平成13年6月28日判決言渡 同日原本領収 裁判所書記官
平成12年(行コ)第53号、平成13年(行コ)第9号県営渡船情報非公開処分取消請求控訴、同附帯控訴事件(原審・岐阜地方裁判所平成11年(行ウ)第17号)口頭弁論終結日 平成13年3月27日

     判 決

岐阜市薮田南2丁目1番1号
  控訴人・附帯被控訴人(以下「控訴人」という。)
            岐阜県知事
            梶 原 拓
  同訴訟代理人弁護士 端元博保
  同         伊藤公郎
  同         池田智洋

岐阜県山形郡西深瀬208番地の1
  被控訴人・附帯控訴人(以下「被控訴人」という。)選定当事者
            寺町知正

岐阜県揖斐郡谷汲村岐礼1048番地の1
被控訴人・附帯控訴人(以下「被控訴人」という。)選定当事者
            山本好行
            (選定当事者は別紙選定者目録のとおり)

      主 文
1 控訴及び附帯控訴に基づき、原判決を次のとおり変更する。

2 控訴人が選定者らに対して平成11年6月3日付けでした原判決別紙文書目録一記載の1の公文書に係る部分決定処分のうち、同目録一記載の2(三)及び(五)ないし(八)の公開をしないとした部分を取り消す。

3 控訴人が選定者らに対して平成11年6月14日付けでした同目録二記載の1の公文書に係る部分公開決定処分のうち、同目録二記載の2(一)、(三)及び(四)の公開をしないとした部分を取り消す。

4 控訴人が選定者らに対して平成11年7月28日付けでした同目録三記載の1の公文書に係る部分公開決定処分のうち、同目録三記載の2(一)、(三)及び(五)の公開をしないとした部分を取り消す。

5 控訴人が選定者らに対して平成11年6月7日付けでした同目録四記載の1の公文書に係る部分決定処分のうち、同目録四記載の2の公開をしないとした部分を取り消す。
6 被控訴人選定当事者らのその余の請求を棄却する。

7 訴訟費用は、第1、2審を通じて、これを10分し、その1を被控訴人選定当事者らの、その余を控訴人の各負担とする。

      事 実 及 び 理 由
第1 当事者の求めた裁判
1 控訴人
(1) 原判決中、控訴人敗訴の部分を取り消す。
(2) 被控訴人選定当事者らの請求及び本件附帯控訴をいずれも棄却する。
(3) 訴訟費用は,第1,2審とも、被控訴人選定当事者らの負担とする。

2 被控訴人選定当事者ら
(1) 原判決中,被控訴人選定当事者らの敗訴の部分を取り消す。
(2) 控訴人が選定者らに対して平成11年6月3日付けでした原判決別紙文書目録一記載の1の公文書に係る部分公開決定処分のうち、同目録一記載の2(六)及び(九)の公開をしないとした部分を取り消す。
(3) 控訴人が選定者らに対して平成11年6月14日付けでした同目録二記載の1の公文書に係る部分公開決定処分のうち、同目録二記載の2(五)の公開をしないとした部分を取り消す。
(4) 控訴人が選定者らに対して平成11年7月28日付けでした同目録三記載の1の公文書に係る部分公開決定処分のうち、同目録三記載の2(六)の公開をしないとした部分を取り消す。
(5) 本件控訴を棄却する。
(6) 訴訟費用は、第1、2審とも、控訴人の負担とする。

第2 事案の概要
 事案の概要は、次に付加するほか、原判決「事実及び理由」の「第二 事実の概要」のとおりであるから、これを引用する(略称は原判決と同様)。
 原判決28頁2行目の次に改行の上、次のとおり加える。
「四 原判決別紙文書目録一2(四)の渡船場業務日誌に記録されている業務者名に関する非公開事由の追加について

(控訴人の当審追加主張)
 上記勤務者名に関して、選定者らの本件情報公開請求の目的は、関係者らに対し、カラ渡船場費用返還を追求することにあり、また、上記勤務者である船頭ないし管理者らは、単なる私人であって、渡船業務の維持を掲げる海津町に協力して、経済的には割に合わない費用で渡船管理業務に就いているに過ぎないことからみて、仮に、本件請求によりその氏名が公開されれば、選定者らから、委託金を不正受給している者とのあらぬ嫌疑を掛けられ、それに嫌気して渡船管理業者を辞すこととなり、そうなると、代替者確保が困難であって、県営渡船場越立業務の円滑な執行に著しい支障が生ずる。
 したがって、控訴人が公文書の公開をしないとした部分は、本件条例6条1項8号(行政運営情報)に該当する情報に当たる。

