『む・しの音通信』62号(2007.8.12)


《第2回・議員と市民の勉強会》報告
   三重県桑名市・小川まみ


 7月28日(土)〜29日(日)ウィルあいち(名古屋市)で、「議員と市民の勉強会」を開催した。講師は、寺町みどりさんと寺町知正さん。参加者は議員10名と市民2名。議員は、今年の統一自治体選挙で初当選した新人、2期目と多彩な顔ぶれ。勉強会のテーマは、9月議会に向けて「決算審査を使いこなす〜予算へつなぐ」。

【セッション1】「決算審査を使いこなして予算(政策)に反映させよう」。
 さいしょに「『決算』とは何か」で、自治体財政の流れについて学んだ。「決算は終わったことだからしょうがない」ということではない。予算書の中には自治体の仕事がすべて入っており、政策をお金に表すと「予算」になる。決算で重要なことは、支出だけでなく収入が確保されているか、成果が得られたのかという観点で見ること。「決算」は政策の事後評価である。
 決算を次年度予算に反映させようとすると、9月議会で決算審査をしないと予算編成に間に合わない。3月議会で予算に対して意見をいうだけでなく、予算編成過程でしっかり意見を言うことも大事であることがよくわかった。新年度のスタートは予算だが、「予算のスタートは決算である」。自治体財政の流れは脈々とつながっている。

【セッション2】「議会改革で政策実現を」
 「なぜ、議会改革が必要なのか」は、「私が議会で仕事をしやすくするため」である。
 議会運営の原則は、あくまでも会議規則と委員会条例であり、決して「申し合わせ」ではない。「申し合わせ」の多くは議員が働かなくて済むようにできているので、「従わないこと」が議会改革の一歩である。「議会で議員が働かないことは市民にとっても不利益になる」という講師の一言で、市民だからといって議会改革に無関係というわけにはいかないことに気付かされた。議会に対して市民が目を光らせることも重要である。

【セッション3】「9月議会の一般質問で望む答えを獲得しよう」
 「一般質問とは、自前の論理で相手(行政)を説得すること」で、知らないことを聞いたり、主義主張を述べたりするのではない。
 事前に参加者には、「9月議会でする一般質問について、@テーマ、A動機、B獲得目標、C現状、D根拠となる論点、を一般質問に組み立て、質問項目を書くこと」が課題として出された。初参加の人は課題に慣れていないため、現状と論点が混ざったり、獲得目標と質問項目が合っていなかったりと、本番までの講師との課題のすり合わせに、かなり苦労したようだった。
 一般質問で望む答えを獲得するために必要なことは、「論点整理して主張すること」、「答弁者の立場になって考え直すこと、現場に行って当事者に聞くこと」が重要だということがよく理解できた。
 翌日のオプション講座では、参加者が議会で抱えている問題について、講師のアドバイスとディスカッションで解決の方法を探った。
1泊2日の講座は、一般質問の復習と決算の予習になった。これで9月議会もひと安心だ。



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決算審査はヒヤリングから
   長野県下諏訪町・青木利子


