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地域情報化事業及び行政防災無線事業に関する山県市職員措置請求書(住民監査請求書)
【1 請求の趣旨】
第1−A 本件事業内容の経過と概要(CATV事業)
1, 事業の概要
山県市は、2004(H16)年度から来年度にかけて、町村合併の目玉事業として、高富町が10年ほど前から実施していた公営の有線テレビ事業を、美山・伊自良地域に拡大し、更にインターネット及びIP電話等実施する地域情報化計画を予定している。
2, 多額な税金を使うこと
市民一人当たり約10万円、一世帯当平均約30万円もの税金を使って進める事業であるのに、一世帯当たり52500円もの加入金を徴収するという、市民に著しく高額な負担を要求する事業である。
3, 計画策定の予算
(1)H15年当初予算では、次のとおり、計上された。
情報化計画・セキュリテイポリシー策定業務委託料 3150万円(合併特例債)
ケーブルテレビ施設整備事業実施設計委託料 630万円(合併特例債)
(2)市は、「山県市地域情報化計画書作成及び有線テレビ施設整備実施設計業務」として、「(株)シーテック 岐阜支社」、「ビーム計画設計(株)」「(株)東海システム設計」「(株)エヌエイチケイアイテック 岐阜事業所」「日本農村情報システム協会」の5社を指名、2003(H15)年8月29日に実施した入札において、「日本農村情報システム協会」が3465万円(税込み)で落札した。
指名段階から、業務の期間は「契約締結からH15年12月25日」とされていた。
(3) しかし、業務の完了は2004(H16)年3月末となった。
山県市地域情報化計画書(以下「計画書」という)としての取得はそれ以降である。議会議員へ初めて配布されたのは、予算を議決した議員にでなく、新市の議員の改選(4月18日投票)後の新議員に対して5月12日であった。
市がインターネットに計画書を掲載したのは5月13日である。
(4) ところで、市は、2004(H16)年2月27日、新年度予算を発表、本件事業は、25億4641万円で機器の整備とケーブルを敷設とされ、その他を含めて26億7373万4000円の予算である。3月、議会は同予算を可決、同時に次年度に7億4858万6000円で加入者宅までのケーブル配線など経費も債務負担行為として議決した。支出予定総合額は、34億2232万円である(甲第1号証)。
財源は、合併特例債と一部は美山地域の過疎債が中心である。
4, 入札
2004(H16)年度6月1日、一般競争入札を告示、仕様書等をインターネットに掲載、同時に、入札参加資格の申し込み期限を6月1日から同6月11日までとし、この間を標準仕様書などの閲覧期間として、希望者に市役所303会議室で閲覧させ、書類の写しを交付した。入札は、7月16日実施予定である。
第1−B 本件事業内容の経過と概要(防災無線事業)
1, 事業の概要
山県市は、2004(H16)年度から来年度にかけて、町村合併の目玉事業として、防災無線整備計画を予定している。
公用車等の移動系のデジタル地域防災無線設備整備、親機やマスト整備のためアナログ同報系設備整備、高富地区の全世帯への受信機(約6000台)無償貸し出しなどに、約11億円である。
2, 多額な税金を使うこと
市民一人当たり約3万円、一世帯当平均約9万円もの税金を使って進める事業であ。
3, 計画策定の予算
(1) H15年当初予算では、次のとおり、計上された。
防災無線設計調査・周波数統一化 530万4千円 (県補助金420万円)
美山・伊自良地区は既に防災無線が整備され、各世帯にも受信機が全戸に無償貸し出しされ、他方で高富地区では、まっく整備がさてれいない。
(2) 市は、「山県市防災行政無線設備実施設計業務」として、「日新電通技研(株)「名通エンジニアリング(株)」、「ビーム計画設計(株)」「三和電子株式会社 東海支店」の4社を指名、2003(H15)年7月31日に実施した入札において、「ビーム計画設計(株)」が383万2500円(税込み)で落札した。
指名段階から、業務の期間は「契約締結からH16年3月31日」とされていた。
(3) 山県市防災行政無線設備設置計画書は、2004(H16)年3月に作成された。議員には配布されていない。
(4) 2004(H16)年度は、山県市全域における公用車等の移動系の防災無線として「山県市デジタル地域防災無線設備」整備として3億8865万4000円を議決している。また、親機やマスト整備のためのアナログの「山県市防災行政無線(同報系)設備」整備として2億7098万6000円を議決している。