(被控訴人選定当事者らの主張)
1 控訴審になってから非公開事由を追加することは許されない。
2 そうでないとしても、控訴人主張の支障が生ずるおそれは、上記勤務者名を公開しないとした本件処分一の時には存してないかった。仮に、その後船頭らにおいて、勤務者名等を公開されたら渡船業務に従事しないとの意向の表明があるとすれば、従来の業務に何か後ろめたいことがあったのだろうと推測されるだけのことであって、客観的に判断して、上記勤務者名の情報は、本件条例6条1項8号に該当しない(なお、被控訴人選定当事者らは、情報公開請求の目的に関する控訴人の主張に対する明示の認否をしない。)。」

第3 当裁判所の判断
1 本件各処分の内容及び本件各公文書の記載内容等について
 原判決「事実及び理由」の「第三 当裁判所の判断」の「一 本件各公文書の記載内容等について(原判決28頁4行目以下37頁3行目まで)のとおりであるから、これを引用する。

2 争点1(本件条例6条1項1号の該当性の有無)について
(1) 立法上、個人に関する情報を非公開とするにはいくつかの方法が存するところ、本件の旧条例6条1号及び新条例6条1項1号は、個人に関する情報であって、特定の個人が識別され得るものが記録されている公文書について、原則として非公開とした上で、例外的に、旧条例同条1号ただし書各号及び新条例同条1項1号ただし書各号(以下、これらを総称して「ただし書各号」ということがある。)に掲げる情報が記録されている公文書について公開を義務づけるという方法(いわゆる個人識別情報型)を採ったものである。
 被控訴人選定当事者らは、上記規定が、個人のプライバシーの権利の保護を目的とするものであるから、特定の個人が識別され、又は識別され得る情報であっても、個人のプライバシーの権利を侵害しない場合には、公開の義務は免除されないと主張するが、そうであるなら、端的に、プライバシーの権利として保護される情報が記録されている公文書を非公開にするという規定の方式(いわゆるプライバシー情報型)を採用すれば足りる筈である。
 ところが、本件条例は、そのような方法を採用せず、個人情報識別型の方法を採用したものであって、その意図するところは、プライバシーの権利の概念・内容が必ずしも一義的ではなく、人によって判断が異なることから、プライバシーの権利の概念を用いて公開・非公開の基準とするところを避け、より客観的な基準により、公開・非公開を判断し、もって制度運用の安定を確保しながら、情報公開の必要性とプライバシーの権利の保護と必要性との調和を図ったものと解されるところである。
 そうすれば、上記規定の「個人に関する情報」とは、私人である個人に関するものについては、上記規定の文理に照らし、法人等情報を除く個人に関する一切の情報をいうものと解すべきであって、これについて、文理を離れて一般的に、個人のプライバシーの権利を侵害しない場合には公開の義務は免除されないといった限定解釈をすることは、より客観的基準を設けて制度運用の安定をも確保しようとした上規規定の趣旨と整合せず、採用することができないものである。

(2) そこで、上記解釈を前提に検討するに、まず、原判決別紙文書目録一2(三)、二2(一)、三2(一)、(三)、(五)、四2の担当者の氏名等については、本件渡船場越立業務に関する検査の立ち会い、渡船の船体及び機関の状況に関する検査、本件渡船場越立業務に関する海津町への出張、岐阜市長から岐阜県岐阜土木工事事務所への文書の送付という職務について、その担当者は地方公共団体又は公的機関の職員であり、これらの職務が公務ないし公益的な職務の一環としてなされたことは明らかである。

