99年9月議会  
  オウム真理教団の高富町入町絶対反対をする決議(案)の反対討論

日程第6 発議第5号 オウム真理教団の高富町入町絶対反対をする決議(案)につい 
○議長(鬼頭鉄雄君) 日程第6、発議第5号 オウム真理教団の高富町入町絶対反対をする決議(案)についてを議題といたします。
 事務局朗読を願います。
(事務局朗読)
○議長(鬼頭鉄雄君) 提出者であります杉山重男君に提出理由の説明を求めます。
 杉山重男君。
○5番(杉山重男君) 提出の趣旨説明をいたします。
 オウム真理教団は、松本サリン事件を初め数々の凶悪な事件を引き起こし、国民にはかり知れない不安と恐怖を与え続けてきました。そのオウム真理教団は、教団幹部の逮捕と裁判の進行もあり、その活動は一時なりを潜め勢力も弱体したかに見えてきました。
 しかしながら、ここ数年オウム真理教団は活動を再開し、現在全国各地に活動拠点を求めています。その方法としては、経済不況による競売物件等の土地や建物を住民の知らぬ間に取得し、購入しようとしています。御承知のように進出された各地域では、オウム真理教団と住民との激しい紛争が絶えない状況であり、住民はそれまでの平和な暮らしを守るため、日常生活や仕事を犠牲にしながら、日夜反対運動活動をしています。また、その周辺地域にも大きな不安と恐怖を与え、深刻な社会問題となっているのが現状であります。
 よって、本議会で町民の不安や恐怖を取り除くため、オウム真理教団の高富町への入町絶対反対の決議をお願いするものでありますので、よろしくお願いいたします。
 以上です。
○議長(鬼頭鉄雄君) 杉山重男君の提出説明が終わりました。御苦労さまでした。
 発議第5号 オウム真理教団の高富町入町絶対反対をする決議(案)についての質疑を行います。発言を許します、どうぞ。
 寺町知正君。
○1番(寺町知正君) それでは、提出者にお聞きいたします。
 まず1点ですけれども、議会の決議を求めるということですけれども、他の自治体でこういった例があるかどうかについてお答えください。
 それから、もう1点ですが、入町反対、いわば高富町に入ることに反対と、絶対反対ということですね。つまり、行政区、高富町内に入ることが認められないということかと思いますが、通常、憲法の原則から言えばそういったことは考えられないんですが、今回こうやってきちっと提案されるということは、法的根拠があるという前提で出されているのは間違いないと思います。ですから、入町反対という、いわば入町拒否のできる法的根拠を明らかにしていただきたい。
 3点目として、決議ということでありますけど、それでは決議がなされたときの、この決議の効力、それから効果、その二つについてお答えください。
○議長(鬼頭鉄雄君) 杉山重男君。
○5番(杉山重男君) まず第1点のこういう決議をよその市町村でしておるかということでございますが、昨日事務局の方でお調べ願った結果、そういうことをしておる町村はもうあるということでございます。
 それから、第2点目でございますが、そういうことができるかどうかということですね。まず日本では、宗教法人としてオウム真理教団は現在認定されております。外国へ行きますと、いわゆるカルト教団的なものについては、違法があるということで取り締まりの対象になっておるものもありますが、現在の日本では、そういうことを宗教法人という立場として取り締まることはできないということでございます。ただ、そういう宗教法人が、こういう住民、国民に与えたはかり知れない恐怖というようなものを考えてみたときに、我々安全で安心な町高富としては、それを乗り越えて、議会として、やはりそういうものを高富町で来ていただいては困りますということを、議会として当然決議すべきだという立場の上で提出さしていただきました。
 それと第3点目の、そういう効果はどうなんだということでございます。こういうものは、議会だよりあるいは町報等によって住民の間に広報することによって、住民一人一人がそういう認識を持っていただくことによって、そういう方たちの活動が高富町においてはできないよという住民監視の立場において行われるならばそれは十分効果があると、かように思っております。
 以上です。
○議長(鬼頭鉄雄君) 寺町知正君。
