水田における農薬空中散布に対する申し入れ書
                            1987年9月10日
 岐阜県農政部長 堀達夫 殿
                      農薬空中散布をやめてほしい人の集り
                                寺町知正

 高富町高富地区では、9月6日、今年三回目の水田への農薬空中散布が行われました。 高富町では、昨年、松くい虫防除の空中散布が問題となり、その際、水田空中散布では、家に農薬が一杯かかる、迷惑している、というような声が少なくありませんでした。「毎年、ベランダに積もった農薬をほうきで掃いて、雑巾で拭き取っている。」「保育所の廊下に白く積もっていた。」「通学の小中学生が下で逃げ回っていた。」というように。  今年、日曜日とはいえ、部活の中学生や通行人が通るなか散布され、駐車中の車の上には、字が書けるほどに降り積もっていました。水田に面した窓を空けている家もあり、洗濯物を干している家もありました。
 また、他の市町村の住民からも水田の農薬散布に付いて、不安の声が寄せられています。 農薬は人体や生態系に有害なものであり、その使用に付いては、慎重にすべき事は、いうまでもありません。空中散布という方法では、農薬が広範囲に飛散することはいろいろな調査で明らかになっています。
 しかし、松くい虫問題の経過から、農薬の危険性を十分把握した上での散布区域の選定について、市町村段階では難しいと考えます。
 ここに、高富町における無謀な散布を黙認してきたことに抗議し、下記のことを申し入れ、県の指導方針を問うものです。

                  記
1、 民家の点在する水田、住宅に囲まれた水田を散布対象区域としていることについて、具体的にどのような基準で指導しているのか。

2、 歩行者があった場合、通行車両があった場合どうするか、具体的にどのような指導をしているのか。

3、 散布地域の適否に付いて、申請時に付された地図で判断しているということだが、高富町の例から、その方法では不十分である事が明らかとなった。高富町と同様な事態は、県下各地で予想される。住民の安全のため、直ちに、実状の調査とその結果の公表を求める。

4、 水田の稲は、地力、品種や栽植、施肥など手入れの仕方によって、水田一枚、一枚違い、病害虫の発生、被害の様相も多様であり、防除の適期、その必要性も様々である。しかるに、農業指導においては、「広域にわたる一斉防除が最も有効である。」とされているが、その根拠となる、有効性と経済性の実証的なデータの公表を求める。

5、 米どころ、佐賀県では、「周辺住民の反対、河川の汚染による魚の死、防除費用の割に殆ど効果が見られない、益鳥・益虫の減少」などの理由で、県の指導によって 83年以後、空中散布は一切行われていないという。今後、岐阜県でも空中散布を中止すべきと考えるが、どうか。
                                     以上
 上記の点について、9月30日までに誠意ある回答をお願い申し上げます。
 
 連絡先  岐阜県山県郡高富町西深瀬208 寺町方   0581.22.2281
                  農薬空中散布をやめてほしい人の集り