控   訴   状
   控 訴 人  原告選定当事者  寺  町  知  正
   被 控 訴 人 (被告) 田  内  賢  外三名

   寺舎建築目的違法地区協力費返還請求事件
      訴訟物の価格 金九五〇、〇〇〇円
手数料額  金六〇、一五〇円
  郵券   一三、八四〇円

        原告選定当事者    寺  町  知  正
            岐阜県山県郡高富町西深瀬二〇八の一
        TEL・FAX 0581−22−4989

 一九九九年一二月二二日
名古屋高等裁判所 御中

 右当事者間の岐阜地方裁判所民事第二部平成一一年(行ウ)第一号寺舎建築目的違法地区協力費返還請求事件について、一九九九年一二月八日に言い渡れた判決は、全部不服であるから、控訴をする。
       原判決の表示
       主 文
 一 本件訴えを却下する。
 二 訴訟費用は原告の負担とする。
       控訴の趣旨
 一 原判決を取り消す。
 二 被告四名は、岐北衛生施設利用組合に対し、連帯して、金一億二五〇〇万円及びそれに対する本訴訟送達の日から完済まで年五分の割合による金員を支払え。
 三 訴訟費用は、第一審、二審とも、被控訴人の負担とする。
 との判決を求める。
控訴の理由
 詳細は、おって準備書面をもって提出する。

     右控訴人    原告選定当事者
               寺 町 知 正 外九名 
                                                  以 上


平成一二年(行コ)六号
  寺舎建築目的違法地区協力費返還請求控訴事件
控 訴 人 原告選定当事者  寺  町  知  正 外三名
被 控 訴 人 (被告) 田  内  賢  外三名

         控  訴  理  由  書

      原告選定当事者    寺  町  知  正
          岐阜県山県郡高富町西深瀬二〇八の一
      TEL・FAX 0581−22−4989

 二〇〇〇年二月一日
名古屋高等裁判所 民事三部 御中

 一九九九年一二月八日付け岐阜地裁判決に対する一二月二二日付け控訴の理由を述べる。

第一 正当な理由の判断は、経過に即して的確、厳密にすべきである。
 一 本件訴訟は、極めて深い利害関係人の意図的な働きかけによって、組合から任意の地元集落に公金が支出され、さらに特定宗教団体のために流用されたことの違法・不当を争っているものである。 本件支出は、九六年三月から九七年六月にかけて支出されたものであるが、控訴人寺町知正は九八年三月議会で「組合が地元武芸川町に地区協力費を支出した」ことを話題にし(乙第四号証)、 九八年五月ころこれについて「地区協力費が寺の建築に回った」とのうわさを聞いたが、九八年八月に武芸川町の住民から、「組合から直接、集落に支払われ、それが寺の改築に回された」ことを聞き、疑問をもち、弁護士らに相談、九八年九月に事実関係を確認して、その後の速やかな期間のうちに監査請求したものである。

