『む・しの音通信』59号(2007年1月30日発行)
《エッセイ》
図書撤去に「議員の介入」の新事実か?!
福井「ジェンダー図書排除」究明原告団および有志
事務局・寺町みどり
昨年来、福井県生活学習館から153冊のジェンダー関連図書が排除された、福井「焚書坑儒」事件に取り組んできた。『む・しの音通信』58号は、この事件の特集号だった。 前号では、11月にわたしたちが提出した「男女共同参画施策に関する苦情申出書」に関して届いた知事回答に対し、「福井県知事回答に対する声明」を発表したことまで紹介した。その後審議会テープの「不存在」に「異議申し立て」をしているところである。
12月になって、わたしたちが情報公開請求していた審議会資料一式が全面公開された。そのなかの県の「経過説明」資料は、図書撤去について、いつどこでだれが意思決定をし、撤去作業を、いつだれがどのようにしたのかについての記載は一切ない杜撰なものである。この経過説明資料は、具体性がなく矛盾点も多いもので、説明責任が果たされているとはとうてい言いがたい。
12月末になって、排除本リストを提出した近藤氏が、県が作成した審議会の経過説明文書は虚偽である、図書の排除は「自分の働きかけではなく保守系議員の力によって行われた」とインターネット上で公表した。
もしこれが事実なら、今回の事件は、一市民単独の行為を越えた、行政機関に対する自治体議員の政治介入という、社会的にも政治的にも許されない、重大な事件である。またそのような政治介入を許した福井県および行政職員の責任も重大である。
事態をみすごすことはできないと、きゅうきょ上野さんと呼びかけ人で相談して、1月17日、「福井『ジェンダー図書排除』究明原告団および有志 代表・上野千鶴子」として、西川一誠福井県知事に対し、真相究明と説明責任を求める「ジェンダー図書排除の経緯に関する公開質問状」を送った。質問は7項目。回答期日は、1月31日(水)。県の回答を待って、次の行動を起こしたい。
詳細は「みどりの一期一会:福井「焚書坑儒』事件
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言いわけばかりの人生に
京都府八幡市・外山京子
もしブログ始めなかったら、「む・しネット」にたどりつけませんでした。みなさんの活動を知らないまま、すごしていました。どこかで知っても、遠い世界のことだと感じてただろうと思います。
わたしの植物ブログに、寺町みどりさんがコメントをくださったのは、一昨年の春。そこからつながった「む・しネット」です。袖はすり合わなかったけど、電波の伝播で触れあった貴重な接点。緑の植物がみどりさんとつながり、入会させていただくことになりました。
こんな人々がいるんだなという衝撃、とっても大きかった。
選挙は、投票だけ。結果を見て失望しているだけ。文句言ってるだけ、でした。それから政治を動かすのは、大きな力じゃないと無理だと、考え方が近そうな(ことをアピールしている)政党に投票するだけ、でした。
そうではない、のですね。発信される生の言葉に、生き生きした刺激を受けています。開眼とまではいきませんが、半眼ぐらい目が覚めた気分です。 毎月届く通信は、今、動いている人がいるという実感が伝わってきて晴れ晴れ。我が身のふがいなさを再認識させられて、ちょっと重く、心の痛い通信でもありますが。
ずっと後ろのほうにただ立っているだけですが、応援部隊の一人として加わらせていただけるのは一歩前進かなと思います。通信を読むだけで、なかなか深く理解できないというスローな出遅れ会員ですが、どうぞよろしくお願いします。わたしのような、自分の気持ちを眠らせてきた人間が、むくむくと起き出して、あ、そうだったのかと、自分の中にある疑問が整理できた清々しさを味わえる、そんな方が一人でも増えますように。
最後に、自分の言葉で書くというのは難しいですね。言い訳ばかりで行動しない生き方は、なかなか自分の言葉が出てきません。あふれ出てくる言葉が欲しいなと、しみじみ感じた時間でした。
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2007年に想うこと
愛知県名古屋市・杉戸ひろ子
私がスタッフとしてかかわる愛知県内のDV被害女性支援の民間団体が昨年10周年を迎えた。シェルターや電話相談の利用者にはフィリピンなど外国籍女性も少なくない。
その10年目の夏から秋にかけて、予想もしなかった外国籍女性たちのシェルター入所ラッシュを初めて経験した。何と5組の外国籍母子が途切れることなくシェルターを利用したのだ。その中に、今までかかわったことのない国籍の女性がいた。南米出身のその女性は日系人の夫からの暴力にたえかねて、唯一意思疎通をはかることができる地域の国際交流協会に相談した。「何もしてあげられない。国に帰った方がいい」と言われたという。その後やっとたどりついた関西の電話相談で私たちの会の紹介を受け、シェルター入所となった。スーツケースに詰め込めるだけの荷物と幼い子どもをかかえた彼女を出迎え、スペイン語の通訳を通して今後の方針などひとあたりの話あいをした後、彼女は突然、涙ながらに、「自分と同じような問題をかかえる女性を何人も知っている。下着のままで家を飛び出し、警察に助けをもとめても言葉が通じず夫のもとに戻った女性もいる。いつか自分もその人たちの手助けがしたい」と訴えた。
2004年に施行された改正DV防止法では、外国籍被害女性の救済が明文化された。巷ではDV被害者支援に特化した通訳の養成講座が開かれるようにもなった。DV被害者支援の中で「外国籍」は認知されたかに見えるが、現実にはその法律はおろか、公的な相談窓口があることすら知らない人が圧倒的に多い。そこに何とかたどりつけたとしても、前述のような対応をされる。
