平成17年2月23日判決言漬・同日原本領収 裁判所書記官
平成15年(行ウ)第10号 住基ネット情報削除申請却下処分取消請求事件
口頭弁論終結日 平成16年10月27日
判 決
岐阜県山県市西深瀬208番地の1
原 告 寺 町 知 正
岐阜市薮田南2丁目1番1号
被 告 岐 阜 県 知 事
古 田 肇
同訴訟代理人弁護士 毛 利 哲 朗
主 文
1 原告の請求中,別紙1及び別紙2の各処分の取消しを求める部分をいず
れも棄却する。
2 原告のその余の訴えを却下する。
3 訴訟費用は原告の負担とする。
事 実 及 び 理 由
第1 請求
1 被告が,原告に対してした別紙1の処分(平成14年11月8日付け市町
村第981号の2)を取り消す。
2 被告が,原告に対してした別紙2の処分(平成15年3月5日付け市町村
第1427号の2)を取り消す。
3 原告が,岐阜県個人情報保護条例に基づいて,平成14年10月16日付
でした住民基本台帳ネットワークに関する個人情報の削除請求に対する被告
の不作為は違法であることを確認する。
第2 事案の概要
本件は,原告が被告に対し,岐阜県個人情報保護条例(以下「本件条例」と
−1−
いう。)20条及び21条に基づき,住民基本台帳ネットワークシステム(以
下「住基ネット」という。)上の原告の個人情報の訂正を請求したところ,被
告がこれを認めない趣旨の処分(別紙1の処分)をし,さらに原告の不服申立
に対して却下決定(別紙2の決定)をしたとして,別紙1の処分及び別紙2の
決定の取消しを求めるとともに,これらが処分に該当しない場合には,被告が
上記請求に対して応答しなかったという不作為の違法確認を求めている事件で
ある。
1 争いのない事実等
(1)原告は岐阜県民であり,被告は本件条例2条2項の実施機関である。
(2)本件条例20条から24条及び27条には別紙3のとおりの規定がある。
(3)原告が被告に対し,平成14年10月16日付け個人情報訂正請求書によ
り,本件条例20条及び21条に基づいて,住基ネット上の原告の住所,氏
名,生年月日,性別及び住民票コードの各情報を削除するように求め(以下
「本件請求」という。),被告は同書面を受領した。
その後,原告には,岐阜県地域県民部市町村課長(以下「市町村課長」と
いう。)名で,同年11月8日付の「個人情報の訂正の請求について」と題
する書面(別紙1)(以下「本件書面」という。)が送付された(以下「第
1行為」という。)。本件書面には,「当該訂正の請求は、条例に基づく請
求とは認められません。」との記載があった。
(4)岐阜県では,本件条例に基づく個人情報訂正請求があった場合には,その
請求に応じて個人情報を訂正するか否かの決定権は,訂正に係る個人情報を
所管する各課の課長に委ねられており,一定の場合に上司の決裁を受けるこ
とになっている(岐阜県事務決裁規程8条,16条,乙10)。
本件請求に対しては,岐阜県地域県民部市町村課が県条例を所管する岐阜
県経営管理部文書法務室と合議をした上,市町村課長の直近の上位職に当た
る地域計画局長の決済を経て,市町村課長名義で第1行為が行われた。
− 2 −
(5)原告は被告に対し,平成15年1月8日付けで,本件条例24条並びに行
政不服審査法6条及び同法7条に基づく不服申立て(以下「本件不服申立
て」という。)をし,第1行為が行政処分であるときはその取消しを,行政
処分でないときは原告のした申請に対する不作為の違法確認を求めた。被告
は原告に対し,平成15年3月5日付けで,本件不服申立てを却下するとの
決定書(別紙2)を送付した(以下「第2行為」という。)。
(6)本件請求に係る情報が管理されている住民基本台帳は市町村長が作成,管
理しており(住民基本台帳法(以下「住基法」という。)1条,3条,5
条),住基ネットでは,住民基本台帳に記載されている情報の一部である
「本人確認情報」と住民票コードが管理されている(住基法7条,30条の
5第1項)。
市町村長は,都道府県知事に本人確認情報等を通知し,都道府県知事は,
通知を受けた情報を一定期間保存しなければならない(住基法30条の5第
1項,第3項)。
