96年6月  首都機能誘致促進決議(案)
            反対討論(寺町知正)原案

◆首都機能誘致促進決議に反対します。

 首都機能移転は、東京の閉塞状況を改善し、かつ行財政改革による地方分権・規制緩和を進めて行こうという目的で提案されています。
全国で幾つかの候補地が誘致活動を進めおり、岐阜県の東濃地域もその一つです。
首都機能移転をキッカケに、首都機能について考えること、即ち行財政改革とはどういうことか、地方分権や規制緩和とはどういうことかを考えることは非常に良いことです。また、首都機能を受け入れるために必要な都市づくり構想を考えることも、夢として非常に良いことです。

◆ 国会、国民、地域で首都機能移転の合意ができているのか 
 ☆首都機能移転法案は、当初よりトーンダウンして可決された訳ですが、新進党の細川元首相、鳩山邦夫広報企画委員長ら数人が退席し、米田健三氏は明確に反対しました。その理由は「党内論議が不足している。地方分権や行革などのソフトの部分がないのに、いきなり移転と言う話はおかしい」というものです。
 また、候補地の住民の合意、そして国民的合意ができていないことは、マスコミ各紙が指摘しています。
 愛知県の鈴木知事は「首都機能は誘致を地域間で争う代物ではない。本来あるべきところに落ち着く」と持論を述べています。

◆ 国や地方の財政は大きな赤字を抱えており、さらに財政圧迫を起こすことは確実です。
 ☆国土庁は移転費用を基盤整備2兆円、施設整備費7兆円、用地費5兆円の合計14兆円と試算しています。しかし、この試算には、鉄道や道路など、新首都までのアクセスの新設費用は含まれていません。国の負担は、場合によっては20兆円を越す、という学者もいます。移転先の地形や地質によっては、14兆円は最低ラインと大手ゼネコン関係者が述べています。
移転費用がこのように、一次分ですら14数兆円以上、第二次分はこの10倍必要とも言われています。

 ☆これに対して、国の財政は今、危機的状況です。今年度末の国債発行残高は241兆円に上り、これに旧国鉄債務や地方自治体の借金を加えると、国全体の借金は384兆円に達します。「財政中期展望(95〜99年)」によれば、このままの歳出構造が続けば、十年後の国債残高は二倍の約480兆円になります。国民一人当たり、380万円もの借金を背負う計算です。大蔵省幹部は「将来、国土庁が移転費用を予算要求するなら、ほかの公共事業のどこを削るのかをはっきりさせ、削られる対象の省庁から合意を取り付けてもらうのが先決だ」と述べています。
 硬直化した予算の配分構造を効率化することは重要です。しかし、移転と同時にこうした行財政改革をすすめるという、はっきりした保証もなく、財源確保という最大の難問に目をつむって、移転推進を唱えることは無謀です。

☆ このように、財源確保にほとんど見込みがないことに、突き進むこの間違っています。首都機能移転に膨大な国費を費やすことは、裏を返せば、地方に回る金が減ることです。それは、社会資本整備を遅らせ、福祉や暮らしの充実を遅らせることを意味しています。この財政圧迫の状況の波は、確実に高富町にも等しくやって来ます。高富町住民の暮らしの質を低下させるおそれの強い首都機能移転には、慎重であるべきです。

◆ 用地の見込みがないこと
☆移転のスケジュールは、審議会が来年末ごろをメドに、具体的な候補地を首相に答申、実際の移転先は、首相から報告をうけた国会が決めることになっています。移転先が決まったら、2000年に工事着工、2010年に国会議事堂で開会といものです。
☆移転に当たっては地元の合意が不可欠。国会等移転調査会は、当面の移転用地を約2000ヘクタールとしています。この土地について「国有地等を可能な限り活用する」とされています。
 現在、最も有力とされている那須地域は、広大な国有の実験農地があり、隣接して、同じ規模の土地を一人の民間人が所有している、ここに加えて、ほとんどが平坦地という条件です。東濃には、当面の国会移転に必要な土地すら、ありません。

◆ 地価高騰が起きること
 ☆栃木県の那須では、首都移転がらみの原野商法による土地ころがし行われ、被害者が多数でています。東濃地域でも、不動産関係の動きが盛んと聞きます。安易な誘致論は、地価高騰を起こすことは確実で、慎重であるべきです。

◆ 水の確保や環境への負荷が、十分考慮されていない。
 東濃地域は、昨年、一昨年と極めて厳しい渇水に悩んだ地域です。
 当初は60万人でも大丈夫、としていたのが、最近は、国会開会当初の人口は11万人ほどから、水は大丈夫という、言い方に変わりました。東濃地域の水問題に詳しい人は、これはまだ過大に評価しているとの指摘もあります。人間が生活するのに、最低限必要なものの一つの水の予測がこのような状況では、あまりにも心もとない移転可能論です。
 ☆県→多治見 未使用水6t/秒  60万人として3,7t/秒必要だから大丈夫

◆ 首都機能とは何かが不明確なままの決議も、不明確なものとなってしまいます。
 言われている首都機能とは何なのか、全く不明確です。地方財政への影響があまりにも大きく、移転先として岐阜県が立候補することを、是認するわけですから慎重であるべきです。首都機能の明確な定義がないままの推進決議は無責任であると考えます。
首都機能の移転を議論することは、大いに結構です。しかし、問題の多い移転話に、大切な税金や役所、議会のエネルギーを使うことより、きっちりとした産業の育成、まちづくりにこそを努力を傾けるべぎてある。

 誘致活動を派手にやり、お金をつぎ込んだ所に首都機能がくる訳ではないことは、当然です。

◆以上、首都機能誘致促進決議に反対します。