さらに、2005(H17)年度は、「山県市防災行政無線(同報系)設備」整備として4億6462万5000円を予定し債務負担行為として議決しており、高富地区の全世帯に受信機(約6000台)を無償貸し出しする計画である(甲第1号証)。
以上合計11億2426万5000円である。
財源は、主として合併特例債が中心である。
4, 入札
現在、総務省と周波数帯などの協議中で、本年8月〜9月の入札実施の方向である。
第2 基本姿勢の誤り
1, コンセンサスの獲得
ケーブルテレビ事業は、地域情報化の根幹となる情報通信基盤整備事業であり、自治体の将来を託す事業の一つになり得るといえる。そうであるからこそ、まず、住民のニーズに耳を傾け、地元に受け入れられる現実味のある整備構想を打ち上げることが不可欠である。
2, 住民ニーズの把握の欠如
最初からコンサルタント会社やメーカーのお膳立てに乗るのではなく、公共性の高い地域密着型の情報基盤だからこそ、地元の民力に見合った規模で住民のニーズに合ったサービス内容を皆で考えて決定するほうがまわりくどいようでも、最終的には実現の早道になる。
時間をかけて住民のニーズを吸い上げ、かつ盛り上げていく段階で、ケーブルテレビを活用する盤石なグランドデザインを自治体自らが描いていくことが必要である。
しかし、本件は、それらが全く欠如している。例えば、住民アンケートの実施は、委託契約完了間際の2003(H15)年度12月13日から12月26日である(計画書29頁)。
市に住民意向を反映させる意志がなかったのは明白で、かつ、実質的にも、到底、計画に反映されているとはいえない。
3, 計画策定業者選択の誤り
(1)「日本農村情報システム協会」らは、国会でも問題とされた不適正業者である。 日本農村情報システム協会を指名したことは、業者選択の誤りがある。
国会議事録・議論からしても、入札結果は予定されたものというしかない。
(2)【146回国会農林水産委員会 第3号 平成11年11月17日】
「非公共事業部門に関しては、今言った五つの公益法人が事実上仕事を独占している状態である。それも、調査委員会の最初の報告にあったように、恣意的に、ここを使えというふうな話で、暗黙の圧力というか、市町村の方々は、予算を採択する前に、採択してあげるから、あらかじめこの公益法人を使いなさいということを実は言われたという市町村もあるぐらいなんです。つまり、そういう仕組みですから、市町村は非公共事業の新規採択を受けて、そのコンサルタントをこの公益法人に委託をする。」
【147回国会 農林水産委員会 第1号 平成12年1月25日】
「今回の問題では、特にこの公益法人が、いわゆるソフト事業の受託、それから、 外注を通して疑惑の温床になったという報道もあります。」。このときの答弁では、コンサル業務の廃止が予定されているとされていたが、結局、今でも続いている。 それが不正の温床だということは政府もよく理解しているのにかかわらず、である。
(3)例えば、入札公告で示された仕様書1《車両》では車両本体として日産の高級車「エルグランド」を指定している。これが同協会の設計思想の一端である。
(4)上記業務の受託は同協会であるが、設計においては、落札しなかった「ビーム計画設計(株)」が実質の設計をした、という指摘が業界からなされている。これが、ルールにはずれることは言うまでもない。
4, デジタル放送の必要性
(1) 山県市は、デジタル放送が始まるのに、今のシステムでは対応できない、7年後のデジタル化対応を強調していたが、デジタル関係機器を設置更新するまでの経費は支出できないから、テレビ事業(自主放送を除く)は結局は市の直接管理から外す、という。
つまりデジタル放送を扱う意志がないのだから、33億円も使って、現在の全市に拡大する必要はない。現行の共聴組合を維持する、整備する、復活する、ということで大幅に自治体の負担が安くできることは、明白である。
(2)一般的に、@電波障害施設を有する場合は、周波数変換パススルー方式で対応可能であり、A共聴組合の設備を修復、補充、追加により、生かすことは可能で、B電波障害施設が無い場合は、中継局方式で対応可能である。
実際、04年6月の各地の住民説明会でも、その後の市民の声も、今回の方式で進めるケーブルテレビの必要性に強い疑問が呈されている。共聴設備の継続でよいとの声も少なくないのである。
5, CATV事業の価格競争力
(1)計画書では、P63で、FTTHやADSLの価格競争に突入していく中で、CATV事業が価格競争に耐にえられるかが課題、と指摘されている。
04年6月議会の市の 議会答弁では、「市南部を除いてブロードバンドサービスが提供される見込はなく、山県市全域において価格競争になることはない、価格競争になっても市は非営利で実施するので民間のような利益は追求しないから十分耐えられる」との旨であった。
