『む・しの音通信』No.37
(2004年5月30日発行)
特集:5月15〜16日
「議員と市民の勉強会」に参加して
5月「議員と市民の勉強会」報告
報告・安立さとみ
5月15日(土)13時から16日(日)14時まで、名古屋市のウィルあいちで、1泊2日の「議員と市民の勉強会」を開催した。講師は寺町ともまさ&みどりさん。参加者は議員10名、市民3名。前回までは2日目の午前終了の4セッションの勉強会であったが、今回は午後までの5セッションで開催したため、時間的に余裕を持っての勉強であった。 2日目の「一般質問のシュミレーション」では、市民も一般質問を作り、議員と同じプログラムで参加する、新しい参加型の勉強会を体験できたことで、参加者全員が興奮気味で会場をあとにした。まさしく議員も市民も満腹感を味わった勉強会であった。
5月15日(土)の《セッション1》は、「上手に使おう!直接民主主義の制度」。『議員必携』『地方自治法』『市民派議員になるための本』をもとに、手法と制度の意味について、ともまささんからレクチャー。「請願・陳情」から入り、「情報公開制度」「行政処分の不服申立」「公害調停」「住民監査請求」の順に実例を示しながらの勉強であったが、まだまだ使える手法を使い切っていないというより、分からなくて損をしていると実感した115分であった。
《セッション2》「公選法に抵触しない文書作りの実際」は、参加者が個人のニュースや議会報告を持ち寄り、『市民派議員になるための本』を横においての勉強になった。
メッセージとは何か? 情報とは何か? 「だれに、何を、どのように」伝えるのか?
みどりさんから、次々と参加者に投げかけ
られる問い。いかにメッセージ性の高い、質の良い情報を、ことばで市民に伝えていくのか? どのように個性的に自分の考えを書きことばにしていくのか? 平行して公職選挙法を学びながら、参加者は今すぐにでも活用できる知識でいっぱいになった。
《セッション3》「議会改革をどうすすめるのか?」では、ともまささんを講師に『市民派政治を実現するための本』第4部に添って「議会運営の原則」を勉強した。勉強会に参加を重ねている参加者がほとんどであるが、何度聞いても新しい発見がある。
今回はさらに実際の判例を挙げながらの住民訴訟の解説で、ますます何かできそうと感じる。まずは、「市民派議員として一人の力を高めることが必要」「議会は法律と条例により正論を通せるところである」と結んだ。
翌16日の9時から14時まで、通しでの《セッション4・5》は、「一般質問をシュミレーションする」。市民を含めた全員が事前にテーマを決めてレジメを提出し、みどりさんと意見交換した「通告書」をもとに対面式の模擬議会をおこなった。答弁者はもちろん講師のおふたり。前半の8分で再質問、再々質問までおこない、獲得目標を目指す。後半8分は講師と参加者によるコメントのはずであったが、ほとんどが再質問に行くか行かないかのうちに、持ち時間の8分が終了。本番を超えるような答弁に質問者も緊張。後半8分では的確なアドバイスをうけた。
今回はいつにも増して、心地よい疲れと共に勉強会は終了した。(報告・安立さとみ)
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さっそくチャレンジ!
福井県敦賀市・今大地はるみ
セッション@の寺町ともまささんの講座は、「じょうずに使おう!直接民主主義の制度」。いままでに使ったことがあるのは、請願の紹介議員、情報公開、異議申し立てぐらいで、その先にはなかなか踏み込めていなかったのが現状だ。手続きが大変で、事務局を立てないとできないと言われる「直接請求」をのぞけば、たったひとりでも十分にやってこなせるものばかりだと、思い知らされた。
なんてたって、講師のともまささんは、日々、住民監査請求や行政訴訟をたくさんしているのだから、説得力がある。議員のみならず、市民でもやればできるのが「直接民主主義制度」であり、それぞれがちゃんと法律で定められているのだから、現状を変えるための原動力にもなる。まさに議員としては、スキルアップ間違いなしのやらなきゃソンの「直接民主主義」だ。あとはマスコミとうまく付き合い、マスコミを使いたおし、市民にどう伝えるかがキーポイントとなる。
講座を受けながら、わたしのまちでおきているゴミ問題や温泉施設、産業団地などその
つど、住民監査請求や公害調停、行政不服審査をしてこなかったことが、いまさらながら
悔やまれる。しかしともまささんは、まだまだできることがある、今からでも遅くないよ
と励ましてくれた。よっしゃ!さっそくチャレンジだ!