 二 平成一一年(行コ)第七二号、平成一一年九月二一日東京高裁判決(甲第八号証)は、土地の売買契約契約から約三年後に現地を確認して違法・不当を認識し得た事につき正当な理由があり、相当な期間内の監査請求と認定して、審理を差し戻している。
 右判決の認定事実(甲第八号証七頁)は「七年三月一六日、中野区は土地を購入する売買契約を締結した。控訴人は八年五月ころ、議会でこの取得問題の審議での指摘を知り、八年七月一六日、中野区長に情報公開請求したが、地番・所有者名が非公開であったので、異議申立した。区長はこれに対する一部公開理由説明書で『平米単価が異なること』等を説明し(八年一一月)、後に、公文書公開審査会の答申に従って売買契約書を公開した。そして、控訴人は九年一〇月一五日、これを見て初めて地番と売主を知った。控訴人はさらに土地購入代金の領収書等の公開を請求、九年一 一月一三日ころ、振込依頼書の写しを入手して、間違いなく代金を支払っていることを確認した。
 控訴人は、売買代金が他より高くても、他と比べて価値があれば違法、不当と指摘することは難しいので、現地を確認する必要があると考え、九年一二月一日ころと一〇年一月二二日ころ、現地に行き、さらに一〇年二月一四日に現地の本件土地を見て、他の土地と何ら変わらないこと知り、 他の土地の三倍の価格で購入する理由はないと考えるに至った。そこで、一〇年三月二六日、監査請求した。」というものである。
 そして正当な理由についての高裁の判断(甲第八号証一二頁)は、「控訴人は不当に高額で土地を購入したことを問題としているものである。控訴人は、八年七月二九日、本件土地だけが高額であることを知ったが、区長の非公開により、控訴人が地番を知ったのは九年一〇月一五日であり、 その後、一〇年二月一四日に現地を検分し、土地の購入が違法であると考えるに至った。そうすると、控訴人が違法と主張する事由が存在することを知ったのは、一〇年二月一四日になってからと認められる。本件はそれから相当な期間に監査請求をしたものである。」としている。

 三 右の事案での正当な理由の判断は、議会での問題指摘があったことを知った日や土地の地番や地主を知った日などのいづれでもなく、「支出があったことを知った日」でもなく「支出の違法性を認識できた時点」であって、本件においてもその時点を精緻に判断する必要がある。
 以下に述べるように、本件は正当な理由が認められるべきである。

第二 本件支出が違法、不当と認識できたのは九八年九月である。
 一 控訴人らは、九八年八月ころまで、自然に、組合から武芸川町に支出されたものであろうと考えていた。なぜなら、国が県や市町村に、都道府県が市町村(や一部事務組合等)に対して、種々の名目をつけながら、補助や交付金等として公金を支出することは、珍しくないからである。例えば、 この数年来、廃棄物処分場などの問題が重大な県政及び市町村行政の課題となっているが、廃棄物処分場は火葬場と同様に、俗に迷惑施設と言われ、岐阜県は市町村に処分場を誘致したところには、億円、あるいは五億円を使途制限をつけずに補助金として交付する(甲第九号証)など、住民は、このような自治体間の「一定の事業関連名目での公金の提供」を通常、身近なことと感じているのである。本件組合も、県の補助金や資金的助成を受けている(甲第一四号証)。

 二 控訴人らは、九八年八月ころの武芸川町住民から「火葬場に関する地区協力費が、宇多院地区に渡され、これが強引に寺の建築資金に丸ごとスライドされて、寺の新築や寺の敷地内に公民館を造ったりされている、こんなことが許されていいのか」との指摘(原告準備書面(一)の第二)で、以前のうわさのとおり、本件組合から直接に支出された可能性があると懸念をもつに至ったものである。
 そして、このことをどう理解してよいかを、九八年九月九日、岐阜県大垣市にある西濃法律事務所の弁護士に相談(相談料の領収書(甲第一〇号証の一)あり)したところ、事実関係の整理の必要性、即ち支出がいつ、どこに対して、どのような理由、どのような手続きでなされたかを議事録などで確認することが必要であると指摘された。さらに、もし組合から民間団体に直接支出されたものであるなら「贈与」と見るべきで、「公的火葬場建設」に際して、それは何ら必要性のない、理由のない支出と言えるであろう、と指摘された。翌日、同弁護士より判例の提供もうけた(甲第一〇号証の二・FAXの日付あり・全七頁のうちの第一の一頁のみ提出。本文や判例等は本件訴訟の方針にかかわるためカットした)。
 そこで、控訴人は後日、本件組合事務所を訪れ、議会議事録を閲覧し、本件支出が債務負担行為として議決され、議会の提案説明において、組合が宇多院地区に直接支出するものであることの記述を見たものである(原告準備書面(一)の第二)。なお実際に、支出の証拠を確認したのは、本件訴訟の書証(乙第一、二、三号証)においてである。