 9月議会を控えた「議員と市民の勉強会」。今までとは違う、政策実現に近づける決算審査をしたいと参加した。
 【セッション@】の総論で講師のみどりさんは、「予算がわからないと決算はわからない」、と「予算の流れ」をしっかり把握することからスタートした。まず、「毎会計年度開始前(3月31日)までに議決を経なければならない」(地方自治法211条)を根拠に、年間の議会活動のプランを、予算に焦点をあてて立てること。自治体の中には12月に決算審査するところもあるが、決算は法律にてらしても、予算編成を見越しても、9月議会が望ましいこと。さらに政策実現を目指し、予算を獲得するためには、6月議会の一般質問が最適な時期であることを再認識できた。
 また、ともまささんを講師にしての各論では、じっさいに「決算審査の前提」である「地方自治法233条」を読んで再確認した。この自治法を読む作業は法の根拠が目で確認できるので腑に落ちる。
 振り返ってみると、決算審査で「入」の税金が納入されているかはチェックしてきたが、「どのような入なのか」といった詳しい内容まで見ていなかったと気がついた。改めて予算は「出」を見ることが主であるが、決算は「入」も見ることができるし、見なければならないという違いが理解できた。
 今回の講座を受けて「職員へのヒヤリング」が重要だとわかった。私は、これまで何回やっても職員へのヒヤリングが苦手だった。できたら書類ですませないものかと逃げ腰でもあった。
 ヒヤリングのコツは、事前に前年度の決算書を1行ずつ読んでいきながら、「目」と「節」にどんな事業があるか前もってチェックしておく。「中身、歴史、経緯、規模、単価、現状、今後」などの項目を頭にいれて質問を準備する。はじめての決算の場合はどれを取りあげたらいいか分からないので「自分が興味のある項目」「市民から言われたこと」を中心に取りかかってみる。また質問を担当課ごとに仕分ける準備をすれば、1日に集中して聞ける。
 さらに注意点として「執行者は都合の良いことは説明し、悪いことは言わない」ので答えたことを鵜呑みにしないこと。わたしの場合は性格から、いままで職員の言うままを受け入れ、鋭いつっこみができなかったという反省を踏まえて職員にヒヤリングしたい。
 また、すぐ役に立つ手法として、決算書を3年分コピーして決算書の同じページに3年分を貼るというテクニックも知った。いままでは決算書の横に前年分の数字をメモするだけだったが、3年間の資料を一目で見ることができれば、比較しやすくヒヤリングや質疑に役立てられそうだ。さっそく今から2年分のコピーを用意しておく。
 また、参加者の事前調査から各自治体の決算審査の違いが比較できたことは収穫だった。同じ自治体でも決算特別委員会を設置するところや、常任委員会で審査するところ、本会議だけのところなどばらつきがあると。また委員会から本会議への報告の形式では報告書だけや口頭報告だけ、その両方とさまざまであった。決算審査は討論でしめくくるが、多くの市は事前通告が必要であることも分かった。下諏訪町の決算審査は特別委員会を設置して、2年任期で1年ごとに一般会計と特別会計にわかれて交代し、全員が決算審査をする方法である。他の自治体では審査に参加できない議員もいるとわかりおどろいた。
 ともまささんはデータを表にし、一目瞭然で違いが分かる資料を用意してくれる。今回も事前の調査結果を1枚の表にまとめてあったので、自分の自治体がどのようであるかがわかり、今後の活動に活かせて嬉しい。こんなインパクトがあるグラフが毎回楽しみでもある。講座で獲得した「ヒヤリングの手法」を使い、9月議会ではその政策がなぜ必要かといった面からも挑戦したい。


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議会改革に向けて      
   愛知県日進市・島村紀代美