この「すぐに使える直接民主主義」の勉強会後、市と県に情報公開請求をしていた資料の開示があった。非公開で行われている、敦賀市最終処分場技術検討委員会の会議の議事録・録音テープの公開を求めたところ、会議録は公開となったが、テープは不存在だという。そこで重要な会議であるにもかかわらず、録音テープがないのは行政として、怠慢だということで、行政不服審査法により、異議申し立てをすることにした。結果はどうであれ「直接民主主義」が使える場面を逃さず、使いたおすことを、これからの議員活動の柱にしたいと思っている。
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ひとりでもできるぞ!議会改革
三重県桑名市・小川まみ
「議員と市民の勉強会」セッションBは、テーマが「議会改革をどうすすめるのか?」 講師は寺町ともまささんで行われた。
『市民派政治を実現するための本』をテキストに議会運営委員会、常任委員会の現状のどんなところに問題があるのか、地方自治法どおりに運用するとはどういうことなのか、図を交えながら解説してもらいました。
なかでも「常任委員会の傍聴」について、「条例で『議員のほか、委員長の許可を得た者が傍聴できる。』と定めてあるので、議員が委員会を傍聴するのは、当然の権利。だから、常任委員会の同日同時刻の開催は、議員の権利侵害にあたる」というところは耳が痛かった。
桑名市は4つの委員会が同日同時刻の開催。議長に申入れ書を出したり、議運の委員長に話をしたりしたがなかなか聞いてはもらえなかった。ただ、合併を控え、委員会室を拡張するため2室に減るという物理的制約から2委員会ずつの開催に変わることになった。このことを一歩前進などと思わず、「議員の権利の侵害」という点を強調して改善しないといけないなと思った。
日頃から、「会派に入ってないと議会改革なんて無理。」「いくらいい意見でも一人では通らない。」と同僚議員からよく言われるが、法のもとでは議員の権利は平等なので、自治法や条例どおりに運用するのに人数は関係ないことがあらためてよく分かった。
最後に、委員会の同時開催がなかなか改善されないなら、ひとりでもできる仮処分申請をすればいいと教えてもらった。たぶん今まで誰もしたことがないだろうから、びっくりするだろうなと思うとワクワクしてきた。
私にとって「議員と市民の勉強会」は、単に知識やノウハウを学ぶだけのところではない。悪しき慣例との戦い方を身につけるところ。そして何より一番は、減ってしまった元気を3ヶ月に一度フルチャージするところである。
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毎回が新鮮!
兵庫県中町・高澤栄子
勉強会2日目のセッションCDは「一般質問をシミュレーションする」。
まずは、一般質問の原則と基本から。寺町みどりさんの『市民派議員になるための本』にも「『一般質問』は議員にとってもっとも重要な発言の場である」と述べられていますが、一般質問とは何か?に始まって、あなたの一般質問はどのタイプ?まで。ちなみに、今回、参加者から提出された一般質問は、ほとんどが「政策を変えるタイプ」に分類されました。
次は、再質問、再々質問の組み立て方。根拠と説得力のある議論を組み立てるため、相手の答弁を予想し、想定問答を準備するということ。わかっちゃいるけど、これがなかなか難しい。けれどここが肝心とみどりさん。
スンナリと切られないための工夫が必要ですが、そのためのテクニックは、やっぱり何をおいても「議論」と。思いや信念だけでは、相手を説得できない、と続きましたが、これには、わが議会を思い出して、ヘンに納得してしまいました。
そして、いよいよメインテーマの「一般質問のシミュレーション」へと続きました。
今回は、参加者が6月議会で予定している一般質問を、@タイトル、A要点、B獲得目標、C一般質問の全文、といった形式で事前に提出。本番の勉強会までに、みどりさんと2回〜5回ぐらいのやり取りを経て、練りに練った参加者全員の一般質問を、一人16分、模擬議会形式でのシミュレーションです。
持ち時間の8分以内で、質問・答弁⇒再質問、答弁⇒再々質問・答弁と終え、獲得目標に到達、ということでやりましたが、ほとんどが時間切れ。全体的に質問時間が長すぎるとのコメントあり。私の場合、答弁を深追いしすぎて質問自体が弱くなり、獲得目標から遠くなる、という指摘は「よしッ、次の議会こそは」という気合にもつながっていきました。自分でここが弱いんじゃないかと思っていたところが形として見えてきたセッション。次の議会はスキルアップした再質問や再々質問ができそうな気がしているのですが・・・・。
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「学習会での収穫」