第三 原審判決の理由一の2「正当理由の検討」に対して
 一 (一)に関して
 平成八年五月三〇日の会議について、高富町議会は従前より、会議当日の配布資料は、傍聴者 (高富町議会議員であろうが、住民であろが)には一切配布しないから、傍聴者が「資料に記載されていること」をもって、地区協力費が集落にわたったことを知ることは不可能である。もし仮に、資料を配布されていたとしても、事業計画案(乙第七号証・四枚目)に二ケ所の記載があるとはいえ、「地区協力費」とのみ記されいるのだから、支出先が「集落」であると理解することは困難である。
 当日の会議の議事録(乙第七号証・一〜三枚目)にも、地元協力金についての説明があった、あるいは質疑があった、審議があったとは、全く記録されていない。

 二 (二)に関して
 平成九年一二月五日の会議の場合も、右同様である。

 三 (三)に関して
 組合運営に関しては、市町村議員は一般住民と何ら変わらない立場である。
 原審被告の主張において控訴人寺町知正が高富町議会議員であることをもって、特に諸事情に詳しいとされているが、高富町行政の事務事業であるならともかく、本件は他の地方公共団体の事務事業である。
 本件組合の議会は、各首長と「当該町村の議会議長と他の議員一名」の町村議会議員から構成されている(組合規約五条一項・甲第一一号証)。これに該当しない多数の町村議員は、一般の住民と何ら異なることのない立場である。一般の町村議員には組合議会の会議の日程すら知らされず、予算書や議案書などを見ることも想定し得ない。原審は、この点、事実誤認している。
 また、組合の事務事業の内容が住民に広報されることもない。
 控訴人は、本件組合が火葬場の建設地である武芸川町に「地区協力費」という名称を冠して補助金的に支出したものであろう、という理解をしていた。
 実際に、「地区協力費」とはそのように受け取れる説明がなされていた(原審原告準備書面)のであり、控訴人寺町知正の九八年三月の議会質問も、「組合は・・武芸川町に二五〇〇万円払う」(乙第四号証・一八七頁下から八行目)「地元である武芸川町に一億二五〇〇万円が地区協力費という名目」(乙第四号証・一八八頁九行目)というように問うている。そして、これに対する町長の答弁は、「地区協力費に上乗せしようと考えられたもので」と言うもので「集落に支出された」ことを答弁しているのでなく、「武芸川町に」にという質問に対して「上乗せ」と答弁しいているのみである(乙第四号証・一八九頁四行目)。第三者が、これら議会質疑を傍聴し、あるいは議事録をみても、「集落に支出された」と理解することは困難であって、「組合は武芸川町に支出した」ものと理解することは間違いない。
 これに関して、組合の構成町村長である高富町長は組合議員であり(組合規約五条一項)(甲第一一号証)、組合の管理者は町村長の互選であり(組合規約六条一項)、組合議会とは別に組合構成の町村長だけの会議(例・甲第七号証・五月一一日、六月一〇日欄)が日常的に開催され、さらに町村長らは県との交渉にも当たる(例・甲第七号証・六月一二日欄)など、実質的には組合の執行部に準じている。この重要で組合の内情、経緯を熟知する立場にある高富町長が、右議会で、質問に対して右のように答弁している事の意味は重い。
 四 (四)に関して
 議会報告(乙第五号証)に記載されている控訴人寺町知正の質問部分は、「寺町知正が自らの発言を要約して出稿したもの」である。答弁部分は町長が出稿しているはずのものであるが、答弁の前段は答弁の要約であるも、「後段の五行」即ち「用地取得前払金の取り扱い・・・努力します」の部分は、実際の答弁と完全に異なり、議会後に広報紙のために意図的に作文されたものであることは、議事録(乙第四号証)の町長答弁部分に一切記録されていないことで明らかである。
 以上、本会議での質疑を高富町内に配布した議会報告(乙第五号証)の記載から地区の意味、支払いの時期、方法などを理解し得ないのは明らかであるばかりか、その答弁の内容の核心部分において質疑の事実と全く異なることが報告されているのである。