 今回参加した「議員と市民の勉強会」は、初議会を体験したあとということで、これまでとはちがった気持ちで臨んだ。議会の現状を自分の目で見て、「これは大変だ。かなり勉強しなければ、議会で働けない」と痛感したからだ。想像以上に「慣例」と「根回し」がまかり通っている世界。この中で、一期目であっても対等に発言していくために必要なことは何か。
 この問いに対して答えを見つけるきっかけになったのが【セッション2】の「議会改革で政策実現を」。講師である寺町みどりさんはまず、「議会改革はなんのためにやるのでしょうか」と問いかける。民主的な議会確立のため? 市民のため? もちろん二次的にはそれも達成目的だが、みどりさんは「わたしが活動しやすい状況を作るため」と説く。このしくみでは充分な質問・質疑ができない。明確な答弁を得られない。討論を深めることができない。自分が議会の中で働きにくいと感じた時が「議会改革」に取り組むべき時であると理解した。
 議会のルールは「会議規則」と「委員会条例」がすべてであり、それ以外の申し合わせは本来必要ない。しかし実際の議会では、「以前からそうなっているから」といったおかしな申し合わせが存在する。「議会改革」の第一歩は「したがわないこと」。みどりさんは、著書である「市民派議員になるための本」の中でも、はっきりと述べている。そして「なぜしたがわないか」と指摘されたら、「なぜやらなければならないのですか。その根拠はどこに書いてあるのですか」ときちんと対応すること。そのために現行のルールを熟知して、違法を示す必要があるのだと確認できた。
 次に、議会事務局についてもまったく同じ姿勢で臨むべきであるという話があった。わたしの中にも当初「議会事務局ならなんでも知っているだろう」という思い込みがあった
が、いろんな場面ですぐ答えが返ってこなかったり、法令を変に歪曲して解釈したりということがあり、自分の中で答えを持って聞きにいくようにしなければと思った。みどりさんからはその場合、必ず根拠となる法令をコピーして持っていくようアドバイスがあった。
 「改革することで風通しがよくなって、市民派議員だけでなく、他の議員もラクになる」という言葉には本当に納得。やりたくても会派のしばりやしがらみのある議員と違って、フリーハンドで働ける市民派議員だからこそ、思い切り議会改革に取り組めるのだろう。議会改革は市民派の「特権」かもしれない。
 【セッション2】のしめくくりは寺町知正さんによる「改革の手法と基本」。これは「法律・規則・ルールを使いこなす」に尽きるということだ。知正さんは「費用弁償」について取り組む場合を例にあげた。「地方自治法第203条」をもとに自分のまちの条例がどうなっているか確認し、その整合性をみるようにしていくのが基本。議員にとって自治法がバイブルであり、議会の現状を限りなく法に近づけていくことが、すなわち「議会改革」なのだ。
 日進市はこれから「自治基本条例」の議会に関する部分として、「議会基本条例」をつくろうとしている。徹底的な議会の情報公開と市民との情報共有。まさにこれまでの慣例で動く閉塞した議会を打破する、画期的な「議会改革」だと思う。ただこれも「地方自治法」第6章の「議会」に関わる部分に忠実に沿うものであり、本来は「当たり前」にどこの自治体でもおこなわれなければならないことだ。
 わたしは【セッション2】を通して、自分のこれからなすべきことがはっきり見えた。これまで「慣例」に寄りかかってきて、自治法による「当たり前」に慣れない議員からは、おそらく相当な抵抗があるだろう。その時に勉強会で習得した「議会改革のための基本」を思い出して、毅然とした姿勢を貫きたい。


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「教員経験を生かす〜現場の実情踏まえた施策を」。
      愛知県日進市議会議員 島村紀代美さん

 今春の統一地方選で初当選を果たすことができました。10年間ほどの教員経験を踏まえ、選挙戦では一貫して子どもの幸せを目指し、日進をふるさととして誇りに思える町にしようと訴えてきました。 5年ほど前からは、小学校教諭を務めつつ、人と環境を大切にした持続可能なまちの実現を目指す市民団体で活動してきました。子どもも大人も参加できる自然環境保全活動などに取り組みました。
現在もNPO法人「にっしん市民環境ネット」(略称にしかね)の会員として活動を続けています。
 教師の仕事もNPOの仕事もどちらも大切でしたが、次第に、政治こそが生活に直結していることを痛感するようになりました。教育にしても、環境にしても、
政治がきちんと対応していないと、現場でいくら活動していても、目指す方向がきちんと定まりません。そこで議員を志したのです。 議員になる前には、職員と市民協働で作り上げた案が議会で否決された経験もあります。議会という決定の場で発言することの重みを実感したものです。
 近年、子どもたちの個性に応じた教育がかなり進んだと思います。しかし、まだまだ不十分です。 その具体例が特別支援教育です。発達障害のある子どもたちが増えています。そうした子どもたちをサポートする体制は不足していると言わざるをえません。また子どもたちを取り巻く安全が脅かされ、小学校では一斉下校をするようになりました。そのため、放課後に、補充指導を行おうと、一部の子どもを教室に残すことも難しくなりました。特別な支援を行おうとしても、なかなか体制が追いつきません。このような現場でこそ分かる課題に対応するために、地域オリジナルの教育行政を実現しなければなりません。これはわたしの政治課題でもあります。
 同じ愛知県内で、地域オリジナルな教育行政と言えば、犬山市が思い浮かぶことでしょう。先進的な施策を実行し、全国的に刺激を与えたと思います。しかし当然のことですが、日進市が犬山市の施策を取り入れて済むというわけではありません。全国的には少子高齢化が進んでいますが、名古屋市に隣接する日進市は子どもの数が増える「多子高齢化」が進んでいます。日進独自のやり方が必要です。
 そのためには、現場の先生、保護者の声を生かすことが第一です。いい施策を借りてくるだけでは現場はおかしくなっていくでしょう。その地域でどのような施策がもっとも適しているのか。それを最もよく知る現場の声を生かしていかなければなりません。
 議員は、この町のルールを作ることが仕事だと思っています。ルールを決め、共有の財源の使い方を決めます。財源は限られています。その使い道を決めるに当たっては、十分な裏づけが必要です。思いつきではなく、根拠をはっきりさせて、施策を実施しなければなりません。議員としても、調査研究を確実に行った上で、施策を提案していきたいと考えています。