今年は、DV防止法の第2次改正が予定されている。「外国籍」については、配偶者暴力相談支援センターでの相談、一時保護などの支援体制の不備や地域間格差の拡大に対し、是正の声があがっている。ひとつひとつのケースから見えてくる問題点を共有し、検討を重ねることで、制度を改めることができればと思う。
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2007年の抱負〜はだしのゲン・タイ語版
愛知県名古屋市・坂東弘美
2001年の冬。北京で、国際放送局タイ語部のチャトナコーンさんと偶然、局のバスで隣り合わせになった。彼女は長崎に1年暮らしたことがあり、「ところてんの歌」という長崎原爆がテーマの絵本をタイ語で翻訳出版したことがあると言う。「じゃ、はだしのゲン」を翻訳してみない?」と提案した私に、彼女は目を輝かせた。
私の金沢の友人で、チェルノブイリ救援にロシア語通訳として尽くした浅妻さんは、現在「プロジェクト・ゲン」の代表。ロシア語版10冊を完訳させた時は、私は局のロシア語部のロシア人たちに知らせた。
2004年8月、プロジェクトの努力が実り、今度は英語版がアメリカで出版されたことをチャトナコーンさんに伝えると、彼女は英語からの翻訳を開始した。そして、この正月明けに、何と<タイ語の「はだしのゲン」6巻分が我が家に届き狂喜した。途中津波の悲劇があり、彼女は歯科医と共に死体の歯形の確認ボランティアなどをしていたし、最近ではバンコック市内でのテロもあり、内心、もう無理かも知れないと心配していた矢先だった。「3月末、国際ブックフェアがバンコックであるので、貴女たちを迎えたいの。その頃までには、第8巻を仕上げて出版できると思うわ。1巻から6巻まで買って、一晩で読み終え、翌朝には第7巻を要求する読者もいるのよ」と彼女は言う。
もちろん行きますとも! 話は進み、石川県の被爆者友の会の西本事務局長もタイへ同行したいとのこと。西本さんは、フィリピンの「平和の女性パートナー」の要請で、この年末にマニラに出かけ、たまたま通訳だったフィリピン大学のマンザノ教授が広島大学20年いた人だったことから、彼にフィリピン語の「ゲン」の翻訳をもちかけた。教授はカリキュラムとして翻訳を取り入れ、学生たちととり組むことにしたそうだ。
3月末、バンコックでタイの読者とどんな平和交流ができるか。市民として人間として世界とつながっている2007年でありたい。
インフォメーション
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統一選直前〜市民型選挙集中セミナー
あなたも「市民派議員」になろう!
〜勝てる選挙「市民型選挙」のノウハウ」
Part2 《告示日から投票日まで》
〜選挙運動の手法〜
日時:2月24日(土)13時〜20時
2月25日(日)9時〜14時まで
会場:ウイルあいち・視聴覚ルーム
【セッション@】 基本編
告示日までに準備すること〜選挙の流れを理
解する/選挙でできること、できないこと〜
公選法上の留意点
【セッションA】 実践編
選挙チームの考え方〜ヒトとモノの動かし方
/当選するために必要な要素〜あなたの選挙
の現状分析
【セッションB】話しことばのメッセージ
選挙本番のメッセージ/選挙カーの具体的な
回し方のコツ/頭演説の基本とスキル
《対象》無党派・市民派の立候補予定者および
そのスタッフ(政党関係者は除く)
《参加費》会員5千円/会員外1万円
(オプション講座は別途1万円)
●参加を希望される方は、寺町みどりまで
電話でお問い合わせください。
◆選挙オプション講座(2月25日・日)
・全2回の「集中セミナー」で、2月のみに
参加される方は、「オプション講座」の
参加を条件とします。
・個別の政治活動、選挙運動で抱えている問
題を、具体的に出していただき解決方法を
個別にアドバイスします。
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無党派・市民派自治体議員と市民のネットワーク
公開フォーラム 「議会を変える!」
●2007年2月10日 午後2時〜4時半
●名古屋都市センター第3、第4会議室
●参加費 無料(カンパ歓迎)
●講師:橋場利勝氏
(全国初「議会基本条例」を制定した北海道栗山町議会議長)
●コメンテーター:岩崎恭典氏
(四日市大学総合政策学部教授。
「我孫子市自治基本条例」策定に座長として関わった。
●内容:自治体議会をどう改革するか/
住民参加型議会も視野に議員と市民が語り合おう
●主催:無党派・市民派 自治体議員と市民の
ネットワーク(略称・自治ネット)
【問い合わせ】自治ネット代表・海住恒幸
(松阪市議会議員)kaiju_t@yahoo.co.jp
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編集後記
・校正に携わっている私は、いつも読者より一足早く原稿を目にすることができる。 今回も、やりかけの仕事を放り出して、力作を読みふけってしまった。それほど魅力的な内容が多かった。(幸)
・「市民型選挙集中セミナー」を開催した1月20日、政党や組織に頼らない草の根選挙で宮崎県知事が誕生した。「選挙が知事を作る」とはいえ当選してからが本番。
セミナー参加者は学んだノウハウを、通信原稿として「公選法に抵触しない」言葉に置き換える課題に四苦八苦。苦労した分、キラリと光る文章になった(みどり)