(2)しかし、既に、現実は違う。
通信事業では、届出になっており何社でもかまわない。すでに、地元ISP事業者1社、ヤフーBBが存在する。また、NTTは、来る本年7月26日より、美山地区の相当広範な地域で「フレッツモア 40」という高速通信サービスの実施を開始する。
可児市のISP事業者が過去に訴訟を起こそうとして、結局地元ISP事業者と同等のサービスということになった例があるというが、それから判断すると、「価格競争になっても市は非営利で実施するので民間のような利益は追求しないから十分耐えられる」という姿勢は、訴訟問題が発生するおそれがある。
(3)「市は非営利で実施するので民間のような利益は追求しないから十分耐えられる」という市の理屈は、裏返せば、税金の無駄な支出をすることを意味している。この点、後述の最小経費最大効果の原則等に違反する事態を生むのは明白である。
6, FTTC同軸のケーブルの場合のインターネットのサポートについて
(1)FTTHで末端まで光なら問題は少ないようだが、同軸はかなり問題が出る。
04年6月議会の市の答弁では、「ケーブルTVであまり実績のないFTTHより、ほとんどのケーブルTVが運用を行っている同軸ケーブルの方が問題は無いと考えています。また、ケーブルTVインターネットの運用、サポートで実績が有り、問題解決も迅速に行われ、かつ、料金に影響しない事業者を計画しているので、同軸で整備する事により問題が発生するような事はない」、との旨であった。
(2) 国の政策では、本来光ファイバーケーブル「FTTH」で行うことで実施していた。しかし、光ファイバーでの収益をもくろむ企業が続出したため、結局同軸にしなければならなくなってきたのが事実であり、技術的根拠による問題解決ではない。 同軸ケーブルの方が問題ないのではなく、今までの実施例が少ないだけであり、光の方が色々な技術が応用でき、サービスも充実を図ることができる。
(3)サポート面では、現在の現場に同軸のケースが多いから実績の有無の比較に意味はない。郡上市中心街では、町の電気店が、光融着技術を有しており、サポートは、電気店が全てをこなして地元密着でおこなった事実がある。
7, FTTHに対する市の見解(【別紙−1】で補足する)
(1)04年6月議会の市の議会答弁では、「今回当初からFTTHで施設を整備すると各家庭に全て光ケーブルを引き、光変換器を設置することになり現在の事業費ではとうてい整備することができないし、現在では各家庭まで全て光ケーブルを引く必要性がないので、市としては最小限の費用で最大限のサービスができるよう努力している」、との旨であった。
(2)@同軸ケーブル網で実施することは、再度ケーブルを敷設することになりかねないことを認識しなければならない。
A同軸ケーブルの限界
同軸は、電気の流れに信号をインプットするから、信号が多くはいれば当然他のチャンネルの信号に影響を及ぼすので、物理的電磁波信号の限界がある。また、電気抵抗があるから、減衰が発生して多くの箇所にアンプを設置しなければならない。双方向で必要となる、IP電話や、テレビ会議は、CATVの方法は、まったくなじまない。
B光ファイバー
光ファイバーを全部敷くのでなく、必要とする箇所には光を、必要としない箇所には、同軸ケーブル、また、ケーブルではなく、無線も有効的な箇所に設置することなど、適材適所に考えてシステムを構築する方法もある。
8, 防災無線整備事業
防災無線整備についても、相変わらずアナログであるなど、現状及び将来について十分な検討がなされていない。例えば、国は、市町村防災行政無線(同報無線)のデジタル化の必要性を訴え、H16年度予算からは市町村防災行政無線(同報無線)のデジタルのみ対象とし、アナログに対する補助金を廃止した。その理由として、文字情報伝達、静止画像、音声による双方向伝達、国民保護の観点からの警報や避難指示の確実な伝達を可能とする、としている(甲第2号証)。
9, 違法と損害
さらに、 @無線については、伊自良・美山地区は既に防災無線設備が整備され各戸に受信機も配布され、高富地区では防災無線が整備されていない、他方で ACATVについては前者の逆で高富地区では整備され、伊自良・美山地区では導入されていないが共聴施設は完備している、という山県市固有の事情を前提とする組立てがなされていない。
以上のとおり、本件事業を現行のまま遂行することは、市の関係者に許された裁量を著しく逸脱する違法がある。
よって、この事業遂行に所定の予算を投入することは市の損害というべきである。
第3 事業方式選択における誤り
1, 比較検討の欠如