○1番(寺町知正君) 今のお答えですが、まず実際に、具体的に他の自治体でこういった例があるということを自信持っておっしゃるなら、自治体名を答えていただきたい。
 それから、二つ目の法的根拠があるかについてですが、宗教法人という意味では法的な規制はできないという答えがありました。それ以外は、今のお答えではないわけですが、そもそも日本の国民、日本に住む人たちは憲法で保障された権利があります。思想、信仰、主義、主張、行動、移動、すべて保障されています。それを、入町拒否というのは、ある自治体が私の自治体だけは憲法に関係なく拒否しますということを意味しています。つまり、憲法違反をこの議会が率先して決議するということであります。今の説明ではそうとしかとれないわけですね。それに対して、憲法違反を是とするのかという点についてお答えをいただきたい。
 それから3点目の、決議の効力及び効果についてお尋ねしたところ、効果の部分だけお答えがありました。それは趣旨としては広報などでされると、住民の方がそういったことを共通認識として持ち、対応もできるのではないかということでしたけれども、もしそうであるなら、お尋ねしたいのは、入町絶対反対という議会が決議したことが、住民に広報されるということの効果しかないのかどうか。たったそれだけのことのために決議をするのかどうか、その三つ改めてお答えください。
○議長(鬼頭鉄雄君) 杉山重男君。
○5番(杉山重男君) お答えいたします。
 手元に取り寄せていただきましたのが、長野県北佐久郡北御牧村議会の決議でございます。そのほか、陳情書とかいろいろあちらこちらで取っていただきました。長野県南佐久郡町村議会議員大会においても、特別決議というようなことでされております。ということですので、第1点目のことに対するお答えでございます。
 第2点目は、法律根拠ということでございますが、現在の法律としてはそういうことで、宗教法人自体を取り締まることはできないと、ただ、その根拠における一番問題点、原点としまして、法律というものは常に変わるものだということが原点にあると思います。どうしても法律というものは、いろいろ人間が知恵を絞ったり、悪く悪用したりすることをされておるわけですけれども、そういうものはどうしても後追いになるのが現状でございます。松本サリン事件でオウム真理教団にしてみてもしかり、過去にありましたねずみ講についてもしかりでございます。そういうようなものが、悪用することによって、やはり法律改正をせねばならないということ、今朝の新聞でもそういうこととして、宗教法人に対する破防法の適用をしてはどうだというようなことまで、次国会で提案されようという動きが今朝の新聞にも出ておりました。やはり、法律というものは、その場その場で生きておる私たちが、皆さんの共通点としてこれがいいんじゃないかということを原点に決められておるものですから、それを悪意を持って破っていくという人たちにおいて、果たしてそのままでいいかということを考えるならば、我々高富町議会としては、やはりそれでは困るんだと、町民の安全を守る、安心を確保するためには、やはり議会としてそういう原点に立って考えれば、当然のことだと思っております。
 それから、第3点目は効果でしたですね。とりあえずはそういうことが一つのものとなって、町民の方が知っていただくというのが一つのスタート時点でございます。そのスタートから先に、どういう方向へ向けるのかということは、我々議会人として、議会としてこれから先、考慮し考えていく必要があるのではないかということでございます。まず第1歩としては、第1歩を踏み出さないことには先へ進めませんので、やはり議会としてまず第1歩を踏み、議会だより等によって町民の方に御理解をいただくということが先決ではないでしょうかということでございます。
○議長(鬼頭鉄雄君) 寺町知正君。
○1番(寺町知正君) それでは、今のお答えについてお尋ねいたします。