 五 (五)に関して
 地方公共団体の住民は当該団体の支出に関して住民監査請求でき、一部事務組合に対しても、その構成自治体の住民に限りできるものと考えられている。よって、高富町の住民は、本件組合の支出に対しては住民監査請求できるものの、武芸川町に一度支出された公金については、それが武芸川町の会計として(適法、違法にかかわらず)どのように処理されようと、高富町住民の関与できる範囲を越えている。であるから、平成一〇年五月八日提出の別件の住民監査請求において、控訴人らは、武芸川町から先の事として、真偽に関係なく、うわさに聞いた「宇多院地区の寺院の改築費となった」ことを記することで、従来よりいろいろ面での問題がうわさされていた武芸川町の行政や議会関係者の自覚を促すつもりで、請求書に記載しただけである。
 別訴平成一〇年(行ウ)一四号にかかる事件(乙第六号証)においては本件組合の業務の杜撰な運営、会計体制が問われ、本件被告田内らの強い関与も主張されているが、第一回口頭弁論の直前の九月三〇日になって、本件被告河村孝夫ら二名の地権者から一〇〇〇万円が自主的に組合に返還されたとの証拠が提出された(甲第一二号証)。返還によって訴訟は取り下げられたものの、その支出の違法の認識が関係者に共通していたことはいうまでもない(甲第一三号証)。
 本件に関して、右別訴の前置たる監査請求提出の時点である平成一〇年五月八日ころにおいて、控訴人らは組合の諸々の面における杜撰を認識し、これは同年九月末の金員の返還によって住民が広く認めることになった(甲第一三号証)のであるが、本件事案のうわさについて、右から類推して違法なことを平気で行った可能性はあり得るので、調査し、もし事実であれば放置してはいけない、との強い懸念を持つに至ったことは当然である。
 控訴人らが平成一〇年五月八日ころに本件の違法・不当の認識をもっていれば、右一〇〇〇万円と同時に返還請求していたことは、疑う余地のないことである。しかし、この時に監査請求しなかったのは、右に述べてきたとおり、違法たる事実の認識を有していなかったからにほかならない。

 六 「本件の最終支出日である平成九年三月二九日から起算して」(判決文一四頁、一行目)の月日は、「平成九年六月二五日から」の誤りである。

 七 本件組合の火葬場は、九八年四月のオープン以後広く一般に配布している施設紹介のパンフレットにおいても、支出のうち二番目に多額な経費であるにもかかわらず、地区協力費支出を公表していない。本件支出を秘匿しようとする意図が明瞭である(甲第一四号証)。

 八 以上、原審判決が「平成一〇年五月八日ころには、本件地区協力費が寺院の改築費となったことを確実に認識した」としたことは、経緯や、書証の確認が不十分であり、事実誤認であるままに 「以上によると、遅くとも平成一〇年五月八日ころには、本件各支出が違法、不当になされたことを知ることができた」(判決文一七頁)としたことは、明らかに誤っている。
 控訴人らが、支出の違法・不当性を基礎づける事実を認識し得たのは、九八年九月の議事録の閲覧をした時しかないのである。

第四 以上のように、本件監査請求は、一年を経過してなされたことについて正当な理由があり、その後の相当な期間内に請求されたものである。本案の審理において、利害関係人の関与、一般住民への秘匿など、より明確になるのであるから、本件は一審に差し戻されることが正当である。

第五 本件支出が武芸川町の集落に直接支出することを記録した公式文書として、組合議会の議事録の提出を、本日別途申立ている。もし、所持者より速やかな提出がなければ、文書提出命令の申立を行わざるを得ない。
        以 上