『む・しの音通信』No.68(2008.12.5発行

第2回「M&T企画/議員としてのスキルアップ連続講座」

「M&T企画/議員としてのスキルアップ連続講座」報告
    プロジェクトスタッフ・島村紀代美

  
 10月24日(金)25日(土)、ウィルあいち(名古屋市)にて、第2回「議員としてのスキルアップの連続講座」が開催された。第1回の講座で学んだ12人に、新規の2名を含め参加者は14名。講師は寺町知正さんとみどりさん。今回のテーマは「議会活動のレベルアップ。各手法の実践的テクニックを身につける」ということで、市民派議員としてさらなるスキル獲得をめざす。
 【セッション1】の「議会を改革する=自分の議会がすべてじゃない」は、2部構成。前半の「議会運営の問題点」では、前回の講座で取り上げた「地方自治法の改正」に対して各議会がどう対応し、各自がどのように行動したのかを順次発表。考え方の違いと問題点を明らかにできた。また実例を参考にしながら議会内で問題発言があった場合の対処の仕方について、法的根拠、文書の出し方などを具体的に学んだ。だれもが「明日はわが身」であり、ここで法的な手続きを正しく理解できたのは心強い。
 後半では事前に参加者から提出された各議会の「申し合わせ」一覧を参照しながら、自分が改善したい項目について、それぞれが発言。まさに「自分の議会がすべてじゃない」ことが一目瞭然となる。
 【セッション2】のテーマは「発言、議論、交渉などの重要性」。ここではまず講師のみどりさんから質疑・質問の組み立て方のポイントと議論のコツについてレクチャーがあり、続いて各参加者が課題として取り組んだ一般質問のテーマについて説明。これに対し講師の二人よりコメントがあった。動機が弱かったり、立論と質問項目がずれているといった、自分ではわからないポイントが的確に指摘されていく。課題について事前に講師とすり合わせをしていく中で考え方がだんだん整理され、講座当日のこのセッションで質問・質疑の獲得目標に迫れる立論のしかたが認識できた。
 【セッション3】は「私のまちの情報公開の問題点と改善」。各参加者が事前に情報公開請求をして取り寄せた資料をもとに進められた。請求した内容は同じであっても、それぞれの自治体で公開の度合いが違っており、比較することで自分の自治体の現状が見えてくる。ここでは講師の知正さんから非公開になった部分で当然公開されるべき項目について指摘があり、さらにどのような観点で異議申し立てをするかについてレクチャーがされた。申し立ての根拠となる法律解釈の新たな視点を知ったのは大きな収穫だった。
 2日目は【セッション4】の「議会の議論を鍛える住民監査請求の立論」からスタート。実際に住民監査請求をした経験がない参加者が多いが、監査請求の対象になりそうな案件を調査し、レジメにまとめて事前に提出した。驚いたことに知正さんはすべての事例に対して、不当性や違法性を指摘するのに足りない部分の法的根拠や考え方を資料として提示。まだまだ難易度としては高く感じられていた住民監査請求に取り組む自信をつけることができた。
 最後の【セッション5】は「議会改革で抱えている具体的な問題の解決」。前日でも一部取り上げた参加者ごとの議会の申し合わせや慣例の具体的な問題について、何を解決すべきか洗い出した。議会改革への自分の認識の甘さを痛感。最後に今回の講座で獲得したことについて参加者がコメントして講座は終了した。
 「すぐに使える」がこのスキルアップ講座のポイント。わたし自身もその後、市民とともに請願を提出、紹介議員になったが、その文書の組み立てにおいても講座で学んだことがとても役に立った。次のステップは住民監査請求。第3回の講座でもスキルアップをめざしたい


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   自分の議会を自己診断
      長野県下諏訪町・青木利子

 
 スキルアップ講座の魅力は何かと言えば「実践的テクニックを身につけられる」こと。獲得したことは即次の議会で実践できる。
 今回の【セッション1】のテーマ「議会を改革する」では、まず自分の議会を他の議会と比較して客観的に見て何が問題かを把握することからスタートした。例えば「申し合わせ事項や慣例・習慣」については、参加者15名の所属議会がそれぞれに独自の運用をしており、文字通り「申し合わせ」ただけのものが多かった。あらためて「自分の議会がすべてじゃない」と自覚させられた。
 私が議会で働くための武器は「地方自治法」や「会議規則」といった法律やルールだ。講師のみどりさんが常に言うように「相手が言ったことを鵜呑みにしない」で条例や規則に則った議会運営がされるよう厳しく立ち向かうことが大事だと再認識した講座でもあった。
 「会議規則」どおりに議案質疑に通告制をとっているのはいいが、法的根拠のない「申し合わせ事項」で質疑を制限したり、一般質問をしたら質疑は控えるといった規制をしているところがあると聞きびっくりした。
 私の議会では通告制ではないから自分の意志で本会議質疑ができる。むしろ質疑ができるのにしない議員が多いことの方が問題だと常々感じている。講座を聞いていたら、講師のともまささんから「通告制は必ずしも悪い面だけでなく、通告することで職員に考える時間を与えるため良い答弁に導ける場合もある」と指摘があった。通告にはそんな良い面もあるのかと知り、さっそく次回の議会では事前に担当課に聞き取りし質疑に臨みたい。  
 ただ注意したいのは、本番でいきなりの質疑の方が良い場合もあることも頭に置く必要がある。いずれにしても議案質疑は事前にたくさんの情報収集や調査をしっかりした上で、自分に自信をつけて臨むことが基本だ。
 今回の講座でも「場数を踏むことが大事」というみどりさんのアドバイスが私にとって一番身にしみた。