市は、事業の意志決定においては、最小経費、最大効果を追求して手法を選択する義務を負うところ、市の主体性及びこの責務を放棄して民間業者のいいなりになった。 本来、受託業者から提案が示された「山県市地域情報化計画」は、その時点では調査結果であり、業者の考察結果までが示されているだけである。市は、自らの責任で調査結果を各種比較検討し、市が事業を行うか行わないか、行うならどの方式にするかを決定し、かつ予算策定に進むべきものである。そして初めて、しかるべき仕様のもとで設計が発注されるのである。
しかし、本件は、この手続きや責務を放棄し、業者のいうままに事業遂行するという基本姿勢が当初からの市の意志であった。このことは、「山県市地域情報化計画書作成及び有線テレビ施設整備実施設計業務」を03年8月に一括発注したことに如実に示されているのである。 本件においては、以上の通り、計画書の適正・不適正の検討もなく、他の方式との比較衡量も何ら行っていないのである。
2, 議会の審議欠如
議会は、何ら報告書が示されていない04年3月時点で予算の審査をしたのだから、適正かつ十分な審査をできるはずがない。この意味で、裁量を著しく逸脱した瑕疵ある議決でって、無効というしかない。
3, 本件方式が不適である具体的な諸点(【別紙−2】で補足する)
別紙に述べるとおりの問題点がある。要点は、以下である。
@システム全体の年間維持費の問題、A機器の更新時期の問題、Bケーブルの更新時期の問題、C通信事業者の責務と自治体の問題、D事故の対策とループの問題がある。
E入札参加資格で、電気通信工事の客観点数が1000点としつつ伝送路工事は900点以上としていること、F伝送路工事に「第一種有線テレビジョン放送技術者」をいれていること、GCATV機器、IP関連機器の製造メーカーであることとしたことなとで業者の絞り込みをしていることの問題がある。
H仕様書の各所で相当品としていることは実質的に、製品指定である。
入札説明書で、I日本農村情報システム協会と避けるべき資本の関係等を示すが、資本は今でも多数の農水省天下りはもちろん、メーカーからも出向者を受け入れている。
額に関係なく資本参加、人事面で関係ないこととすべきでなければ意味がない。
「設計業務の受託」は「日本農村情報システム協会」が行ったが、もうこの段階で「きまっている」といわれても反論できない。日本農村情報システム協会を選定する経緯は、公平だったかが疑われる。今回の入札資格で「(11)本工事に係る設計業務等の受託者又は当該受託者と資本又は人事面において関連がある建設業者でないこと。」を厳格に守るらなければ、談合ありき、といわれても反論できない。
J回答に対する期限が入札に直近過ぎることは、結局、事前に計画を熟知する業者を優位に導くものである。
4, 最低制限価格を設定すべきでない
市は、入札仕様書において、最低制限価格を設定する可能性を示している。最低制限価格を設定する趣旨は、極端な安値で、所期の成果の水準が達成できないことを避けることにある。最低制限価格を設けず、著しく低価格が落札されたことで発注者に不安があるときは、契約を保留でき、審査機関で検討することも可能なのであるから、最低制限価格が不可欠ということではない。IT関連業界は、各種の価格が年毎に格段に下がっていることはよく知られている。それにもかかわらず、最低制限価格を設ければ、予定価格の2/3から8割程度のラインを引くことになる。公正な競争を実現し、もって市民及び市の利益を得るためにも、最低制限価格を設定すべきではない。
結局、市と密接な情報交換するものに有利なのは明白である。
最低制限価格を設定すればあるいは設定するとの表明は、高止まりになることを導くだけであるから、市に不利益を生む。
5, 両事業の同時進行の無駄
両事業を同時進行させることは極めて無駄が多い。例えば、CATV事業ではインターネット接続及びIP電話のためのモデムを全戸に無料配布し、防災無線では受信機を全戸配布するなど、その不合理はいうまでもない。例えば、防災無線の受信機は日常的に利用されていることが「肝心の非常時に故障していた(ことが分かった)」という事態を防ぐことになるから、非常時専用は望ましくない。
送信側の機器についても、共用であれば合理的であることはいうまでもない。
6, 違法と損害
以上のとおり、本件事業の現行の方式での遂行には市の関係者に許された裁量を著しく逸脱する不当もしくは違法がある。
地方自治法(以下、法という)第2条14項「地方公共団体は、その事務を処理するに当たっては、住民の福祉の増進に務めるとともに、最小の経費で最大の効果を挙げるようにしなければならない」、地方財政法第4条1項「地方公共団体の経費は、その目的を達するための必要かつ最小の限度を越えてこれを支出してはならない」とされている。次項第4で述べる方式や諸点から判断すれば、このまま支出されるなら、「最小経費で最大の効果」の原則に反し、「必要かつ最小の限度」を越えているから上記法令を著しく逸脱した違法なものである。
