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『女性情報』ポジティブな女たち


さまざまなマイノリティが生き延びるために
    寺町みどり(てらまち・みどり)


 わたしはいま、「無党派・市民派」の女性を議会に送り、自治体政治の現場で市民自治を実践するための運動にかかわっている。わたし自身は、1991年から4年間、自治体議員として働いた。有機農業をしながら、女性や子ども、障がい者、在日コリアンなどのマイノリティの運動、環境・教育などの市民運動をしてきたわたしは、運動のなかで理不尽な政策に憤りを感じ、「政治をかえよう」と決意して議員になった。
 その思いをより多くの女性たちと共有したいと、2000年6月に、「女性を議会に 無党派・市民派ネットワーク(む・しネット)」を立ち上げた。「女なら誰でもよいわけではない」と既存の政党や組織、保守派と一線を画したユニークな活動は、女性議員の「数」を増やす運動が主流だった発足当時、女性を分断するのかと批判された。
 「む・しネット」は、代表もいないし総会もない、文字通りのネットワークで、「先を歩いた人があとから来る人を支える」という理念をかかげ、無党派・市民派の議員と市民をゆるやかにつないでいる。スタッフは立候補制で、わたしは情報発信をしたいから通信の編集・発行と、人と人とをつなぐ事務局を担当している。個別の事業の企画・運営も「やりたい人がやる」プロジェクト方式。講演会や公開講座、「議員と市民の勉強会」、福井の「ジェンダー図書」排除事件や「選挙公営」問題の取り組み、「女は産む機械」発言に抗議しての申し入れ書提出、などの行動もしてきた。
 2002年、わたしは上野千鶴子さんのプロデュースで『市民派議員になるための本』(学陽書房)を書いた。第2部「勝てる選挙」では、従来型の選挙とは違うネットワーク型の「市民型選挙」を提唱し、多くの市民派女性議員が誕生した。この4月の統一選に向けての「選挙講座」でも、候補者から市民にメッセージをことばで伝える実践的なスキルを伝え、参加者は全員当選を果たした。とはいえ、「女性議員の“数”が増えれば政治が変わる」わけでもない。わたしは当選した市民派議員が、少数派としてかくじつに「議会で働く」ために、法や制度を味方につけて言葉と論理でたたかう手法とスキルを伝えたいと、年4回の「議員と市民の勉強会」合宿の講師も引き受けている。
 「議員になる」ことは、「わたしの問題」を解決するための「ひとつの手段」。政治は、一人ひとりの市民が、しあわせに、自由に、よりよく生きるためにこそある。
 2003年11月、市民派議員に呼びかけてフォーラムを開催し、延べ10時間に及ぶ議論を『市民派政治を実現するための本』(コモンズ) にまとめた。この本でわたしは、「『市民の政治』とは、市民自治を基本に、市民自身が、政策を立案し、行政の仕事を担い、市民自身がみずからのニーズを満たすことができる政治」と書いた。
 その続編ともいえる上野千鶴子さんの講演会を、来る12月2日(日)午後に「む・しネット」主催で企画している。タイトルは「市民セクターをつくる〜さまざまなマイノリティが生き延びるために」。自治体の制度を見通せるようになったいまのわたしは、間接民主主義の議会や行政を経由せずに、市民がダイレクトにニーズを満たすことに関心があり、「公」でも「私」でもない「協(市民)セクター」に、「市民の政治」の可能性と希望を見出している。
 わたしにできることは、国政では、現政権に対してNO!の一票を投じること。足元の自治体では、議会や行政を変えるための運動を続けること。いまここで「わたし」のニーズを満たす、「弱者が弱者のままで生き延びるためのシステム」をつくることができたらどんなにいいだろう。そのためにも、わたしは政治をあきらめない。
(『女性情報』2007年7月号)


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