(3) 上記(2)のうち、原判決別紙文書目録一2(三)の検査調書の立会人の氏名、同目録三2(一)の旅行命令(依頼)書の出張した職員の職名・氏名及び印影、同目録三2(三)の旅費精算(請求)・領収書の出張した職員の氏名及び印影、同目録三2(五)の旅費(合算)請求書の出張した職員の氏名、同目録四2の請求書送付文書の送付担当者の氏名についてみると、岐阜県が平成7年3月作成した旧条例に関する情報公開事務の手引(乙5、以下「旧条例手引」という。)における旧条例6条1号の「職員の職・氏名等の情報」に関する部分には、「職員が職務を遂行する(した)場合における当該職務に関する情報については、当該職員が識別される場合であっても、条例第1条及び第3条並びに本号ただし書の規定の趣旨から、公開しないことができる情報には該当しない。」との記載、また、起案文書における起案者の氏名等も原則として公開しなければならないとの記載が存すること、及び、上記新条例6条1項1号ハは、いわゆる職務遂行情報に関する公務員の氏名の公開を明記していることに照らせば、新旧両条例とも、公務の一環として公務員がした職務の遂行に係る情報については、公務員の氏名等も含めて、非公開とはしない趣旨であると解することができる。
 これに対し、控訴人は、職務遂行に関わった公務員の氏名等については、これを公開した場合には、公務員の私生活に影響を及ぼす可能性が大きいから、公務員の氏名等の情報を公開すべきとする規定が条例上存しない限り、公開すべきでないこと、旧条例下では、職員の氏名、職名の情報は、6条1号の「特定の個人が識別される情報」に該当し、同号ただし書に該当しない限り、非公開情報となることを主張する。
 しかし、公務員の氏名等が記録された上記各公文書については、本件全証拠によるも、氏名等を含めてこれを公開すれば当該公務員の私生活上の平穏が不当に害されることの具体的立証が存しないから、個人の私生活の保護の観点から公文書の非公開を許容する新旧両条例の各規定に該当するものとは認められない。
 また、旧条例下では公務員の氏名等の情報が非公開情報となるとする控訴人の解釈は、上記旧条例手引の記載と整合せず、採用することはできない。
 したがって、上記各情報は、新旧両条例のいずれにおいても、非公開とすることのできる情報に該当するとは認められない。

(4) 上記(2)のうち、原判決別紙文書目録二2(一)の船舶検査手帳の検査員の氏名及び印影については、検査員は、公務員ではないものの、検査員を選任する日本小型船舶検査機構は、船舶安全法を根拠法令として国土交通大臣の認可により設立される特殊法人で、小型船舶検査事務等を行うことにより、小型船舶の堪航性及び人命の安全の保持に資するといった公益性の強い目的を持ち、また、検査員は、過去に船舶検査官(国家公務員)の経験を有すること等の要件を備える者のうちから選任され、検査事務遂行に当たり国土交通大臣が認可した検査事務規定等を遵守すべき義務を負い、検査事務に関し著しく不適当な行為をしたときには、国土交通大臣が同機構に対しその解任を命ずることができるなど、公益の観点から適正な検査事務を遂行するための行政法規上の責任を負っている者である(船舶安全法25条の30、小型船舶検査機構に関する省令14条等)。そうすれば、検査員の地位は、検査事務の遂行に関する公的責任という観点からは、公務員に準ずるものとして考察することができ、船舶検査手帳における検査員の氏名及び印影については、旧条例の職員の職務遂行情報に関する上記解釈に準じ、ないし上記新条例6条1項1号ハの類推適用により、非公開情報とはならないものと認めることができる。
 したがって、上記情報は、新旧両条例のいずれにおいても、非公開とすることのできる情報に該当するとは認められない。

(5) 原判決別紙文書目録一2(四)の渡船場業務日誌の勤務者名については、前記認定(原判示)によれば、本件渡船場越立業務は、私的な団体である本件渡船組合の組合員が海津町の委託の結果、同業務を遂行するものであり、その勤務者は私人であることが認められる。そして、これら私人につき、その氏名を含む一体的情報は、上記の解釈に従えば、新旧両条例6条の「個人に関する情報であって、特定の個人が識別され得るもの」に該当するというべきところ、これについて更に、個人識別情報の公開義務を定めるただし書各号に該当するとは認められない。
 被控訴人選定当事者らは、上記勤務者名が「個人情報」ではなく、個人識別のための形式的な情報に過ぎず、これを公開しても私人のプライバシーは侵害されないと主張する。しかし、勤務者名を含む渡船場業務日誌に記録された情報は、私人からみれば、同業務における各私人の勤務状況に関する情報という側面をも有するものであって、この種の情報の公開により、常に、識別された各私人のプライバシーの侵害を引き起こすことがないと断定し得るか否かは疑問である。また、この点は措くとしても、この種の情報について、控訴人が、各私人のプライバシーの侵害を引き起こすことがないとみて、積極的に公開することは、本件条例の趣旨に良く沿うものであるということはできるにしても、上記のとおり、本件条例は、私人が識別される個人情報が記録された公文書については、原則非公開とし、ただし書各号に当たる場合に公開するという立法の方式を採用した以上、控訴人において、個人識別情報が記録されているため原則非公開となる要件が存すると判断した場合に、ただし書各号の要件の審査とは別個に、当該公文書の公開が私人のプライバシーを侵害しないことを殊更審査して処分を決すべき条例上の義務を負うと解することはできない。
 また、被控訴人選定当事者らの主張中には、渡船場業務日誌の勤務者名に関し、その私人の所属する私的団体が地方団体が地方公共団体から業務の対価として委託料等の支払いを受けている等の事実を指摘する部分もあるが、本件条例には、その事実のある私人に関する情報の公開を義務付ける規定は存せず、本件条例の解釈上、その事実を伴う情報について、当然に公開すべき情報となるものと認めることはできないというべきである。
 そうすれば、上記勤務者名の情報の行政運営情報該当性を検討するまでもなく、上記渡船場業務日誌に記録された情報について、私人のプライバシーを侵害しないか否かを審査しないまま、勤務者名の情報を公開しないとした本件処分一の判断部分を、本件条例の下で、違法とまで断ずることは困難である。