北海道旭川市・山城えりこ
12時30分、会場となる「ウィルあいち」がまたうなり声をあげた。『地方自治小六法』『議員必携』などズッシリ重いカートをひきずる音と興奮が打ちならす胸の鼓動、そしてにこやかにかわす笑顔の会話。市民派議員たちのステージが2日間に渡り繰り広げられた。 会派、党派のしばりもなく、個があらゆる可能性に挑戦し、一歩一歩着実に進んでいる市民派議員の姿に逞しささえ感じてしまう。私自身、手探りで進んできたこの一年。気がつくと確かに、目指す道が見えてきた。毎日の活動はもちろんであるが、この勉強会によるものが大きいと感ずる。考えの一つひとつの点が線となり、それが面に、立体になっていく姿を設計できるようになった。
今回の勉強会の収穫も大きく『一般質問のシュミレーション』では自分に染み付いている癖を再確認し、仲間の実力と日頃の努力を肌で感じた。と同時に、取り上げられている問題点が自分の問題ともつながり、客観的な見地から、問題の本質、解決への方策を探ることができた。
例えば、「市の広報の全戸配布」の質問からは、市の動きを伝える配布物を加入率68%(旭川市)の自治会に任せることの問題点。地域のコミュニケーション作りに合った自治会の再編成の必要性。配布手数料を含めた会計に関する問題点や補助金交付基準について。 また「指定管理者制度」からは、これまで市のお偉方OBの天下り先であり、アンタッチャブルであった第三セクターの問題点。自分自身でも取り上げたが最後の詰めが甘く、逃げられてしまった質問であったが、『上手に使おう!直接民主主義の制度』で学んだ、「住民監査請求を使う」ことで見えてくる解決への道など。自分の足場が固まる手ごたえを感じる。みどりさん、知正さんから発せられる厳しく、そして的確なアドバイスが小気味よく自分の不安定な隙間を埋めていくのを実感できる。
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「市民派議員はこんなの出さない」
三重県松阪市・海住恒幸
あまり民放を見ないわたしが、木曜日の夜10時から放送中の「新しい風」という政治家誕生ドラマを面白がっている。新聞社の政治部記者だった主人公が衆院議員選挙に立候補する選挙ドラマだ。毎回、「ある、ある、こんなこと」「こんなことはないヨ」と思いながら見る。
「ある、ある」と納得するのは選挙にまつわる人間関係のモツレ。逆に「こんなことはないヨ」と思うのは候補者周辺の公職選挙法違反。これはドラマゆえに起きるあまりに明白な違反だが、現実の選挙ではどんなことならできて、何がダメなのか、本当に分かりにくくて戸惑う。市の選管に聞くと何でも「ダメ」、が、県選管や警察に聞くとどうやらオーケーらしい事象の多いことときたら・・・・。
文書の作り方もまさにそのような事例にあたる。「新聞を作りたい」と市選管に相談したら「違反だ」。そうかと思えば、県選管は「できるだけ、回数をたくさん発行してください」。両者の違いの意味について、市民派の皆さんはもうご存じのはず。
それにしても、どうして市選管のような解釈が幅を利かすかと言えば、既存の議員に原因があるようだ。彼らの作る新聞が、市民の求めるそれとのギャップがあまりに大きい。議員が提供する情報が市民に有用かと言えば、そんなはずはない。議員として伝えなければならないメッセージもありそうにない。
あるのは、「当選御礼」(選挙違反!)や議会内での役職歴など、手前勝手な「お知らせ」だけだ。こんな中身なら、1回出せば4年間、発行する必要はないし書くこともない。 市選管がダメと言いたくなる気持ちが分かる。本来重要な議員活動として発行しなければならない新聞を議員は作っていないのだ。わたしたち市民派議員の出す新聞とはおのずとコンセプトが違う。
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『市民派政治を実現するための本』−Part2
「市民派政治の本」ができました
星野智恵子(フリー編集者)
このたび『市民派議員になるための本』の続編ともいうべき、『市民派政治を実現するための本』(上野千鶴子・寺町みどり・ごとう尚子共編著・コモンズ)を刊行しました。
市民派議員になったとしても、議会で、あるいは議会の外で何をしたらいいのか、どう闘ったらいいのか。こうした問題意識で「市民派議員アクションフォーラム」が昨年11月にひらかれました。市民派議員と市民、100人ほどがくりひろげた延べ10時間の討論を吟味し再構成してまとめたのがこの本です。記録テープのほとんどをみどりさんが起こされ、何度も編者と発言者の間を原稿が行き来し、フォーラムの単なる記録をはるかに超えた、密度の濃い内容に仕上がったと思います。