本件事業遂行に一定額以上を支出することは許されず、一定額を越える支出は市の損害というべきである。
7, 支出の許容額
支出の許容額は、@ 両事業を統合して行った場合は、下記第4で25億円が導かれ、この額を根拠として、ACATV事業に関して34億円×(25億円÷45億円)≒19億円、B防災無線に関して11億円×(25億円÷45億円)≒6億円である。
無論、@の場合に、両事業の統合あるいは修正のための検討・立案の委託は生ずるが、昨年度の計画が存在するから、時間的にも経費的にも負担は少ない。
第4 現実に他の方式が存在していること
1. 全部を光ケーブル(FTTH)
CATV事業について、全部光ケーブルで実施する場合がある。
2, 岩村方式
岐阜県岩村町は、情報化整備事業(ユビキタスネットワーク整備事業)を進めた。
目的は、@都会に負けない高速大量情報通信環境、Aいつでもどこでも使える情報化(ユビキタス環境)、Bテレビの地上波デジタル放送に備える(CATVと新世代TVへの対応)である。構想の基本は、小投資、維持経費の縮減、事業の拡張性のために、光ファィバー幹線と無線の併用したものである(甲第3号証)。
述べ約50Kmの光ファィバーで51の基地局につなぎ、各家庭に送信、各家庭には
無線装置を無償で配布した。町の人口約5400人1600世帯に対して、約4億円で整備した。平成16年10月地上波デジタル放送中継システムも開始する。
3, VRテクノの提案する方式
(1) 岐阜県や国等が出資して設立した第三セクターである(株)VRテクノが山県市に提案した計画は、いわゆる市街地のみを対象としてCATVを実現させ、僻地や山間地には無線を利用する方法である(甲第4号証)。地上波デジタル放送、双方向テレビ、CATV網、インターネット、ユビキタスネットワーク、IP一斉同報等が提供される。提案書8頁のとおり、経費は約20億円とされている。
(2) ここに、山県の現行CATV計画と同条件にするために、請求人が各種調査した額として、個人敷地内の工事や機器無償配布分など公費で負担する分などを加味すると以下のようになる。各家庭に配置する機器について、VRの提案は、VoIP、一斉同報、インターネットが一台で可能な装置であり、選択できる方法で取り扱うことができる。これが約3万円程度である。これらと、軒先までの工事費概算を加えると、25億1850万円が必要経費と試算される。
5, 自主放送について
議会放送について、岐阜県議会や岐阜市議会は、各年間合計2000万円ほどの予算を組んで、それぞれ年間の4回定例会の一般質問の放映を岐阜放送(株)に委託して実施している。他の番組制作についても、民間会社に単発で委託すれば、十分に製作意図を汲んだ良質の番組が作成できるとの指摘がなされている。
山県市においては、@旧高富町が、この10年間に施設などに当初約10億円と追加設備等に数億円を使ったという事実(年間約5000万円の人件費を除く)、A今後の新規事業も10年程度の期間のための初期投資として33億円使いかつ追加支出があることの当然の予想がある。
これらを比較すれば、本件事業推進がいかに割高か、というより数倍の経費が必要であることは明らかである。
また、インターネットの高速環境地域では議会の生放送を実施しているところもある。 インターネット高速環境が実現されるなら、現在の発想を切り換える必要がある。
6, 比較検討すべき責務
山県市には、さまざまな各種の方式を比較検討して事業遂行すべき義務がある。しかし、本件においては、各種の方法と経費について、具体的に何ら検討していない。
第5 テレビ、インターネット業務の外部委託
1, 外部委託
(1)市は04年5月に美山・伊自良の各地区でテレビ、インターネットについての説明会を行った。
その際のパンフには、 @nifty のサービスを提供する、と印刷されている(甲第5号証)。つまり、山県市は当時既に インターネットのサービスに関して、 @nifty 運用会社ジャパンケーブルネット鰍ノ委託することを意志決定している。
同社と既に契約していることになる。
この後、6月議会に加入料52500円やインターネット利用料、サービス等を定めた「山県市有線テレビ放送施設の設置及び管理に関する条例」条例が提案され、6月24日に可決された。
(2)企画部長の04年6月16日議会答弁の要点は、以下である。
「条例のインターネット利用料は、2コースで市の設定額である。市の維持費が賄えるような金額で交渉中で、市が施設を解放して民間に営業をさせるものではないので、回線使用料を徴収する事は想定していない。