 まず、他の自治体の議会ですか、長野県の例がありましたが、当然提出者あるいは賛成者の皆さんも御存じかと思いますが、幾つかの自治体で、例えば市長、町長が教団関係者の住民票を通じて、転入届けを拒否するということを、あるいはそういう自治体で、教育委員会サイドあるいは市長サイドが、学校への子供の入学を拒否するということをいって、そのことの問題を問われて翌日訂正したという例が最近でもあります。それは、日本の憲法あるいはその下にあるいろいろな法律の中で、自治体がとれる範囲というのがあるわけですね。例えば、住民票の転入届けの受付を拒否はできないんですよ。それから、子供たちがそこに住み、学校に行きたいといったときには、住民票があろうとなかろうと、籍がどこにあろうと拒否はできないんですよ、自治体の裁量では。そういうのが日本の当然の足元にある、すべて共通したところなんですね。そういうことを承知の上で、特定の団体、特定の人たちが、ある行政区に入ることを禁止するということが成立するはずはないんですよ。今の提出者の説明では、法律は後追いになると、だからそれに先駆けてという趣旨かと思いますが、そんなことは個人のレベルの話であればともかく、法的な自治法にのっとった議会が正式な決議をするということが許されるはずはない。その点について改めてお答えをいただきたい。
 それからもう1点ですが、条例という関係で一つ問いたいわけですけど、例えば、この議会で倫理条例が成立いたしました。これは町長提案ではありましたけれども、当初はこの議会のサイドが細かい文案まで詰めていったわけです。その中で最終的な案の11条、成立してますが、11条ですね。ここでは贈収賄事件など起こした場合に、逮捕されて起訴され、裁判にかかります。そのときに、当初の案では一審で判決が確定したら、それが有罪であれば一定の責任を求めるということでしたが、その後、いろいろ県と行政からも、県との協議の中でも確定していない一審段階で対応するのはまずいのではないかという指摘があり、最終的には、今回成立した案は最高裁で確定する、あるいは本人が二審で確定してもいい、何しろ確定するまでは対応を求めないという基本姿勢なんですよ。そういう姿勢が明らかで、そういうことをこの議会で議決したんですよ。基本姿勢、確定したからその場合はということは原則なんですよ。だけど先ほど、るるおっしゃったけれども、例えばオウムは、確かに今裁判にかかってます。でも一審ですよ。いろんなことが問題起きてます。私もそれがいいとは言いませんが、それは日本の憲法の中でできることの範囲というのは決まってます。例えば、この町で以前事件を起こした鷲見町長が今執行猶予中です。心配だからこの庁舎には入らないということを、この役場や議会が決めれますか。それはできないことですよ。それと同じことを、皆さんは決議としようと提案してるわけじゃないですか。もとに返って倫理の条例の中で、あなたもそこは委員長としてそこは整理されたはずですが、それと今回の整合性はどのようになっているのか、お答えいただきたい。そういうことを思います。
○議長(鬼頭鉄雄君) 杉山重男君。
○5番(杉山重男君) ただいま、いろいろるるおっしゃられたことは、すべて一人一人個人に関する問題でございます。私の方で提出さしていただいたのは、個人のことについては一言も触れておりません。その辺の根本的な違いをまず御確認いただきたいと思います。
 以上です。
○議長(鬼頭鉄雄君) ほかに質疑ありませんか。
 田中優一君。
○14番(田中優一君) 提案者の杉山議員に1点お尋ねしたいんですけれども、今の
質疑応答を聞いておりますと、その人権侵害というのは憲法の違反にするんじゃないかということで、明確なお答えがありました。私もその辺についてお尋ねをいたしますが、憲法に保障される人権侵害は、このオウム真理教にもあるでしょう。しかし、高富町民にも当然あるべきです。そうしますと、憲法論で人権侵害をしてるんじゃないか、じゃあオウム真理教が入ってきたときに殺人が起こった、これは事実あったことですね。そのときに、その殺された高富町民の人権はどうなる。そうすると、私はこれはフィフティー・フィフティーだと思うんです。だから、私どものこの議会は、高富町民の安全、不安、恐怖、こういうものを取り除くために決議をしようというふうに委員会で決まったと思うんです。それを踏まえて杉山議員は提出をされたと思いますが、違いますか。
○議長(鬼頭鉄雄君) 杉山重男君。
○5番(杉山重男君) 全くおっしゃるとおりでございまして、まず、私どもの町の
恐怖とか不安、そういうものは私たち自身から守るんだという発想でございますので、それは当然、今田中議員がおっしゃられたとおり、私たちが率先して、議会人としてそういう立場に立つべきじゃないかということでございますので、おっしゃるとおりということでございますので、よろしくお願いします。
