岐阜県知事措置請求書
岐阜県知事の措置請求に関する要旨

一 請求の要旨

1,岐阜県は、東海環状自動車道(以下、道路という)の関・養老間のルート公表に伴って、平成六年度、道路関連の支出を含む都市計画審議会費八三二万円を予算化した。これは、道路の現在のルート案を前提にする支出で、アセス関連の図書印刷及び都市計画審議会会議費用等である。

2,また、高富や岐阜の地元説明会が紛糾、深夜に及び、職員の超勤手当支出もかさんだ。

3,しかし、道路の現在のルート決定は、高富町内に関して、以下の理由で、違法で無効である。

4,大気汚染、騒音、振動、粉塵、日照阻害、低周波、夜間照明、地盤沈下、家屋倒損壊など周辺の住民や環境への被害が発生する恐れが大きく、水害の危険等も高まる。

5,アセスにおいて、社会的状況の把握がされていない。車速、交通量の予測、バックグランドの設定等が不合理である。公害防止に係る調査、予測が不十分である。水質汚濁、地盤沈下、地形地質、振動、景観等の調査や予測の評価がされず、インター周辺についてはアセスがされていない。

6,阪神大震災では、被害が軟弱地盤に集中し、高架橋の安全性など構造物や地盤の強度などが問われている。アセスのあらましではルート選定の前提として「軟弱地盤を通過しない」としているが、高富ルートの大部分が軟弱地盤(濃尾震災で大陥没)であり、全く背反している。根尾谷断層も直近を通っている。

7高富インターの立地は、他のインターと比べて、住宅密集地や既存集落への近さ、インター及びアクセスのための用地の広さ、立ち退き件数の多さなど、極めて特異的かつ不合理な設定である。

8,高富インター周辺で三十軒以上の立ち退きがあり、更に、アクセスの変更で立ち退きが多数増加し、悪影響が高じる。

9,立ち退き数に加え、町内全体に高地価地域のため道路用地費等がかさむ。

10,高富町内では、道路周辺の圧倒的多数の住民が、ルート変更を求めている。

11,高富町三次総では、インター周辺及び西側トンネル付近は第二種住居専用地域、本線の通過する町内中心部は住居地域とされており、案はこれを反故にするものである。

12,実際に、高富町の中南部は急激な住宅化が進み、一方、広大な北部は企業進出等も可能である。このような高富町の将来の都市計画を考え、かつ公共の福祉を考えた時、案は甚だ不適切である。

13,案を変更する事で、これらの問題を解消でき、この場合、本線通過車及び地域住民の距離・所要時間等の利便性に殆ど変化はない。

14,このように違法なルート決定を前提にして、道路関連予算を執行する事及び人件費を支出する事もやはり違法性をおびる。よって、知事は、道路関連の違法な支出をしてはならない。

二 請求者 (別紙   名)

 右、地方自治法第二四二条一項の規定により、別紙事実証明書を添えて、必要な措置を請求します。

一九九五年三月二十七日
岐阜県監査委員 川添正幸 様 
岐阜県監査委員 佐竹辰雄 様
岐阜県監査委員 田口淳二 様  
岐阜県監査委員 杉山友一 様


甲第一号証  東海環状自動車道地元説明会の県配布の資料
甲第二号証  東海環状自動車道の説明会 案内チラシ 
甲第三号証の一〜三 説明会の報道記事
甲第四号証  中央公害対策審議会の答申
甲第五号証  「インターチェンジ幾何構造設計要領」の写し
甲第六号証  【脱・クルマ社会 道路公害対策のすべて】(発行・自治体研究所・九四年九月出版)「第一編 第二章 深刻さ増す道路公害」
甲第七号証  【日本の公害 第九巻 交通公害】(発行 緑風出版・九三年七月出版)
        「第三章 自動車公害訴訟  交通公害対策の諮問・答申」 
甲第八号証  公害の報道記事 
甲第九号証  「建設省所管道路事業環境影響評価技術指針」の写し
甲第十号証  前述【脱・クルマ社会】 「第一編 第四章 道路の基礎知識」
甲第十一号証 前述【脱・クルマ社会】 「第二編 第二章 疑問だらけの環境アセスメント」
甲第十二号証 論文「道路の環境影響評価におけるNOx予測方法の問題点」([日本の科学者】第二八巻第五号)甲第十三号証 論文「住民を欺くアセスメント」(【日本の科学者】第二九巻第九号)
甲第十四号証 インター予定地周辺の状況・特性調査報告(東浦自治会国道対策協議会の資料)
甲第十五号証  東海環状自動車道・他のインター予定地周辺の立地状況の比較報告
甲第十六号証の一〜十一 周辺自治会等の国、県、町へのルート変更の要請書の写し
               (署名人数等は行政が把握済み)など住民の動き
甲第十七号証の一〜二 ルート上の各自治会のルート変更要望状況と報道記事
甲第十八号証 説明会における問題点(シンポジウム資料)
甲第一九号証  高富町第三次総合計画・計画書にある用途地域計画図の写し
甲第二十号証  代替案の一例の図示
甲第二一号証  素案インターと代替案インターへの、周辺地域からの距離・所要時間等の利便性の比較報告