都道府県知事は,住基法30条の40に基づく本人確認情報の訂正等の申
出があった場合において,遅滞なく調査を行い,これにより,住民票に誤記
若しくは記載漏れがあることを知ったときは,遅滞なくその旨を当該住民基
本台帳を備える市町村の市町村長に通報しなければならない(住基法12条
の3)。市町村長は,住民票の削除又は記載の修正等をした場合には,当該
住民票の記載に係る本人確認情報等を都道府県知事に通知し,都道府県知事
は,通知を受けた情報を一定期間保存しなければならない(住基法30条の
5第1項,第3項)。
2 争点
(1)ア 第1行為は,行政事件訴訟法3条2項に定める「公権力の行使に当たる
行為」に当たるか否か。
イ 上記アが肯定された場合,第1行為が適法であるか否か。
一 3 −
(2)ア 第2行為は,行政事件訴訟法3条3項に定める「行政庁の裁決、決定そ
の他の行為」に当たるか否か。
イ 上記アが肯定された場合,第2行為が適法であるか否か。
(3)本件請求に対し,被告に行政事件訴訟法3条5項に定める違法な不作為が
認められるか否か。
3 争点(1)ア(第1行為の処分性の有無)についての当事者の主張
(1)原告の主張
第1行為は,被告が原告の本件請求に対し,本件条例を適用して判断しな
いという意思決定をした旨の通知であるから,公権力の行使の側面を有し,
「公権力の行使に当たる行為」である処分に当たる。
(2)被告の主張
第1行為は,原告に本件条例に基づく訂正等の請求権がないことを通知し
た事実行為としての通知であり,「公権力の行使に当たる行為」ではない。
なお,第1行為が被告の意思決定の側面を有しているとしても,それは,
原告の住所,氏名等についての公証行為に関する原告の削除請求を拒絶する
意味であり,原告の権利義務を形成し,その範囲を確定するものではないか
ら,いずれにしても公権力の行使には当たらない。
4 争点(1)イ(第1行為の適法性)についての当事者の主張
(1)原告の主張
本件条例27条5項には「第二十条から第二十四条までの規定は、法令又
は他の条例の規定により、個人情報の訂正の手続が定められている場合にお
ける当該個人情報の訂正については、適用しない。」と定められている。本
件条例が20条の訂正請求権と24条の訂正請求に対する決定等の不服申立
手続を同じ第3節に規定していることからすると,本件条例27条5項の
「訂正の手続」とは不服申立手続までを含む一連の手続であると解すべきで
あり,住基法30条の40には不服申立手続が規定されていないから,本件
− 4 −
条例27条5項の「訂正の手続」に当たらない。
したがって,原告には,本件条例20条に基づく訂正請求権があるから,
同請求権がないとした第1行為は違法である。 、
(2)被告の主張
ア 本件条例27条5項が,法令又は他の条例の規定により個人情報の訂正
の手続が定められている場合に,本件条例20条の適用を除外したのは,
他の法令等により独自の完結した体系的な制度のなかでの訂正制度がある
場合は,本件条例で訂正制度を認める必要はなく,仮に本件条例によって
一般的な個人情報の訂正等を認めるとすれば,他の法令等により設けられ
た訂正制度及び他の法令等の制度の目的趣旨を揖なうことになり,法秩序
の安定を欠き,不当な結果を導きかねないからである。
本件条例27条5項の「訂正の手続」は,県の実施機関が保有する個人
情報の訂正を行う手続のことを指すのであり,本件条例20条から24条
までの定めと同様のものである必要はない。したがって,訂正請求が認め
られておらず,訂正等の申出が認められているのみであっても,個人情報
の訂正等の定めがあれば,上記「訂正の手続」に当たるものである。
住基法の自己の本人確認情報について,その全部又は一部の訂正,追加
又は削除(以下「訂正等」という。)の手続については,住基法30条の
40にその規定があるところ,同条は,本人確認情報の訂正等の申出がで
きることのみを規定しているのではなく,本人確認情報の訂正等の申出が
あった場合は,調査を行って書面で通知するという「自己の本人確認情報
の訂正」に関する手続を規定したものであるから本件条例27条5項の