(6) 原判決別紙文書目録二2(二)の振込依頼票(控)等の銀行の担当者についても、担当者が私人であることは明らかであり、これについて、ただし書各号に該当するものとは認められないから、公開しないことのできる情報に該当すると認めることができる。

(7) 以上によれば、本件各処分のうち、原判決別紙文書目録一2(三)、同目録二2(一)、同目録三2(一)、(三)、(五)、同目録四2の公開をしないとした部分は違法であるが、同目録一2(四)、同目録二2(二)の公開をしないとした部分は違法ではないこととなる。

3 争点2(本件条例6条1項4号の該当性の有無)ついて
(1) 原判決別紙文書目録一2(五)ないし(七)及び同目録二2(四)の文書が、公開することによって当該法人等の事業活動、社会的評価、信用が損なわれるおそれがあるとは認められないことに関する認定及び判断は、次に付加するほか、原判決「事実及び理由」の「第三 当裁判所の判断」の「三 争点2(本件条例六条一項四号の該当性の有無)について」の1ないし3(原判決42頁10行目以下同45頁8行目まで)のとおりであるからこれを引用する。
 控訴人は、当審において、事業者名等の情報公開を強化した条例改正の経緯から、旧条例においては事業者名等は、原則非公開とされる情報であったとも主張するが、旧条例6条4号の文理からみても、旧条例手引の記載からみても、これら事業者名等の、事業者を識別するに足りる情報を原則非公開とする趣旨などは窺うことはできない。いずれにしても、事業者が地方公共団体に市販されている物品を納入した際における事業者名や納入価格といった外形的な情報については、当該事業者にとって、事業活動に役立つ価値のある情報(いわゆる有用性のある情報)であると認めることはできず、また、このような外形的情報を殊更秘密にしてもらうことによる事業者の利益が正当な利益であるとは認められず、控訴人の主張は、当審における主張を含め、いずれも採用できない。

(2) 上記領収書等の納入業者の印影について検討するに、控訴人は納入業者の印影が内部情報として管理されていると主張するもののようにもみられるが、新旧両条例は、その文理のほか各手引をも参照の上検討しても、法人等情報につき、内部情報として管理されている情報が記録された公文書を非公開とする旨を規定しているものとは解されず、内部情報か否かにかかわらず、当該情報の公開が「競争上の地位その他正当な利益」を損なうことが非公開を基礎づける旨規定されていると解される。そして、納入業者の印影は、元々これについて非公開約束があったとはみられない上、仮にこれが控訴人により内部情報として管理されていたとしても、そのことから直ちに当該情報の公開により「競走上の地位その他正当な利益」の侵害が生ずるものとは認定できない。この点、控訴人は、納入業者の印影は、無関係な第三者に知られた場合には偽造を許すなどの危険をはらむと主張するが、そのような必ずしも頻発するとはみられない犯罪行為を想定して上記正当な利益の侵害性を論ずるのは相当とは解されない。
 また、原判決別紙文書目録二2(三)の日本船舶検査機構の振込先銀行、口座番号等及び印影に関する情報は、同機構が上記のとおり公的機関であり、その振込先銀行、口座番号及び印影を公開することによって、特殊法人である同機構が、他の私的業者との競争上不利益を受けるなど想定し難いし、公開することにより、同機構の正当な事業活動、社会的評価、信用が損なわれるおそれがあると認めるに足りる証拠もない。

(3) 以上によれば、争点2(本件条例6条1項4号の該当性の有無)に関する原判決別紙文書目録一2(五)ないし(七)、二2(三)、(四)は、いずれも非公開とすることのできる情報に該当するとは認められない。

