挙ポスター代の水増し請求が見つかり、市で印刷代の相場などを調査し、あいまいな企画費をゼロとし、印刷代のみの「12万円を上限」とした。愛知県内では、額を引き下げたり、方法を改善した自治体もある。
ここ山県市は合併して導入。3年前の市議選は22人の定員に27人が立候補し、25人が利用、交付総額は1000万円を超えた。

《ポスター代は一番問題が多い》 ポスター作成費について、各地の多くの選挙を知る私の経験からは、国や各地の条例の基準額は、相場の3倍ほどとみる。しかもこれは、「高級」なポスターを作った場合の話。
例えば、企画費をゼロにして、単価を1000円程度とするよう条例改正も考えられるし、「入札」のように、ポスター作成の見積書・内訳書を添付させて公正を図ることもできる。
ちなみに、山県市の市議選で、限度額の95%以上の額を請求したのは6人、50%以上の単価で請求したのは計10人だった。

《選挙カーの燃料費は》 選挙カーの燃料費として、条例は1日当たり7350円の上限を規定している。普通車の燃費で計算すると、1日500キロ以上走れる。選挙運動で、1日500キロ以上の走行はあり得ないこと。
選挙期間の最初と最後の走行距離の表示キロ数とその写真を添付させれば公正になる。

《果たして必要な制度か》 市民のほとんどが、ポスター代などが税金で払われているということを知らない。話すと、「自分で選挙に出るのだから自分で払うべき」という意見だ。
山県市は、財政状況が大変厳しく、市民生活にしわ寄せしている。他方で、市長や議員の選挙のあと、「候補者として自分が使った分を税金で出してくれ」とは、あまりにずうずうしく、市民に対して無責任だ。

《市長や他の議員の考えは》 私は、昨年12月議会で一般質問した。市長の答弁の基本は「制度には意義がある」というもの。私以外の議員全員が利用しているので、議員間での相談も成立しそうにない。

《直接民主主義の手法で》 冬休みに考えてみた。今年4月には市長選、来年4月には市議選があり公費負担の局面も来る。私の結論は、向くべきは市民、組むべきは市民。市民の皆さんとともに直接請求を行うことにした。
市民の共通した意志の集まりが、「条例廃止の議案」となり議会で審議される。 
1月15日に手続きを開始。通常は1ヶ月間の署名収集期間。しかし、今年は4月8日に県議選の投票日があることから特例法の規定で、その60日前の2月6日(火)までのわずか20日間(と、開始して初めて知った)。
 署名運動が始まって、署名簿を送ってという連絡が来る一方、満タンになった署名簿を届けてくれる人もいる。それら反応から、ここ山県市では、大きな「世論の広がり」が出てきたことを感じる。状況からして、成算は十分にある。
ローカルな自治の姿の一つを実現したい。
 ※ 直接請求という制度とは
地方自治法第74条で定める条例の制定・改正・廃止の手続きで、受任者が持つ定められた署名簿に有権者が自ら署名して集まった署名簿を提出、首長が議会を召集し、請求された条例案を議会が審議・採決する制度。
有権者の50分の1以上の署名を集めて請求する。署名集めは、市町村では1ヶ月間、都道府県では2ヶ月間。署名簿は、提出から20日以内に「選挙管理委員会による署名簿の審査、効力の決定及び証明」を得て、7日間の「署名簿の縦覧」、その「確定した署名簿をもって市長に条例制定や改廃を請求」する(これを「本請求」という)。首長はこの請求についての意見書を添えて議会に送付、本請求から20日以内に議会を召集し、議会が可決すれば条例は、制定や改廃される。
住民投票条例の制定などでよく利用される。
             (2007.1.16中日新聞記事)

