2005年7月4日
鹿児島県議会議長  金子万寿夫様
鹿児島県議会議員  吉野正二郎様
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上野千鶴子
東京大学大学院人文社会系研究科教授

鹿児島県議会での吉野正二郎議員発言に対する抗議書
                     
 去る6月28日(火)、鹿児島県議会平成17年第2回定例会一般質問において、吉野正二郎議員が、「男女共同参画及びジェンダーフリーについて」「日中、日韓間の諸外交問題について」をテーマに行った一般質問の中で、私の名前に言及し、看過できない発言があったため、ここに抗議し、誠意のある対処を求める。
 第1は、私自身もかかわってきた「慰安婦」問題について、吉野氏は「従軍慰安婦などというありもしない言葉をねつ造」、「挺身隊として強制連行された慰安婦が出てきたなど大々的な嘘の報道をした」と発言しているが、これは1993年に当時の政府官房長官河野洋平氏が、「慰安婦」に対する日本政府の関与を公式に認め、陳謝した事実を覆すものであり、その後もいくつかの教科書が「事実」として「慰安婦」を記載したことを否定するものである。被害者の名誉を著しく傷つけるものとして抗議する。
 第2に、八木秀次氏を引用しながら、私の名前に言及した部分について。吉野発言の該当部分は以下のとおりである。
「(前略)これを書いた記者は性教育をやっている河野美代子さんの活動をいっしょにやっていた人。河野さんがこれを知って、よくやったねと言って喜んだと、講演会の中で上野氏が話しております。」「(前略)それにしてもあることをなかったことにして報道する記者自体が、彼らとグルの活動家であるとの暴露には正直おどろかされます」。
「グル」というのは、「互いに示し合わせて、謀議を図る」という意味で使われる言葉だが、名指しされた記者、河野氏、そして上野のあいだには、書かれた記事について相互に接触がないことは、吉野氏による引用からも明らかである。事実に反することを、しかも「グル」という品位のない用語を用いて言及した吉野発言はとうてい容認できるものではない。たとえ引用とはいえ、それを批判せずに用いている以上、吉野氏が八木氏に同調していることは明らかである。
議会に対しては、以上の吉野発言を不適切な発言として削除することを求め、さらに吉野氏に対しては、訂正と謝罪を要求する。
                                   以上。