「訂正の手続」に該当する。
本件条例24条が第3節に規定されていることをもって,上記「訂正の
手続」が「訂正請求に始まって不服申立ができること」までを含むとする
原告の主張には飛躍がある。
− 5 −
イ 原告は,自己の個人情報について誤りがあることを理由として訂正等の
請求をしたものではなく,原告の,個人情報の削除を求めているが,削除
を求める法的根拠は全くない。
ウ 住民基本台帳の整備を行う主体は市町村であり,都道府県その他の行政
機関が住民基本台帳の整備,住民票の記載などを行うこととなれば,統一
的に行う住民基本台帳の制度を阻害することになる。
5 争点(2)ア(第2行為の処分性の有無)についての当事者の主張
(1)原告の主張
行政不服審査法は,不服申立ての内容の適否の判断の前に,不服申立てを
受理し,形式を審査する手続を規定しているところ,本件不服申立ては,行
政不服審査法9条,45条並びに48条で準用する15条1項及び4項の各
要件を満たしており,被告もこれを受理し,第1行為が処分に該当しないこ
と及び本件請求については本件条例20条が適用除外されていることを理由
とし,異議申立の対象とすることができない事項についての不服申立である
としてこれを却下したものである。
また,第2行為は,行政不服審査法48条で準用する同法41条1項の裁
決の方式(裁決は書面で行い,かつ,理由を付し,審査庁がこれに記名押印
しなければならない。)に適合している。
したがって,第2行為は,単なる事実行為としての拒否回答ではなく,行
政処分としての決定(行政不服審査法47条1項)に当たる。
(2)被告の主張
第1行為が処分に該当せず,本件請求については本件条例20条の適用が
除外されている以上,原告には行政不服審査法に基づく不服申立権がない。
第2行為は,法に基づかない原告の不服申立に対する事実行為としての拒否
回答であり,取消訴訟の対象である行政処分としての決定ではない。
6 争点(2)イ(第2行為の適法性)についての当事者の主張
− 6 −
(1)原告の主張
被告は,本件条例27条5項の解釈を誤って本件不服申立を却下したが,
原告には本件条例20条の訂正請求権があるから,第2行為は取り消される
べきである。
(2)被告の主張
第1行為は行政処分に当たらないし,また,本件条例20条は本件条例2
7条5項によって適用除外とされており,原告には訂正請求権がないから,
第2行為は適法である。
7 争点(3)(被告に本件請求に対する違法な不作為が認められるか)についての
当事者の主張
(1)原告の主張
ア 原告は,本件条例20条に基づく訂正等の請求権を有している。しかる
に,被告は本件請求に対して何の応答もしていないから,その不作為状態
が違法であることは明らかである。
イ 本件請求が,法令に基づく申請権者によってなされている以上,仮にそ
の内容が認容されないものであっても,行政庁は応答義務を負う。
(2)被告の主張
ア 原告には本件条例20条に基づく訂正等の請求権がないので,本件請求
は「法令に基づく申請」に当たらない。
イ 仮に「法令に基づく申請」があるとしても,被告は,個人情報訂正請求
に対する決定手続と同様の手続により第1行為を行い,被告としての本件
条例の解釈を示しており,応答義務を果たしている。
第3 当裁判所の判断
1 争点(1)ア(第1行為の処分性の有無)について
被告は,第1行為が,原告に本件条例に基づく訂正等の請求権がないことを
通知した事実行為であり,「公権力の行使に当たる行為」ではないと主張する。
− 7 一
確かに,本件書面には,「決定」,「主文」等の文言がなく,市町村課長名
で作成されている。
一般に,行政庁の行為が処分性を有するか否かを判断する場合において,処
分について書面が存在するときは,文書の体裁,作成名義人と処分権者との一
致,不一致などが重要な要素である。
しかし,常に形式的要素のみを基にして処分性を判断するならば,行政庁が
処分として行うべき行為を,形式的には処分と異なる方式で行った場合に,当
該行為の処分性が認められず,直ちに実体面について司法審査を受けることが
