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                    受付番号 第     号
 2005年6月7日
時  分
山県市議会議長 様
山県市議会議員
 寺町知正     印
一般質問通告書
下記のとおり質問したいので、通告します
質問番号 2 番  答弁者 市長 

質問事項     入札額吊り上げによる市の損害の回復を怠る事実について 

《質問要旨》
 私は、常々、過去の汚職を反省し、再発防止のために、厳しい再発防止策をとるべきであると主張してきた。
 2002年の自治体合併前の高富町長の汚職事件は、事件発覚から3年以上が過ぎた。 山県市が昨年9月に入手した元町長の刑事事件の判決には非常に興味深い点が記録されている。私は、本年3月に、住民訴訟において、被告の退職手当組合から提出された判決書という公文書において、初めて正式に次のことを確認したことだ。
 つまり、この事件では、2001年5月22日の入札直前に、業者が町長に、「2億3千万円の札で入れたいが、よいか」と尋ねたら、「あと、1千万円上げてよい」と答え、実際に2億4千万円で落札したということだ。
 判決が認定した罪となるべき事実を引用すると、「選定したこと及び同工事の予定価格の目安を教示してもらったことの謝礼並びに今後も有利かつ便宜な取り計らいを受けたいとの趣旨のもとに供与されるものであることの情を知りながら」(判決1頁下から2行目以降)とされている。
 判決が事実認定の補足として説明した部分を引用すると、@「本体工事の設計業者から入手した情報に基づき、高富町の入札予定価格を推定し、それとの比較から、2億3000万円で本体工事を入札しようと考えたが、本体工事の入札日の前日ころ、最終的に入札価格を2億3000万円とすることを決定」(同6頁(6))、A「入札前日か前々日の同月20日か21日ころの朝、被告人宅に電話をかけ、『うちの札値は2億3000万ですが、どうですか。』と、入札価格を伝えるとともに高富町の入札予定価格の目安を確認し、被告人は、『そんなに低くない。1000万円くらい上げた方がいい。』などと答え、高富町の入札予定価格が2億4000万円を上回ることを教示した。」(同17頁(4))、B「本体工事の入札日である同月22日、入札の約30分前に、被告人は、歩切りを97パーセント、すなわち入札予定価格2億4180万円を選択してこれを指示した。2億4000万円で本件工事を落札した。」(同6,7頁(7))とされている。引用は以上だ。
<  これから見て、この業者の入札予定額に理由なく町長の一声で「吊り上げられた1千万円」は、明らかに、町長の誘導に基づく旧高富町(現山県市)の損害であるから、市は当人に損害賠償請求して、市に補填させるべきお金だ。この損害を放置している山県市の現状は違法で許されない。そこで、質問する。
(1)山県市は、この判決文の内容を知って、この元町長によって吊り上げられた1000万円は山県市の損害だと、考えなかったのか?
(2)この質問通告を受けた今は、どう考えているのか?
(3)地方自治法第242条1項で規定する「怠る事実」の法文解釈として、本件「入札額吊り上げ」事案に関しての損害賠償請求権の不行使状態について、山県市は「怠る事実」に該当すると考えるか、考えないのか。
(4)この事件は一種の官製談合、というべきだ。住民訴訟の判例をみると、刑事事件で談合が認定されているなどの証拠がある場合は談合の歴然とした証拠(事実認定)があるからこそ、住民側が勝訴するが、他方でそれら確定した証拠がない場合は住民側が敗訴している。
 ところで、住民監査請求において、最高裁判所第3小法廷平成14年7月2日判決(※@)・最高裁判所第1小法廷同7月18日判決(※A)・最高裁判所第1小法廷判決同10月3日(※B)において、(真正)怠る事実については1年という期間制限がないことが具体的に示された。この観点からすれば、山県市の市民は、今時点で、「市長は、元町長に速やかに損害賠償請求せよ」との主旨で住民監査請求すると、適法な請求になる。
 結局、今回は、談合事件ではなく、刑事事件の判決文のとおり贈収賄の一環として事実認定されている以上、住民監査請求、住民訴訟と進んだ場合、住民は、業界の談合の利得問題では請求は棄却されるが、元町長への損害賠償請求を求めることなら認容される、ということになる。
(5)この損害賠償請求権は、市民や議会ではない、「山県市長」固有のものである。この怠る事実(損害賠償請求権の不行使)も間もなく、時効(5年)になってしまう。直ちに、元町長に1000万円の損害賠償請求すべきではないか。
以上
《参考》
 ※@最高裁判所第3小法廷平成14年7月2日判決(平成12年(行ヒ)第51号)は、怠る事実については監査請求期間の制限がないのが原則であるとし、「県の同契約締結やその代金額の決定が財務会計法規に違反する違法なものであったとされて初めて県の被上告人らに対する損害賠償請求権が発生するものではなく、談合、これに基づく入札及び県との契約締結が不法行為法上違法の評価を受けるものであること、これにより県に損害が発生したことなどを確定しさえすれば足りる」と判示した。

 ※A7 最高裁判所第1小法廷判決平成14年7月18日判決(平成12年(行ヒ)第76号ないし第85号)は、前記※@判決を前提として、「本件監査請求の対象事項は,市が事業団及び上告人らに対して有する損害賠償請求権の行使を怠る事実であるところ,当該損害賠償請求権の発生原因は,上告人らが事業団から工事の発注予定金額等の呈示を受けて談合をした結果に基づいて,上告人明電舎及び同三菱電機が事業団と不当に高額の工事請負代金で請負契約を締結し,本件各委託工事の委託者として最終的に上記工事請負代金相当額を負担することになる市に対し,公正な競争により形成されたであろう請負工事代金額と談合によりつり上げられた請負工事代金額との差額相当の損害を与える不法行為を行ったというものである。
 監査委員は,上記のような談合行為等とこれに基づく事業団と上告人明電舎及び同三菱電機との請負契約の締結が不法行為法上違法の評価を受けるものであること,これにより市に損害が発生したことなどを確定すれば足りるのである」と下した。

 ※B最高裁判所第1小法廷判決平成14年10月3日(平成9年(行ツ)第62号)は、怠る事実に係る住民監査請求のうち、1年の請求期間の適用はないと判断できる場合、できない場合を具体的に判示し「監査委員は、被上告会社9社について上記行為が認められ、それが不法行為法上違法の評価を受けるものであるかどうか、これにより県に損害が発生したといえるかどうかなどを確定しさえすれば足りる。・・・県の被上告会社9社に対する損害賠償請求権は、本件変更契約が違法、無効であるからこそ発生するものではない。したがって、監査請求期間の制限が及ばない。そうすると、本件監査請求中、不法行為により代金を余分に支払わせた被上告会社9社に対する損害賠償請求権の行使を怠る事実を対象とする部分は、不適法とはいえない。」とした。