(日本教育新聞 8月6日・13日号より転載)
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「政策は当事者の声から生まれる」
   愛知県瀬戸市・臼井淳

 【セッション3】は「9月議会の一般質問で望む答えを獲得しよう」。私は市民のとき、1歳の息子を育児し地域から孤立していた体験からこの町には子育て支援が必要だと感じていた。子育て支援を政策にして実現するには議員になって発言することが必要だということは『市民派議員になるための本』(学陽書房)を読んで知っていた。
 講師のみどりさんから「政策を実現するためには答弁者から“YES”という答えがあれば獲得目標達成に届くが、手を抜いた“一般質問”では現状の問題や根拠となる論点も弱く答弁もあいまいになる」ことを教わった。
 一般質問を自分が望む方向に一歩でも近づけるには、根拠となる情報をたくさん集めること。他の市町村から先進事例を調査すること。当事者のニーズを把握する。多くのデータを持つことで行政側より有利な立場になることを学び納得できた。
 続いて、「一般質問で答えを得れば終わりでない。政策を実行することで影響を受ける当事者のメリット、デメリットを十分考慮しなければ意味のないものなる」。
 せっかく一般質問しても、当事者の声を聞いていなければ結果的に評価の低い政策になり税金の無駄使いにつながる。政策立案には事前評価がいることを知った。
 今回の勉強会の課題で「一般質問」を作ったものの、本当に必要とされる政策なのか、という視点を見つけることができた。私は無意識の内に、議員の立場から、上から下へものを見るような態度で「一般質問」を作ろうとしていた。当事者のことを忘れているようでは市民の声を議会に届けたことにならない。それには現場はどうなっているのか、当事者からたくさんの声を聞かなければ政策は生まれないことを確信できた。
 講師から学んだことを議会で活かし、次回の9月議会「一般質問」で自信をもって発言し、獲得目標に一歩でも近づけ政策を実現し
たい。

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・ 考えるだけでは質問は作れない
        熊本県熊本市・早咲京子

 【セッション3】「9月議会の一般質問で望む答えを獲得しよう」では、講師のみどりさんの《一般質問の組み立て方〜問題解決の手法》が、『市民派議員になるための本』を使って始まった。「問いをたてる」ためには、なぜこの質問かという動機が本人(質問する人)にとって切実な問題でなければ、問題がぶれて獲得目標が定まらない。動機と獲得目標を大切にして、良い問いを立てられるか、が重要なのだと思ったが、難しい。
 市民の私は、市民活動で抱えている「県立高校再編」問題で取り組んだが、事前の課題のレジメを何度やり直しても、みどりさんのアドバイスや指摘の意味が飲み込めなかった。
 次の、《9月議会でやってみたい一般質問》では、課題で提出したレジメを参加者が説明し、講師がコメントをするワークショップ。講師が一人ひとりにするアドバイスを聞きながら、他の人の問題では、組み立て方が少し具体的にわかってきた。参加者の別々の問題を、解決へと導く手法に、おなじようなものがあると受け取った。
 だからこそ、自分のまずさが見えてきた。質問項目に獲得したい目標の言葉さえ入っておらず、問題の当事者の気持ちも客観的に見ていない。講師のともまささんから行政の現状を聞かれても答えられず、アドバイスされてもピンと結びつかない、これではきちんと質問要旨が組み立てられるわけがなかった。
質問項目を吟味して、的確にねらいを定め
て、答弁者を段階的に追い込まなくては、欲しい答は得られない。解決方法は、現場に行き、当事者に会い話しを聞く、行政の担当者に聞く、文献や類似団体を調べるなどの積み重ねが、質問作りにつながっていくと学んだ。
 まだ私はすぐ質問を作れるようにはならないだろう。今回学んだことを活かしていけるように「場数」を踏んで、質問作りに取り組もう。考えるだけでは質問(行政への要望書)は作れない。