できない。法律上は,不作為の違法確認の訴えを提起する方法もあるが,この
方法によっても,勝訴判決が確定し,申請に対する処分がされて初めて,実体
面の司法審査が受けられるに過ぎない。行政庁が違式の行為をしたにもかかわ
らず,そのことによって処分性が否定されるならば,違式の行為による不利益
を申請者に負担させることとなり,不当である。
そこで,外形的に行政庁の行為があり,その行為が処分の場合の方式に従っ
ていないとしても,実質的に処分と異ならない程度に行政庁の判断が示されて
いるならば,その行為が実質的には処分であると解される。
本件において,別紙1の通知については,次の事実が認められるから,市町
村課長名でされたものであっても,実質的には被告による処分であると解され
る。
(1)第1行為は,本件条例に基づく個人情報訂正請求に対する決定手続と同様
の審議を経て行われていたこと。
(2)本件書面には「市町村第981号の2」という文書番号が付され,市町村
課長印が押捺されており,形式面も一応整っていること。
(3)原告の申請は,「個人情報訂正請求書」と題する書面により,本件条例2
1条1項の規定による請求であることが明示されていること(甲1,2)。
(4)本件書面には,原告の申請に対し,これを認めない旨の行政庁の判断が理
− 8 −
由付きで示されていること。
(5)本件書面に記載された理由は,処分の形式で被告がした別紙2において,
「不作為」について述べられた理由と同じであり,別紙1が発出された時点
で既に内部的に同じ判断がされていたと考えられること。
以上の検討結果からすれば,本件書面は,本件請求が本件条例に基づくとは
認められないとの理由で却下することを通知し,原告の権利利益を制限する内
容であるから,第1行為は実質的には処分であったということができる。
したがって,第1行為は形式面に問題があるものの,公権力の行使に当たり,
処分性を有する。
2 争点(1)イ(第1行為が適法であるか否か)について
本件条例は,「県の実施機関が保有する個人情報」を対象とするものである
(本件条例1条)ところ,本件条例27条5項においては,この情報に該当し
ても「法令又は他の条例の規定により、個人情報の訂正の手続が定められてい
る場合における当該個人情報の訂正については、適用しない。」と定められて
いる。このように規定されたのは,他の法令等により特定の個人情報について
の訂正手続が規定されている場合においても,県の実施機関が保有する情報で
あるからという理由で,本件条例により同一の情報の訂正ができるとすると,
他の法令等により規定された訂正制度及び他の法令等の制度の趣旨,目的を損
ない,個人情報の管理に支障を来すおそれがあるからであると解される。
前記のとおり,本件請求に係る情報が記載されているのは,市町村長が作成
する住民基本台帳であり,都道府県知事は,市町村長から通知される本人確認
情報等を管理している。しかし,住民基本台帳の制度は,「住民の居住関係の
公証、選挙人名簿の登録その他の住民に関する事務の処理の基礎とするととも
に住民の住所に関する届出等の簡素化を図り、あわせて住民に関する記録の適
正な管理を図るため、住民に関する記録を正確かつ統一的に行う住民基本台帳
の制度を定め、もって住民の利便を増進するとともに、国及び地方公共団体の
− 9 −
行政の合理化に資することを目的とする。」ものであって(住基法1条),住
民基本台帳に記載される情報は全国的に統一的な基準で管理されるべきである
と解される。したがって,住基法が条例に委任しない限り,住民基本台帳に記
載される情報の訂正手続を各地方公共団体の条例で個別に定めることは,住民
基本台帳の制度の趣旨,目的を損なうことになる。
原告は,本件条例27条5項の「訂正の手続」とは,訂正請求権があり,訂
正請求に対する判断に不服があるときの不服申立手続までを含む一連の手続で
あると解すべきところ,住基法30条の40には不服申立手続が規定されてい
ないから,本件条例27条5項の「訂正の手続」が他の法令によって定められ
ている場合に当たらないと主張する。
本件条例27条5項の文言は,「訂正請求権」ではなく「訂正の手続」と規