○議長(鬼頭鉄雄君) ほかに質疑ありませんか。
〔「なし」と呼ぶ者あり〕
○議長(鬼頭鉄雄君) 質疑ないものと認めます。よって、これをもちまして質疑を終結します。
 発議第5号 オウム真理教団の高富町入町絶対反対をする決議(案)についての討論を行います。なお、討論は簡明に願います。
 最初に、反対討論をどうぞ。
 寺町知正君。
○1番(寺町知正君) 決議に反対する立場で討論いたします。
 今回、本日出された決議案ですけれども、特定の組織を名指ししてということでした。質疑の中で個人ではない、団体である、だからいいんだという一つの理由づけもありましたけれども、日本の憲法では、個人であろうと任意団体であろうと、あるいは、例えば会社、それぞれ正式な法人の場合は、その法律があってその範囲内の活動は認められていますし、それに類しない、それ以外の部分は当然できます。そういった意味で、憲法はすべてのことを保障しています。そういった団体であろうと個人であろうと、規制されるものではない。それは確かなことなんですね。そういう意味で、そもそも提出者の認識、これは個人ではないからいいんだというのは、明らかに間違っています。そういった意味では、第1点からそのことでまず反対します。
 それから、仮に憲法という問題を置いて考えても、いろいろな自治体が、例えば住民票の受け付けを拒否し、子供の学校への入学を拒否している。その間違いに気づいて後日緊急に訂正する、そういう例が相次いでいます。全くそれと一緒で、一度言ってはみるけれども、後でそのことの意味に気づいて訂正しなければならない、まさにそのたぐいのものなんですね。許されないことを、公式な議会が議決する、これはそれこそ許されない、憲法違反を奨励するということですね。私はそういったものは絶対承認できないということを思います。
 基本的にそういった点がありますので、今回出された入町絶対反対という決議は、そもそも日本の中では成立し得ないものであり、公的な機関である議会が決議することも許されないと、そういった点で反対いたします。
○議長(鬼頭鉄雄君) 次に、賛成討論はありませんか。
 藤垣邦成君。
○9番(藤垣邦成君) 決議案対して賛成の討論をいたします。
 私ども高富町議会は、住民の福祉の向上、あるいは不安や恐怖を取り除くのは高富町議会の責務であると思います。したがいまして、先ほど来の質疑あるいは反対討論等々聞いておりますと、この決議案から随分踏み込んだ議論をされております。しかし、この決議案が運用をされるというような部分はございません。決議です。いわゆる入町の事実、あるいは住民票の添付、いろいろなことが起きますれば、これは行政府の対応であり、議会としては高富町民の不安と恐怖を取り除く、こういった意味で、この決議案は非常に町民にとってありがたい決議であると、こんなふうに思いますので、賛成討論といたします。
○議長(鬼頭鉄雄君) ほかに討論ありませんか。
 渡辺政勝君。
○2番(渡辺政勝君) 私は、この決議案に賛成する立場から一言申し上げます。
 オウム真理教の行った凶悪な犯罪は、国民周知の事実でございます。しかしながら、ここで述べられておりますことにつきましては、委員長の趣旨に賛成でございますので、議会でこうした決議をすることは、これは社会正義だと私は信じておりますので、私はその立場で賛成をいたします。確かに、基本的な人権の問題はありましょうが、個人を指すのではございませんので、オウム真理教教団の行った行為に対しての議会としての決議として私は賛成いたしますので、よろしくお願いします。
○議長(鬼頭鉄雄君) ほかに討論ありませんか。反対討論ありませんか。
〔「なし」と呼ぶ者あり〕
○議長(鬼頭鉄雄君) 討論ないものと認めます。これをもって、討論を終結します。
 ただいまから、採決を行います。
 発議第5号 オウム真理教団の高富町入町絶対反対をする決議(案)について、本案を原案のとおり可決することに御異議ありませんか。
〔「異議なし」「異議あり」と呼ぶ者あり〕
○議長(鬼頭鉄雄君) 異議がありますので、本案を原案のとおり可決することに賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕
○議長(鬼頭鉄雄君) ありがとうございました。起立多数であります。よって、本案は原案のとおり可決されました。