2004年6月22日
山県市議会議長 藤垣邦成 様
              山県市議会議員 寺町知正

          議案にかかる申し入れ

 今6月議会に提案された議第31号「山県市有線テレビ放送施設の設置及び管理に関する条例」は、以下のとおり、違法な手続きを前提としているから、廃案もしくは継続審査とすべきであることを申し入れる。

第1 議案にかかる事業内容の状況
1, 議案第14条1項及び別表に定める「インターネット利用料」及び「付加機能」に関して、以下の経過がある。
   市は04年5月に美山・伊自良の各地区で説明会を行った。
   その際のパンフには、 @nifty のサービスを提供する、と印刷されている。つまり、山県市は既に インターネットのサービスに関して、 @nifty 運用会社ジャパンケーブルネット鰍ノ委託することを意志決定している。同社と既に契約していることになる。
   続いて6月議会にインターネット利用料やサービスを定めた条例が提案された。

2, 企画部長の6月16日議会答弁の要点は、以下である。
  「条例のインターネット利用料は、2コースで市の設定額である。市の維持費が賄えるような金額で交渉中で、市が施設を解放して民間に営業をさせるものではないので、回線使用料を徴収する事は想定していない。
    市は、当該予定業者の決定に当たって、6社に資料の提供を求め、ジャパンケーブルネット鰍ニ仮契約済み。本契約の時期は未定だが、固定料無しの一接続の単価契約を行う予定。
    契約は、3年間の予定で、その後は、1年間毎の更新の予定。契約の更新義務は市とジャパンケーブルネット梶iJCN)の両方にある。
    上位ISPはアットニフティ @nifty を予定している。」

第2 契約の位置付け
 上記契約は、電気の供給契約や電話の回線提供に伴う利用料の契約ではない。
 当該契約は、市の敷設管理する有線テレビ放送施設を利用して市の定める各種サービスを提供する事務事業に関して、その管理運営・サービス提供業務の一部を委託するいわば役務提供の契約である。
 仮に、業務の一部委託でないとしても、インターネットサービスの購入契約である。

第3 当該契約の違法
1, 収入と支出の存在
   インターネット事業に由来するの歳入は、以下である。
     インターネットの利用料2100円×12×2000人=5040万円
                2625円×12× 500人=1575万円
   当該契約にかかる歳出は、以下である。
     インターネットの利用料収入のうち、例えば委託(購入)先に50%支払う と仮定すれば約3300万円の支出。80%なら2600万円の支出。
   このように、当該契約は、明らかに市の支出を発生させる。

2, 山県市の支出をともなう契約であるから、事業開始の前年度に契約することはで  きない。なぜなら、会計年度独立の原則があり(地方自治法(以下、法という)第208条1項)、歳出はその年度の歳入をもってあてなければならず(法第208条2項)、長期継続契約(法第234条の3)であっても「初年度」の概念は不可欠だからである。

3, 予算議決(第211条1項)もないのに、委託(購入)契約は締結できない。

4, よって、本件で市がいう仮契約は手続き上違法である。

第4 事前交渉及び仮契約の違法
1, 特定会社との契約を前提とした事前交渉は許されず、まして仮契約は違法である。しかし、本件は、特定の会社と事前交渉し仮契約締結にまで及んでいる。

2, 法第234条2項「指名競争入札、随意契約は政令で定める場合に該当するときに限り、これによることができる」とされている。
   この際に、政令第167条の2の第1項で定める随意契約としてよい条件、
    「2号 その性質または目的が競争入札に適さない場合」
    「3号 緊急の必要により入札に付することができない」
    「4号 競争入札に付することが不利と認められるとき」
    「5号 著しく有利な価格で契約できる見込みがあるとき」
   に該当するか、である。

3, 本件役務もしくはサービスの提供を可能とする業者は当該予定業者系列以外にもたくさんある。価格やサービスの提供に関して市と市民に極めて有利な業者もいくつもある。
   さらに、当該予定業者は、地方公共団体の直営のテレビ業務の運用経験はなく、インターネットについても同様であると聞き及ぶ。
   つまり、本件は、上記いずれの条件にも適合しないから、随契にすることはできない場合である。
   結局、本件契約は、契約締結の権限を有する職員に許された裁量を著しく逸脱しているから違法である。

4, 市は、当該予定業者の決定に当たって、6社に資料の提供を求めたという。
  当該資料提供が、上記随契可能理由のいずれかに該当するものとして随契するためであるなら、山県市契約規則第24条の2に基づき予定価格を定めなければならず、同第25条に基づき2社以上から見積もりを徴取しなければならないところ(なお、「なるべく」との規定の趣旨は、同条但し書きの規定からすれば、実質的に必須要件、である)、6社の見積もりのうちの最低価格のところに決定すべきことは明白である。
   しかし、この予定価格設定及び見積もりを徴取手続きを怠る違法がある。
   仮に単なる資料の提供だけであったなら、上記法令に違背して随契した違法な契約である。

5, 結局、本件契約は法第234条2項、同施行令第167条の2の第1項に違反する行為である。

第5 契約の違法と無効
1, 法第2条16項「地方公共団体は、法令に違反してその事務を処理してはならない。」、同17項「前項の規定に違反して行った地方公共団体の行為は、これを無効とする」とされている。
   つまり「法令に違反してなされた行為は無効」であるから、本件契約は成立しないのも明白である。

2, 前記第2ないし4のとおり、山県市が美山・伊自良の説明会で示した内容もその経過も含めてすべて、根拠はなく無効である。

3, 結局、本件議題とする条例で規定しようとする内容には何ら根拠や裏付けもなく、結果として意義も意味もない規定である。

4, さらに、法第2条14項「地方公共団体は、その事務を処理するに当たっては、住民の福祉の増進に務めるとともに、最小の経費で最大の効果を挙げるようにしなければならない」、地方財政法第4条1項「地方公共団体の経費は、その目的を達するための必要かつ最小の限度を越えてこれを支出してはならない」とされている。   即ち、本件議題とする条例で規定しようとする2100円、2625円は、「最小経費で最大の効果」の原則に反し、「必要かつ最小の限度」を越えているから上記法令を著しく逸脱した違法なものである。
   加えて、算定根拠に正当性がないのだから、その違法性は具体的かつ甚だしい。

第6 議会の条例議決義務を反故にした違法
 議案第14条1項及び別表に定める「インターネット利用料」及び「付加機能」に関して、何ら山県市議会の議決を経ず、既定のこととして5月に美山・伊自良の各地区で説明会を行い、パンフレットにサービス内容まで明示し、市の広報6月号にも掲載、市民に配布した。これらに記載されている但し書きは「予定」としているが、事実関係からすれば議決不要の意味、というしかない。なぜなら、議決がないとか、議会で修正されたら説明会や広報自体が虚偽になるからである。
 他方、このことは、議会に修正や否決をさせないための既製事実づくり、ともいえる。 これらは、法第96条1項1号で議会に義務づけられた条例制定改廃議決権を反故にするもので、違法な行為である。

第7 結論
 結局、条例で定めようとするスタンダード10M、ハイスピード30Mのコースや付加機能等の規定も無効である。
 仮に、10M2100円、30M2625円という条例案が可決されたとしても、@違法な契約手続きを前提とし、Aサービス提供に関して誤りかつ根拠のない議会説明に基づいて議決された議案は違法な条例であることになる。
 よって、条例案は撤回されるか、適当な時期まで継続して審査するしかない。

 以上申し入れる。