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 一般質問を組み立てる   
      愛知県長久手町・小池みつ子
      

 議会活動のなかで一般質問は、自分でテーマを決め調査し、限られた質問時間を使い、主張をもって論理展開し、執行部にただしていくもの。問題意識を持ったテーマのどれを取り上げていくか、政策決定や予算化などのタイミングも考慮しながら「次は何を取り上げようか」と議会ごとに考えるのは、結構わくわくする時間でもあります。しかし、実際に質問を組み立て、獲得目標に向かって、ぶれないで質問を重ねられたかというと、かなり疑問で毎回反省があります。
 さて今回の勉強会の【セッション2】は、この一般質問について。当日までの課題は、12月議会で取り組みたい質問テーマについて、獲得目標やそれに向けての立論など7項目について、指定の字数でまとめ提出。講師のみどりさんからメールで「獲得目標が漠然としている」などのアドバイスを受け、再度項目ごとに整理、組み立てをしました。
 組み立て直しながら、「獲得目標をしぼり込めず、結局あれもこれもとなって、どんどん広がってしまう」という、自分の陥りやすい傾向を自覚することができたと思います。思いつく質問をすべてするのでなく、獲得目標に向けて必要なことにしぼっていくことが、なかなかできていない点も再認識。
 講座のなかでは、「政策をつくる」のに必要な手順についてや聴き取り(ヒアリング)のコツについての具体的な話もあり、充実した時間となりました。聴き取った相手の話を鵜呑みにしないということ、聴き取り情報では行政にとって都合の悪い情報はでてこないということは、本当にそうだと思いました。私は普段はつい素直な(?)姿勢で聴き取りをしていました。
 相手を説得するには、「根拠に基づく論理的説得力を身につける」ことが必要。つい自分の思いを押し付ける姿勢になりがちですが、「相手の論理」も知り、自分の思う方向へ相手を誘導していくための「議論のコツ」のみどりさんの話にうなずきつつ、次の一般質問を丁寧に作り上げていこうと改めて思いました。


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自らの手を縛る議会の規則
       長野県安曇野市・小林純子


 議会に提出された議案について、質疑(疑義を質す、質問)することは議会(議員)のもっとも重要な役目の一つである。それは、また、行政側にとっても説明責任を果たす大切な場面である。にもかかわらず、こんなことが起きている、ということで問題提起をしたい。安曇野市議会9月定例会の本会議、議案質疑でのことである。
 安曇野市が出資する第3セクターの会社が、指定管理者として運営しているレストランの営業収支について質疑したところ、「700万円余の赤字」との答弁があった。しかし、情報公開により、わたしが入手したそのレストランの年次報告書では、500万円余の黒字となっている。「どうしてこうも大きく数字がくいちがっているのか」と質したところ、部長は「なぜ黒字になっているかわからないので、調査してから答える」として、答弁を保留にしたのであった。
 後日の本会議で部長から答弁はあったものの、「はい、そうですか、わかりました」ですまされる内容ではなく、疑問は深まるばかりだったので、再質疑したいと議長に申し出た。
すると、
 議長:「それはできない」
 小林:「会議規則で認められているはずだ」
 議長:「いや、それは当てはまらない」
 小林:「ならば、その根拠を示せ」
と、押し問答になってしまった。
 会議規則というのは安曇野市議会の会議規則第59条のことで、「延会、中止又は休憩のため発言が終わらなかった議員は、更にその議事を始めたときは、前の発言を続けることができる。」とある。今回のようなケースは、質疑に対する答弁が保留になったことにより「発言が終わらなかった」と理解したわたしは、当然質疑を続けることができると考え、「それはできない」とする議長に食い下がったのである。
 再質疑の扱いに窮した議長は、議会運営委員会(議運)を招集。暫時休憩となった。
 結果として40分ほど議事は中断。議運の結論は、会議規則第59条の「延会、中止又は休憩のため」というのは、議会の進行上の都合のことであるから、発言者である議員個人の事情によるものは認められない。また、本会議質疑はすでに終わっており、保留になっているのは答弁だけだから、質疑の続きはできないと結論づけた。
 わたしとしては、会議規則の解釈の違いに納得したわけではなかったが、議運で時間をかけて話し合った結果であり、これ以上議事を止めることにためらいを感じたので、議運の判断に従うことにした。
 40分も空転するなら、5分もかからない再質疑をさせてほしかった、というのがわたしのホンネである。
 これに対して、議運の「ホンネ」ともとれる議論があったことを後で知った。再質疑が許されなかったのは、会議規則の解釈云々よりも、「再質疑を許せば、特定議員の発言チャンスを増やすことになるからマズイ」という理由が大きかったというのである。
 「特定の議員」とは、今回はわたしのことに間違いないが、どの議員にも再質疑が必要となる場面はあるやもしれず、発言の機会を自ら制限するようなことが平気で通るのが不思議でしかたがない。
 議会は「言論の府」といわれる。議場では言論で勝負するのが議員の仕事である。賛成にしろ反対にしろ、議員は自己の信念に基づいて発言し、我が意のあるところを市民に向かって表明する義務があるのだ。
 わたしのような無所属の議員は、とかく「一人ではなにもできない」と軽んじられるが、議会での議論はいつも1対1であり、発言はそもそも一人でするもの。選挙区や後援団体のことが気になって、曖昧な発言でお茶を濁したり、発言すること自体を控えるような議員は「数の論理」に頼るばかりで、議員本来の仕事がなんであるかさえ忘れているのではないか。
 議員自らの手を縛るような議会の規則は変えること、ここから始めなければならないというのが、多くの議会の現実であるようだ。