市は、当該予定業者の決定に当たって、6社に資料の提供を求め、ジャパンケーブルネット鰍ニ仮契約済み。本契約の時期は未定だが、固定料無しの一接続の単価契約を行う予定。契約は、3年間の予定で、その後は、1年間毎の更新の予定。契約の更新義務は市とジャパンケーブルネット梶iJCN)の両方にある。
上位ISPはアットニフティ @nifty を予定している。」
(3)上記、山県市の予定するインターネットに関する状況は公文書などに記録され、ジャパンケーブルネット梶iJCN)及び @nifty が富士通系であることは宣伝されている(甲第6号証)。
(4)その後、別紙のとおり、04年3月5日からテレビ運用のアウトソーシングの事業者選定に着手し、6月3日付けで市長名でJCN宛に、「@内容、Aサービス開始時期、B利用料金及び利用条件、Cその他」として内示発注した。
2, 契約の位置付け
上記契約は、電気の供給契約や電話の回線提供に伴う利用料の契約ではない。
当該契約は、市の敷設管理する有線テレビ放送施設を利用して市の定める各種サービスを提供する事務事業に関して、その管理運営・サービス提供業務の一部を委託するいわば役務提供の契約である。
仮に、業務の一部委託でないとしても、インターネットサービスの購入契約である。
3, 当該契約の違法
(1) 収入と支出の存在(【別紙=3】で補足する)
加入者推定などは別紙のとおりである。要点は以下である。
◇インターネット事業に由来するの歳入は、以下である。
インターネットの利用料2100円×12×2000人=5040万円
2625円×12× 500人=1575万円
◇当該契約にかかる歳出は、以下である。
インターネットの利用料収入のうち、例えば委託(購入)先に50%支払うと仮定すれば約3300万円の支出。80%なら5200万円の支出。
◇このように、当該契約は、明らかに市の支出を発生させる。
(2) 山県市の支出をともなう契約であるから、事業開始の前年度に契約することはできない。なぜなら、会計年度独立の原則があり(法第208条1項)、歳出はその年度の歳入をもってあてなければならず(法第208条2項)、長期継続契約(法第234条の3)であっても「初年度」の概念は不可欠だからである。
(3)予算議決(第211条1項)もないのに、委託(購入)契約は締結できない。
(4) よって、本件で市がいう仮契約は手続き上違法である。
4, 事前交渉及び仮契約の違法
(1)特定会社との契約を前提とした事前交渉は許されず、まして仮契約は違法である。しかし、本件は、特定の会社と事前交渉し仮契約締結にまで及んでいる。
(2)法第234条2項「指名競争入札、随意契約は政令で定める場合に該当するときに限り、これによることができる」とされている。
この際に、政令第167条の2の第1項で定める随意契約としてよい条件、
「2号 その性質または目的が競争入札に適さない場合」
「3号 緊急の必要により入札に付することができない」
「4号 競争入札に付することが不利と認められるとき」
「5号 著しく有利な価格で契約できる見込みがあるとき」
に該当するか、である。
(3)本件役務もしくはサービスの提供を可能とする業者は当該予定業者系列以外にもたくさんある。価格やサービスの提供に関して市と市民に極めて有利な業者もいくつもある。
さらに、当該予定業者は、地方公共団体の直営のテレビ業務の運用経験はなく、インターネットについても同様である。
つまり、本件は、上記いずれの条件にも適合しないから、随契にすることはできない場合である。
結局、本件契約は、契約締結の権限を有する職員に許された裁量を著しく逸脱しているから違法である。
(4)市は、当該予定業者の決定に当たって、6社に資料の提供を求めたという。
当該資料提供が、上記随契可能理由のいずれかに該当するものとして随契するためであるなら、山県市契約規則第24条の2に基づき予定価格を定めなければならず、同第25条に基づき2社以上から見積もりを徴取しなければならないところ(なお、「なるべく」との規定の趣旨は、同条但し書きの規定からすれば、実質的に必須要件、である)、6社の見積もりのうちの最低価格のところに決定すべきことは明白である。
しかし、この予定価格設定及び見積もりを徴取すべき手続きを怠る違法がある。
仮に単なる資料の提供だけであったなら、上記法令に違背して随契した違法な契約である。
(5)結局、本件契約は法第234条2項、同施行令第167条の2の第1項に違反する行為である。
5, 契約の違法と無効
(1)法第2条16項「地方公共団体は、法令に違反してその事務を処理してはならない。」、同17項「前項の規定に違反して行った地方公共団体の行為は、これを無効とする」とされている。
つまり「法令に違反してなされた行為は無効」であるから、本件契約は成立しないのも明白である。