《条例廃止請求の趣旨・本文》 市長や議員の選挙の時のポスター代、選挙カーの賃貸料やガソリン代、運転手の日当などについて、選挙後、候補者から請求があったら税金で負担する制度がある。山県市は2003年(H15年)の合併時に導入した。選挙はがきの経費負担は義務的であるし、有権者に候補者の政策を周知するための選挙公報の頒布の(経費負担の)意義は高く評価されている。しかし、ポスターなどの公営には多様な議論がある。
(1) 市長は、選挙公営の趣旨はお金のかからない選挙を実現するとともに、候補者間の選挙運動の機会均等を図る手段として制度化されているというが、そうであれば町村の選挙では選挙カーやポスターなどの選挙公営を採用できない法制度であることの説明がつかない。
(2) 選挙に出ても、適法かつ適正な政治活動、選挙運動をするなら立候補に必要な総経費は、大都市でなければ何百万円にもならない。お金のかからない選挙を実現することは、候補者が努力すべきことであって、税金で負担することは、選挙経費を減らすことに逆行するだけだ。選挙は、意志を持って立候補するのだから、経費は候補者が自分で出すべきで、贅沢なポスター代などを公費で認めることは筋違いだ。
(3) 過去に、選挙ポスター代の水増し請求が見つかった自治体もある。実際に、制度の趣旨に厳格に従って請求すれば、請求可能な金額は低いといわれる。現在の規定のポスター印刷単価は世の中の実勢価格と合致しておらず、大幅に引き下げる自治体もある。選挙公営は本来の制度の趣旨を逸脱して、高額な選挙経費の単なる一部補填制度だという人もいる。
(4) 山県市では、3年後の2009年(H21年)に財政破綻(可能な基金を崩しても財源が不足すること)の予測が出ている。水道料は一律に5割も引き上げ、保育料も大幅に引き上げるなど、市民の生活全般の負担を大幅に引き上げざるを得ない山県市にとって、「選挙に金がかかるから候補者の経費は税金で負担を」というのは、不合理である。選挙公営を廃止することこそが、市民に対する答えであり、責任である。
(5) 多様性は自治や分権の基本である。財政に余裕のある自治体はともかく、財政の著しく困窮した山県市においては、市民の理解を得られない選挙の候補者の費用を税金で負担するというこの条例は、4月の市長選挙の前に廃止すべきである。 
(請求方法などの資料は、ブログ「てらまち・ねっと」の「07年1月17日」に掲載中)
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選挙公営 〜日進市議会の場合
市民の願いはどこへ?
   愛知県日進市・ごとう尚子 
 

 前回「む・しの音通信」で「選挙公営に注目してください」と呼びかけた。その結果、いくつかの議会での一般質問や議員提案による条例改正の上程が行われた。
 私は日進市議会に、「ポスター代368,290円を246,815円に、ガソリン代1日7,350円を4,200円に引き下げる」条例改正案を提出した。それぞれの数字は、写真や印刷の実勢価格から積算し、かなり余裕を持って設定したものだ。また、愛知県内2市ですでに条例改正がされ、1市で同じ12月議会に改正案が上程されるという情報も入手した。これは追い風になるものと喜んだ。
 上程までは、次の手順で行った。
@ 改正案の精査の時間を確保するため2週間前に議案を提示し、賛成者を募る。A 内容がよくわかる説明書を3回にわたり配布。県内3市での改正内容も情報提供。
 しかし、結果は賛成10:反対14で否決となった。
 当日の議案質疑や反対討論をまとめると反対の理由は次のようなものだ。どれも、反対のための反対理由であり、「公営費用が税金であり、『最小の経費で最大の効果』を求めようとする」ものではないことは明らかだ。
(→それぞれに私のコメントをつけた)
@ 選挙公営は憲法で認められた被選挙権なので、上限を性急に引き下げるべきではない。(共産党)→不必要に高い上限を改正するのに早すぎることがあるはずない。
A ポスター代を引き下げると「新人が不利、現職が有利になる」。例えば「自分は顔で票がとれるような年齢でもないので、写真は古いものをつかったが、新人は顔から知ってもらわないといけない。現職が有利になるのはいけない。議員の身分にかかわる問題だ。(共産党)→現職有利の中で新人が思いっきり闘うのが選挙の鉄則。党内での議論をそのまま日進市議会にもってきたもの。共産党の新人と9期目議員の請求額の差、23.3万円は写真撮影代ということになるが、市民はこれを許容できるのか。
B 議員提案で出す前に、協議会などにかけるべき。(自民・共産)→2000年の地方自治法改正で議員提案のために必要な賛成者数は8分の1から12分の1となった。これは「議会が立法行為を進めるように」という社会の要請。正式な議員提案より協議会での根回しが良いと本会議で発言するとは、市民になんと失礼なことか。
 たいへん残念だったのは、議員提案議案に対して、内容での反論、または修正案の提出などの議員としてすべきことでの議論、提案がなかったことである。
 しかし、その後市民のみなさんが、選挙管理委員会に対して「透明性を高めるための提出書類の整備を求める要望」を1764名の市民の署名を付けて提出された。今後、選挙管理委員会がきちんとした書類を作れば、無駄遣い、水増し請求の抑止力となり、自ずと請求額は下がり、公費の無駄遣いは防ぐことができるはずだ。
『む・しの音通信』59号(2007.1.30発行)
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