4 争点3(本件条例6条1項8号の該当性の有無)について
 原判決「事実及び理由」の「第三 当裁判所の判決」の「四 争点3(本件条例六条一項八号の該当性の有無」について)」の1、2(原判決48頁7行目以下同50頁9行目)記載のとおりであるからこれを引用する。

5 争点4(請求対象外情報及び合算情報の取扱い)について
(1) 原判決別紙文書目録一2(九)、同目録二2(五)、同目録三2(六)中の各請求対象外情報を控訴人が公文書の公開をしないことにした処分が違法と認められないことに関する当裁判所の認定及び判断は次に付加するほか、原判決「事実及び理由」の「第三 当裁判所の判断」の「五 争点4(請求対象外情報及び合算情報の取扱い)」の1(原判決50頁末行以下同52頁4行目)記載のとおりであるから、これを引用する。
 被控訴人選定当事者らは、前記(原判示)の解釈は、原則公開を旨とする本件条例の趣旨を没却すると主張するが、被控訴人選定当事者らが改めて公開請求することを妨げないのであるから、本件条例が、請求者が請求対象として明記しなかった情報を記録した公文書の部分についてまで、控訴人に公開義務を負わせるものと解することは到底できない。

(2) 弁論の全趣旨によれば、選定者らが請求対象とした公文書の件名又は内容は、「大垣土木事務所の、県営渡船越立業務に関する・・・旅行命令(依頼)書及び支出金調書・復命書(平成10年度)」(本件処分一)、「大垣土木事務所の、管理課及び道路維持課に関する・・・海津町への出張に関する支出金調書(平成9年度分)」(本件処分三)といったものであって、記録された情報の内容をもって、公開対象となる公文書とそうでない公文書とを区分する基準として用いたものとみられるところ、控訴人は、原判決別紙文書目録一2(九)及び同目録三2(六)に記録された情報につき、公開を求める情報以外の情報が合算されていることから、特定した公文書のうち、このような合算情報記録部分が請求対象からはずれるとみて、非公開としたものと認められる。
 ところで、上記の選定者らが請求対象とした公文書の件名又は内容からみて、県営渡船場越立業務に関する情報が記録された公文書が公開対象として請求されたことは一義的に明らかであるが、県営渡船場越立業務に関する情報とそうでない情報とが合算されて不可分の情報となって記録された公文書についても公開対象として請求されていたか否かは必ずしも明確とは言い難く、このような公開請求を受けた被控訴人が、本件条例上、公文書の合算情報記録部分についても公開義務を負ったものと直ちに解することはできない。
 そうすれば、選定者らにおいて、上記合算情報が記録された公文書を明確に特定し、改めて公文書公開請求をするのはともかくとして、本件各処分中、上記合算情報記録部分を公開しないとする部分を、本件条例に照らし違法であったと断ずべき理由はない。

6 結論
 よって、原判決中、原判決別紙文書目録一2(四)、同目録二2(二)に関する処分取消請求を認容した部分及び同目録一2(六)に関する処分取消請求を棄却した部分は相当ではないが、その余の判断は相当であるから、本件控訴及び本件附帯控訴に基づき上記に従って原判決を変更することとし、訴訟費用の負担について行政事件訴訟法7条、民訴法67条2項、61条、64条、65条1項を適用して、主文のとおり判決する。
     名古屋高等裁判所民事第1部
          裁判長裁判官 笹本淳子
          裁判官    戸田久
 裁判官鏑木重明は、退官につき、署名押印することができない。
          裁判長裁判官 笹本淳子

選定者目録
 岐阜県山県郡高富町西深瀬208番地の1    寺町知正
 岐阜県揖斐郡谷汲村岐礼1048番地の1    山本好行
 岐阜県山県郡高富町西深瀬208番地の1    寺町緑
 岐阜県美濃市大矢田1434番地        後藤兆平
 岐阜県養老郡上石津町上鍛冶屋97番地の1   三輪唯夫
 岐阜市黒野471番地の1           別所雅樹
 岐阜県加茂郡八百津町伊岐津志1405番地の1 白木康憲
 岐阜県不破郡垂井町1292番地        白木茂雄
 岐阜県可児郡御嵩町上恵土1230番地の1   小栗均
 岐阜県加茂郡八百津町潮見407番地      宮澤杉郎 

 これは正本である。
 平成13年6月28日

  名古屋高裁民事1部
       裁判所書記官 栗巣野 洋