『む・しの音通信』61号(2007.6.16発行)

「選挙公営」費問題の最前線
   岐阜県山県市・寺町知正&みどり

 県警が市議や県議を詐欺容疑で送検へ
 
 首長や議会議員選挙の際、ポスター代や選挙カー代、ガソリン代、運転手日当などを税金で負担する、いわゆる「選挙公営」制度があります。候補者から請求があったら税金で負担する制度ですが、自治体財政が厳しいことから見直す意見もあります。昨年来、市民派議員の皆さんに、議会で「選挙公営」費の問題を取り上げるよう呼びかけてきました。
 岐阜県山県市では、今年1月に「選挙公営制度・条例廃止の直接請求運動」を開始したところ、3月議会において、議員提案で選挙公営の条例を廃止するという全国初の例となりました。
 さらに、2004年4月に行われた山県市議会議員選挙の「選挙公営」に関して、ポスター代水増し詐欺容疑で複数の市議が警察の事情聴取を受けていることがマスコミ等で報道され、大きな問題になっています。
岐阜県警が全国で初めて、印刷所や議員を捜査し、来月にも詐欺容疑で書類送検する見込みです。それも山県市の22人の議員のうちの5〜6人程度。今春、市議から県議にくら替えし当選した現職県議も含まれています。現金のキックバックの例も報道されています。

 水増し、過剰請求はウラ金作りと同じ
 
 この事件の報道直後から、岐阜県議会自民党会派も所属議員に調査・対応を求め、県選管には修正手続きなど問い合わせがあるようです。マスコミの調査では、岐阜県内の他市でも、露骨と思われる多人数の水増し(瑞浪市)がスクープされています。おそらく、他の市でも程度の差こそあれ同様に思われます。
 選挙公営において、ポスター代の請求の際にハガキや名刺などの印刷費をもぐり込ませるなどの水増しが一部の候補者で行われている、とのウワサは全国的に共通しているので、この「ポスター代水増し詐欺」の問題は、まちがいなく全国の自治体に波及します。
昨年、岐阜県庁ぐるみの長年のウラ金作りが明らかになりましたが、そのウラ金作りの主な方法は、旅費の架空請求=水増し請求です。水増し部分がウラ金でした。「ポスター代水増し詐欺」もまったく同じ手口です。選挙の候補者による自らの選挙費用に充当(他の印刷物の印刷代充当等)するための多額な請求(=ウラ金作り)というしかありません。真実のポスター作成費用の交付は条例上正当ですが、ポスター作成費用を上回って請求し自治体に交付させた部分は、不法行為に基づいて、公金を自治体からだまし取ったものです。

 4月の県議選に対しては「住民監査請求」

 私たちは、4月に行われた県議選の選挙公営のポスター代請求に関して、各候補者と印刷業者との契約書などを情報公開請求し、実態を集計し分析しました。今年3月には2003年のポスター代の「県の過払い分」返還を求める住民監査請求もしています。選挙公営の問題がとりざたされる中、いまだに上限を請求する議員が多いのにはあきれます。とうてい自浄作用は期待できません。
 私たちは6月18日、03年、07年の県議会議員選挙でのポスター代に対して、高額請求した候補者の「相場を著しく上回って請求し交付された公費部分」の相当額の「当事者からの返還の実現」、「知事の返還請求を怠る事実の違法確認」を求めて、県監査委員に住民監査請求をします。(談合や不法行為を原因とする場合など、1年ルールは適用されないとの判例は確定しています)。
 おりしも、この原稿を書いている今、山県市議選候補者5名が水増しを認めて、県庁で謝罪会見をしているニュースが流れています。

(詳細はブログ「てらまち・ねっと」参照のこと)