岐阜県市町村職員退職手当組合 組合長
措置請求書(住民監査請求書)
組合長の措置請求に関する要旨
一 請求の要旨
一、「岐阜県市町村職員退職手当組合(以下、組合)」(岐阜県町村会内・組合長職務代行者・副組合長吉田三郎羽島市長)は、高富町を含む岐阜県内、八市八五町村(その他事務組合等)の常勤職員に対する退職手当の支給に関する事務を共同処理する一部事務組合である。
二、地方自治法第二九二条は一部事務組合について普通地方公共団体に関する規定を準用しており、右地方公共団体の住民の一般的利益を保護するため、住民監査請求ないし住民訴訟が認められている。
三、高富町長鷲見岩男は一九九七年五月七日、収賄容疑で逮捕された。五月一三日辞職届を提出、六月二日に当然退職となる(地方自治法第一四五条)。一方、五月二八日、起訴され、地検によれば本人は金銭授受やわいろ性を認めている。
四、組合条例第一五条において「職員が刑事事件に関して起訴された場合において、その判決の確定前に退職したときは、一般の退職手当等は支給しない。ただし、禁固以上の刑に処せられなかったときは、この限りでない」とされている。
しかるに、高富町や高富町議会及び組合の内部等には「容疑事実は、一般職時代の事なので、条例第一五条は該当せず、町長の辞職になれば、速やかに町長職の退職金が支給されることになる」との考え方がある。 なお、高富町長鷲見岩男の退職金は三八五万円と計算される。
五、本件はこのまま放置すれば、違法な退職金支給がなされる蓋然性があり、また支給されれば回復困難な損害が生ずる恐れがあり、組合長は違法な支出をしてはならず、地方自治法第二四二条一項によって差し止めを請求する。
国民の強い批判がありながらも、依然として公職者の不祥事が頻発することに対し、公職者自らの倫理観の欠如が指摘されている。不祥事には制度的に厳しい措置を講ずることが求められており、広く公務員倫理の確立に資するために、本監査請求に至った。
二 請求者 別紙 (もうガマンできない高富町民の集まり・72名)
右、地方自治法第二四二条一項の規定により、別紙事実証明書を添えて、必要な措置を請求します。
一九九七年五月三十日
岐阜県市町村職員退職手当組合 監査委員 田口久男 様
岐阜県市町村職員退職手当組合 監査委員 渡辺
宝 様
別紙事実証明書目録
第一号証 逮捕を報ずる新聞記事
第二号証 辞職の経緯を報ずる新聞記事
第三号証 「退職金は、法令により支給されるべきもの」との記述がある議会請願の結果通知
第四号証 「支給せざるを得ない」という組合の回答を報ずる新聞記事
岐阜県市町村職員退職手当組合 組合長
措置請求書(住民監査請求書) 補充書
一、「岐阜県市町村職員退職手当組合(以下、組合)」は、高富町を含む岐阜県内、八市八五町村(その他事務組合等)の常勤職員に対する退職手当の支給に関する事務を共同処理するため、一九六一年十月一日施行の組合規約に基づき設けられた地方自治法第二八四条所定の一部事務組合で、同規約を受けて、組合退職手当条例が退職手当を受けるものの範囲及び退職手当額等の実体的要件を規定し、右退職手当の支給手続として組合条例施行規則を設けている。右規則によれば、退職組合を組織する市町村等の職員が退職し退職手当を請求するには、所定の退職手当請求書を退職当時所属の市町村等の長を経て組合長に提出し(第二条)、市町村長がこの請求書を受理したときは、これを調査し、その記載の正当であることを確認のうえ証明し、速やかに組合長に送付しなければならない(第五条)とされている。他方、組合長は、請求を受けたとき、これを審査し、その請求が正当であると認めたときは裁定通知書を市町村長を経て請求者に交付し、審査上必要があると認めたときは、請求者に出頭を命じ、または必要な書類の提出を命ずることができ(第六条)、場合によっては退職手当の支給を差止め又は返還を命ずることができる(第八条)とされている。手当は、請求者に直接支給される(第七条)。
二、 地方自治法第二九二条は一部事務組合について普通地方公共団体に関する規定を準用している。また、組合は退職手当の支給に関する事務を共同処理するため、その経費を組合を組織する地方公共団体に分担させ(規約第一三条、第一四条、第一五条)、監査委員も設置されている(規約第十条)から、その財務会計上の行為について、右地方公共団体の住民の一般的利益を保護するため、住民監査請求ないし住民訴訟が認められている。
三、 高富町長鷲見岩男の一九九七年五月七日、収賄容疑で逮捕された(第一号証)。五月一三日辞職届を提出、六月二日に当然退職となる(地方自治法第一四五条)(第二号証)。一方、五月二八日、起訴され、地検によれば本人は金銭授受やわいろ性を認めている。
四、 地方公務員法は《懲戒》について、第二九条一項の二【職務上の義務に違反し、又は職務を怠った場合】、同項の三【全体の奉仕者たるにふさわしくない非行のあった場合】としている。これら地方公務員法の規定は組合条例第十条《退職手当の支給制限》で、特別職にも準用されている。今回の事件は、明らかにこれらに該当するものである。
また、組合条例第一五条において「職員が刑事事件に関して起訴された場合において、その判決の確定前に退職したときは、一般の退職手当等は支給しない。ただし、禁固以上の刑に処せられなかったときは、この限りでない」とされている。
しかるに、退職金を支給しないようにという請願について、高富町議会は請願を不採択とし、議長はその理由に「退職金は、法令により支給されるべきもの」としている。また、組合の内部には「容疑事実は、一般職時代の事なので、条例第一五条は該当せず、町長の辞職になれば、速やかに町長職の退職金が支給されることになる」との考え方がある(第四号証)。
なお、高富町長鷲見岩男の退職金は三八五万円と計算される(条例第六条、第九条の二)。
五、 その他は今後、適宜補充する。