(2)前記第2ないし4のとおり、山県市が美山・伊自良の説明会で示した内容もその経過も含めてすべて、根拠はなく無効である。
(3)結局、本件条例で規定しようとする内容には何ら根拠や裏付けもなく、結果として意義も意味もない規定である。
(4)さらに、本件条例で規定しようとする2100円、2625円は、「最小経費で最大の効果」(法第2条14項)の原則に反し、「必要かつ最小の限度」(地方財政法第4条1項)を越えているから上記法令を著しく逸脱した違法なものである。
加えて、算定根拠に正当性がないのだから、その違法性は具体的かつ甚だしい。
6, 市の公営事業なのに市民ユーザーを民間業者のために囲い込むこと
(1)今、インターネット業界は、ユーザーの獲得に奔走している。その大手の富士通などは「ユーザーの囲い込み方針」が著しく、そのことで、数年前からトラブルもおきている。民間の営利企業であるケーブルテレビ会社がその会員を前提にインターネットを付加することは普通である。民間なら「囲い込みも営業方針」で通るかもしれない。 しかし今回は、地方公共団体である市が、市民一人当10万円余の税金を投資して設備を整える事業である。その運用を外部に委託するとき、市民がまるまるユーザーになるのだから、民間テレビ会社の事業とは同列にはできない。
地方公共団体が、民間業者の市民の囲い込みに加担することは許されない。
(2)説明会では住民がプロバイダー(インターネットの接続業者)を選べないと答えた。プロバイダーの選択は自由な意志によるもので、もし選べないのが現在の予定なら、市民の選択の自由を奪うことだ。
加えて、市民が現在使っているメールやHPのアドレスを使えなくなる。プロバイダーの方針次第で、現在それぞれが使っているメールやHPのアドレスをそのまま残して使う方法あるのに、市が委託を予定している業者は「それはできない」という。この点専門家らは「したくないだけだ」という。これも「囲い込み」である。
民間事業でなく、市民の多額の税金を使う事業なのに極めて不合理だ。市は全国に提携プロバイダーを募集して提携の契約をし、市はアクセス回線を提供するのみならば、別のプロバイダー料金設定もありうるので市民の負担は軽くなる。市には、このようにする義務がある。
これについての市の議会答弁は、「現在それぞれが利用しているプロバイダーを継続して、市のプロバイダーに変えなければ、何も変わらないから問題ない」旨であった。市民一人10万円もの税金で行う事業であることを忘れ、地方自治体としての本旨と責務を忘れた許されない方針である。
7, 地元育成
山県市が独自にサービスを始めると民間圧迫、市内業者の倒産さえ考えられ市に税金が入ってこない事になる。市営で行うのだから、山県市内あるいは市周辺の通信事業者であるインターネットサービスプロバイダの育成を考えるべき。
市は市内業者・県内業者の保護という役目がある。行政活動により市内の業者をつぶすようなことでは市に税金が入ってこないことになる。市は県内や市内の業者に配慮して競合する部分は手を引くべき責務がある。
8, 議会の条例議決義務を無視した違法
前記条例第14条1項及び別表に定める「インターネット利用料」及び「付加機能」に関して、何ら山県市議会の議決を経ず、既定のこととして5月に美山・伊自良の各地区で説明会を行い、パンフレットにサービス内容まで明示し、市の広報6月号にも掲載、市民に配布した。これらに記載されている但し書きは「予定」としているが、事実関係からすれば議決不要の意味、というしかない。なぜなら、議決がないとか、議会で修正されたら説明会や広報自体が虚偽になるからである。
他方、このことは、議会に修正や否決をさせないための既製事実づくり、ともいえる。 これらは、法第96条1項1号で議会に義務づけられた条例制定改廃議決権を無視したもので、違法な行為である。
9, 前記条例は違法で無効である
結局、前記条例で定めようとするスタンダード10M、ハイスピード30Mのコースや付加機能等の規定も無効である。
10M2100円、30M2625円という条例規定部分は、@違法な契約手続きを前提とし、Aサービス提供に関して誤りかつ根拠のない議会説明に基づいて議決されたもので、結局、違法な条例である。
10, 利用料設定の違法
10M2100円、30M2625円という利用料設定は、契約放棄に違反し、「最小経費で最大の効果」の原則に反し、「必要かつ最小の限度」を越えているから上記法令を著しく逸脱した違法なものである。
よって、受託先に一定額以上を支出することは許されず、一定額を越える支出は市の損害というべきである。
11, 特定業者ありき
これらをみれば、特定業者ありきの姿勢だ、と指摘されても反論できない。
第6 県内、市内事業者が存在する
1, 県内、市内事業者の存在