定されており,これは法令又は他の条例が訂正請求権を規定している場合より
も広く,請求権を認めなくても訂正に関する手続を定めている場合を含むと解
される。したがって,住基法30条の40の規定は,本件条例27条5項の
「訂正の手続」に該当するというべきであるから,これと同旨の理由により原
告の申請が本件条例に基づく請求とは認められないとした第1行為は適法であ
る。
なお,本件条例における情報の「訂正」は,「自己の個人情報について事実
に誤りがあると認める」場合に行うものであって(本件条例20条1項),事
実に誤りがあるか否かを問わず,住基ネット上から個人情報を全面的に削除す
ることではない(同項かっこ書内の「削除」は,事実と異なる情報の削除と解
すべきである。)。したがって,原告の請求した内容は,本件条例20条に基
づく本人確認情報等の「訂正」又は「削除」に当たらず,この点からも同請求
権がないとした第1行為は適法である。
3 争点(2)ア(第2行為の処分性の有無)について
被告は,第2行為は,法に基づかない原告の不服申立に対する事実行為とし
−10 一
ての拒否回答であり,取消訴訟の対象である行政処分としての決定ではないと
主張する。
しかし,被告は,本件不服申立を行政不服審査法に基づく異議申立てとして
受理しており,第2行為は,形式の面からみても「決定書」と記載され,行政
不服審査法48条で準用する同法41条1項の裁決の方式に適合している上,
内容の面からみても,争点である本件条例27条5項の解釈について第1行為
と同様の判断をし,その結果,本件不服申立は異議申立の対象とすることがで
きない事項についてされたものであるとして,これを却下したものであり,原
告の本件請求について本件条例20条が適用されるか否かにつき実質的な判断
をしたものである。そうすると,第2行為は,単なる事実行為としての拒否回
答ではなく,取消訴訟の対象である裁決と認めるのが相当である。
なお,仮に本件不服申立が異議申立の対象とすることができない事項につい
てされたものであり不適法であったとしても,これに対する決定が行政処分性
を有しないということになるものではない。
したがって,第2行為は公権力の行使にあたり,処分性を有する。
4 争点(2)イ(第2行為が適法であるか否か)について
原告は,第2行為は,本件条例27条5項の解釈を誤って本件不服申立を却
下したものであるが,原告には本件条例20条の訂正請求権があるから,第2
行為は取り消されるべきであると主張する。
しかし,裁決取消しの訴えにおいては,裁決における違法事由のうち,原処
分を適法とした実体的判断を除いた裁決固有の瑕疵を主張しなければならず,
原処分の違法を理由としてその取消しを求めることはできない(行政事件訴訟
法10条2項)。
しかるに,原告は,上記のとおり主張するのみで,第2行為に固有の瑕疵を
何ら主張していない。
したがって,原告の主張を採用することはできない。
一11−
5 争点(3)(被告に本件請求に対する違法な不作為が認められるか)について
被告は,原告には本件条例20条に基づく訂正等の請求権がないので,本件
請求は「法令に基づく申請」に該当しないと主張するが,本件請求が法令に基
づく申請権者によってなされている以上,仮にその内容が認容されないもので
あっても,行政庁は応答義務を負うと解するのが相当であるから,被告の上記
主張は採用できない。
しかし,前記のとおり,第1行為が実質的に処分であると認められ,被告は
第1行為により本件請求に対する応答義務を果たしているから,原告には,不
作為の違法確認を求める訴えの利益がない。
6 以上の次第であるから,請求の趣旨1については原告の主張に理由がなく,
請求の趣旨2については原告の主張はそれ自体失当であるから,いずれも棄却
することとし,請求の趣旨3については,訴えの利益がなく不適法であるから
却下することとし,訴訟費用の負担について行政事件訴訟法7条,民事訴訟法
61条を適用して主文のとおり判決する。
岐阜地方裁判所民事第2部
裁判長裁判官 林 道 春
裁判官 古 閑 裕 二
裁判官 久 保 田 優 奈
−12 −