議会をどう改革するかにとどまらず、参加型の直接民主主義を徹底して追い求めていけば代議制そのもの、つまり、議員も議会もいらないのではないか、というところにまで話はおよびました。地方自治を巡る書物はいろいろありますが、ここまで議論を突き詰めた本はないのではないでしょうか。
市民派議員はたいてい孤独です。一議会に一人か良くて数人。多数決の議会ではいつも悪戦苦闘を強いられます。この本が、そうした志ある議員に方々にとって、目前のことだけでなく遠くまで見通す指針となって、役に立ってくれたらうれしく思います。
巻頭には、上野さんの「わたしが「権威」にならないために」というご講演を収録できました。フォーラムの収録に先だって市民派政治についての「理念編」が加わることとなり、本としての完成度がぐっと上がったと思います。
今回、私の退職という事情があり、版元はコモンズと変わりましたが、前著に引き続き、今回も編集という分野で本づくりに関わることができて幸せでした。
本書が一人でも多くの議員と市民のみなさんのお手元に届くよう、心から願っています。
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『市民派政治を実現するための本』を読んで
名古屋市・坂東弘美
この3月末、12名で4泊5日の北京旅行をしました。事件は、旅行も終わり、明日の早朝いよいよ帰国の飛行機に乗るという、前夜の打ち上げ会でドラマチックに起きました。Aさんが真っ青な顔をして「パスポートが失くなった」というのです。サァ大変。侃々諤々の対応策の議論が始まりました。
私は真っ先に「明日は北京に留まって、一緒にパスポート再発行のための手続きにお付き合いします」と言いました。別の人は「今回の旅でAさんもいっぱい中国人の友人ができたのだから、そういう人にも助けてもらえるよ」と励ましました。そんな中で女性のBさんが自信ありげに言い放ちました。
「こういう時はね、議員を使うと一発よ!前に友人が同じことをして、知人の議員に国際電話したら、すぐ動いてくれて、ちゃんと予定の飛行機で帰れたよ! でももう今は辞めちゃったからダメ」と言うのです。一瞬の事でしたが、誰も反応しない、シーンとした空間。それは一番言ってはいけないことだと無言で言っている空間だと私は感じました。
結局、私たちは次の結論にたどり着きました。 「Aさんは経験豊かな大人である。一人で残り、大使館へ行って善後策をとり、自力で帰国する。今回の旅行は北京の人々との交流が目的としてあった。北京で新しくできた友人の力を借りるのも旅行の成果で嬉しいことである。メンバーもAさんの気持ちに負担をかけずに予定の飛行機で帰り、それぞれの仕事に支障をきたさないのが最良の策だ」と。
『市民派政治を実現するための本』の「わたしのことは、わたしが決める」の後に「そして、わたしのことはわたしが頑張る。でも、できない時は皆さん助けてね」と付け加えたいぐらいの結論だったと思っています。
この本の最後、ディスカッション時のQ&Aでは、「大原則はちゃんと勉強して従うこと」「自治法、条例・規則は知っていなくっちゃダメ」とくりかえし回答されています。それは、読んでいる私を、「わたしのことはわたしが決めるには、当然勉強も努力も必要だし、乗り越えられるものだよ。失敗しながらでもいいから頑張ろうよ」と励ましているようにも思いました。
それは冒頭の上野さんの、「わたしが〈権威〉にならないために」というメッセージのせいかもしれません。「政治をするということは、代議制民主主義のために投票に行くということには尽くされません。わたしが権力を権力たらしめている権威の源泉なのだと自覚し、誰にも権威を委ねない自己統治を実践していくのが、民主政治」。最初にガーンと頭をたたかれるような衝撃からこの本ははじまっているのです。
そして、あとがきでごとう尚子さんは「命にかかわる病を得て、私の仕事が私の中で相対化された。『議員は私が命をかけるほどの仕事か』と。決して居直りでもすでゼリフでもなく。答えは簡単。そこにあった。これまで私自身が議員という自分の権力を過大評価していたのだろう。『私が』命をかけなくてもいい。市民一人ひとりが変えていく、そしてつくっていくのだから。」と書いています。 命をかけるほど一日24時間を使い切っていたごとう議員を私は知っています。「市民ひとりひとり」への彼女のまなざしの深さを私たちは忘れてはならないんだなあと思うのです。みどりさんも、最後に言っています。
「ひとは大切なだれかのために言葉を発し、大切ななにかのために決意する。この本は、私が愛する女たちへの、応援歌であり、賛歌である」と。この応援を受けて、言葉を使う仕事をしている私も、自分の持ち場で、自分の市民生活の中で、この賛歌を歌いながら、つまずき、勉強し、決意し、生きていきたいと思っています。
あ、書き忘れました。「北京パスポート紛失事件」の結末ですが、念のために調べなおしたら、リュックの奥の奥から出てきました。人生は楽し!