県内では、例えば、県や国が出資して作ったVRテクノセンターが積極的に事業展開し、格安で豊富にサービスを提供している。市内にはプロバイダー事業者がある。市民の多額の税金で実施する公共事業であることを忘れてはならない。
2, VRテクノセンターの方向は適切である。
(1)VRテクノの場合、事業者(本件なら山県市)がVRに支払うべき最低額は、
月額(105000円+一加入者当たり525円)である。
(2)VRテクノセンターは各種対応できる。(【別紙−4】で補足する)
3, 市内業者の試算資料(甲第7号証)
詳細は、【別紙−5】に示す。
4, 各種比較検討しないことの違法
これら一例の業者や県内業者に限らず、現実に存在する他の業者の手法などとの各種比較検討なしに、しかも、特定業者ありきともみえる姿勢で、事業計画を決定し、発注するということは、各種法令に違背する。
第7 両事業計画の統合、修正可能性の検討責務
1, 計画を変更すべき
以上のことから、山県市は、「山県市地域情報化計画」と「山県市防災行政無線設備設置計画」をミックスしても目的達成は可能であるので両計画を統合もしくは修正するべく計画を変更すべきことが具体的に明らかである。
2, 変更しても支障はない
双方ともH15年度に委託して計画ができ必要経費も試算された。これらについて、何ら検討せずに漫然と双方推進することは著しい誤りがある。今年度はまず最初に、両者の統合あるいは修正の可能性の調査の委託をすべきである。その後において着手しても支障は生じない。
3, 合併の理念との乖離
財政が厳しいから合併するとされた。安易に高額な方式を選択することは、その原点に反する。安易に合併特例債をに頼ることは、合併特例法の趣旨にも反する。
再検討の結果、できないなら双方をより適切かつ低価格で進めるべきである。
第8 結論
本件事業は、意志決定過程において著しい裁量の逸脱があり、議会議決も同様に瑕疵があるし、アウトソーシング委託手続きにも違法があるから、直ちに、方式を含めて全面的に再検討をしなければならないのは明白である。
このまま事業を推進すれば、山県市及び山県市民に多大な損害が生ずることは明白であるから、この損害を未然に防止するために、請求人は次のことを監査委員に求める。
1, 本件CATV事業と防災無線事業に関して、当面、2003年(H15年)に策定された計画の統合や修正の検討のための調査及び計画策定の検討委託費相当額を越えた額を支出してはならない、と市長に勧告すること(差止請求)。
2,(1) 本件CATV事業に関して、仮に山県市が事業を遂行する場合でも、19億円を越えて支出してはならない、と市長に勧告すること(差止請求)。
(2) 本件CATV事業に関して、19億円を越えて支出した場合は、市長ら権限を有する関係職員は市に損害を与えたものとして、連帯して市に同額を返済せよ、と市長に勧告すること(差止請求中に支出した場合の措置請求)。
3,(1) 本件防災無線事業に関して、仮に山県市が事業を遂行する場合でも、6億円を越えて支出してはならない、と市長に勧告すること(差止請求)。
(2) 本件防災無線事業に関して、6億円を越えて支出した場合は、市長ら権限を有する関係職員は市に損害を与えたものとして、連帯して市に同額を返済せよ、と市長に勧告すること(差止請求中に支出した場合の措置請求)。
4, 本件CATV事業に関して、市の @nifty を前提とするジャパンケーブルネット鰍ヨの委託契約は違法かつ無効であるから改めること、と市長に勧告すること(無効確認)。
5,(1) 本件CATV事業に関して、市は、@niftyを前提とするジャパンケーブルネット鰍ノ一加入者あたり、1000円を越えて支出してはならない、と市長に勧告すること(差止請求)。
(2) 本件CATV事業に関して、市が1000円を越えて支出した場合は、市長ら権限を有する関係職員は市に損害を与えたものとして、連帯して市に同額を返済せよ、と市長に勧告すること(差止請求中に支出した場合の措置請求)。
なお、上記主張を補充するために【別紙1〜5】を添付する。
【2 請求者】別紙のとおり 寺町知正 他7名
以上、地方自治法242条1項により、事実証明書を添えて、必要な措置を請求します。
2004年7月8日
山県市監査委員 様
別紙事実証明書目録
甲第1号証 平成16年度山県市予算書の債務負担行為調書の関連部分の抜粋
甲第2号証 防災無線に関する国の通知文
甲第3号証 岐阜県岩村町の地域情報化計画の概要
甲第4号証 県内業者の提案書
甲第5号証 山県市のCATV事業の住民説明会の配布パンフ(3頁中に @nifty)
甲第6号証 第5の1の(4)で引用した業者選定関係書類等目録と当該文書他
甲第7号証 地元市内業者の提案書
以上